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沢田 啓明さんのサッカーコラム復活!!(6)
沢田さんのサッカーコラムは、何時も時の動き(サッカー時評)を捉えて話題提供をしておられますが、ピッチで心臓発作を起し亡くなったセルジーニョの出来事は旅先のカシアスのホテルでテレビを見ていただけにショックでした。心臓肥大で通常の3倍の大きさまでなっていたとか。年末にはシュッテイラを壁に掛けると約束していた矢先の事故とも云えぬ事故で未必の故意にあたる予測し得た事故死(本人がそれを強く望んでいたとか)スポーツ選手の健康管理の難しさを露呈したようですね。
11月7日のインテル3-0コリンチアンスの試合をホームのベイラリオに観戦に行きました。ブラジル選手権の決勝で同じ場所で同じコリンチアンスと当り勝ったときほどの感激は感じられませんでしたが(年を取り感激が薄れて来ている?)久し振りに長女と次女の二人が同行して呉れ、日本ブラジル交流協会の研修生の伊藤 潔君、当地カトリック大学の交換留学生、上智大学ポルトガル語学科の滝谷 茜さんの5人での応援が効を奏したと喜ぶべきでしょう。今回の写真は、観戦中の4人を使用しました。途中ラジオ・ガウショーが試合のコメントのマイクを突き出したので日本語で『今日のインテルは、中々良いよ』と始めたらきょとんとしてそのままラヂオに日本語の感想が流れたと聞いていた友人から冷かされました。サッカーは矢張りピッチで見るのが最高との鉄則を確認した一日でした。



<セルジーニョの死を無駄にするな!> 10月31日の「ブラジル・サイト」掲載分
 10月26日にサンパウロのモルンビー・スタジアムで行なわれたブラジル全国選手権のサンパウロ対サンカエターノの試合中に、サンカエターノのDFセルジーニョが死亡した。後半14分、サンパウロがカウンター気味の攻撃を仕掛け、これに応対するためセルジーニョは自陣に駆け戻ったのだが、ペナルティエリアの中で突然、崩れ落ちるように倒れた。サンカエターノのGKシルビオ・ルイスが異変に気づき、大きなジェスチャーで助けを求めた。サンカエターノのチームドクターとマッサージ師がすぐに駆けつけて人工呼吸を施したり心臓を強くマッサージしたりといった応急措置を施した後、セルジーニョはピッチの反対側で待機していた救急車で病院に搬送された。
 試合は即座に中断された。サンカエターノの選手たちが悲嘆に暮れて涙を流し、それをサンパウロの選手たちが慰める。モルンビー・スタジアムの電光掲示板には「セルジーニョ、我々は君の無事を祈る」というメッセージが現われ、スタンドのファンがセルジーニョの名前を叫び続けた。ほどなく、ピッチの中央に審判団、両チームの選手、コーチたちが円陣を作り、全員が肩を組んでセルジーニョの無事を神に祈った。しかし、それから約1時間後、病院はセルジーニョの死を発表した。直接の死因は心臓発作だった。
 セルジーニョは、1999年からサンカエターノでレギュラーとして活躍していたDFだ。空中戦に強く、ハードに守るがフェアな好選手だった。2000年と2001年のブラジル全国選手権で準優勝し、2002年のリベルタドーレス杯でも惜しくも準優勝に終わったが、今年のサンパウロ州選手権でついに優勝した。この試合の8日前に30歳の
誕生日を迎えたばかりで、妻と4歳の息子がいた。
 昨年の6月、フランスで行なわれたコンフェデレーションズ・カップの試合中にカメルーンのフォエが死亡し、さらに今年の1月にポルトガルでベンフィカのフェヘール(ハンガリー人)が試合中に亡くなったのは記憶に新しい。サッカーは、またしても犠牲者を生んでしまった。
 試合の翌日のスポーツ紙「ランセ!」は一面を真っ黒に塗りつぶし、中央にセルジーニョが両手を掲げている小さな写真を掲載してその死を悼んだ。
 セルジーニョの死は、ブラジルサッカー界に大きな衝撃を与えている。
 サンカエターノは近年、常に好成績をあげている新興クラブで、健全に運営されていることで定評があった。しかし、今年の2月にサンカエターノが全選手の精密検査を行なった際、セルジーニョに心臓の異常(不整脈と心臓肥大)が発見されたらしいことが報道されている。その異常の度合いがどのくらいだったかについて現時点では正確な情報が不足しているのだが、「ランセ!」は「セルジーニョの心臓は通常の3倍にまで肥大しており、選手生活を続けることは命の危険を伴うものだった」と報じている。
