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【注目の<ルーラ再選>の可能性を占う】 赤嶺 尚由さんの年頭紙上座談会をお届けします。(中篇)
赤嶺さんの紙上座談会第2回目です。再選に否定的な材料多し、前官房長官の抜けた穴、困難な選挙資金の捻出、政治が駄目なら経済で、焦眉の急は経済成長にと話題は展開して行きます。ブラジルに住んでいる我々でも日頃の新聞、テレビ、ラジオ等に十分な注意を払わないとフォロウするのが難しい話題を的確な事実の把握とその解説と表現、流石元新聞記者の赤嶺さんならではの紙上座談会形式によるブラジルの現状と特にルーラ大統領の再選の可能性に焦点を合わせての展開は、分かり易く大いに役立つ恰好の時事情報と云えます。
写真は、ルーラ大統領です。


再選に否定的材料多し
A 不祥事に絡んだ政治家の選挙への出馬に制限を設けることは、一見妙案にも思えるが、この場合、政治家といっても、大統領、知事、市長などの行政職に携わる者と上下両院議員、州議員、市議会議員などのいわゆる国民の選良たちに分かれるから、どのように線引きするかが難しいのではないのか。実際のこととして、このような一種の消去法で立候補に制限を設けていけば、砂の中の金を探すようなもので、立候補できる該当者が一人もいなくなる恐れさえある。
T ある選挙に立候補することは、憲法で認められた言わば基本的な権利であり、この国の人たちが特に重視し、大事にする既得権でもある。しかし、「疑わしきは罰せよ」じゃないが、一部の先進諸国みたいに、一旦、悪いことをしたというクロの疑いが掛けられただけで、選挙に出にくく、当選しにくくなるような政治風土とか政治風潮が醸成されて欲しい。それには国民の常日頃の厳しい目と判断しかないと思う。
A それはまあともかく、これまでだと、どんな政権でも、その座に収まってさえいれば、怖いもの知らずのままでいられる。仮令、不正汚職の疑いがかけられても、権力のずっと上の方に立つ者の方からいわゆる鶴の一声みたいなものがかかり、丸く収めたり、又、収まるようにもなる。それが今回の不正汚職事件の規模を殊更に大きくさせた原因の一つに間違いないね。
T 政権とそれを担う与党に行政経験が充分に蓄積できないままの状態で迎えるルーラ大統領の再選続投問題だけに、それをクリアして行くのは、並大抵のことではないが、事実、否定的な材料にも事欠かないような気がする。<ルーラ再選>が実現するためには、まだこれから多くの紆余曲折と山あり谷ありだ。
A 私が一番指摘したい<ルーラ再選>に否定的な材料は、善玉であるか、悪玉であるかは抜きにして、前回の大統領選挙の作戦を実際に立てさせても、選挙運動を運営させても、必要な資金を捻出させても、ほぼすべてをャcなくこなせた前官房長官というマキャベリズム(権謀実数)型の策士を失ったことだろう。2002年のルーラ大統領誕生の時には、PTが党を挙げて一丸となって戦ったが、それを効果良く、効率良く取り纏める指揮官の役割を果たしたのが彼だった。党内では、ややもすると、何でも他には余り相談せずに、自分でコトを決するような独裁的で高慢なタイプとよく評されたが、パロッシ蔵相同様、良い意味でも悪い意味でも仕事師のイメージがピッタリ合うPT所属の数少ないプロの政治家だったよ。
T ルーラ大統領は2003年1月1日に就任して以来、日々の行政の仕事には左程熱心とは言えず、苦しい政府財政の中で、5600万ドルだかの<アエロルラ>という大統領専用機を購入し配備してからは、どうも外遊外交に一段と興味を示すようになった。国内を留守にすることが多くても、何とか行政活動が大過なく、大きな破綻をきたさなくても済んだのは、ジルセウ官房長官という内閣の番頭役がいたからだろう。彼が閣外へ去って後、初めてその存在の大きさを知り、又、就任以来、重要な国内問題に余り手を付けない内に、それこそ矢の如く時間が過ぎ去ってしまい、気付いてみれば、自分の再選問題と向き合わなければならなくなっていたというのが本音ではないのかな。
