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【希望大国ブラジル】 産経ニュースWEB版より(第4部)
『私たちの40年!!』関連BLOGにも転載させて頂いている産経ニュースWEB版の【希望大国ブラジル】の第4部です。
つい最近第6部の終結編が終了した。年初めから3人の記者をブラジルに派遣し現地取材をして始めた連載も1年掛かりで終了した。南部ブラジルにも徳光一輝記者が取材に来られ2日間お付き合いさせて頂きペロッタスまで飛行機で日帰りでご一緒しましたが、ブラジル南部には触れられないままに終了してしまったのは残念ですが、その内、産経ニュースとして取り上げる機会もあるかもしれない。産経新聞にはブラジル関係情報が十分正確にインプットされているのは嬉しい。
その内に【希望大国ブラジル】は、書籍として出版される可能性もあると聞くが『私たちの40年!!』HP寄稿集では6部まで取り上げて収録して置きたい。第4部の写真は、下記説明のある写真を使用させて貰いました。
ずらりと並ぶホンダのオートバイ。ブラジルの街の風景に溶け込んでいた(早坂洋祐撮影)


第4部(1)豊富な「水力」成長下支え 世界3位のベロモンテ水力発電所
眼前に広がる密林がすべてダムの底へ沈む…。ブラジル北東部パラ州、世界最大の河川アマゾン川の支流沿い。完成すれば発電量で世界3位となる「ベロモンテ水力発電所」の建設予定地へ日本のメディアとして初めて足を踏み入れた。
 アマゾンの地方都市アルタミラから南へ赤土の道を車で2時間以上。濃い緑色をしたシングー川沿いにトタン家屋が点在する集落が現れた。ダムは完成すると高さ90メートル、幅3・5キロ。琵琶湖の面積の約8割の熱帯雨林516平方キロが水没し、この集落を含め先住民族ら1万6千人が立ち退きを迫られるとして、国内外から批判を浴びている。
 総工費110億ドル(約8800億円)、総発電量はわが国の標準的な原発10基分に相当する1100万キロワット。中国の三峡ダム、ブラジルとパラグアイにまたがるイタイプ水力発電所に次ぐ規模であり、2015年の電力供給開始を目指し、ブラジル政府は6月1日、ダムの着工を認可した。
 新興国BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)の一角、ブラジルの経済成長を「水力」が下支えしている。地球上の淡水の2割はブラジルにある。水力発電所が600余りあり、国際エネルギー機関(IEA)によれば電力供給は08年、水力80%、火力13%、原子力3%。主要国で特異な存在だ。
 だが、立命館大学の小池洋一教授(62)=開発経済学=は「供給が不安定な上、サンパウロなど大都市までの送電距離が長く供給ロスが多い」と話す。01年には渇水で電力が不足し全土で今夏のわが国同様、25%の節電が行われた。近年も成長に供給が追いつかず停電が頻発している。
 ブラジルでは現在、リオデジャネイロ州の大西洋岸にあるアングラ原発1、2号機の運転と3号機の建設が進む。運転中の2基は不具合などでしばしば停止するため、点滅を繰り返す「ホタル」と揶揄されるが、ロバン鉱山エネルギー相(74)は地震や津波が極めて起きにくい地域にあるとして「世界で最も安全だ」と述べている。
 一方で、批判を押し切る形でベロモンテ水力発電所の着工が認可されたのと同じ日、ロバン氏は新たに建設予定だった原発4基の計画見直しも表明したのだった。
経済優先…揺れる「環境先進国」
 ヤシが生い茂る密林の水辺、ブラジル・パラ州にあるベロモンテ水力発電所の建設予定地。米映画「アバター」で知られるジェームズ・キャメロン監督(56)が昨年4月にハリウッド女優とともに訪れ、建設反対の石碑があるという場所を目指したものの、立ち入り禁止のフェンスに阻まれ、行けなかった。
 少し離れた場所に先住民族の一つ、カヤポ族が暮らす集落があった。文明社会とは一定の距離を置く彼らにとって、一帯を水の底へ沈める巨大ダムは命にかかわる重大事である。若者の一人はなまりの強いポルトガル語で「私たちはこの川の恵みで生きてきた。ダム建設は生活だけでなく、先祖が築き上げた歴史まで壊してしまう」と訴えた。
 一方、建設予定地の川べりで飲食店を営むロドリゴ・リアンタダさん(62)は新鮮なヤシジュースを振る舞いながら言った。
