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「鉄道の旅」杉村士朗さんの寄稿。
ポルトアレグレに住みポルトアレグレ総領事館勤務の杉村士朗さんは、無二の旅行好きでリユックサックを担いで世界中を歩いておられます。南日伯援護協会の会誌『援協ニュース』に2度にわたって寄稿されていた「鉄道の旅」前編、後編をお借りして掲載して置きます。総領事館退職後は、好きな一人歩きを楽しむ計画だったようですが最近結婚されたとの事で思うような一人旅は難しくなったのでしょうか。これからも旅行記等を寄稿頂きたいと思います。写真はクリチーバーパラナグア間を走る山岳鉄道のものですがもう少しましな写真を探してみます。


「鉄道の旅」   杉村士朗
 私は子供の頃より、汽車に乗ったり、汽車の走るのを眺めることが好きであった。
 ヨーロッパへは何回も旅したが、汽車に乗るのが楽しみのひとつであった。ウィーンからセメリング峠を下ってヴェネチアへ、北イタリアのチラノからベルニア・アルプスを越えてスイスのサン・モリッツへ、チューリッヒからザルツブルグ経由でウィーンへとか、ハンブルグからバルト海をフェリー船で渡ってコペンハーゲンへといった国際列車の旅をした。
 日本では、新幹線に乗った。カナダのロッキー山脈越えの汽車旅もした。だが、これまでに私がした最高の汽車旅はペルーのクスコ(標高三三〇〇m)から標高四三〇〇mの峠を越えてチチカカ湖畔のプーノ(標高三八〇〇m)まで三八五キロの距離を藷時間近くかけて走るアンデス高原列車の旅であった。車輌は古く、速度は遅いのに●わがひどく、あちこちで長停車するうえ、最後には故障で車内灯が消えてしまったが、一生の思い出になるような素晴らしい汽車旅であった。
 素晴らしかった理由の一つは、戦後日本の旧式列車と同じようにエアコン設備がなく、車窓をあけられることであった。窓を開けると、アンデスの蒼空が手の届くような近くに迫り、無人の高原に輝く陽光が眩しかった。山間をつたう冷ややかな大気が心地よかった。夕方には、車内の灯りが消えてしまった。暗く静まりかえった車内から薄明りの星空がみえ、車輪の刻む音のみが響いた。その時私は、一人黙々と「生きることの歓び」を噛みしめた。
ところで六庶O歳の私は、これまで帰って来た人のいない「あの世」へ旅立つ前に、この世でしておきたい汽車旅が三つある。
一. ユーラシア大陸西端のリスボンからパリ、ベルリン、ワルシャワ経由でモスクワ入りし、モスクワからシベリア横断鉄道でユーラシア大陸東端のウラジオストックまで行く旅。
二. 南アフリカのプレトリアからジンバブエを通り、ヴィトリア滝からザンビアへ入り、タンザニアのインド洋の港町ダルエスサラームへ行く旅。
三. 上海から古えのシルクロードをたどり、天山山脈を越えてチムール帝国の首都であった「青の都」サマルカンドへ行く旅。
このような汽車旅は、時間と金と体力を要し、誰もができるわけでないが、実は誰でも手軽にできる素晴らしい汽車旅がブラジルにある。パラナ州の高原首都クリチーバ(標高約九〇〇m)から港町パラナグアまで一一〇キロを、マッタ・アトランチコと呼ばれる亜熱帯性原始林地帯を通って走る鉄道である。廃線となった国有(連邦)鉄道を民間の観光開発会社が運営権を譲り受けて再開されたもので、「リトリーナ」(ジーゼル自動力列車)と「トレン」(ジーゼル機関車に索引された列車)の2種類の列車がある。「リトリーナ」はエアコン、軽飲食、サービス係員付で高級好みに人向けだが、汽車旅を楽しみたいのなら、間違ってもこの列車に乗ってはならない。朝八時発、昼前パラナグア着の車内サービス無しの「トレン」に乗り、窓を開けよう。そうすれば、車窓外に繁茂する緑豊かな亜熱帯性植物を手にとるように眺め、生命の息づく大気の匂いを感ずることであろう。
 私にとって、自然に抱かれ、自然と一体となる汽車旅ほど豪華な汽車旅はない。



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