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【注目の<ルーラ再選>の可能性を占う】 赤嶺 尚由さんの年頭紙上座談会をお届けします。【前編】
元邦字新聞の敏腕記者として活躍されていたメ[ル・ナセンテ人材銀行代浮フ赤嶺 尚由さんの恒例の年頭紙上座談会【政治談義】を送って頂ましたのでお届けします。今年は、10月の大統領選挙で<ルーラ再選>の可能性があるのかどうかを占う形で一人座談会が展開されます。使用ソフトの関係で字数制限があり3回に分けて掲載すことにします。これはその第一回目です。
写真は、BATEPAPOに山下さんが送られていた反米?左傾の仲良し3人組の写真を使用しました。
赤嶺さんより『私たちの40年!!』HPに採録して下されば、これ又併せて望外の喜びと致します。とのお便りと共に送って頂いて置きながら収録が遅れてしまい申し訳なく思っています。


注目の<ルーラ再選>の可能性を占う
        メ[ル・ナッセンテ人材銀行代表 赤嶺 尚由
 
現役の大統領の再選続投は、余程のことがない限り、有利に展開するのが通り相場である。例えば、94年の最初の大統領選挙では、第二次投票(決選)の段階まで進んで決着を余儀なくされたFHC候補(当時)が98年の再選に挑戦した際には、第一次投票(卵I)の段階で勝利をあっさりと手中にした前例もある。ルーラ現大統領が念願とする再選続投を果たすには、今年10月1日に実施される大統領選挙で、これまでの任期中に実現できた公約、実現できなかった公約を天秤にかけさせる形で、国民に直接その信を問わなければならないが、ことその当選確率となると、大統領の所属するPT(労働者たちの政党)と時の政権が超大型の不正汚職事件に巻き込まれて以来、限りなく不透明になりつつあるというのが実感だ。前回の大統領戦選挙の決選でルーラ候補(当時)を熱狂的に支持して当選させた有権者の数は、約5430万人に達したが、今回の事件を境に、新しく自分たちの一票を投じるべき候補を決めかねている迷いの様子も伺える。信頼できる政界、財界、マスコミ界の消息筋の見方によれば、今年の大統領選の決選投票で顔を合わせる公算が一番大きいのは、ルーラ現大統領対セーラ現サンパウロ市長であるが、既に後者有利の卵zを出す向きも少なくない。本紙恒例の紙上座談会形式でその辺の事情の真相と深層に少しでも迫って見ることにした。
 高くない再選の確率
A FHC大統領の再選を規定した憲法修正案が国会議員の有する1票を20万レアルずつで買収するという不正事件を間に織り込みながら、駆け込み式にやっと成立させたのは、97年のことだった。そして、98年の大統領選挙では、同大統領が卵Iの段階で当選を果たした。こういう憲法の規定を勝手に都合よく解釈したり、修正するというカズイズモ的な大統領の再選案に一番激しく反対し、抵抗した革新系の政治家がPT所属のルーラ候補(当時)だった。自分だったら、4年の任期が過ぎれば、「一日とて大統領の職に留まらない」といった意味合いの言葉さえ、確かに口にしていた。大統領の座で時を過してみて、今は、積極的な再選推進論者の一人だ。大統領の任期4年では短過ぎて何も出来ないとも言い出す始末である。
T まあ、権力の座の持つ魅力と魔力だろう。ルーラ大統領も自分に再選の番が回ってくると、昔、猛反対して回ったのをすっかり忘れたかのように、権力の座で続投することに熱心になり、大いに目の色を変えている。それは、89、94、98、2002年と過去4回の挑戦でやっと大統領の椅子を手に入れた自分がもしも再選されないとなると、今までの実績が国民から全て否定されることを意味する。その他に既に続投経験者のFHC前大統領とは、現役と前任者との間の責任のなすり合いが原因で、絶えず陥りがちな犬猿の関係を改善できずに、ずっといがみ合ったままでおり、もしここで折角のチャンスを逃がしたり、断念せざるを得ないような事態に追い込まれれば、前大統領に文字通り遅れをとり、差をつけられるからでもある。問題は、FHCみたいに、比較的すんなりと再選されるかどうかだ。しかし、事は、どうもそう簡単に運びそうにないよ。
A さて、この辺から紙上座談会の本題に入ることになるが、ルーラ現大統領の再選の可柏ォが実際にどれくらいあるかとなると、私も今の段階では、極めて悲観的な見方をしている。なんだかんだと言われていても、普通の場合には、現役の大統領が再選出馬を決意したら、任期中に挙げた実績が広告塔やショーウィンドーみたいな役割を果たしてくれて、他の候補を寄せ付けないほどの強味を発揮しがちだが、今回は大分様子が異なっている感じがしてならない。
