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【ブラジルの畜牛事情】 麻生 悌三さんの寄稿です。
これまでにブラジルの世界に冠たる一次産品であるオレンジジュース、バイオ燃料、ブロイラ、リンゴ、米等に付いて解説をお願いしていましたが、今回は【ブラジルの畜牛事情】を纏めてくれました。ブラジルの三菱商事の食糧部長としての実務に裏打ちされた経験と統計資料を駆使した分かり易い説明は、ブラジル食糧業界を知る上で恰好の資料となります。私の住む南大河州は、州民1000万人に対し牛の数が1400万頭おり人一人に1.4頭の牛が飼われています。ブラジルの主流牛のインドゼブ種は、殆ど見られずヨーロッパ原産の肉牛が多く輸入国からは南大河州の肉牛の何処の部位といった指定での買い付けが行われている。
このところブエノスでのノートパソコン盗難事故以後古いパソコンを引っ張り出してだましだまし使っていますが、直ぐに漢字転換時に固まってしまい作業が進まず苦労をしています。ホームページの更新が思うように進まない時期に貴重な原稿を送って呉れた麻生さんに感謝します。
写真は、ブラジルの畜牛の80%を占めるといわれているインドゼプの立派なコブ牛の代表的な写真が見つかりましたのでお借りして使用しました。


世界の畜牛の飼育頭数は約13億頭と言われている。牛肉の生産は年間6千万トンと見積もられている。ブラジルは1億8千万Haの広大な草地を利用した、放牧中心の牧畜で人口と同じ、約1億9千万頭の畜牛を持ち、肉牛が1,5億頭、乳牛が4千万頭である。
畜牛の70%が中西部、南東部,南部に飼育されている。畜牛の種類は80%がゼブー種である(インド牛で瘤牛)で残りは、欧州系牛(ヘレフォード、アンガス、シャローレ等)との雑種である。ゼブー種は、ブラジルの気候、風土、牧草と巧く適応してきた。州別の
飼育頭数ではマットグロッソ州が最も多く、2300万頭,次いで、ミナスジェライス州が1900万頭である。ブラジルの飼育頭数は人口一人当たり1頭である。他の南米の諸国は人口一人当たり2頭である。
世界の牛の国別飼育頭数では、インドが2,2億頭、ブラジルが1,9億頭、中国が1,3億頭、アメリカが9700万頭である。一方、牛肉の生産量では、アメリカが1126万トン、ブラジルが1000万トン(2006年)、中国が650万トン、アルゼンチンが
270万トン。オーストラリアが230万トンー年間である。インドの場合、飼育頭数では世界一だが、国民の80%は牛肉を食べない、ヒンズー教徒であり、消費は少ない(年間266万トンの牛肉を生産し、87万トンの輸出がある)。ヒンズー教徒にとっては、牛は聖なる動物であり、牛の利用の主たる物は、排泄物(牛糞)である。それを乾燥させ燃料に使用する。アメリカが飼育頭数が少ない割には牛肉の生産が多いい理由は、畜牛の繁殖と生産サイクルの項で説明する。
ブラジルの牛肉生産、輸出、牛肉消費の推移〔枝肉ベース=頭、足,尾、皮、内臓を除去した背骨,アバラ骨付き肉で大体1頭当たり200kg。骨を抜けば180kg〕
年度       生産量        輸出量   輸出金額(億ドル) 消費量
1997     592,2万トン   294千トン   ―      35kg 
1998     579,4      383      −      34
1999     641,3      560      −      35
2000     657,9      581      −      35
2001     682,4      822      −      35
2002     713,9      955     11億ドル   35
2003     756,9     1259     15,5    35
2004     8674      1589     24,6    39
2005     8700      1610     30      38
