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ブラジルに健在 阿波の武将大嶋氏・末裔 関ヶ原の配陣図や古書鈴木さん徳島県文書館に寄贈。【パウリスタ新聞より転載】
1996年7月31日のパウリスタ新聞(現ニッケイ新聞)及びその記事のベースになった徳島新聞の切抜きを昨年サンパウロ市近郊のコチア市に住んでおられる鈴木章子さんの大きな仕事場を兼ねたお宅を訪問してお話をお聞きした時に預かった新聞の切り抜き記事です。同船者の中ではコロニア社会で著名な陶芸家として活躍されている鈴木さんの戦国武将大嶋氏の末裔として受け継がれてきた古書其の他を徳島県文書館に寄贈されたとの事で興味深いニュースをご紹介します。写真は、昨年鈴木さんを訪ねた時に撮らせて頂いたものです。尚、ご主人で画家の鈴木幸夫氏も私たちの同船者です。


ブラジルに健在 阿波の武将大嶋氏・末裔 関が原の配陣図や古書 鈴木さん徳島県文書館に寄贈 コチアの自宅に乃木大将の書など
戦国時代に阿波(徳島)を支配した三好氏の一門であり、岩倉城西ノ城に在した武将、大嶋丹波氏の末裔がこのブラジルにいる。陶芸家の鈴木章子さん(六七)だ。大嶋氏のたった一人の直系にあたる鈴木さんは、昨年九月、徳島県で開催されたブラジル現代日系作家展に出品する機会に、同家に代々伝わる関が原の合戦配陣図などを含む古文書約2百点を徳島県立文書館へ寄贈。六月三十日、東京で開幕した同展の式典に出席した鈴木さんは、その帰国の際にいくつかの古文書をブラジルに持ち帰った。
昨年九月、日伯修好百周年記念事業として徳島県で開催された日系ブラジル作家展を機会に、鈴木さんが徳島県立文書館に寄贈した古文書は禄高(ろくだか)が決められる際に大名から送られた宛行状(あてがいじょう江戸時代)や乃木希典陸軍大将からの礼状(明治時代)など戦国時代から明治時代にかけて大嶋家が保存してきた手紙類や系図約二百点。
この寄贈に至るそもそものきっかけとなったのは約三年前、彫刻家の豊田豊さんから徳島県で展覧会を開いていることを聞いた時から始まる。鈴木さんは「徳島と聞いたこの時ばかりは何故か、はっとしたのです。いつも心の隅には大嶋家の末裔である自分の立場があった。それは先祖が大事にしてきた一族の歴史をこのまま埋らせてしまっていいものだろうか、ということにつながっていた」と振り返る。
大嶋家は現在までに判明しているだけでも戦国時代に生きた武将大嶋丹波氏を初めに、鈴木さんの父である故・大嶋貞章氏を十三代目にして続いてきた一族で、鈴木さんはその貞章氏の一人娘。初代丹波氏は三好備中守の娘を妻とする、岩倉城主三好徳太郎(山城守嫡男)氏の一門であった。天正七年(一五七九年)に岩倉城(現在の徳島市脇町に所在していた)が二万余りの長曽我部軍に攻められ落城。丹波氏はその後数年を経て、秀吉の四国征伐のおりに阿波攻めの総大将であった羽柴秀次(岩倉城主・徳太郎の父笑岩の養子、後に関白)に属し、城明け渡し役となって岩倉城に乗り込んでいる。
大嶋氏はこの後まもなく秀吉配下の石田三成氏(一五六〇−一六〇〇)に仕官。関が原の戦い(一六〇〇)では大嶋家が滅びないようにと考えた末に、兄弟が敵味方に分かれて戦った。さらにその後は秀吉の正妻ねねの義兄弟である浅野行長氏の紹介で岡山、鳥取をも治めていた池田輝政氏(一九六四−一六一三)の家臣となり、明治維新まで池田氏の中堅家臣として仕えた。
鈴木さんは「小さい時から父が話す大嶋家の歴史を聞いていた。終戦の翌年に他界した父は私に自分の好きなように生きなさいといってくれた。しかし戦火を免れた先祖伝来の古文書、父が大事にしていたものだけに叔父の家に保管したままでいいのだろうか、とここ数年は特に気になっていました」と語る。
一九六二年、テレビに映されたブラジリアの風景を見て大きな大地に大胆なことをする国だと魅力を感じ、早々に夫である画家の鈴木幸夫さんと共に渡伯した鈴木さん。「一度は古文書をブラジルに持ってくることも考えたが、やはり資料としてもそっくりそのまま永久保存できるところに治めたほうがいいのではと思いました」と話す。鈴木さんが徳島の県立文書館に寄贈を決めたのも大嶋家にとって徳島は四百年以上も前に離れた土地であったためだ。四百数十年ぶりに大嶋家の最後の直系子孫が、同家の発祥の地に再び足を踏み入れ、先祖代々伝わる古文書を治め一応、武将一族の歴史の幕を閉じたことに鈴木さんを取り巻く関係者も何か不思議な縁を感じずにはいられないようだ。鈴木さんは「すべて事がスムーズに運んだのも、ブラジル現代日系作家展日本事務局代表の石田浄さん(フィリップ大学教授)、徳島女流美術協会の岡多美子会長、同展の責任者であった豊田さんらの力添えがあったからこそ。本当に感謝したい」と一言添えている。
一方、日本の六大文書館の一つである徳島県立文書館では、途絶えてしまったと思っていた大嶋氏の直系がブラジルに在住していることに驚くと同時に「古文書を分析することで、今まで余り伝えられていなかった中堅武将一族の波乱に満ちた歴史が浮かび上がってくるのでは」と期待をよせているようだ。
現在、コチア市内の鈴木さん自宅には、刀の使い方や心得が書かれている免許皆伝(江戸時代)の巻物二点、乃木大将や谷干城氏からの礼状など数点のオリジナルと寄贈したものの中から石田三成氏が関ヶ原の合戦前に大嶋氏に宛てた書や関ヶ原の合戦配陣図などの複製が置かれている。鈴木さんは壁に掲げられた古文書の前で「行くべき所に行き、先祖の大事にしてきたものを治めるべき所に治め、最後に残された私がやるべきことはやったと思う。私も年老いてきましたが,これでやっと安心してブラジルの土になれます」とホッと一息ついている。

    
(注)5月12日の四十年祭には、鈴木章子さんの陶芸作品、ご主人で画家の鈴木幸夫さんの作品等をお借りして展示できればと願っています。
(平成14年3月29日タイプアップ/和田 好司)



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