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躍進を続けるブラジルのブロイラー産業
お馴染みになりつつあるサンパウロでブロイラーの仲介業をブラジル三菱商事退職後遣っておられる東京農大OBの麻生 悌三さんが彼の専門部門であるブラジルのブロイラーに付いて纏めた掲題の文を送って呉れました。
長年手がけて来た専門分野の話しだけに分かりやすく纏めておられます。鳥インフルエンザがブラジルブロイラー業界には神風として好況をもたらしていますが、ブラジルにも鳥インフルエンザが侵入して来る可能性もなきにもあらず既にその対策を実施しているとのことで私の住むんでいるブラジル南部のパットス湖に飛来する渡り鳥がその感染源になる可能性もあるとのことで恐ろしい話です。
写真は、ブラジル大手のSADIA、PERDIGAOに次いで2番手グループの一つ唯一の外国資本の養鶏業として業界でも注目さえているフランスのDOUX(旧FRANGOSUL)の本社工場前の写真を撮って来ました。工場前の大きな看板にはポルトガル語、英語、フランス語以外に何とアラブ文字に『ようこそいらっしゃいました』と日本語でも書かれていました。



躍進を続けるブラジルのブロイラー産業

ブロイラーとは生後6−7週間で出荷される、品種改良された、肉用若鶏の総称です。

出荷時の重さは、1羽当たり、オスで2,5kg メスで2,2kgが一般的です。飼育形態は殆どインテグレーションと呼ばれる、契約飼育で、企業、農協等の処理加工業者が農家に雛、飼料等を供給し、飼育費を払い、ブロイラーを受け取る方式です。鶏肉処理加工業者の多くは、配合飼料工場、種鶏場,孵卵場、を持ち、技術指導の技師が農家を巡回し、飼育指導を行っている。契約農家は処理加工工場から半径100kmの地点に点在しているのが一般的です。

ブラジルのブロイラー産業は勃興以来まだ30数年で、1970年代にスタートしました。

1970年代のブラジルの人口は、たかだか、9千万人位でしたが、その当時のブラジル人一人当たりの年間の鶏肉消費量は10kg程度でした。それから、37年後の2007年では鶏肉の消費は一人当たり年間35kgと3,5倍に増加しています。現在のブラジルの人口は1億8千万人。人口は2倍に増えましたが,鶏肉消費は3,5倍増加です要

因は、コールドチェーンの整備による、冷凍鶏肉の普久です。青空市場、生鶏肉店の販売より売り場がスーパーマーケットに移り、冷凍品の販売が拡大しました。

鶏肉の生産も此処10年間の伸びが著しく、1999年度の550万トンの生産量が、2007年には、970万トン(推定)になる見込みです。輸出も99年度 75万トンから2007年度は285万トン(推定)になる見込みです。世界の鶏肉生産量はUSAがトップで年間 1600万トン、2位が中国で1300万トン、3位がブラジルで970万トン。輸出のシェアーではUSAが2006年度では282万トン,わずかにブラジルが及ばず2位で280万トン(2007年ではブラジルがUSAを輸出量で抜くと予想する)(2007年度輸出高予想は34億ドル)。このブラジルの急成長の背景は、ブラジルが持つ卓越した農業におけるインフラ(豊富な穀物生産、労働力、土地、資本、生産者の

旺盛な生産意欲)があります。

鶏の生産コストはUSAとブラジルが1羽当たり、45セント.タイが65セント、日本が110−115セント、これに処理加工費、輸送費、金利、倉庫、保険等が加算されて、輸出コストが形成される。処理加工費の大きな部分が労賃であり、タイは最賃月額2万円、ブラジルは2、4万円(ルーラ政権前の最低賃銀月額70ドルから210ドルに上昇、これに、レアル高が加わり異常高になった)USAでは推定で6万円程と思われる。全てを考慮したトータルコストの面でブラジルが有利である。