 「ダム建設で雇用が生まれ地域も発展する。環境保護は先進国のエゴにすぎない。人間の命よりワニの命の方が大切と言えるのか」
選択伐採から皆伐採へ
 1992年にリオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議(地球サミット)から20年を迎える来年、同じ地で「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開かれる。国立宇宙研究所の衛星画像解析によるとアマゾンではこの間、全520万平方キロのうち日本の面積に匹敵する31万平方キロの森が失われた。
 アマゾナス州マナウス郊外の国立アマゾン研究所へ日系2世のニーロ・ヒグチ博士(59)を訪ねた。2007年に学術機関「気候変動に関する政府間パネル」の一員としてゴア米元副大統領(63)とノーベル平和賞を共同受賞した。
 ヒグチ博士は「アマゾンに生い茂る樹種や生物は多様で広く分散しており、伐採後も森林は他の地域の熱帯雨林より早く再生する。伐採規模にもよるが、多少の森林劣化はあっても数十年の周期で天然更新する」としつつ、こう述べた。
 「以前は木材として売れる木を選んで切る選択的伐採が主流だったが、現在はすべて伐採してしまう。これでは天然更新ができず、生態系へ悪影響を与える」
森林破壊、懸念再び
 アマゾンの森は他に、牛の放牧地や大豆畑にするため違法に伐採されてきた。
 1990年代以降、衛星を駆使した監視システムを世界で初めて導入し、違法伐採者には実刑を科す厳しい環境犯罪法も定めた。年間の森林消失面積は2004年の2万7772平方キロをピークに減少を続け、10年は栃木県の面積に相当する6451平方キロ。JICA(国際協力機構)南米課の近藤碧さん(27)は「ブラジルが有数の環境先進国であることはあまり知られていない」と話す。
 ところが今年5月、アマゾンの土地利用を規制緩和する森林法改正案が連邦議会の下院で可決され、上院へと回されたことで森林破壊の懸念が再燃してきた。経済成長のため開発を優先する考え方が背景にある。
 地球の反対側の原発事故を受け、原発増設が見直される一方で着工されるベロモンテ水力発電所は、こうした「開発か環境か」という古くて新しい問いの中で槌音が響こうとしている。
 アマゾナス州企画開発局幹部、セルジオ・ソウザ氏(59)は「電力の安定供給は発展を続けるわが国の重要な政策課題だ。特にアマゾンのダム開発は成長維持のために欠かせない」と話し、こうも語った。
 「新興国の盟主を目指すわが国にとってアマゾンの環境保護が持つ戦略的意義は大きい。よりよい結論を導いていかねばならない」
     ◇
 第4部は「未開の地」とされてきたアマゾンの今を報告する。
 ●体験や意見をお聞かせください【あて先znews@sankei.co.jp(都道府県、年齢、性別をお書きください)

第4部(2)密林に浮かぶ工業都市 マナウス経済特区
コーヒーの海が広がるような茶褐色のアマゾン川が悠然と流れる。縦横に立体交差した道路を走る通勤バスに揺られ、ナタリア・エウザさん(24)は郊外の工業団地へ向かっていた。赤道直下に180万人が暮らすアマゾン最大の都市マナウス。密林に浮かぶ島のようにビルが建ち並び、フリーゾーンと呼ばれる経済特区として“ブラジルの工場”の役割を担う。
 米国コダックの精密機器工場で働くエウザさんは「渋滞がひどくて家を出るのが1時間早くなった。でも仕事は安定しているし、給料もいいから地元の村にいるよりずっと恵まれているわ」と笑顔を見せた。
 19世紀末に天然ゴムの一大景気にわき、その後衰退したものの、1967年に経済特区に指定された。優遇税制で企業誘致を図り、現在は日本企業37社を含む世界の200社が進出。2010年の総売上高は351億ドル(約2兆8千億円)。世界に2千以上ある経済特区の中でも5指に入る成功例といわれる。マナウス経済特区監督庁のエマヌエル・アギュアル予算計画局長(56)は言った。
 「現在の発展は日本企業の進出なくして語れない」
ブラジル中で「HONDA」のバイクが目立つ。ホンダの2輪事業の現地法人「モトホンダ・ダ・アマゾニア」は国内シェア77%。同社は1975年、マナウスへいち早く進出した。