T 実際の<ルーラ再選>の確率と野党から当然出てきそうな対抗馬の勝算などの就いては、後から詳しく触れることにして、昨年の6月中旬頃からPTとルーラ政権を巻き込んだ未送Lといっても良い超大型の不正汚職事件が発生し、ちょうど逆風みたいになって、ルーラ政権に向かって、激しく吹き付けていることをまず指摘して置きたいのだな。
 つるべ落ちした支持率
A そういうことだ。この不正汚職事件が発生するまでは、政界、財界、マスコミの消息筋の誰の意見を聞いても「ルーラ再選の線でひとまず動かないのではないか」という観測の仕方に、殆ど異論が出なかった。私が何か物を書く場合に、大いにそのコラムを参考にさせて貰っているフォーリャ紙の老練記者で、特に時の政権(権力者)に厳しい辛口の筆鋒を向けるコラムニストのクロービス・ロッシ氏ですら、昨年の今頃迄は「ルーラ再選の確率が既に80%位に達していると見てよさそうだ」と再選に向けてかなり強気で珍しく好意的な宣託の仕方をしていた。それから数ヶ月して、事情がすっかり暗転してしまった。
T ルーラ大統領は、PTと自分の政権を巻き込んだ不正汚職事件が発覚した当初は、「知らぬ、存ぜぬ」で押し通そうとしたが、それでは大統領としての管理迫ヘや監視責任を問われることになりかねないので、訪問先のパリで随行してきた記者団に対して初めて「選挙に裏金を使うなんて、どの政党でも日常茶飯事的にやっていることだ」と、言い直そうとしたが、逆に飛んだ失言になり、反発を買う形になったね。
A 国会の調査委員会で事件の最終的な結論が出るのは、まだこれからであるが、これまでの経過を見ていると、私は、PTと時の政権が連座したかつて見られなかった大規模の不正汚職を引き起こしたこと自体、大衆の味方とも言うべき彼らの完全な公約違反だと判断している。政権を盗(と)るまでは、大いに庶民の味方と社会正義を標榜し、歌い文句にもしてきた。1980年に結党されたPTの狙いは、最初にABC地区に芽生えたプロレタリア(無産級階級)の労働組合運動を足場にして勢力を伸ばし、この国の貧しい人たちを救い上げるための革命をやることと政権樹立という新しい風を吹かせて見せることだったからね。しかし、実際に政権の座に就いてやったことと言えば、ちょうど今迄の既成政党と全く同じか、あるいは、それ以上に、まず政権を私物化すること、若しくは、政権という陽の当たる場所にいる自分たちだけが恵まれた生活を送ればそれで事足れり、という風に判断した、結果的にはそのように見られても仕方ない実に誠実味のない行為ばかり目立ったね。
T それは、確かに言えることだ。ルーラ大統領は、初当選を果たして臨んだ2003年1月1日の就任式で、「今までのブラジルは、エリ−ト(特権階級)が著しく優位に立って常に幅を利かすという政治社会告}の下で、大変暮らし難い国だった。まず、一般国民のために、生活し易い国に変革させたい。そのために、是非ともムダンサ(単なる変化というよりは、もっと強い変革の意味か)を実施して行くつもりだ」と、改めて政権公約を発浮オた。その時に使用したムダンサなる感動的な言葉は、実に14,5回にも及んだ。新しい国の形を造るんだという新大統領の抱負に皆が大いに感動もし、裏切られてきてばかりいる国民がかつてない程の期待も寄せた。
 大型の汚職事件が発覚
A 本当に大衆の政党とか政権を自認し、ムダンサの旗印を掲げるなら、国民からいずれにしろ税金の名目で集めた大切な公金を、手の込んだ方法で迂回に迂回を重ねさせ、一説では50億とも60億レアルとも言われる巨額にも達し、大部分がまだ使途不明金の状態のままに置かれているメンサロンとかセマナロンと呼ばれる闇の政治取引資金を作り出し、それを自分たちの政権が運営し易いように、又、その政権が半永久的に続くように、ほぼ自由勝手に使う筈がない。私は、正直に言えば、2002年の選挙の時には、「是非私にも1票を投じさせて欲しい」という願いに似た気持ちで、ルーラ候補にささやかな帰化有権者の1票を投じたことをまだ鮮明に記憶している。だから、昨年6月6日にロベルト・ジェッフェルャ悼コ議(当時PTB党首)がフォーリャ紙との単独会見でこの事件の概要を初めて発浮オた時、又、それから間もなくして、同議員が下院の倫理委の喚問を受けて証言台に立ち「オイ、ジルセウ(当時官房長官)、首謀者のキミが早くプラナルト宮から去らないと、大統領に大変な累を及ぼしてしまうぞ」と、捨てゼリフみたいなものを吐きながら、不正汚職の全容を明らかにした際、まさかという信じられない気持ちを抱きながら「PTよ、お前までそれをやるのか」と、激しい憤りを抑えることが出来なかった。
