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ブラジルで損せぬ法  連載 204/205 9月号/10月号  山 下 晃 明
山下さんのブラジルで損せぬ法 今回は、連載 204/205 9月号/10月号を掲載します。ブラジルで損せぬ8つの秘訣は、正にブラジルで損せぬ法の究極版です。「計画赤字経営」、「税金支払い総計が売上の何%」、「ドーノの眼」、通貨は7年で半減する、マーケット・シェヤー10%以上を目標とする、外部から資本参加や合弁の増資のときは動きを外貨で見よ、駐在のTOPの任期2年は短かすぎる、ブラジルの時代の波に乗ること、今なれば例えば農業関連の輸出かとのブラジルで経営に携わる者に取っては、鉄則として納得は行くが日常忘れがちな8つの秘訣です。是非実践してブラジルで損せぬ法を学びましょう。
10月号では、一旅行で3つのハリケーンの遭遇との実体験から世界の異常気象に付いての興味深いコメント山下節が冴えます。【マスコミが首相の涙に注目したコロニアは歓迎の見せ場を首相と皇族の訪伯を取り違えたむきもあるのではと感じた。】と辛辣。
写真はリオで食事を共にした時に撮らせて貰ったものです。


ブラジルで損せぬ法  連載 204 9月号  山 下 晃 明

ブラジルで損せぬ8つの秘訣

1)事業が赤字か黒字かを見極めて、赤字のときは、あたかも経営者が変ったごときの「計画赤字経営」で「自分の城(自社のCNPJ)を守る。
2)自分の会社は「税金支払い総計が売上の何%」払う事業かを知って、為替か税金か金利に変化が起きたときは、それで自分の事業がどう変るかを見極める。例えばサービス業なれば17%程度、輸入卸商なれば44%-60%程度、工業の一次生産工業は、やはり44%-60%程度の税金を払う。自分の会社の対売上税金率を頭に入れておくと、例えば50%のときは売値の半分は税金と数的に理解しやすくなる。
3)時々「ドーノの眼」で、決算書とは無関係に、資本金と準備金を「外貨」に換算して見るくせをつける。純資産の時価はどれくらいかを「外貨」で見る。「ドーノの目」とは、「オレが出した100万ドルは今いくらになっておるか」という見方である。
4)通貨は7年で半減すると思え。従って資本金を全額運転資本にしないで、インフレや為替の変動に強いものに分散投資しておくこと。仮にインフレが年率10%として、複利計算をすると、およそ7年ごとに通貨の価値が「半減」する。
5)マーケット・シェヤー10%以上を目標とする。政府の政策決定時に軽視されないため。
6)外部から資本参加や合弁の増資のときは動きを外貨で見よ。為替で大きな損をする。
7)駐在のTOPの任期2年は短かすぎる。少なくとも5,6年のサイクルが望ましい。中南米の他の国と掛け持ちにしては如何。能力的にはまず、すばしこくて、決断が早く、勝負運が強くなくては勤まらない。
8)ブラジルの時代の波に乗ること、今なれば例えば農業関連の輸出か。
 「今日は「ブラジルで損せぬ法」という大変、生意気なテーマで、今まで会議所ではタブー視されていた「TOPの心構え」のお話しをいたします。 FGVの統計によると、一年前と比較して、輸出企業や、農産物関連の大企業の業績はかなり好転しています。EXAME誌の昨年のブラジル500社では売りの伸び率で日本がTOPになった。今月は小泉首相もお越しになるようですし、また、来年には、ルーラ大統領の訪日も実現しそうで、日本・ブラジルの新ブームが起きることを期待します。
 アテネ・オリンピックの金メダルは、日本は大変良い成績です。ブラジルもバレーで金、柔道で銅2つメダルを取りましたが、柔道とバレーが強いのは、間違いなく、日本の貢献です。逆に日本のサッカーが強くなったのはブラジルの貢献でしょう。
 ブラジルへの進出企業オリンピックでは 日本はまだ貢献度も低いようですが、ここらで少し頑張って、ブラジル人が、会議所に日系企業の儲かる秘訣を聞きに来るように、しようではありませんか。」と商工会議所のコンサルタント部会で講演した。以下その要約。

 日系企業の状況

 30年前にさかのぼって見て、生き残っている地場の企業が数えるほどしかなく、進出企業でも撤退したところが多く、現存する企業も何度も危機に瀕し、本社の援助で生き延びたところが多いのが実情。過去の大成功の実例が少ないことが、現在日本からの新規投資が伸びない原因であろう。
 90年のコーロール・ショックと94年のレアル・ショックに対応できないで、多くの企業が撤退した。そのとき生き残れた企業でレアル・プランになってから99年1月の為替ショックに対応できなかったところも出ている。ブラジルにおける失敗の原因は、今まで殆ど分析もされず、公表もされない。

