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麻生 悌三のブラジル不思議発見 (11)アフリカ伝来の呪術―マクンバ
麻生さんのブラジル不思議発見10月号です。今回はブラジルの日常生活に密着したブラジルの風習と云うかブラジルに住む我々には馴染みがありながら良く理解出来ていなかったマクンバ、カンドンブレ、イエマンジャ等に付いての分かり易い解説です。アフリカの黒人奴隷の人たちが持ち込んだブラジル日常生活に浸透したこれらの宗教儀式等は、ブラジル文化の一部をなしておりインヂオ文化、ヨロッパ各国の移民が持ち込んだ文化、我々アジア系の文化等が織りなす文化がブラジル文化とも云え、一種特異な外から持ち込まれた移民文化がブラジル文化の特徴かも知れませんね。これからもこのブラジル文化の不思議発見を書き続けて貰いましょう。
写真は、久し振りにサンパウロで麻生さんと昼食を御一緒させて頂いた時に撮らせて頂いた1枚を使わせて貰う事にしました。


アフリカから16世紀から19世紀の300年間に亘り、奴隷として、黒人が南北アメリカ大陸、中米、カリブ海に連行された人数は凡そ、1千万人と云われているが、アフリカでの連行途中や航海中の死者を数えれば、2千万人位の黒人が捕らえられたに相違ない。そうした、奴隷が、アフリカ(主としてナイジェリヤを中心とした部族でヨルバ語を話すヨルバ族の宗教がマクンバの母体)より連行され、文化、宗教も流入し、キューバのサンテリヤ、ハイチのブードー教、ブラジルのマクンバが黒人宗教として今尚、受け継がれている。一説には、マクンバは宗教ではなく、黒人の白人に対する、呪いの呪術であり、儀式であると云う説もある。奴隷には、自由が無く、ひたすら、歌い、踊り、祈る以外ない。そうした中で生まれたのが、サンバであり、マクンバである。マクンバには、宗派があり、信者の一番多いいのが、カンドンブレ(信者数約200万人)で次が、ウンバンダ、キンバンダ等がある。カンドンブレはカトリックに強制改宗された(奴隷収容所に入ったらカトリックの洗礼を受けさせられる)、黒人宗教に土着民インジオの心霊信仰等複数の信仰が絡み合い、1830年に組織化された。カンドンブレとは、奴隷労働者の踊りカンドンベと家を意味するヨルバ語イレを繋いだ造語である。テレイロ(terreiro)と呼ばれる教会があり、聖職者はヨルバ語で祈祷し、アタバキと呼ばれる、打楽器のリズムに合わせ、歌い、踊り、聖職者が、様々な神を憑依させる。神々はオリッシャ(orixa)と呼ばれ各テレイロ毎に神は異なり、正確な数は不明(神道の八百万の神に通ずるものあり)。一度、サントス海岸で、数万人が毎夏集う、イエマンジャの儀式(神輿に担いだ聖母マリヤを海に乗り入れる)を見た事があるが、その折、居合わせた、聖職者が偶然居合わせた若い女性に、葉巻タバコの煙を吹きかけ、御まじないを唱えるうちに、突如、女性に憑依現象が起き、踊りだし、顔つきが全く変わったのには驚いた事を覚えている。(周囲の状況から、ヤラセでは無い事は分かった)白人から、異教の神を信じる事を禁止された為、キリストやカトリックの聖人と重ね合わせ、又、カトリックにカモフラジュして信仰を続けた。テレイロの数は、バイヤ州サルヴァドールだけで大小1万を数える。大教会では、組織が決まっており、頭は、ペギガン(Pegi Gan)と呼ばれる、大僧正(パイデサント=聖人の父と呼ばれる、幹部会で選挙で選ばれる)を筆頭に、それを、補佐する、女性(マイデサント=聖なる母)がいる。 パイデサントは教会を束ねる責任者で、その下に、パイペケノ=小さい父が居り、冠婚葬祭を司る。その下にマイペケーナ=小さい母がおり、教会内の雑事を掌握している。 実務はオガン(ogan)と呼ぶ、事務長が行い、アラベ(arabe)と呼ぶ楽団長がいる。 一般の正会員はフィーリョデサント=神の子)と呼ばれ、 その下に準会員もいる。