 このような悲劇を繰り返さないため、現在、ブラジルでは定期的に選手の精密検査を行なうことをクラブに義務付けること、過密日程を見直すこと、試合中、ピッチの脇に電動の心臓マッサージを設置することを義務付けることなどが検討されている。
 サッカーは本当に素晴らしいスポーツであり、そのことは世界中の人々がこれだけ夢中になっていることでも明らかだろう。しかし、サッカーはもうこれ以上、このような悲劇を繰り返してはならない。全世界のサッカー関係者が一丸となって、プロ選手はもちろんのこと、育成年代や女子も含めたすべてのサッカー選手の健康管理を徹底するべきだと思う。
(「ブラジル・サイト」 www.brazil.ne.jp/ より)">http://www.brazil.ne.jp/ より)

<トラウマとの闘い> 11月6日「ブラジル・サイト」掲載分
 サンカエターノの選手たちが、大きな垂れ幕を掲げてピッチに入ってくる。「この世で起きることはすべて、一過性のものにすぎない。しかし、神のご意思によって起きたことは永遠の命を得る。ありとう、セルジーニョ」
 スタンドのファンから大きな拍手が起こった。 そして、選手の交代が告げられる。「サンカエターノの背番号5セルジーニョに代わって、背番号13ジョナス」
 続いて1分間の黙祷。スタンドのサンカエターノのファン、さらにはサンパウロのファンからも大きなセルジーニョ・コールが起きる。そして、試合が再開された。
 11月3日夜、サンパウロのモルンビー・スタジアム。10月26日に行なわれたブラジル全国選手権のサンパウロ対サンカエターノの試合の後半14分にサンカエターノのDFセルジーニョが心臓発作で倒れ、死亡した。試合はその時点で中断されていたので、この日、試合の残り31分間が行なわれたのである。
 試合が中断された時点でのスコアは、0対0だった。両チームとも首位サントスを勝ち点7差で追っており、優勝するためにはぜひとも勝ち点3がほしい状況だ。しかし、サンカエターノの選手たちは、チームメートを失ったショックからどこまで立ち直っている
のだろうか。シャムスカ監督は選手たちに「セルジーニョのために優勝しよう。俺たちが優勝したら、彼も優勝メンバーなんだから」と話したというが、実際のところ、どうなのだろう。そんなことを考えながら、僕はピッチを見つめた。
 やはり、サンカエターノの選手たちの動きがぎこちない。サンカエターノは堅守速攻のチームで、いつもなら相手選手に激しく体を寄せてボールを奪いにゆくのだが、この日は全くチェックが甘い。開始2分(公式には後半16分)、サンパウロのMFダニーロがゴール前でサンカエターノの選手を次々とかわし、ゴール左隅にグラウンダーのシュートを決めてあっさり先制。さらに、その1分後にもサンパウロのジュニオールがミドルシュートを決めた。そして、その4分後には右サイドからのハイクロスをサンカエターノのGKシルビオ・ルイスが痛恨のキャッチミス。これをサンパウロのグラフィッチが押し込んで3点目をあげた。7分間で3点。全く予想外の展開である。
 しかし、サンカエターノの選手たちはこれでようやく目が覚めたようだった。その後は攻勢に転じ、PK2本を決めて1点差まで追いすがる。しかし、サンパウロは後半33分にFKを直接決め、4対2で快勝した。
 非常に特殊な状況における、非常に特殊な内容の試合。勝負を決めた最大の要因がサンカエターノの選手の心理的なダメージにあったのは明らかだった。
 それでも試合後、サンカエターノのアンデルソン・リマは眉を吊り上げてこう言った。「俺たちはプロなんだ。誰にも同情されたくはない。今日はこういう試合になってしまったけれど、優勝の可能性がなくなったわけではない。彼(セルジーニョ)のためにも、最後まで全力を尽くす」
 その通り、それでこそプロだ、と思う。今後のサンカエターノの戦いぶりに注目したい。
(「ブラジル・サイト」 www.brazil.ne.jp/ より)">http://www.brazil.ne.jp/ より)

<エクアドルに無様な敗戦>  11月19日掲載分です。
 11月17日、エクアドルの首都キトーで2006年ワールドカップ南米予選第11節のエクアドル対ブラジル戦が行なわれた。
 ブラジルのフォーメーションは4−4−2。中盤は例によってダイヤモンド型で、底にレナート、右にジュニーニョ・ペルナンブカーノ、左にクレベルソンでトップ下がカカ。ツートップがロナウドとロナウジーニョだ。
