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【希望大国ブラジル】 産経ニュースWEB版より(第5部)
『私たちの40年!!』関連BLOGにも転載させて頂いている産経ニュースWEB版の【希望大国ブラジル】の第5部です。
今年2011年は、それなりに日本でブラジルが注目され各新聞、雑誌でも取り上げられましたが、その中で一番紙面を割いて呉れたのは、間違いなく産経新聞でしょう。年初めから3名の記者をブラジルに派遣して取材、途中大震災で一時中止もあったが年内に第6部まで上手く纏めブラジルの現在を紹介して呉れています。最終回第6部は、来年に回ってしまいますが、何とか第5部を今年中に掲載して置きたいと思います。
第5部はブラジル社会の素顔や課題を伝える。との事で日本のサッカーの底上げに貢献したブラジル選抜軍経験者の日本での活躍は、今は昔、現在は一人もいないとの事。サッカーを通じてのブラジル経済の現状を語る筆法は面白い。
写真は、下記説明が付いているリオのスラム街の写真を使用しました。
「ファベーラ」と呼ばれるスラム街。レンガ造りの家々が丘の斜面をはいのぼる=ブラジル・リオデジャネイロ(本社チャーターヘリから、早坂洋祐撮影)


第5部(1)日本へ来ないサッカー選手 経済成長で「純輸出国」に異変
ブラジル全土が動向を注視する人物がいる。それは予想外とされた利下げを行った中央銀行総裁ではなく、先月にがん克服を宣言したルセフ大統領でもない。「カナリア軍団」の愛称で親しまれ、あがめられ、ときに非難の的となるサッカー代表チームの監督である。
 今月12日、メキシコの都市トレオン。ブラジルはメキシコとの親善試合を2−1で勝利しメネゼス監督(49)は称賛を浴びた。魔術師の異名を持つロナウジーニョ(31)は4年ぶりのゴールを決めた。
 7月17日。女子W杯ドイツ大会で「なでしこジャパン」がPK戦の末に初優勝を遂げた夜、ブラジル人は失望に暮れていた。同じ時間帯に男子代表が南米選手権の準々決勝でパラグアイにPK戦の末敗れ、3連覇を待望した国民から監督への批判が巻き起こった。
 リオデジャネイロの会社員、ダニエル・カルバリョさん(23)は「若手が経験を積まなければW杯は厳しい。なでしこみたいな主将が必要だ」と話した。
 ブラジルはW杯で最多の優勝5回。全土に783のプロチームがあり1万5千人の選手が所属する。W杯で代表が戦う日は職場や学校が休みとなり路上から人影が消える。監督は常勝を義務づけられ「大統領より重要で困難」とされる。
 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)の一角、ブラジル。3年後の2014年、64年ぶりにブラジルで開かれるW杯は、16年リオ五輪とともに「先進国」への登竜門となる。国家投資は計700億ドル(5兆6千万円)超。シルバ・スポーツ相は「経済成長を反映し国力の伸びを印象づける大会になる」と述べた。
 1950年大会で建てられ「聖地」と呼ばれるリオのマラカナン競技場。20万人の収容数を7万6千人へ縮小して近代化し、決勝とリオ五輪の舞台とする予定だが、作業員の待遇改善を求めるストが相次ぎ工事は滞っている。
 インフラ整備も遅れ改修中の13空港は10空港が間に合わない。ブラジル初の高速鉄道計画は入札が3度延期され、先月末には首都ブラジリアの連邦裁判所が陸運庁へ計画の一時中止を命じた。完成はW杯どころか五輪の3年後の見通しだ。
 W杯の影で、スター選手らの動向にも異変が起きていた。
帰ってきた「超常現象」
 サンパウロ中心部のパカエンブ競技場。ブラジルを代表する古豪コリンチャンスの試合は、ピッチを挟んで声援と罵声がぶつかり合い、突き動かされるように選手たちが緑の芝生を駆け回る。観客の会社員、ブスタブ・カバルゴさん(30)は「ロナウドが帰ってきてすべてが変わった。スター選手が次々と戻ってきて、断然盛り上がるようになった」とまくし立てた。
 2008年、破壊力のあるドリブルで「超常現象」の異名を持つ元ブラジル代表、ロナウド(35)が伊ACミランからコリンチャンスへ移籍した。月収は歴代最高の180万レアル(約9千万円)。今年2月に引退したが、その後もロナウジーニョ(31)、ロベルト・カルロス(38)、デコ(34)ら屈指の選手が凱旋帰国した。