巧妙な赤字メカニズム

 もしあなたの息子さんが「事業をしたいからオヤジ金を出してくれ、1000万円出してくれ」、数年したらまたやってきまして、
「あの金をすってしまったからもう一度金を出してくれ」と言ってきたらどうされますか。「今の仕事をスグ止めて帰って来い!アホ!」となりますね。ところがブラジルでは それが繰り返されているのです。もっとも、進出企業の場合は、親会社が再投資するにしても、1000万円をすった長男は懲戒免職で勘当していますから、こんどは、次男坊に2000万持たせてくるというような形態になるのです。
原因は極めて巧妙な「インフレ」と「税金」と「金利」のからみあった価格押し上げの赤字メカニズムがあり、損が級数的に増えること。ブラジルコストが問題といわれているが、知らぬ間にはまり込むメカニズムの方が問題。
 過去に撤退した企業の殆どは、ブラジルのこの「赤字メカニズム」に負けたのだと指摘する。知らぬ間に、インフレと税金システムに負けて、資本金が無くなってしまう状況に、これは毎年きちんと経理監査もして、利益も配当もしていても起きる。
 メカニズムの要素:為替
 鳴り物入りでスタートしたレアル・プランを信用して、ブラジルに100万ドル投資した企業があるとする。当時の為替を1対0.85として、85万レアル。現在の為替が対ドル3.00とすると、単純計算でこの85万レアルは28万ドル程になっている。インフレ以上に価値の上がる商品か不動産を取得した人を除き資本は1/4に目減りしている。
 これが仮にもう一回1/3規模の切下げでも起こると、9万ドルになり、本社の重役会に「資本金をすった、再投資をお願いする」と嘆願書を提出することになる。
 メカニスムの要素:税金
 ブラジルの税金の恐さは、売上の頭から取られる「間接税」と「基金とか変な名前の税」が大変多いことと其の税率が異常に高いことである。所得税など問題にならないほど間接税の比重が高い。例えば「売上の50%を税金に払っている企業」の例で、人件費か材料などが100値上がりしたとする。値上げしても、半分は税金に持っていかれるから、100ではなく200値上げをしないと元はとれない。
 ある5%の新税が出たとする、ブラジルではこの税率を値上げしても大赤字になる。新税見合いの値上げをした瞬間に、他の税金ISSもICMSもIPIもCPMFも納税額が上がる。推定利益決算の会社の場合は、所得税4.8%とCS 2.88%なども増額になる。
 さきほどの「売上の50%が税金」の企業の例で、売値1000円のうち、実は50%は税金だから、この1000円は、元値500円を0.5で割った1000円ということになる。
 この50%の税金に5%新税が加算されるのだから、税金合計は55%で、元値500円を保つには、今度は0.50でなく0.45で割り 1111.11 にする必要がある。ということは税金が5%上がったのを11.11%値上げしないと元が取れないことになる。
 問題は これだけでは終わらない。すべての企業がこの増税分値上げすると当然インフレになる。インフレになると金利率はインフレの分加算される。金利率が上がると、またこのすべての納税額が上がるという悪循環が止まらなくなる。
 メカニズム要素:金利
 ブラジルの公定金利率は現在世界1位か2位と思う。ブラジル向けの金利には、ご存知のように、国際金融機関のスプレッドなど危険率を既に含んでいる。さらに中銀が予想インフレ率を上乗せして、率を修正する。これほどの経済規模で、世界で唯一、金利率にインフレ率を加算する国であろう。
 現在、例えば日本やアメリカの金利は、インフレを勘案するとマイナス金利の時代であるから、完全に時代に逆行する政策で、預金者と銀行を過保護していることになる。インフレの時の物価は、インフレ分すでに上昇しているから、それに定率をかけると銀行の金利収入の額でみると、過去インフレ分は増収していることになる。
 それに未来インフレを加算の金利率を適用すると、金利負担者はインフレ分を過去と未来と二重に払うことになる。卸業がサイト付きで売ると、支払い金利額の倍の値上げをしないと、金利も税金も払えぬことになる。いかなる業界でも、5%の純益を上げるのは極めて大変だが、現状は割引金利率が月に2.5%は当たり前で、60日のサイトで売れば、儲けの5%がふっとび、90日のサイトをつければ7.5%で儲け以上の負担になるから経営に著しい影響を与える。
 メカニズムの要素:インフレ
 インフレは前述要素の相乗効果で昂進するが、級数効果になって、インフレが金利率も税金納税額もはねあげる悪循環となる。
最後に、どういう業種がブラジル向きかというと、ブラジルはなんといっても農業国だから、農業関連とその輸出である。
商業の場合は日々決済、日々決算の水商売的業種が向いている。工業の場合は、税率が低いか、中央政府や地方政府のインセンチブのある事業はブラジルが希望している事業といえる。
 ブラジルの波に乗る必要があるが、政府の考えも変化するので、常に政府の本音を知るために、複数の情報源も必要だと思う。それに逆らう事業の場合は、残念ながら、今日よりは明日に、それも突然 条件が悪化することがあると理解すべきだ。