T 大変規模の大きい不祥事を織り込んだまま、過ぎて行った約3年間の<ルーラ施政>を一般国民がどのような目で見ているかも気になるところだ。サンパウロ市に程近いバルエリー市に住むフォーリャ紙のある男性読者の一人は、昨年末の同紙の読者欄に「ルーラ大統領が4年間の任期では短過ぎると言い出した。確かにそうかも知れない。しかし、この政府は、今迄の政権よりもきっと良くなるだろうといったイルゾン(幻想)を国民に売り込んで置きながら、社会に対するその信用の大部分を失墜してしまった。任期中に1000万の新規雇用創設計画、2万の初就職計画、国道の通行料金の廃止、先生たちの賃金アップ、セスタバジカの配布、貧困撲滅などの公約不履行でも、信用を失った。一般国民にとっては、政府から発浮ウれる数字よりも、(清潔な)イメージの方がより大切である。ブラジル国民の記憶の奥深く刻み込まれたルーラ政権のイメージとは、郵便公社を通じての贈収賄という不正汚職、ヴァレオドット(不正資金の油送管)、メンサロン(政治家買収資金)、ジェノイーノとジルセウといったPTの党幹部ら実力者らの政界失脚等であった」と辛辣に投書していた。
A なかなか手厳しいな。今度は、フォーリャ紙に評論も書き、詩人としても知られるフェレイラ・ゴラール氏の言葉を有識者の代賦iとして、やはり同紙の<語録>欄から紹介してみたい。「大統領だけで事柄の全てが決まるものでないこと位、こちらもちゃんと知っている。しかし、今起きていることは、偶然ではないのも判っている。不正汚職とは、(PTという)この政党にあるまじき不祥事であり、皆を仰天させるものばかりだ。それまでは、実は私もPTのこのような不誠実な行為を計算に入れていなかった。まあ、この国のことだから、行政面で(ある程度の)失敗があろうことは、既に織り込み済みだった。しかし、盗みとなると、全く想定外だったよ」。
T PTは、元々、市や州の地方自治体を治めた経験は、あるものの、行政面での経験不足が否めなかった。PT系の市長を頭にいただく地方自治体から応分の選挙資金を負担させるにしても、まあ、オニブスの運行、リッショ(塵芥)の回収、ビンゴ(遊戯場)等の開業の許認可で集めた袖の下を党本部に選挙資金として貢ぐ程度で、大きな政治資金の扱いには慣れていなかった形跡がある。
A それが連邦の政権の座に就いた後、特に国会で政府の利害と関係の深い法案を通過成立させたり、野党陣営から与党陣営に上下両院銀議員の党籍を鞍替えさせる段になると、そのための巨額の買収資金を何とか捻出する必要性に迫られた。PTを中心として形成されたいわゆるアリアード(同盟陣営)と呼ばれる政治勢力の内部でいつも起こりがちな造反を鎮め、慰撫するためにも、闇の資金とか政府内の要職の提供と引き換えに、その協力を求めなければならなかった。連立政権と言えば、聞こえはいいが、最初から寄り合い所帯の性格を余儀なくされたこの革新系の政治勢力が過去の既成政党に負けず劣らず、臭気ふんぷんとしてくる一因となった事実は、否めないよ。
T ヴァレリオという政商に似た男からPTや国会に送り込まれてきた闇の資金がどれだけ霊験あらたかなるものがあったか、数字でもはっきり読み取れるようだね。
A 例えば、政府は、何か国内に緊急不測の事態が発生した場合に限って、MP(大統領暫定措置)なるものを発動出来るということが軍事政権の臍の緒みたいに残されており、そんなに急がない時でもそれを乱用する悪い習慣が付いてしまっている。4500万レアルといういわゆるヴァレリオ資金が潤沢に流れ出た2003年1月から翌04年7月までに国会で審議された94件のMPの内、承認されたのは、実に93件に登ったが、逆に「そろそろヤバイぞ」ということなり、資金の流れが詰まり出した2004年下半期には、23件のMPの内、15件が承認されなかったらしい。カネの力は、やはり、大きいと言わざるを得ないよ。
 リッショやビンゴには強い