 ブラジルの市場調査会社によると、海外へ移籍する選手は02年の年間665人から増加傾向だったが、08年の1176人をピークに減少に転じ、09年は1017人。かつて選手を送り出すだけだった「純輸出国」に回帰現象が起きている。
相次ぐ「逆輸入」
 ブラジルのスター選手は「王様」ペレ(70)の時代から貧しい家庭の生まれが多かった。ロナウドもリオデジャネイロのスラム街で育った。教育も満足に受けられず、自らの足を資本に欧州など海外への道を切り開いた。チームも若手を海外へ送り込み、巨額の移籍金を得て運営できた。
 近年、経済成長に伴いサッカーの入場数やグッズの販売が伸び、放映権料は高騰した。チームの経営は潤い選手強化費は10年、前年から61%増の7900万ドル(約60億円)。同じ年に29%下がった欧州を尻目に選手を「逆輸入」し始めた。
 ジャーナリストの田崎健太さん(43)は「報酬が上がり愛国心の強い彼らが帰るようになった。欧州との報酬格差が縮まり、選手として余力のあるうちに帰国するロナウドのような例が増えた」と指摘する。
 より長く母国で活躍する選手も現れた。ペレが絶賛するサントスのネイマール(19)は、スペインのレアル・マドリードからの700万ユーロ(約7億円)の申し出を断ったという。
コロンビアへ流れて
 98年W杯仏大会で日本サッカー史上初の得点をアシストした呂比須ワグナー(42)は現在、地方リーグのパウリスタで監督を務める。呂比須監督は「強豪がとんでもない額を出すようになり地方クラブは大変だが、結果を出したい」とよどみない日本語で話した。
 サンパウロ州の田舎町で8人兄弟の末っ子に生まれ母親のお古のストッキングで作ったボールで練習した。名門サンパウロと契約後、18歳で来日し日本サッカーの底上げに貢献した。
 93年に開幕したJリーグはドゥンガ(47)ら有力選手を「大量輸入」した。94年W杯米国大会で優勝したブラジル代表には前後に来日した7人が名を連ねている。その一人、元セレッソ大阪で現在はサンパウロで代理人業を営むジルマール氏(52)は「当時のJリーグは知名度アップのため大金でスター選手を呼んだ。現在は若い選手を安く獲得するようになり、われわれが選手を送るのも容易でない。オイルマネーの中東やロシアが大金を投じている」と話す。代わってコロンビアなど周辺国の選手が来日し始めた。
 日本経済の低迷も手伝いJリーグに現在ブラジル代表経験者は1人もいない。
 呂比須監督は「ブラジル人にとって日本はもう金銭的な魅力はないかもしれない。だが日本の規律、学習能力を学ぶことは必ずプラスになる」と声を強めて語った。
     ◇
 第5部はブラジル社会の素顔や課題を伝える。
 ●体験や意見をお聞かせください【あて先znews@sankei.co.jp(都道府県、年齢、性別をお書きください)

第5部(2)「神の街」を訪ねて 悪名高きスラム、様変わり
家に家を継ぎ足した不法建築が丘を埋め尽くし、その上にそびえる「コルコバードのキリスト像」が祝福を贈るかのように街を見下ろす。ブラジル・リオデジャネイロの「ファベーラ」と呼ばれるスラム街。この街で育ったジルソン・シルバさん(32)は「あのままだったら確実に死んでいた」と胸へ手を当てた。
 13歳で強盗グループへ入った。仲間の多くは死に、自身も2回逮捕された。投獄中に恋人がわが子を産み、人生が変わった。昼間働き夜学の高校、専門学校を卒業した。現在はスラムの観光ガイドをしている。
 「この仕事が成り立つほど治安は改善した。街の素顔を世界に知ってほしい」
 ブラジルのスラムは1940年代から、経済的に貧しい東北部などの人々が都市へ流入し形作った。やがて麻薬組織に支配され無法地帯と化した。リオ州政府によると2010年、州内のスラムは1020、人口1300万人。観光地コパカバーナ海岸のすぐ裏手にさえスラムが横たわる。
 だが、14年のW杯や16年のリオ五輪を控え、州軍警察が08年から始めた「UPP」と略称される治安回復計画が成果を上げた。政府による貧困層への現金給付政策でスラムにも中間所得層が現れた。銀行やスーパーも進出し、悪名高きスラムは様変わりしている。
殺人は減少傾向
 ブラジルが抱える課題に治安がある。スラムの問題はその一部にすぎない。国連薬物犯罪事務所の統計によると、人口10万人当たりの殺人発生件数は08年、21・9件と日本の0・45件の48倍。03年の33・1件から減少傾向にあるものの、米国の5・2件、ロシアの14・1件と比べても高い。