 エクアドルは数年前まではボリビア、ベネズエラと並んで南米の最弱クラスの国だったのだが、近年、着実に力を付けてきている。特に、標高2800メートルを超える高地にあるキトーでのホームゲームでは圧倒的に強く、今回の予選でもこの試合までアウェーでは5戦全敗なのにホームでは4勝1分だった。
 高地では、酸素が少ないからどうしても走るスピードが落ちるし、運動量も激減する。また、気圧が低いせいでボールのスピードが上がるので、平地とはずいぶん勝手が違う。
 はたして、前半からブラジル選手の動きが鈍い。特にロナウドとカカに精彩がなく、ボールがカカに渡ってもすぐに取られてしまうし、ロナウドも運動量が極端に少ないからDFのマークが外せず、いい形でボールを受けることができない。
 前半16分、エクアドルは右からのクロスをFWデルガードがフリーでヘディング。あわやエクアドルの先取点かと思われたが、ブラジルのGKジッダが辛うじて弾き出した。
 その後、ブラジルはカカの惜しいシュートなどで反撃したが、まるでマスターズの試合を見ているかのように動きが鈍い。
 後半に入ると、カカは徐々に本来の積極的なプレーを見せるようになったが、ロナウドは相変わらず動かない(動けない)。ロナウドの体調が悪いのは明らかで、僕はアドリアーノを入れるべきだと思ったが、パレイラ監督は動かなかった(あるいは、彼も酸素不足で頭が働かなかったのかもしれない)。
 後半の途中からはエクアドルの攻勢が続き、後半31分、メンデスのミドルシュートがブラジルのDFフアンの足に当たってコースを変えてゴールに飛び込んでエクアドルが先制する。その5分後、ようやくパレイラ監督はカカに代えてアドリアーノを入れたが、ロスタイムを入れてもわずか11分間ではあまりにも短い。ブラジルはほとんど反撃できないまま、あっさり敗れてしまった。
 高地では、コンディションが悪かったり馬力がない選手は全く頼りにならない。アドリアーノ、ジュリオ・バチスタ、マイコンといった生きのいい若手をベテランに代えて起用するべきではなかったか。パレイラ監督の慎重さが裏目に出たと思う。
 ブラジルにとってはこれが今回の南米予選での初黒星で、通算成績は5勝5分1敗の勝ち点20。ベネズエラを破ったアルゼンチンに追い抜かれ、勝ち点2差の2位に転落してしまった。また、3位パラグアイから最下位ペルーまでの勝ち点の差はわずか6しかないという大混戦。参加10ヶ国のすべてにまだワールドカップ出場の可能性がある。
 ブラジルは前節、ホームでコロンビアと引き分け、今度はアウェーとはいえエクアドルに敗れて自ら首位を明け渡した格好だ。こんな無様な試合を続けていると、前回の予選のように最後の最後までハラハラさせられることになりかねない。世界チャンピオンなのだから、もっとしっかりしてほしいものだ(「格下」に苦しむのは、日本や韓国や中国だけではない)。
(「ブラジル・サイト」 www.brazil.ne.jp/ より)">http://www.brazil.ne.jp/ より)

<ロビーニョ母誘拐事件の早期解決を願う> 11月30日の「ブラジル・サイト」掲載分
 サントス所属でブラジル代表のFWロビーニョ(20)の母マリーナさん(43)が11月6日の夜に誘拐され、事件発生後20日以上たったというのにまだ発見されていない。
 事件当時、マリーナさんはサントスの郊外にある親戚の家で親戚の人たちと一緒にシュラスコ(ブラジル風焼肉)パーティーの準備をしていた。突然、武装した2人の男が隣の家の塀を乗り越えて侵入し、その場にいた人たちをトイレに閉じ込めると、マリーナさんだけを車で連れ去った。ロビーニョはブラジル全国選手権のアウェーゲームのため遠征中だったが、事件を聞いて急遽チームから離れ、クラブがチャーターした飛行機でサントスに戻った。
 事件発生後4日目の9日、ロビーニョはサントスのクラブハウスで記者会見を行ない、ファンの励ましに対して感謝の言葉を述べるとともに、メディアに対しては「自分と家族は非常につらい心理状態にあるので、なるべくそっとしておいてほしい」と訴えた。そして、その2日後、警察は「ロビーニョの家族からの要請により、警察はこの事件の捜査から手を引く。犯人との交渉はロビーニョの家族が行なう」と発表した。以来、事件について警察もロビーニョ側も何も発表していないのだが、これといった進展はないようだ。
