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麻生悌三のブラジル不思議発見(2) 大ケイマーダ島の毒蛇ジャララカ
今年1月より連載が始まった麻生悌三さんのブラジル不思議発見の2月号です。今回は大ケイマーダ島の毒蛇ジャララカです。ブラジルは毒蛇の宝庫とも云われており色々な毒蛇、大蛇がいますが今回、麻生さんが取り上げたジャララカイリョアは、ブラジルの海岸線から沖合30kmの無人島の大ケイマーダ島だけに住むと言われる陸地から離れた無人島で特別に進化したダーウィンが喜ぶであろう特殊な毒蛇を紹介して呉れています。小さな島には5000匹から1万匹のこの猛毒の蛇が住んでいるとの事で灯台が設けられているそうですがこんな島には近寄りたくないですね。所が蛇の血清を製造する為にこの蛇を乱獲に行く者がいるとか。政府が密猟を取り締まっているとの事ですが毒蛇も人間に利用価値があるとおちおちしておれないですね。写真は麻生さんが送って呉れたジャララカイリョア


サンパウロ州の南西海岸、イタニャエンとペルイーベの沖合い30kmの海上にQueimada
Grandeと呼ばれる無人島が在る。島の大きさは、奥行き1,5km、幅500mの島で、
海岸は無く、海上より切りたった岸壁が高さ90mの台地までそそり立ち、その上に高さ
200mの岩山がそびえている。島の面積は、430千平方メーターで、僅かに、その昔、
燈台守が開いた草地がある。この島は別名スネークアイランドと呼ばれる、毒蛇ジャララカ(アメリカハブ、の類の毒蛇で南米に広く分布)が島の主人で、棲息密度は極めて高く、
島全体で5千―1万匹棲息しているだろうと云われている。海軍が管理する灯台は、今は自動化されて、保守と燃料補給のために、ヘリコプターで年に数度、人が降り立つ以外は無人島である。この島が学術的にも有名になったのは、1921年にサンパウロのブタンタン毒蛇研究所が実地検査を行い、ケイマーダ島の毒蛇ジャララカの特異な進化と生態を発見してからだ。ジャララカとは一名アメリカハブとも呼ばれ、アルゼンチンからブラジル北部まで、広く分布し、およそ30種類ぐらい種類がある。成長すると全長は1,1−1,5mになり、体色は普通薄い黒色だが、このジャララカ(Jarara Ilhoa)は暗黄色である。毒は出血毒(毒が体内に回ると、耳や目から出血する)で強く、血清を注射し、全快しても、後遺症に悩まされるケースもある。棲息場所は、ガラガラ蛇等が乾燥地帯に棲息するに対しジャララカは湿地を好む。ブラジルでは毎年3万人ぐらいが、毒蛇に噛まれて血清の世話になっているが、その80%はジャララカの咬害による。咬まれる場所は80%が膝から下であり、15%が手である。、蛇類の70%は卵生だが、30%は卵胎生(卵が胎内で孵化し子蛇が出産する)でマムシ、ハブの類は卵胎生である。出産時期は狂暴になり咬害も多いい。普通ジャララカは木に登らないが、Ilhoaは樹上生活が殆どで、これは
島をねぐらとする小鳥類の捕食の為と、体色が樹木に似た擬似色となっている。島には夕方になると多数の小鳥がねぐらに戻ってくる(どうして、斯様な危険な場所をねぐらにする習性があるかは謎である)ほかに、島に営巣する軍艦鳥、かつお鳥の他に、若干のコウモリと蛇に寄生するダニがいる以外この島に生き物と云えるものはいない。
この島は凡そ1,5万年前の氷河期の時代、大陸と陸続きであった。その後、氷河期が終わり、海水の水位が上がり、島は隔絶し孤島となり、動物は食物連鎖が途絶え、陸棲の