 路上強盗も多発し、サンパウロ市西部の地区では8月末までの1カ月余りで11人が「電撃誘拐」の被害に遭った。被害者を車ごと誘拐する手口で、危害は加えず数十分の間にカードで現金を引き出させたり買い物をさせたりする。ブラジルではありふれた犯罪だ。
 防弾車の生産も世界一といわれ、防弾車改造業31社が加盟する「ブラジル防弾車協会」によれば、10年の1年間に新たに防弾装備を施した車は7332台と前年から5%伸びた。大都市圏へ集中しておりトヨタカローラが最も多いという。
KOBANが手本
 スラムの少年たちの抗争を描いた02年の映画「シティ・オブ・ゴッド」の舞台「シダージ・デ・デウス」をリオ郊外に訪ねた。
 かつて麻薬倉庫があった街角の小さなグラウンドで警察官が子供たちへサッカーを教えていた。そばに2階建ての駐屯所。マジ・ロメウ隊長(35)は「サッカーや絵を教え、暴力や麻薬へ引きずり込まれないようにしたい」と話す。
 駐屯所は、日本の交番を手本にした。ブラジルは97年から交番制度の導入を進め、支援するJICA(国際協力機構)によると8州に421カ所。警察官が住む「CHUZAISHO(駐在所)」もある。
 ブラジル法務省国家保安局のエリソン・ピタ軍警大佐(48)=日本の警視正に相当=は「80年代半ばまでの軍政時代から軍警は市民と敵対してきた。こうした状況を変えようと地域と協力する『地域警察』の哲学が生まれ、英国やカナダ、チリなどの警察制度を調査し日本のKOBANへ行き着いた」と説明する。
 スラムの治安改善へ貢献したUPPもリオ州軍警による地域警察活動であり、駐屯所は17カ所へ増えた。
 リオ在住のジャーナリスト、高橋直子さん(37)は「UPPが成果を上げる一方、軍警が麻薬組織から賄賂を受け取る汚職も表面化してきた」と指摘する。
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第5部(3)中間層拡大で「お受験」過熱 デジタルデバイド課題
扉の柵を握りしめ、子供たちは迎えを待っていた。ブラジル・サンパウロ市の私立小学校。午後5時の下校時間に扉が開くと、ルイ・ペドロゾ君(9)は往来に隙間なく止まった車の中から母親の車を見つけ出し、急いで乗り込んだ。
 母親のジュリアさん(46)は「下校時は駐車のため場所取り合戦が始まる。よい教育にはお金と手間がかかる」と話した。
 ブラジルの教育制度は、わが国の小中学校に当たる初等教育が9年間、高校に相当する中等教育が3年間の9・3制。公立は無償だが近年、私立校の人気が過熱している。中間所得層の拡大とともに大学進学熱が高まっているためだ。
 一方、公立校は増える児童・生徒に学校や教師の数が追いつかず、授業は2部制で午前か午後の4時間程度。教師は低賃金のため複数の学校をかけ持ちし教育の質が問題視されている。
 ジュリアさんは「いい大学は学費のかからない公立だが、公立大学へ入るためには授業料の高い私立高校で勉強しなければならない。わが子のためには多少の無理はやむを得ない」。
 地球の反対側の親たちと同じ思いを口にした。
就学率上昇の逆説
 65カ国・地域の15歳47万人を対象に行われ、わが国でも関心を呼ぶOECD(経済協力開発機構)の「生徒の国際学習到達度調査」。ブラジルは読解力が2000年の31位から03年37位、06年49位と下がり続け、09年は53位。科学的応用力も31位、39位、52位、53位と低下の一途をたどった。新興国として名乗りをあげたこの10年間、国際比較での学力は低下した。
 首都大学東京の野元弘幸准教授(50)=社会教育学=は「政府による貧困層への現金給付は子供を学校へ通わせることが条件のため就学率が上がった。裾野が広がった結果、相対的に学力が低下したと推測される」とし、こう続けた。
 「一方で大学にはエリート教育の伝統があり、例えば、小型ジェット機メーカーながら大型機を造れる技術力を持つエンブラエル社へ人材を輩出している」
 就学率向上政策はルラ前政権の前のカルドゾ政権時代から続けられてきた。国連開発計画の統計によると、義務教育の平均就学年数は1980年の2・6年から2010年は7・2年まで延びた。それでも169カ国中102位にすぎない。
ネット普及率3割
 「私は字が書けないが、13という数字を押すだけだから、覚えれば大丈夫」
 南部パラナ州の田舎町で暮らす主婦、オダッチ・ベナンシオさん(51)は昨年10月の総選挙で投票したときの経験を話した。13番は与党労働党を指す。