マクンバの歌はヨルバ語で、時折、バンツー語(アフリカ南部の部族の言語)混じりで、呪歌をえんえんと歌う。歌の文句の一例では、  マクンバ、マクンバ、我等が祈りよ、宇宙の精霊よ、生きとし、生ける、あらゆる魂のイッツアよ、ヨルバの守護神よ、天の支配者よ、我等の呪に力を。(鈴木一郎著 マクンバ参照)
マクンバに人の呪殺を依頼するのは。簡単ではないが、大金をテレイロに寄付する気があれば、可能だ。依頼されたら、パイデサントだけが、呪いを掛ける事が出来る。殺人依頼者は教会に呪殺を依頼すると、幹部会議が教会で召集され、依頼者の身元と、殺害者が徹底的に調べられる。依頼者に非が有る場合は、依頼を拒否できるが、他の教会に経緯を回状で、通達する場合もある。被依頼者が死を以って、償うだけの理由があっても、まだ、マクンバは成立しない。依頼者が莫大な金銭を教会に寄付できるかが、問題となる。寄付できない場合は、依頼者は魂を教会に捧げる覚悟が要る。教会のしもべとなり、俗社会との一切の縁を切り、生涯、教会に身を捧げる覚悟がいる。全てOKとなったら、最終審査は他の上級教会(教会によりランク付けがある)に委ねられ、場合によっては、最終審査に1年も掛かることもある。最終的に、パイデサントが依頼者と面接し、是非が決定される。マクンバが成立すると、パイデサントは、斎戒沐浴した後、教会の祭堂に籠もる。最低7日間は、一切の食物を絶ち、死の呪法を行う。呪法は凄惨で、パイデサントの体重が4kgも減ってしまう程である。此の間、教会では、ペジガンを先頭に、昼夜を問わず、神への祈祷が行はられる。呪法明けの夜、依頼者は、パイデサントと再び対峙する。やがて、深夜、死の制裁を受ける相手の名前、住所、年齢を書いた、紙が机上に置かれ、パイデサントは生贄として葬った動物(黒い羊、猫、鶏、ガマカエル等)の血を紙に注ぎ、鮮血が、紙に現れる、血模様で、相手の死の日時を読み取る。こうして、相手がいつ死ぬか御告げが知らされる。科学的に証明できない物を、全て迷信とかたずけるのは易しい。しかし、現実に、黒人の密教マクンバは存在している。実際に、呪殺されたり、不幸に陥れられたケースも多数あるらしく、普通のブラジル人はマクンバの名前を聞いただけで、気味悪がり、恐がる。正規に教会に持ちこめられない、依頼者が、面倒な手続きも金銭の寄付も抜きにして、個人的に霊力を持った、マクンベイロ(呪術者)に依頼して、呪いを掛けるケースは極めて多く(その方が実際では多いい)、儀式に使用した、黒い羽の混じる、鶏の死骸等が、素焼きの大皿に盛られて、路地に置かれているのを見たことはサンパウロ市内で数回ある(深夜、密かに、マクンバの儀式を行った跡である)。余談だが、マクンバを掛けられた者がマクンバを外す、術法があり、より強い霊力を持った、パイデサントや呪術者に、依頼して、マクンバ外しの儀式を行う。
カンドンブレのテレイロでの普通の儀式は、祈祷、奉納、憑依、の順で行われ、オリッシャの降霊を待つ。現在は、信者は黒人以外の階層にも広がっている。又、何故か、テレイロの司祭には、同性愛者が多いいと云われており、こうした教会には同性愛者の信者も集まり、さながら、ゲイクラブの雰囲気があるらしい。ハイチのブードー教でも、同じらしい。(キリスト教会が同性愛者を表向き、排除しているのが理由かもしれない)
写真はカンドンブレのマイデサントの祈祷(女性の衣服はアフリカ風)以上  麻生
2010年10月1日
麻生



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