2006    10000      1730     37      38
2007    12850      1964     44      38
2008〔推定〕           2500     51      38
消費量は一人当たり年間消費量で概数、世界で牛肉消費量の多いい国はアルゼンチンとウルガイで一人当たり年間66kgと云われている。
―ブラジル中西部に於ける肉牛生産の特徴
ブラジル全体の35%6700万頭を飼育する最大の産地であり、経営形態は大農型で,100Ha以下の土地を所有する小農は僅か5%にすぎない。但し、最近は土地なし農民の社会問題から数万Haのメガファームは少なくなり、大規模農園の面積は5千―7千Haである。この地域の畜牛の発展は、1870年代に導入されたゼブー種の風土順応とイネ科牧草ブラッキャリアの導入と組み合わせの成果である。現在では牧草を人口栽培された牧場に放牧され、1Haに平均1頭が放牧される。(南部の管理された牧場では1Haに5−8頭を放牧)したがって、管理さえ充実させれば、1Haに平均2頭は飼育可能である。
―畜牛の生産コスト
ブラジルの生産コスト(牧場渡し)の価格は数年前はUS$1,00−kgと云われて来た。
然し、レアルの異常な高さ、諸経費の値上がり(数年前に最低賃金も70ドル-月が今は
240ドルー月に上昇)により、現在はUS$1,80−kgと推測する。各国の生産コストの推定値は下記の通り=
ブラジル    〔枝肉〕 US$ 1,80−kg
USA              6、00
中国              2,50
アルゼンチン          2,00
欧州              3,20
日本              12,00
ブラジルが牛肉輸出国で世界一となったのは、この生産コストの安さであり、肉質が硬いの、脂身が良くないの,ケチを付けられても、競合力はダントツである。
―畜牛の繁殖と生産サイクル
A) アメリカ式繁殖(人工授精により生後9ヶ月の幼牛を妊娠させ5年位に妊娠、出産を繰り返し,廃牛とする工業的飼育法)生産サイクルは、生後9ヶ月で受胎させた場合,最初の子牛誕生は19ヶ月後である(妊娠期間280日)従い、18ヶ月で子牛を産むサイクルが出来る。生後、20ヶ月で牛体重700kg(枝肉350kg)に成長し,とさつ出来る。
B) ブラジル式繁殖=自然繁殖であり、生後3年で受精、4年で出産。18ヶ月放牧を行い、体重500−700kgでとさつ。(生産サイクルは5年半である)。
生産サイクルがアメリカの2倍以上掛かり、牛肉生産量が飼育頭数に比し低い理由である。
アメリカの飼育が濃厚飼料を与える、フィードロットと云う方式に対して、ブラジルは牧草による自然飼育である.最近はブラジルでもフィードロットの生産が出始めてきたが、まだ年間250万頭程度で本流ではない。ブラジルでは公式な牛肉の格付けがなく、肉質の良い肉の生産は価格に跳ね返ってこない〔一部スーパー等が独自の格付けで買取り販売しているケースはある〕従い、良品質の肉をコストを掛けて生産してもメリットがないのが実情である。(ブラジル人の一般的メンタリテイーも質より量指向)日本の場合は格付けが肉質だけで5段階に別れ、それぞれ値差があり、品質指向である。
―ブラジルの輸出戦略
ブラジルは2004年輸出量140万トン(20億ドル)を達成し世界のトップに踊り出た。アメリカ、欧州は狂牛騒動で大きく、減退した上に、アルゼンチン,ウルガイの口てい疫病発生が追い風になった。風が吹けば桶屋が儲かると云う格言があるが、ブラジルは
他国の弱味を利用して伸びる才覚に長けている。1982年のフォークランド戦争では欧州が2年間のアルゼンチンに対する経済封鎖を行ったので、アルゼンチンの牛肉加工産業が壊滅し、生産拠点がブラジルに移り大発展を遂げた。最近では中国、タイの鶏インフルエンザで、冷凍鶏肉のサプライソースがブラジル1国となり、アメリカを抜いて世界のトップになった。昨年11月に欧州はブラジルの牧場の口てい疫病管理が不徹底を理由に輸入禁止の措置を取った(公認された牧場100箇所以外の牛は輸入禁止とした)。