 大西洋のアマゾン川河口から1500キロのマナウスは現在も水路による物流が主流だ。国内主要都市への製品輸送でさえ、1週間以上かかる不利な立地。進出はホンダにとって一種の賭けだった。
 ブラジルホンダ副社長で日系2世のイサオ・ミゾグチさん(51)は「一面の荒野で道もなく、工作機械を運ぶためピラミッドの建設のようにころ棒の上を転がした」と振り返る。80年代後半からはハイパーインフレに見舞われた。日本企業が軒並み撤退する中、徹底した部品の現地生産と粘り強い社員教育で乗り切った。90年代後半には経営は安定した。
 マナウス工場は年産150万台とホンダの工場として世界最大。ミゾグチさんは、貧困層の多い東北部を中心に3年間で32万台が売れた低価格バイク「ポップ100」を手でさすり、「ロバを養う金額よりオートバイの価格が安くなった時点で人々は買い始めた」と話した。
歴史が築いた信頼
 ソニーのマナウス工場は主力の薄型テレビやデジカメなど8部門を3棟で生産する。牛田肇工場長(53)は「ここまで多種類を扱う工場は他にない」と話す。一棟では総出力1695ワットと日本国内ではテストできないほど大音量のスピーカーを試験中だった。
 ブラジルは歴史的に黒人の多い東北部や欧州系が中心の南部など地域色が強い。スピーカーも東北部では爆音系が流行し、サンパウロでは「iPod」と接続できる製品が人気を集める。ソニーブラジルの筒井隆司社長(52)は「国内に6つほど国がある感覚で、地域や客層別に的を絞って売り込むのがブラジル市場の奥深さだ」と話す。
 ソニーの工場に隣接する建物は、韓国サムスン電子の工場跡だった。サムスンは昨年、2億9千万レアル(約145億円)を投資してより広い新工場への移転を決め、特区内に用地を確保した。ここでも韓国、中国企業の躍進が目立つが、アギュアル局長はこう語った。
 「韓国、中国の進出は歓迎だが、多くの部品会社を引き連れ、地場企業の育成にも粘り強く取り組んだ日本企業とは明らかに異なる。信頼は歴史の裏づけがなければ築けない」
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第4部(3)工場増えて森林破壊減った マナウス経済特区
1969年、ブラジル・アマゾンの原生林で1台のトラクターが原野を整地していた。「一寸法師が鬼に立ち向かっているようだった」。アマゾナス州の州都マナウスにあるアマゾナス日系商工会議所の会頭を務めた山岸照明さん(76)は、その光景が今もまぶたに焼きついている。
 山岸さんは東京都出身。慶応義塾大学で経営学を学び、海外で事業を興したいと移住支援団体「日本力行会」の一員として渡伯した。アマゾナス製鉄所の人事担当として赴任以来、マナウスで暮らしてきた。
 65年に制定された森林法により、森林伐採を伴う外国企業の進出には連邦政府か州政府の許可が必要だ。許可には審査があるが、67年に経済特区ができた当初は連邦と州で法の解釈が異なり、悩まされたという。
 「虫一匹も殺すな」。州政府の窓口で真顔で言われ、交渉が進まなかった経験もある。山岸さんは「江戸時代の『生類憐れみの令』みたいだが、許可に時間がかかり進出をあきらめた企業も多かった」と振り返る。
 あのときの原生林は42年後の現在、世界有数の経済特区「マナウスフリーゾーン」へと発展を遂げた。
雇用が環境を保護
 マナウス経済特区監督庁によると、特区内の製造業で働く人は2003年の6万人から08年は10万人と5年で1・6倍に増えた。一方、国立宇宙研究所によれば、アマゾナス州で1年間に失われる森林面積は同じ期間に1558平方キロから604平方キロまで減った。
 ジェトロ(日本貿易振興機構)中南米課の二宮康史課長代理(36)は「大量の雇用が生まれたことにより、周辺地域で生活のために木を切る住民が減った。『工場が建設されて環境が保護された』という一見、逆説的な状況が生まれている」と指摘する。
 ノキアの携帯電話工場で働くパウロ・ジルベルトさん(43)は6年前、マナウスから東へ400キロ離れた都市パリンチンス郊外の農地を牧場主へ売り、移住してきた。価格は1ヘクタール数百ドルだった。ジルベルトさんは「祖父の代にアマゾンへ入植し、父も自分も生活のために木を切ってきた。現在は工場勤めで生活できるようになった」と話す。
 アマゾナス州工業連盟のアントニオ・シルバ会長(63)は「貧困をなくせば森林破壊は減る。特区を発展させ生活を豊かにすることが使命だ」と語った。
