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ブラジルの砂糖とエタノール生産 麻生 悌三さんの寄稿
健筆家の麻生さんが今回は、世界一の砂糖生産国であり輸出国でもあるブラジルの砂糖に付いてその歴史的な接近を試みておられます。砂糖生産と密接な繋がりのある自然に優しい燃料としてのエタノールに付いても言及しておられブラジルの主産業の一つに育っているサトウキビ栽培の今後を示唆する分かりやすい格好の読み物となっています。何時もブラジルの主要農産物に付いて書いて下さる麻生さんの寄稿に勉強させられています。さて次は何を取り上げられるのでしょうかね。
麻生さん有難う。
写真は、砂糖きびの手による収穫風景をGOOGLEで検索してお借りしました。


ブラジルの砂糖とエタノール生産 麻生 悌三さんの寄稿

ブラジルは世界一の砂糖の生産国であり、輸出国でもある。砂糖はインドあたりが発祥地らしいが、アラブに伝わり、十字軍が欧州に持ち帰り、地中海のコルシカ島辺りで、栽培が始まり、大西洋のアゾーレス島,カナリー島に伝承した伝えがある。砂糖は白い黄金と呼ばれ,高価で薬用に用いられた。ブラジルには1532年ポルトガル人のマルチン アフォンソが最初に苗を持ち込んだ記録がある。当時の大航海時代の覇者、ポルトガルは、ブラジルでの砂糖栽培に邁進した。1629年には、ブラジルの砂糖プランテーションの数は346箇所を数え、全ヨーロッパに砂糖を供給した.砂糖栽培は大量の労働力を必要とした(刈り取りー搾汁―発酵しないうちに煮詰めるー乾燥)。現地のインジオを捕獲して労働力として使用したが、労働には、全く不向きで、アフリカの黒人を奴隷として、使用することで砂糖栽培が成り立った。アフリカの部族間の抗争を利用し、戦いに負けた部族を奴隷として、売買された、16世紀から19世紀にアフリカから連れ去られた黒人の数は1500−4000万人と言われている。100トンクラスの帆船に400名ぐらいの奴隷を積み込み、劣悪な条件のもとで目的地に到着した奴隷は70%程度で、3割近くが死亡している。目的地に到着できた奴隷の総数は1000−2500万人ぐらいではなかろうか。欧州から物資、鉄砲をアフリカの西海岸に運び、奴隷商人に売りつけ、奴隷商人は銃器で武装し、奴隷狩りを行う。奴隷を仕入れた奴隷船は、目的地で奴隷をプランテーションに売り、砂糖を仕入れ、欧州に帰る、三角貿易である。この奴隷貿易をぬきに、16−19世紀の砂糖栽培を語る事は出来ない。1700年頃になると、ブラジルの東北伯の地力も枯渇し始め、プランテーションもカリブ海諸国に移り、奴隷貿易の支配国も、ポルトガルースペインからオランダ、イギリスの時代に移って行き、プランテーションも砂糖から北米の綿花栽培に移転し、奴隷制は南北戦争の終わる、1865年まで続く。ブラジルは奴隷解放が行わられたのは、1888年であり、その当時ではブラジルはコーヒー栽培の時代を迎えており、奴隷解放による労働力不足の解消の為、欧州より大量の移民が入り、日本からも、100年前第一回移民が笠戸丸で到着している。

―ブラジルの砂糖栽培
ブラジルの総面積は5億8千万Haであり、そのうち、砂糖黍の栽培面積は約500万Haである。総耕地面積の8%である。ブラジルの砂糖栽培地帯は大きく分けて、東北伯(収穫期9−3月)と中南部(収穫期5−11月)である。
A)東北伯=主要州はアラゴアス、ペルナンブコ州であり,反収も低く、年間生産量は5千万トン程度で低迷している。尚、同地域には社会政策で補助金を支払っていたが、現在は
廃止されている。
B)中南部=主要州はサンパウロ、パラナ、ミナス、マットグロッソ州である。2007年の砂糖黍の収穫量は約3億トン,そのうち、サンパウロ州が70%の2億1千万トンを占