 ロビーニョは、小柄で痩せた黒人少年だ。驚異的なスピードとテクニックの持ち主で、ドリブルがめちゃくちゃにうまいことから「レイ・デ・ドリブレ(ドリブル・キング)」と呼ばれている。シュートが下手で課題は決定力だったのだが、最近はシュートも急速に上達しており、ブラジル全国選手権で21得点をあげて得点王ランキングの2位につけていた。レアル・マドリー、ベンフィカ、チェルシー、PSVといったヨーロッパのビッグクラブからオファーが殺到しており、いずれヨーロッパのクラブに大金で買われてゆくのは確実で、「彼がブラジルにいる間は、できるだけ生でプレーを見よう」と思っていた矢先の出来事だった。
 事件が起きてから、ロビーニョはサントスの練習には参加しているものの試合にはずっと欠場している。ふだんは笑顔を絶やさない明るい選手なのだが、さすがに悲痛な表情だ。
 ヨーロッパへの移籍について、彼の代理人は「誘拐事件が解決するまで交渉は凍結する」と言明している。ただ、「誘拐犯は、ロビーニョの移籍が決まってロビーニョの懐にいくら入るのかがわかってから身代金を要求するつもりだろう」という見方があり、仮にそうであれば移籍が決まるまで母親は解放されないことになって、「移籍」と「解放」のいたちごっこというおかしなことになる。
 ブラジルの治安はあまりよくないが、誘拐事件が長期化するケースはそれほど多くない。今回の誘拐も怨恨ではなくて金目当てだろうから、どうして早く金を要求して人質を解放しないのか不思議だ。ひょっとしたら、犯人が莫大な金額を要求していて、ロビーニョ側が値引き交渉をしているのかもしれない。
 ブラジル全国選手権は残り3試合となり、首位がアトレチコ・パラナエンセでサントスが勝ち点2の差で2位。これをサンパウロとサンカエターノが追っている状況だ。早く事件が解決してロビーニョがピッチに復帰し、ブラジル全国選手権の終盤戦を盛り上げる活躍をしてほしいものだ。
(「ブラジル・サイト」 www.brazil.ne.jp/ より)">http://www.brazil.ne.jp/ より)

<MFジャジソンの活躍でアトレチコ・パラナエンセが優勝に近づく!> 12月7日「ブラジル・サイト」に掲載分
 サッカー専門誌の依頼で(というか、実際には僕の提案を受けてもらった格好で)、ブラジル南部のパラナ州クリチーバに行ってアトレチコ・パラナエンセのMFジャジソンをインタビューしてきた。
 余談だが、クリチーバは人口200万人ほどのグッドサイズ。ブラジルにしては町並みがきれいで、しかも(これは全くの私見だが)美人が多いので、僕が結構気に入っている街だ。
 ジャジソンは21歳。身長168センチと小柄だが基本技術が非常に高くて抜群のパスセンスを持ち、しかも得点力も備えた将来性豊かなMFだ。クラブのトレーニング・センターで練習後に話を聞いたのだが、「シャイで大人しい」という評判の割には朗らか。ガールフレンドについて聞いたところ、「実はこの子が僕の彼女なんだ」と言いながらクラブの広報担当の若い女性の肩に手を回してみせる(もちろん冗談だ)。こういうところは、いくら「シャイで大人しい」といってもやはりブラジル人だ。
 インタビューの翌日の12月5日、アトレチコ・パラナエンセの本拠地「アレーナ・ダ・バイシャーダ」でブラジル全国選手権第44節のアトレチコ対サンカエターノの試合を観戦した。大会はこの試合を含めて残り3試合で、優勝のチャンスがあるのは首位アトレチコ、2位サントス、3位サンパウロ、4位サンカエターノの4チーム。サンカエターノは優勝の望みを残すためには勝つしかないが、アトレチコにとっても通算2度目の優勝を狙うためには絶対に負けられない試合だ。
 この両チームは「堅守速攻」というよく似た特徴を持っており、特にサンカエターノはアウェーゲームで強いことで定評がある。案の定、前半、サンカエターノが少ないチャンスをものにして先制し、前半はサンカエターノの1点リードで終了する。
 サントスとサンパウロも同時刻に試合をしており、前半を終えた時点で両方とも大量リードを奪っていて、どうやら勝ちそうだ。
 前半は、完全にサンカエターノのプラン通りの試合。スタジアムの雰囲気もどこか重苦しい。僕は、「アトレチコにとっては非常に厳しい状況になったな」と思っていた。
 ところが、後半、スタンドの大声援に後押しされてアトレチコが猛攻を仕掛ける。18分に同点に追いつくと、その直後にジャジソンが右サイドからゴール左下隅に逆転のゴール。さらに、ジャジソンがやはり右から追加点を奪い、その後サンカエターノも1点を返して追いすがったがアトレチコは2点を追加して5対2。堅守で鳴るサンカエターノを粉砕してしまった。