「開発が票になる」
 アマゾンの森林をめぐる状況は5月24日、森林法の改正案が連邦下院で可決され、急展開を見せている。所有地の80%を手つかずのまま保全するよう定めた現行の規定は維持されたものの、これまで耕作が認められていなかった「山の尾根や斜面」の開発を認めた。また、禁じられていた河川から30メートル以内の開墾を「15メートル以内」へ緩和した。
 下院では410対63の圧倒的な賛成多数だった。ルセフ大統領は上院でも可決された場合、拒否権を発動すると公約している。鳥取環境大学の根本昌彦教授(49)=森林資源管理学=は「アグリビジネス(農業関連産業)の側は、国際的な農産物価格が高止まりする今、規制緩和し農地を増やせば簡単に米国の農業を追い越せると主張し、そうした支持者に送り出された地方出身の国会議員が大量に賛成へ回った。環境より開発が票になるという現実がある」と指摘する。
 国立宇宙研究所によると、今年3、4月の2カ月間で前年の6倍近い593平方キロの森林が失われた。東京23区に匹敵する広さだが、農業者が森林法の改正を先取りして伐採を進めているとの見方が出ている。
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第4部(4)多様性保つ「森をつくる農業」 アグロフォレストリーの先進地
10メートルはあろうかという樹木の木陰で、つややかな緑色をした葉の間にカカオの実が下がっていた。ブラジル北東部パラ州の町トメアス。世界の熱帯地域で営まれている「アグロフォレストリー(森林農業)」の先進地として知られる。
 「今年はよく熟しているから、おいしいチョコレートができる」。農場主の日系3世、セイヤ・タカキさん(43)はまだ青いカカオの実をもぎ取り、日焼けした顔をほころばせた。近くではアサイやグアバといった熱帯果実が育つ。
 森林農業は「森をつくる農業」とも呼ばれ、一つの土地にさまざまな作物を栽培し、その間に木材として売れるような木も植える農林複合経営。単一作物より病害虫や価格暴落の危険が小さく、年間を通じ収穫があるため経営も安定する。生物多様性を保てるとして環境面でも注目を集める。
 「トメアス総合農協」は昨年12月、連邦政府から地域発展貢献賞の最優秀賞に選ばれ、首都ブラジリアで当時のルラ大統領より代表者へ賞状が手渡された。組合長で日系2世のワタル・サカグチさん(51)は「長年、究極の環境農業を行ってきた」と話した。
地域発展と両立
 トメアスは1929(昭和4)年、日本人移民43家族189人が初めて入植した日本人移住地だった。交通手段は水路だけ。マラリアで多くの命が奪われた。
 戦後、コショウの生産が軌道に乗った。61年には3200トンに上り世界生産の5%をトメアスの500家族が担った。だが60年代後半からの病害と水害で壊滅した。コショウに代わる作物を探してカカオを植えた際、日陰を好むカカオのために一緒に木を植えたことから森林農業が始まった。
 現在、人口4万8千人の町に1千人の日系人が暮らす。主力はアサイなどの熱帯果実。アサイはアマゾンの川沿いに自生するヤシ科植物でポリフェノールや鉄分を豊富に含む。パラ州出身の有名サッカー選手が「故郷の父親に送ってもらって飲んでいる」と発言したことから健康飲料として人気が出た。農協は熱帯果実を冷凍ジュースへ加工し、2009年は農協の全売上高の3分の2を占める1385万レアル(約7億円)を売り上げた。米国や日本へも輸出している。
 農協の理事で鹿児島県出身の小長野道則さん(52)はブラジル人の小農へ森林農業の技術を教え、種苗や農機具を貸し出して普及に努めてきた。2月には隣国ボリビアへも出向いた。
 小長野さんは「アマゾンだけでなく、アフリカや東南アジアでも熱帯雨林の保全と地域発展の両立に貢献できると思う」と話す。
小農が農村定着
 トメアスでは近年、焼き畑により放牧地となり、その後放棄された荒れ地がアブラヤシ農園へ姿を変えている。サトウキビのようにバイオ燃料となるほか化粧品の原料になり、世界最大の鉄鉱山会社「バーレ」やブラジルを代表する化粧品メーカー「ナトゥーラ」が農園経営に参入した。ルラ前大統領の子息がかかわる農園もあるという。
 両社はCSR(企業の社会的責任)活動として森林農業を支援する。「アブラヤシの単一大規模栽培では小農が取り残される」との批判をかわす狙いがある。