ブラジルは欧州以外の国に販路を広げるべく猛チャレンジ中で、新市場が広がりつつあり。
禁輸入中の2008年1月、2月の輸出量は7,6万トンで同年同期の19%しか減少していない。為替(異常なレアル高と諸経費の値上がりを、輸出価格の上昇でカヴァーしており輸出価格は50%、此処1年間で値上がりしている。日本には、口てい病の問題から
冷凍生肉は輸出出来ないが、冷凍煮沸肉は輸出しており年間1800トン程度、輸出している(用途はカレーの具等)日本が若し(アメリカの圧力で無理だが)ブラジルの冷凍生肉の輸入を許可したら、日本の肉の値段は3分の1位に値下がりすると予想する。
-JBS-Friboi
最近のブラジル版サクセスストーリーのビッグな例に世界一の牛肉加工業者に登りつめた
Joao Batista Sobrinhoと云う名の一介の牛の仲買い(バクロウ)がゴヤス州アナポリスで
1957年に1日とさつ25頭の小規模のとさつ場を始めたのが、運の付き始め、1999年には大手加工工場Frigorifico Mouranを買収。ブラジルの代表的老舗業者Bordon,Anglo,Solaを次々と買収。2005年にはアルゼンチンのナンバーワンSwiftを買収。2007年にはUSAのSwiftを14億ドルで買収。今年年初にはUSA National Beef
ProcessingとSmith Fielf Beef 及びオーストラリアのTasmanを相次いで買収。とさつ能力はブラジルの23箇所の工場で18000頭、USAで20000頭、オーストラリアで5000頭、アルゼンチンで5000頭合計48000頭―1日当たりとさつの巨大企業のオーナーとなった。創始者は75歳で現役。頭文字をとりブランド名はJBSとしている。売上高は年間120億ドルと見積もられている。一介のバクロウさんが、どういう手品を使ったか知らないが、41年間で巨億の富を稼いだ物語。金持ちの出でもなく、名門ファミリーの出でもないオッサンのサクセスストーリは我々、庶民は喝采を送っている。
―捕鯨反対の本当の理由
アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド等は日本の捕鯨反対ばかりでなく調査にも
妨害活動を行っている。アメリカの食糧戦略は肉食文化を導入させて相手国をがんじがらめに束縛し自由を奪うことです。日本を学校給食で篭絡開始し、肉と小麦文化に転換させました。今日の食糧自給率低下(僅か40%)はアメリカの戦略でした.ロシアも、まんまと、アメリカの術中にはまりました。次は、恐らく、中国がはまるでしょう。
日本は今、国産牛肉の年間生産50万トンに対し、オーストラリアから26万トン、USAから25万トン、ニュージーランドとカナダから20万トン合計80万トンー年間を輸入しています。アメリカは何のかんの言いがかりを付けて、食糧依存を強要しています。
捕鯨もその一環です。昨今、南氷洋で日本の調査船に攻撃を仕掛けたSea Shepherdと云う団体は、余りの過激性から環境保護団体グリーンピースから追い出された団体で、ポール
ワトソンをリーダーに捕鯨反対活動を行っております。ヒッピー崩れのならず者が外洋船を所有し活動を行う資金は、全て寄付によって賄われており、かなりの部分が食肉団体から流れている事は明白です。表向きは,海のエコロジーとか動物愛護とか、言っていますが、本音は牛肉販売の邪魔になるからです。USA、オーストラリア等はこうした、海賊行為を取り締まらず、むしろ、応援しています。日本もいい加減に目を覚ましてアメリカの
策略に対抗しないと子孫に禍根を残します。最近の川柳に(戦争はするが、鯨は守る国)というのがありました。
以上
麻生
2008年3月20日




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