―ブラジルに神風が吹く。

2004年ごろより、中国、東南アジアで鳥インフルエンザの強毒性タイプ H5N1が猛威を振るい始めた。風が吹けば桶屋が儲かるの例えどうり、タイ、中国からの生鶏冷凍の輸出がストップしたことによりブラジルの輸出にドライヴがかかった。輸入国はいやでもブラジルから冷凍生鶏は買わざるをえなくなった。この競合国不在のチャンスをいかしてブラジルの輸出は急増しました。因みに、日本のブラジルからお冷凍ブロイラー輸入は

2003年には17万トンであったが、2005年には39万トンと急増しました。

鳥インフルエンザの犠牲者は東南アジアで既に、140名の死者を出しています。鳥インフルは多く渡り鳥(特に水鳥−かも、白鳥等)により伝播されます.ヴィールスは鳥の腸内で繁殖し、糞により伝染します.菌は人に伝染すると、変異して、全く、別のヴィールスになり、薬剤が効かない菌となり猛威を振るいます。歴史的に有名なのは、1918年

第一次大戦の最中、フランスで発生したスペイン風邪です。全世界で2千万人の死者が出たと言われています(その時の世界人口は12億)、日本だけで、38万人の死者が出ました。

―主要国への輸出。

輸出はブラジルブロイラー輸出協会(ABEF)の加盟企業21社と非加盟の企業20社あまりで構成されています。輸出比率ABEF加盟企業が80%、非加盟企業が20%の比率と考えます。

2006年度のブラジルの主要輸入国、及び国と地域別輸出量は下記の通り=

仕向け国      輸出量

日本        316000トン

ロシア       160千トン

香港        290 

欧州        350

中近東       750

東欧        250

国別輸出量では日本向けがトップです。鶏肉の部位の好みは地域によって異なります。

中近東は内臓、頭、足抜きの丸鳥、日本は骨抜き腿肉、欧州は骨抜き胸肉に大別されます。

中国(香港)ではモミジと呼ばれる、足を買いますが、他では全く売れません。


―ブラジルの5大処理加工業者生産とその輸出 (2006年度)

シッパー(処理加工業者)      年間総生産量〔推定〕       輸出量

Sadia 1742千トン           791千トン

Perdigao 1431   435

Seara 722 227

Frangosul 579 254

Avipal 470 155

現在PerdigaoによるAvipalの買収が進められているが、仮に買収したとしてもブロイラー輸出ではまだSadiaに敵わない。Sadia一社でブラジルの全処理量の略、20%であり、

鶏肉に関する限り世界的な巨大企業である。

―今後のブラジルのブロイラー産業の展望。

東南アジアのインフルエンザ騒動が治まったとしても、大きく見て、中国は自国消費の問題から、輸出余力はないと考える。タイは生産の基軸を加工品(焼き鳥,蒸し鶏肉、等)に移しており、生鶏の冷凍にはそう簡単にカムバックは出来ないだろう。USAはロシア、欧州等でブラジルと競合していますが、これ以上、シェアーを延ばすことは考えられない。

ブラジルの企業環境も決して良いとは云えません(税金、高金利、異常なレアル高、無能官僚による朝礼暮改式法令等々)その中で、短期間で世界のトップクラスに躍り出た、ポテンシアリテイーは誠に見上げたものと感嘆します。

但し、この楽園が一発逆転し地獄に落ちる危険はあります。それは、鳥インフルエンザのブラジル浸入です。H5N1の強毒性インフルが入り、それにより、輸出が禁止されたら、年間34億ドルの輸出インカムがパーになり,一大社会問題が惹起されるでしょう。

チリー、コロンビア、ギアナには、過去において、弱毒性インフルが入って発生した経緯があります。ブラジルだけがインフルの安全地帯とは誰も断言出来ません。

鶏インフルにはワクチンは余り効果がありません。発生したら、発生地点の半径10km四方の家禽を全て撲滅して埋めるのが最良の防止措置です。

とりわけ、警戒すべきは、南リオグランデ州に北半球より、9月、10月に飛来する渡り鳥(鴨)の飛来地Lagoa dos Patos周辺です。政府は飛来する、鴨、周辺の地鶏、をランダムに捕獲し、Campinas のラボANAGUROに送って、インフルのチェックを開始しています。

以上    麻生




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