 15歳以上の識字率は10年で90%と依然高いとはいえない。選挙は電子投票が普及し、数字を入力する方式で行われる。こうしたIT(情報技術)の導入は各分野で始まっているが、人口1億9400万人のうちインターネット利用者は5863万人と全体の3割。高所得層の84%が利用する一方、国民の半数を占める中間層は42%にとどまる。
 ブロードバンド(高速大容量通信)の普及も8%にすぎず、7月までブラジルに駐在した総務省国際協力課の臼田昇課長補佐(45)は「アマゾンなど遠隔地を抱え、W杯や五輪を前に通信インフラ整備は最重要課題の一つだ」と話す。
 ブラジル政府は5月、デジタルデバイド(情報格差)解消のため通信庁に専門部局を新設した。東北部ペルナンブコ州の小さな町では、教育用の廉価版ノートパソコンを支給され、子供たちがインターネットを楽しんでいた。
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第5部(4)プレステ買いにマイアミへ 「ブラジルコスト」という課題
ミッキーとミニーがショーウインドーで満面の笑みを浮かべる。その脇に「パラ・マイアミ(マイアミ行き)」の2語。ブラジル・サンパウロの巨大ショッピングセンターにある旅行代理店を訪ねると、米フロリダ州のディズニーワールドの写真に出迎えられた。
 女性店員のレナン・ウズエレさん(23)は「海外旅行の7割はフロリダ。ディズニーと安い買い物が人気の理由です」と話す。
 ブラジルは有数の高物価国だ。ソニーのゲーム機「プレイステーション3」は日本の約2万5000円、米国の249ドル(約2万円)に対し1999レアル(約10万円)。米国でたくさん買い物すれば、内外価格差で航空運賃が浮く計算になる。
 なぜ高いのか。輸入品には高関税がかけられ工業製品税や流通サービス税など最低6種が課税される。通貨レアルは9月以降、ギリシャに端を発する欧州危機のあおりで急落しているものの、近年のレアル高傾向も物価高に拍車をかけた。
 他にも州税や連邦税、社会負担金など税金や納付金は56種。世界銀行によるとブラジルは「税処理に最も時間のかかる国」で、企業は年間2600時間もの時間を税処理に費やすとされる。日本の355時間と比べるとその差が際立つ。
富裕層はヘリ通勤
 「ブラジルコスト」という言葉がある。ブラジル東京銀行元頭取の鈴木孝憲氏(75)は「複雑で重い税金や高金利、安定しない為替、道路や港湾などインフラ整備の遅れ、高い労働コストなどのことで、国内企業の競争力をそぎ、日本など海外企業の進出を難しくしている」と説明する。
 サンパウロは世界最悪の渋滞都市としても知られ、2009年6月には渋滞距離が市全体で293キロを記録した。代わりにヘリコプターが普及し、サンパウロ市のヘリ登録台数は452台と米ニューヨークを上回り世界一。新興オフィス街では夕方のラッシュ時、高層ビルの屋上から大企業の幹部を乗せたヘリが次々と飛び立つ。高速道路で渋滞に巻き込まれていた会社員、レオナルド・パホスさん(63)は「空は天国、地上は地獄さ」と肩をすくめた。ヘリの爆音も社会問題化している。
 アマゾンのマナウスでは昨年、港湾施設で300メートルにわたり地滑りが起きて大量のコンテナがアマゾン川へ流された。ソニー・マナウス工場の牛田肇工場長(53)は「うちの液晶テレビの部品も流された。鉄道が発達していないためトラックで長距離輸送し山賊に襲われたこともある」と話す。
35年で年金受給
 東北部ペルナンブコ州の造船会社で溶接工として働くジェナリオ・ロシャさん(41)は月給1700レアル(約8万5000円)で妻(40)と3人の子供と生活している。
 「多くはないが生活費を引いた2割ほどは毎月貯金している。18歳から働いているので、あと12年で年金がもらえる」
 ブラジル労働法は労働者を「弱者」とみなし強い保護を規定している。1年働くと30日の連続有給休暇が与えられ、月給に加えて3分の1の休暇手当が出る。
 年金も、年齢でなく男性は35年、女性は30年、保険料を納めることで受給資格を得る。民間企業の場合、退職前の5年間で最も所得水準の高かった3年間を平均しその8割を、公務員は退職時の給与と同額を、生涯受給できる。手厚い社会保障は一方で企業活動と国の財政を圧迫する。
 ジェトロ(日本貿易振興機構)の二宮康史課長代理(36)は「ブラジルコストは経済成長に覆い隠されていたが、持続的な成長のためには速やかな解決が欠かせない」と指摘する。