 東京農工大学の山田祐彰講師(47)=農村開発=は「大規模な森林破壊によらず、生産性の高い人工林を作ることで、小農の収入を補完し、彼らが農村へ定着することに寄与している」と指摘する。
 不毛の地を穀倉地帯へ変えたセラード開発による大豆の生産など、米国流の大規模農業だけではないブラジル農業の多様性がそこにある。
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第4部(5)快走するエタノール車 日本での“迷走”尻目
ガソリンスタンドに真新しいシルバーのセダンが滑り込んできた。ブラジル・アマゾナス州マナウスの街角。口ひげをたくわえた従業員が給油口を開けると、ふたに「ガソリナ/アルコル」と併記されていた。「きょうもエタノールかい」。従業員の問いかけに運転手はうなずいた。ブラジルではありふれたやり取りだ。
 アルコルはサトウキビを原料とする燃料「バイオエタノール」を指す。ブラジルは世界一のサトウキビ生産国であり、1970年代の石油危機を機に、ガソリナと呼ばれるガソリンに代わる燃料として普及を図ってきた。エタノール100%のアルコルの他、実はガソリンにもエタノールが20〜25%混ぜられている。
 2003年には、ガソリンやエタノール100%はもちろん、エタノールをどんな割合で混ぜたガソリンでも走れる「フレックス燃料車(FFV)」が独フォルクスワーゲンにより初めて発売され人気が爆発した。10年の新車販売の86%はフレックス車が占める。
 ただ、燃費はガソリンの7割。給油した左官業、ロリバル・サントスさん(57)は「スタンドの値段表とにらめっこし、ガソリン価格の7割よりエタノールが安ければエタノールにする」と生活の知恵を語った。
事業超えた魅力
 ブラジルのサトウキビの6割が生産されるサンパウロ州。西端の町ミランテ・ド・パラナパネマへ巨大なエタノール精製工場を訪ねた。
 見渡す限りサトウキビ畑が広がり、2メートルほどの背丈の茎が青空へ向かって真っすぐに伸びる。その真ん中に近代的なプラントがそびえたっていた。こうした精製工場は国内に大小439カ所あるという。
 工場は日本の商社、双日が出資し、従業員2300人がサトウキビの栽培から製糖やエタノールの精製、搾りかすを使った発電まで一貫生産している。ビトリオ・ブレダリオル工場長(57)は「技術革新と効率化、従業員のプロ意識で生産性を高めている」と胸を張った。
 消費拡大を見込む欧米の穀物、石油メジャーなど外資の進出は相次ぎ、伊藤忠商事は穀物メジャーのブンゲと合弁会社を作り今年5月、北東部トカンチンス州で精製工場を稼働させた。
 双日ブラジルの粟屋聡副社長(47)は「原油価格の高騰が世界経済の大きなリスク要因となる現在、バイオ燃料は環境や再生可能エネルギー社会の実現に向け、ビジネスを超えた魅力がある」と話す。
混合方式で対立
 わが国でも、地球温暖化対策の一環としてエタノールを混ぜたガソリンの普及が始まっている。ただ混合率が低く平成22年の全ガソリン消費量5994万キロリットルのうちエタノールの利用は推定0・6%にすぎない。
 ガソリンへのエタノールの混ぜ方には、そのまま混ぜるブラジルや米国の「直接混合方式」と石油ガスを配合した上で混ぜる欧州の「ETBE方式」がある。ブラジルは混合率25%、米国は10%が主流。欧州も混合率を自由に上げられる直接混合へシフトしてきた。
 ところが、日本では環境省が17年から直接混合の普及を目指し混合率3%の実証実験を進める一方、石油元売り団体「石油連盟」が19年からETBEにより混合率1〜3%の商品を「バイオガソリン」と名づけ現在、全国のスタンド990カ所で販売している。
 石油連盟の広報担当者は「直接混合は車の部品を腐食させる恐れがある」としてETBEが優れていると説明する。環境省は「ETBEでは技術的に混合率を上げられない。石油連盟の既得権益や、硬直した法制度のため世界標準からかけ離れている」(地球温暖化対策課)と対立している。
 わが国でエコカーといえば電気自動車やハイブリッド車が代表格だが、地球の反対側ではきょうもサトウキビで車が快走している。
=第4部おわり
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