 この逆転勝利で、アトレチコは優勝に向かって大きく前進した。スタンドのファンは大喜びで、「ビ・カンペオン!(2回目の優勝だ!)」のコールを繰り返し、まるでもう優勝したような騒ぎだった。
 僕は別にアトレチコのファンではないが、自分が気に入ってインタビューしたばかりの選手が活躍するのを見るのはやはり嬉しいものだ。また、ゴールを決めてファンの喝采を浴びている姿を見ると、うらやましくて仕方がない。
 ブラジル全国選手権は、残り2試合。サントスの天才ドリブラー、ロビーニョが依然として欠場しているのは残念だが、最終節まで大いに盛り上がりそうだ。
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<ブラジル王者はサントスかアトレチコ・パラナエンセか> 12月14日掲載分
 12月7日付けのサンパウロの日刊紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」に、「ブラジル全国選手権の優勝を左右するのはリオのクラブ」という少々うがった内容の記事が掲載されていた。
 近年、リオ州のクラブは放漫経営のため財政が悪化しており、優秀な監督や選手をごっそり他州のクラブに取られてどこも戦力低下が著しい。優勝争いはおろか、1部残留に汲々としている有様だ。しかし、第44節を終えた時点で首位に立っていたアトレチコ・パラナエンセ(以下、アトレチコPRと記す)は残る2試合がいずれもリオのクラブとの対戦で、2位サントス、3位サンパウロもリオのクラブとの対戦が1試合ずつある。従って、リオのクラブの戦い方いかんが大会の優勝争いを大きく左右する、という内容である。しかし、正直なところ、僕は「リオのクラブと上位クラブとでは大きな実力差があるから、リオのクラブに1部残留という切実な目標があるといっても上位との対戦ではまず勝てないだろう」と考えていた。
 ところが、その予想が見事に外れる。12日に行なわれた第45節でアトレチコPRはバスコダガマに0対1で敗れ、サントスが難敵サンカエターノに3対0で勝ったことから、アトレチコPRに代わってサントスが首位に踊り出た(アトレチコPRとの勝ち点差は1)。また、サンパウロはホームでフラメンゴと引き分けてしまい、優勝争いから脱落した。「フォーリャ」紙の記事の通り、リオのクラブが優勝争いに決定的な影響を与えたのである。
 この節、僕はサンカエターノ対サントスの試合を見たのだが、立ち上がりはほぼ互角の内容だったもののサントスが相手DFのミスに乗じて先制し、後半にも加点して快勝した。試合はサンカエターノの本拠地で行なわれたが、スタンドは7割方サンチスタ(サントス・ファン)で埋まっていた。サンチスタたちは目で試合を追いながら耳はラジオのバスコダガマ対アトレチコPRの試合の経過に集中しており、バスコダガマが先制したときには一斉に飛び上がって狂喜乱舞した。この騒ぎを見て、ピッチにいたサントスの選手たちも何が起きたのかを瞬時に理解したはずだ。
 最終節はすべての試合が19日午後4時から一斉に行なわれ、サントスはホームでバスコダガマと、アトレチコPRもホームでボタフォゴと対戦する(対戦相手はいずれもリオのクラブだ)。
 自力優勝の目があるサントスが当然有利だが、引き分けでは優勝を逃す可能性があるから、やはり勝たなくてはならない。前半の早い時間帯に先制できればいいが、ホームゲームとはいえ(あるいはホームゲームだからこそ)、リードするまでは相当なプレッシャーがかかるはずだ。一方、アトレチコPRは早く点を取ってサントスにプレッシャーをかけたいところ(途中経過は、当然、サントスの選手たちにも伝わる)。ただし、対戦相手のボタフォゴは2部降格の危機にあり、この試合に勝たなくては自力で1部残留を決められないことから、死に物狂いでぶつかってくるはずだ。
 サッカーでは、何が起こるかわからない。サントスの引き分けもありうるし、かといってアトレチコPRが確実に勝てるという保証もない。また、優勝争い以外にも1部残留争いという「もう一つの戦い」がある。
 すべての試合が終わって優勝争いと1部残留争いに決着がつくまで、ブラジル全土のサッカーファンのハラハラ、ドキドキが続くにちがいない。
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