T オニブスやリッショやビンゴで集めた資金程度では、とても賄えなくなるということだな。つい目先の事を追いがちなお国柄だけに「ルーラ大統領が慣れて落ち着いた段階で、しこたま注文(資金提供や政府内の要職の割り振り)に応えてやるからな」といった一種の先送りというか、通り一遍の美味しそうな約束をいくら並べて見せても駄目で、協力を仰ぐ与党陣営の目にすぐに見えるものをぶら下げてやらねば、政権運営が二進も三進も行かなくなる。よく言うところのイメジアチズモ(刹那主義)という奴だ。
A いや、私は、もう少し、別の見方をしていた。思い切ったムダンサ(変革)をブチ上げてきたルーラ大統領のことだから、何よりも先に国民の肌で感じられ、評価される行政面の実績を挙げ、「ああ、この国も遂に変わりつつあるのだな」と、その熱い心や強い支持を自分の側に改めて早く引き付けて置けば、あれだけのカリスマ性を発揮して見せた指導者の下には、少しでも先見の明があり、憂国の情を抱くブラジリアのポリチコ(政治家)なら、自分たちの方から先に接近して来て、大統領と鎖のようなもので固く繋がれていたに違いない。又、仮令、国会に巣食っていて、ただ利害だけ追及して回っているようなその他大勢のポリチケイロ(政治屋)の輩であっても、国民の目だけは常に怖いし、「そんな無茶な要求を出す位なら、もう離れて行け」と言われても、国民の支持のある大統領の許からはなかなか離反して行けない。そこに本格的な革新系の政権のレーゾン・デートル(存在理由)もあった筈だし、「まあ、じゃあ付いて行って見るか」といった徴候が損得や利害を何よりも優先する既存の大政党あたりからも、少しずつ現れかけていたから、国民の熱狂的な支持を政権の初期の段階でもっとフルに活用すべきだったね。そういったこの国の政界のそういった常識を覆そうと思えば、覆せる機会は、あったと思うよ。
T 今頃になって死児の歳を数えるような所作になるかもしれないが、<ルーラ政権>の初期の段階で、一体どのような実績、得点を挙げていれば、国民の注目を引き高い、評価を受け、支持を集めていただろうか。
A まず不完全燃焼のまま尻切れトンボの形で中断された社会保障制度、税制制度等の諸国「改革をもっと徹底させるべきだった。懸案の労働制度の改革には何も手が付けられていない。社会保障制度の改革は、お茶を濁す程度にやったが、赤字が一向に減らずに却って
増えており、完全に元の木阿弥だ。制度そのものが破産状態のままでいる。税収は、PIB(国内総生産)比で36、7%まで驚異的に増えたが、何も国「改革のお蔭ではなく、取り易いところから、取りたい分(課税率)だけ、つまり狭く厚く取る形になっていて、広く薄くという課税の基本精神に反しているような側面が依然として色濃く残っている。鳴り物入りで発浮ウれたPPP(官民共同プロジェクト)案も、やるなら政権発足から余り間を置かずにやるべきだったよ。これらの改革の動向は、外国の投資筋が最も注意を払う点だろう。
T この国のこれまでの在り様を造り替えて見せるという本格的な初の革新政権の公約は、それくらいのインパクトを当然持っていてしかるべきだった。それが政権発足後、間もなくして、誰かの入れ知恵だろうが、行政面の実績を上げて置いて先に国民の心(支持)をわしづかみにし、鎖のようなもので国会議員を固く縛り付けて置くという手の込んだやり方よりも、もっと手取り早くカネの力に物を言わせる従来型の政治手法に転換して行った。
A もうそれからは、どうしても歯止めが利かなくなってしまった。前の政権が担当した民営化の際の闇の資金の編み出し方にも目を奪われたとの情報もある。あるいは、物凄いカリスマ性で初当選を果たしたルーラ大統領なら、もう黙っていても、政治家の方から黙っていても付いて来てくれるという強い過信みたいなものがあったかもしれない。しかし、この国の政治家がそう一筋縄では行かないこと位、大統領も良く知っている筈だった。
T 確か80年代に一期だけ、ルーラ大統領が下議を勤めた時だったと記憶しているが、ブラジリアの国会の中には、赤い絨毯の上で、鶴嘴を振り上げて金の鉱脈を掘り当てようとする山師みたいな悪い連中が300人も巣食っている、と非難したのも彼自身ではなかったのかね。
A カネの力に物を言わせるには、民間だけではとても足りず、公銀、政府関連企業や年金基金などからまとまった高額の資金を闇の形で捻り出す必要に迫られるようになった。当初、与党陣営と良好な同盟関係を築いたり、この種の政治取引をうまく担当していたのが実力者の前官房長官と後から関係がこじれてその告発の口火を切った当時のPTB党首の二人で、二人のすぐ下にPTの金庫番が付き、更にミナスで阜・ォ広告代理店を営む政商まがいの男が資金源となりそうな所を探し、自分の方でいい加減に保証人も用意するという闇の資金の水先案内人の役割を果たしていたように見える。