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第5部(5)親日か親中か 中国にない「半世紀のパートナーシップ」
ブラジル娘が身につけるビキニの水着に「メード・イン・チャイナ」が急増している。ブラジル開発商工省の統計によれば、中国製の女性用水着の輸入は2010年、98万ドル(約7840万円)と2年前の3倍。輸入水着の91%を占めた。
 ビキニはブラジルのいわば「地場産業」。サンパウロのビキニ工房で働く日本人女性、藤田悠貴さん(34)は「白色が人気だが、中国製は裏地が薄くて透けてしまうとの不満を聞く」と話す。
 「ブラジルのアメ横」といわれるサンパウロの安売り街。ソニーのVAIOをもじった「VAIC」の携帯や腕時計、バッグといったコピー商品があふれ、男性店主は「みんな中国製だよ」と陽気に説明した。
 腕時計を15レアル(約750円)で買ったラウジュ・ペレイラさん(39)は「コピーするのも技術のうちなので信用している。1カ月保証もある」と話し、さっそく腕に巻いた。
 中国からの輸入は10年、255億ドル(約2兆円)と00年の10億ドル(約800億円)から10年間で25倍に増え、米国に次ぐ第2の輸入相手国となった。一方で中国はブラジルにとって鉄鉱石や大豆、原油など最大の輸出相手国でもある。
 安い中国製品は国内産業を衰退させると懸念され、サンパウロ州工業連盟は1月、「ブラジルにとって対中関係は大切だが、国内産業の観点からは歓迎できない」と訴える声明を出した。
 政府は9月、輸入車へかける工業製品税を7%から37%へ一気に30ポイント引き上げた。日本車や欧米車の多くが現地生産していることをみれば、中国車を狙い撃ちしたものといえる。ルセフ大統領は「国内市場はどの国の海賊行為にも服さない」と発言した。中国商務省は「政府による保護貿易だ」と反発している。
BRICSの雄
 リオデジャネイロの旧市街。古めかしいビルの12階の一室で男はひじ掛けいすに深く腰かけていた。在ブラジル中国商工会議所のチャールズ・タン(唐凱千)会頭(62)。サングラスを外し「いまや誰もが中国について聞いてくる」。流暢な英語だった。
 上海に近い江蘇省無錫市で生まれ、14歳で渡米して名門私立コーネル大学で学んだ。年長の同窓に後の李登輝台湾総統(88)がいたという。銀行員として渡伯しブラジル初の船舶会社を興すなど数々のビジネスを手がけた。会議所は中国外交の長老、呉学謙元副首相(故人)から勧められ、1986年に設立したといい、会員は四半世紀で800社を超えた。日本の進出企業は350社である。
 タン氏は「資源を欲する中国と、資本と雇用が必要なブラジルは見事に補い合っている。中国を恐れるのでなく活用すべきだ」。
 胡錦濤国家主席とのツーショットが飾られた机で2台のノートパソコンを操り、最後にドアノブへ手をかけてこう話した。
 「日本は中国よりはるか昔の40、50年前にブラジルへ目をつけたが、その強みを全く生かせていない。日本がブラジルで存在感を低下させている現状はお気の毒としかいいようがない」
半世紀のつき合い
 有数の親日国といわれるブラジルは中国をどう見ているのか。
 鉄鋼大手ナシオナル製鉄の鉱山事業COO(最高執行責任者)、ダニエル・サントス氏(42)は「中国企業は背後に政府がつきフェアでない。貿易相手国としては大切であり中国からの投資も歓迎するが、政府の介入は注意深く見ている」と話した。
 80年代から日伯合弁で農業開発を続けるカンポ社のエミリアノ・ボテリョ社長(63)は「中国は『製鉄所を建てる』などとリップサービスは多いが、実際には中国車をわが国で販売したり、広大な農地を取得したりする。日本とのようなパートナー関係は結べないように思う」と語った。
 上智大学の堀坂浩太郎名誉教授(67)=ブラジル政治経済=は「中国や韓国が脅威といってもブラジルは欧米の方がまだまだ存在感が大きい。中韓が突出した部分だけを見てあたふたするのはみっともない」と指摘し、こう述べた。
 「日伯には50年以上紡いできた豊かな関係がある。その時代を知るブラジル人が社会の中枢に残るうちに、重層的な関係を洗い直し新たな関係を築く努力が必要だ」
=第5部おわり
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