ブラジルで損せぬ法  連載 205 10月号    山 下 晃 明
 世紀の異常気象 オンパレード

今年の日本は台風の当たり年、8回上陸は記録のようだ。それも本土縦断型で、同じ台風が九州と北海道に2回も上陸するなどめずらしいコースが多い。
カリブのハリケーンも今年は8月から4つ連続フロリダ横断は1851年以来とのことだ。
それも風速260km/hの猛烈暴風雨ハリケーン。共通していることはいずれも自転車並のスピードで、進路予想がまったく当たらないのろのろハリケーンである。
陰陽学の飯田先生の予測では、8月に歴史の「土用」に入り、時間の流れに亀裂のようなものが出来て、自然界、人心、諸事、諸問題にこれから30年の革新の兆しが噴出するというのだが、飯田先生の予測ピタリである。
報道されタニュースから、日本の猛暑で連続真夏日記録、浅間山噴火、紀伊半島、東海道沖でマグニチュード7クラスの双子型地震、ロシア旅客機連続爆破、南部では武装勢力が学校占拠し強制突入で死者不明600人、めずらしくアルゼンチンで地震マグニチュード6.5、石油価格高騰、イラク武装勢力紛争の激化などがあるが、世界的にも異常気象として注目される現象が急増した。
陰陽学の8月とは8月7日から9月6日であるが、この間の異常気象例を気象庁の全球異常気象監視速報から抜粋列記してみた。
インド西部の異常多雨:平年の4倍、ヨーロッパ北部・グリーンランドの異常高温:平年の8度高、ポルトガルの異常多雨:平年の20倍、米国南東部の異常低温:平年の4度低、キューバの異常干ばつ:過去40年で最悪、四国の異常大雨:398mm/日、中国華中の異常多雨:台風13号上陸で降雨量平年の7倍164名死亡し被災者1300万人1956以降最大の台風、中国北東部の異常低温:平年の4度低、イラン・サウジアラビア東部の異常高温:平年の6度高、黒海周辺の異常多雨:平年の14倍、イギリス西部の異常多雨:平年の5倍50台の車が海に流される、アイスランド・グリーンランドの異常高温:平年より6度高、米国東部の異常多雨:ハリケーン・チャーリーが上陸降雨量平年の7倍、米国中西部の異常低温:平年より7度低、米国西部の異常高温:平年より6度高、パラグアイ・アルゼンチンの異常高温:平年より5度高、日本台風15号九州と北海道に上陸、韓国の異常多雨:平年の10倍、南西諸島・台湾の異常多雨:平年の7倍、中国東北部・モンゴル東部の異常高温:平年より7度高、ロシア西部・カスピ海の異常高温:平年より7度高、カナダ北西部・アラスカの異常高温:平年より8度高、米国北西部の異常多雨:平年の12倍、アルゼンチン北部の異常低温:平年より7度低、西日本の異常多雨:台風16号が上陸し降雨量平年の8倍、中国南東部・フィリッピンの異常多雨:平年の8倍、台風17号台湾で30人死亡またフイリッピンで43人死亡130万人が洪水の影響うけ過去30年最悪の被害、モンゴルの異常少雨:平年の20%、カスピ海周辺の異常高温:平年より6度高、ルーマニア東部の異常多雨:平年の27倍、チリ中部・アルゼンチン中部の異常高温:平年より5度高、オーストラリア中部の異常多雨:平年の10倍、モンゴルの異常少雨:平年の30%以下、九州・南西諸島の異常多雨:台風19号上陸で降雨量平年の12倍広島で風速60.2m/sと1937以来の記録、中国四川省付近の異常多雨:平年の9倍、フランス西部・アルジェリア北部の異常高温:平年より5度高、カナダ南部・米国中西部の異常多雨:平年の7倍、フロリダ半島の多雨:ハリケーン・フランシズが上陸降雨量平年の9倍、南米中部の異常高温:平年より10度高、その後9月に入っても異常気象は増大している。
 