T しかし、2004年の市長選挙の時にこのPTBの党首へ2000万レアル出すつもりだったのが何かの拍子に400万レアルしか出せないということで揉め出し、約束の資金の流れが狂って約束を守れなくなり、激しい内部の対立と抗争の後、この不正汚職の一部始終が外部へ向かってほとばしり出たというのがどうやらコトの真相のようだ。
A 余談めいてくるが、時の政との関係がまだうまく行き、前官房長官を告発する口火を切る以前のPTB党首に対して、大統領は「彼には白紙小切手(欲しい額だけ書き込める)さえ渡してもいい位だ」とまで信用している口振りだった。ということは、事件の辿ってきた経路や引いてはその全容もとっくに承知の上だったという意味に受け取れなくもないよ。
T さっき、PTの連中は、94年から2期8年に亘って行政を担当したことのあるPSDBやその傘下の政治家に比べて行政経験不足、いかにもごつごつとしていて荒っぽく不器用で、どのような取り組みにも手慣れていない感じがするという話が出たけれども、政治資金の集め方も、最初は処女の如く、大変用心しながらおずおずとやっていたのに、しばらくすると、いかにも図図しくなって行ったような印象を受けたね。
A 不祥事に手を染めることに慣れて感覚が少し麻痺しかけ、不感症になるとともに、後は処女から脱兎のように早変わりし、大胆な手口でやる感じになって来たのは、確かだ。70年代と80年代の殆どは、労働組合の運動に始まり、1980年に労働党系列の組織として旗揚げして体裁を整えてから、24,5年にもなるが、一貫して専従運動員という名のミリタンシアの負担金、若しくは、PTの党籍を得たお蔭で当選できた国会、州、市会議員らが給与の20%を上限にして納める仕組みの上納金で運営され、貧乏生活を強いられてきた感じだった。滅多にない大金を扱う千載一遇のチャンスをどう処していいか、さぞかし戸惑ったに違いない。だから、前の政権当時にも既にその方面の知識と経験を身に付けていた例の政商まがいの男が登用、珍重されたのではないか。
T 感覚が麻痺したと言えば、資金が足りなくなり、必要になったらその都度、既に強い癒着関係を築き、馴れ合いみたいになっていた特定の市中銀行や公立銀行から勝手な名目を見つけては、どんどん融資を仰いで適当に闇の資金に換えて行くといったやり方で、政商に似た広告代理店の男もPTの金庫番も、一体いくら借り込み、どれ位借り進んでしまっているか、正確に実体を把握していなかったと思うよ。
A 果たして借りているという意識があったかどうかも、疑問だ。最初から返済する必要のない自分たちのカネのつもりじゃなかったのかね。今回の事件を機に改めて気付かされる別のことは、何事も証拠優先のお国柄だから、確たる証拠がなければ、限りなくクロに近いという容疑があっても「やっていません。証拠は、何処あるのか」と反論されれば、もうそれ以上なかなか追い詰められないし、追及もできない。又、そういうことがこの国の政界を既に包み込んでいるイムプニダーデ(非罰主義、あるいは、反処罰主義)が益々増殖してしまっている一因だね。
T 非罰主義というか、反処罰主義というか、兎に角そういったものが政治に与える風潮は、ずっと長く指摘されてきている。笑い話みたいになるが、いくら悪いことやっても、罰せられる政治家が少なく、結果的に不正汚職も少なくならないので、例えば、民政に復帰した1985年3月15日までに政治家の職にあった者に次の選挙で立候補する権限と資格を取り消したらどうかという意見が出され、一部で真剣に論議されたこともあったと思うよ。私の良く知っている州議員まで務めた日系の政治家も本気でそう唱えていたが、いつの間にか、彼も消えちゃったね。多分、悪貨が良貨を駆逐してしまうように、まじめな政治家であればある程、長続きしないようだ。何しろ、<財力こそ実力なり>の考え方が強い政治の世界だ、他が悪いことをしているのに、何もせずにただ手を拱いて黙って見ていては、こちらの地盤が相対的に沈下してしまう。




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