生物は殆ど絶滅してしまう。残ったのは、Jararaca Ilhoaだけであり、生き残りの為に、独特の進化を遂げている。蛇は普通は夜行性であり、哺乳類等の体温を感知して、攻撃捕食する習性がある。日光を浴び、気温の上がる昼間は、熱源が散り、体温をターゲットにしにくくなる。蛇が舌をチョロチョロ出しているのは、一種の赤外線の熱感知運動である。
ケイマーダ島のジャらラカは地上より、樹上に生活の場を移し、夜間、ねぐらに帰る小鳥を捕食するように習性を変えた。この蛇は、普通にいるジャララカの5倍の毒性があり、実験では、ネズミを2秒で即死させる強力な毒性を持っている。咬みついて、小鳥が飛んで海にでも落ちたら、折角の餌が無駄になる。その為、即死させる強力毒に進化した。又、毒蛇は、獲物を咬んでから、獲物から離して。獲物が逃げるのを追って捕食する(獲物に毒が廻ってクタバルのを待つ)習性があるが、此処のジャララカは咬んだら、獲物を離さない。咥えたまま即死させ、頭から呑み込む。又、ブタンタン研究所のスタッフを驚かせたのは、この蛇が、卵巣を持ったメス蛇が同時にペニスも持っていた事である(両性)。更に、固体を調べると、完全なメス(卵巣のみ)と完全なオス(ペニスのみ)と両方を持つ、3種の蛇がいた事である。子孫保存の為に、両性共有の雌雄共有生物に進化した事である。ミミズ、フジツボ等の生物には両性共有はあるが、脊椎動物にあるのは他に例がない。子孫保存の為、状況に応じてオス、メスを使い分けるように進化したものと思われる。まさに、ガラパゴス島のブラジル版進化であり、ダーウィン先生が生きていたら、さぞかし喜ぶだろう。ブラジル政府は、この島を立ち入り禁止とし、定期的に実地検査を行っている。
ジャララカIlhoaは毎年3−6月に交尾し、10−12月に10匹ぐらいの子蛇を出産する
(大陸のジャララカ出産数はもっと多い)。
近年、毒蛇の毒液から、血栓溶解剤等が抽出できるようになり、毒蛇の毒が売買されるようになった。スイスの製薬会社Squibb,Evasinがそれを製造している。ケイマーダ島のジャララカがその原料として狙われており、密猟を政府は厳重に警戒している。
(付録)
アマゾンにSurucu de Fogo(火の蛇)と呼ばれる、猛毒の蛇がいる。世界的にはBush Master
(藪の王)の方が通りが良い。成長すると、体調4mにもなる南米で最大の大型の毒蛇で毒性も強い。恐らく、ハブなどより強い、ガラガラ蛇クラスの神経毒の毒性だろう(神経毒とは、毒液が体内に廻ると神経が麻痺し、時には呼吸神経が麻痺し死亡する)。この蛇の特異性は熱や光に敏感に感知し、明かりを見ると、時には、狂いだし、突進する傾向がある。鎌首を持ち上げたら、人間の腹の高さもある。ジャングルのゴムの採集人は、石油ランプを固定した帽子をかぶり、夜明けから樹液採集にジャングルを行動する(樹液の出が夜明けは良い)。このランプの明かりにブッシュマスターが襲い掛かるケースもあり、採集人はこの蛇を最も警戒する。時には、焚き火をめがけて飛び込んで来ることもあると聞く。戸外に漏れた人家の明かりを目指して、家に飛び込んで来るケースもあるらしい。世界の毒蛇の毒性の強さと致死性のランキングではキングコブラを横綱、アフリカのマンバネグラを大関とすれば、スルククーデフォーゴは強い小結か、弱い関脇にランクされるだろう。
戦後、アマゾンのトメアスー移住地で日本人移民2名がスルククーデフォーゴに咬まれ、血清注射が間に合わず、死亡している。
(添付の写真はジャララカイリョア)



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