 一旅行で3つのハリケーンの遭遇

9月4日にマイアミに旅行しようとしたら、ハリケーン・フランシスが接近するからと飛行便がキャンセルになった。9月8日に変更し、ジョージア州のサバンナに着いた。今度は乗り換え地のアトランタにハリケーン・アイヴンが向かっているので、アトランタに向かっても足止めになるだろうとのことで、飛行便をやめて長距離バスでマイアミに向かった。
マイアミ発も今度はハリケーン・ジェーンが接近するからと何度も出発確認の問い合わせしながら、やっとリオに戻ってきた。一旅行で3つのハリケーンの影響を受けたのは筆者としても始めての経験だ。それも風速160マイルと報道される。ちょっと待ってくれ、時速256kmで秒速71mだ。嵐を呼ぶ男どころではない。

ところでアメリカの長距離バス、グレイハウンドという有名な会社だが、保安検査はブラジルよりも遅れている。まず切符買うときに、免許証というからチラリとみせただけ、乗車の時は切符を見せるだけ、もちろん金属反応ゲートなど無い、手荷物は大きなトランクを持っていたが、重量を量っただけで、Xレイなどの検査なし。空港が工業用の透視装置や化学検査など物々しさから見ると、不思議なくらい無防備である。
なおハリケーン・ジェーンはカリブのハイチで停滞し死者700人行方不明1000人以上の被害を与えて一週間遅れでフロリダに上陸、縦断した。
台風情報を見るのにCingularのワイヤレス・インターネットPCカードを買った。バスの中でも空港でも、どこでも使える。モデムのホテルの電話に接続は、市内接続の時間が長くなると 高い電話料をとられるのでこの方が経済的だ。
日本にもPHS接続のAir-Hなど無線PCカードがあったが、CingularはGSM/GPRS/EDGEなどのセルラー・ネットワークにつながる。9月22日にこの会社とドコモが第三世代携帯で提携するの報道があった。来年前半には無線インターネットは当たり前、日米共同体制になるのだろう。

ブラジルの短信・市長選挙選

大都市のPT党の市長数は州都だけでみると、延滞の31%から50%程度に増える予想であるが、サンパウロ市は二次戦になりPT党にならない可能性が高い。PTの市長になるとブラジリアからの予算が多く獲得出来るメリットはあるのだが、選挙民はむしろ誰が市長になっても早く市の赤字財政を立て直してくれるのが良いと考えるのだろう。この意味ではブラジルの選挙制度は機能している。
筆者がPT政権に期待するのは、司法改革と税制改革、労働法の改正、年金改革などで、これはPT政権中にやっておいていただきたい。PTが野党になってからでは反対されてできないからである。

輸出拡大

現在貿易収支は大記録で順調に伸びている。現状で具体的には極めて難しいが、将来アルゼンチンの経済が回復したら、輸入が増えて輸出の一部は食われる可能性がある。それまでにブラジルは資本収支を大きく黒字にしておく必要があるだろう。

インフレは警戒水準

IPCAで見ればまだ5.14%程度で本年の8%目標に収まる可能性はあるのだが、支払い手段M1は過去12ヶ月で23%増えており、FGVのIGPで見るとすでに9.53%で危険水準に入ってきた。問題は選挙後にパロッチ蔵相がどこまで通貨を引き締められるかである。

金利

Selic金利は金利率にインフレを乗せる政策方針を変えないかぎり、現状以下には下がらない。今の政府に国際の金利を下げ、弱小銀行を整理するほどの勇気があるかどうかである。

 小泉首相の訪伯

小泉首相の訪伯は、メキシコへ調印に行く途中とはいえ、おりしも日伯経済が再離陸するタイミング的には最高であった。ブラジルの彼の印象やいかにと楽しみにしていたが、首相のメルマガでの感想は、移住者の子孫の大歓迎を受けたことと、経済関連では、「ブラジルでは、サトウキビからエタノールを作ってガソリンに混ぜて、自動車の燃料に使っています。日本でもできないか、試してみる必要があると思います。これからブラジルの首都ブラジリアに移動して、ルーラ大統領と会談します。日本とブラジルの友好、協力関係の強化について話し合うつもりです。」のみで、ブラジリアは、アテネ・オリンピックのマラソンのデ・リマ選手の印象の方が強烈であったようで、ちょっとがっかりした。
レアル・プランの初期、コール独首相はレジェンデのワーゲン工場定礎式に出席したが、小泉首相にも国家大事業や先進国の巨大投資を見せて、帰日後「諸外国は本気でブラジルに投資している。日本も本腰を入れなくては」と言わせたかったものである。 
評論家の性で憎まれ口をきかせていただくと、マスコミが首相の涙に注目したコロニアは歓迎の見せ場を首相と皇族の訪伯を取り違えたむきもあるのではと感じた。もちろん歓迎手配の皆さんのご努力には敬意を表すものである。




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