める。砂糖の生産量は約3千万トンで85%が中南部の生産である。

―砂糖栽培の構造
ブラジルではUSINAと呼ばれる、砂糖工場が生産を担っている.工場の直営農場もあるが,個人の農園と借地、栽培契約を結び、植え付け、栽培、収穫、搬送の全てを工場が行う。
工場はブラジル全体で大小324工場あり、その内の8割が砂糖とエタノールを生産し、
エタノールのみ生産は50工場、砂糖のみ生産は22工場である。この工場に原料を供給する農園の数は約6万と言われている。
砂糖は黍を短く切り、埋めれば、発芽する。1回埋めれば、収穫は12−18ヶ月後に行わられ、(黍を刈り取った後)、次期収穫は12ヶ月後に取れる。これを、5−6回繰り返し収穫が出来る。土地の消耗度は高い(施肥の必要)が、年間平均気温20度C、最低年間降雨量1000mmあれば、余り、気候変動の影響を受けない作物である。サンパウロ州の場合、年間降雨量は1400mmあり、灌漑は全く必要なし。
収穫作業の機械化は遅れており、大部分はまだ手刈である。労働者一人当たり一日2−3トンを収穫する。収穫した黍は葉を焼いて、輸送効率を上げるが、栽培地に放火するため、CO2排出の問題等が起きる。

―砂糖の消費
世界の砂糖生産量約1億5千万トンの内、ブラジルは約2300万トンを生産し世界シェアーの約16%を占めるトップであり,2位はインド1900万トン、3位は欧州(甜菜糖)1800万トン。一方、消費量は1位がインド1800万トン、2位が欧州1500万トン、3位がブラジルで1100万トン。残りの1200トンは輸出向けであり、ロシアが最大の輸入国。
又、砂糖の生産コストはブラジルが最も安く、トン当たりの生産コストはブラジルが180ドル、豪州が335ドル、アメリカが350ドル、欧州が710ドル、日本も沖縄で砂糖栽培をおこなっているが、そのコストはブラジルの8倍、1440ドルと言われている。

―エタノールに就いて
最近の川柳に(食料を人と車で奪い合い)と云うのがあります。6月初旬のFAOが主催したローマでの食料サミットでも、食料原料を燃料に転用するのが、価格高騰の主因であり、飢餓を引き起こすと、アメリカとブラジルを槍玉に挙げて議論が白熱した。ブラジルのルーラ大統領はブラジルのエタノールの原料は砂糖黍であり、穀物ではなく、余剰の砂糖を有効利用していると反論した。一方、アメリカはトウモロコシ原料であり、エタノール生産に転用したトウモロコシは2001年の1800万トンから2006年には5500万トンに増加した。その結果、エタノールの生産量は160億klと僅かだが、ブラジルを超えた。アメリカのバイオ燃料投資は急騰する、原油価格への対応策として行はられている。然し、それは,いまや手が付けられないほど、拡大し食品から燃料が穀物を奪う結果になっている。中国、インド、欧州等もエタノール生産に乗り出し、エタノール生産の勢いはとどまる事を知らない。穀物の自給率の低い諸国はこの影響をもろに被ることになり、日本の畜産も危機に瀕している。

―ブラジルのエタノール政策
ブラジルは1975年に原油依存の緩和を計る為、国家アルコール計画(プロアルコール)
を打ち出した。ガソリンにアルコールを19−25%混入するのを決定した。(1980年代の海底油田の発見以来、石油は自給率100%を達成している。アルコールの輸出、余剰ガソリンの輸出と不足気味なジーゼル油の輸入を行っている) 2007年には砂糖黍の生産(4億2千万トン)の52%(2億1千万トン)がエタノール生産に利用されている。2007年のエタノールの生産量は170億kl、産地別生産では中南部が88%。東北伯が12%で今後はセラード地帯にも栽培が増加する傾向にある。2010年に於ける、砂糖黍栽培面積の予測は870万Ha。砂糖黍生産量予測5,6億トン、砂糖生産量予測
5600万トン(輸出予測2400万トン)、エタノール生産予測220億kl(輸出予測
75億kl)ブラジルの強みは生産コストが他国よりも安いことである.リッター当たりの生産コストの見積もりは。
ブラジル     19 US セント
アメリカ     33
欧州       55
ブラジルでは砂糖の生産がメインであったが、2008年の予測では砂糖黍の砂糖生産は
45%、エタノール生産に55%を転用と、エタノール生産が主生産で、砂糖がむしろ副産物になりつつある。
2003年よりエタノール、ガソリン両用のフレックス車が走り、燃料別の製造車種ではフレックス車49%、ガソリン車49%、アルコール車2%の比率である。バイオ燃料の生産と利用ではブラジルが世界の牽引車となっている事は間違いない。
以上
麻生
2008年7月3日          



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