 前官房長官の抜けた穴
A 前官房長官の場合、大統領に代わって、日々の行政面の仕事を着実に担当することの他に、陰に隠れて国会対策の方面にも辣腕を振るった。だから、アウド・レべーロ政治調整相という本来国会対策を担当すべき大臣との対立や確執が絶えなかった。実際に失脚する約1年前にも、官房室のNO2かNO3あたりの高官が汚職事件に連座していることが明るみに出て、窮地に追い込まれたことがあるので、いずれその退陣は、まあ時間の問題だと見る筋も少なくなかった。彼自身、何時までも政府内にいては、危ないと考えたのか、下院議員の椅子に戻りたい意向を何度となく楓セしていた。
T ルーラ大統領の誕生によく寄与し、協力したと言われ、又、PTの創立された80年頃から殆ど行動を共にしてきた仲間たちの大半に前か元の肩書きが付き、その関係も今回の不祥事を機に、すっかり疎遠になった感じが否めない。ジルセウは、既に指摘した通りで、その他にグシケン前政府広報戦略担当大臣(現在同主管)、ジェノイーノ前PT党首、タルメEゼンロ前教育相、それに党創立時代からの仲間ではないが、初当選の時に獅子奮迅の働きをして殊勲甲の評価を受けたデゥダ・メンドンサ前選挙PR主任などだ。PT政権の発足当時に考え方が合わずに、脱党して行った約30人に上る過激派の党員もいたな。彼らの力が一つになって、20年以上も<労働者たちの政党>の一指導者に過ぎず作業中に労働事故で左手の小指を失った元金属工に初めて<大統領の椅子>が贈られた訳だ。
A これがすっかり散り散りばらばらになったとは言わないまでも、実力者のジルセウ官房長官を筆頭に、<ルーラ再選>の戦線からひとまず退陣したということから受ける否定的な影響は、計り知れないものがある。それと、PTのこれまでの選挙での強さは、この政党をピラミッド型でずっと下の方から支えているミリタンシアという名の積極的というか過激的な専従運動員だった。その運動員たちの所属する支部が全国に4600以上もあったが、今回の不正汚職事件で運動員たちも大分動揺してしまい、殆どの支部で混乱やら意見の対立、齟齬が来ているように伝えられる。<ルーラ再選>に向けての党内の上意下達や下意上達といった意思の疎通や連絡がうまく行かなくなっている様子だ。
T 先程も少し指摘された通りだが、PTは、元々、オニブスやリッショやビンゴに強い政党という定評があった。これは、言わずもがな、この政党のこれまでの各選挙がこれらから挙がってきた資金で運営されてきたからだろうが、<ルーラ再選>に向けての選挙資金は、とてもこの程度では済まない。有権者の目も当然厳しくなるだろうから、PTは、まず選挙資金を編み出す道が閉ざされることになりそうだ。この点をどう見ればいいのかい。
 困難な選挙資金の捻出
A ある一面、選挙資金の捻出が困難になり、しかも益々目処が立ちそうにない状況にあることは、ジルセウが<ルーラ再選>の作戦面から離脱するよりも深刻な痛手だと思うよ。この二つの問題は、言わば対になっていると言えなくもない。ジルセウがいなくなったから、選挙資金の手当てが難しくなるという側面もある。しかし、彼が仮に健在であったにしても、ブラジル銀行や年金基金の公金を右から左へとはもう行かなくなっていたに違いない。ベルゾイーニ新党首以下の今のPTの首脳陣では、選挙資金集めがいかにも心許ない。民間企業も今回に懲りてすっかり用心してしまっている。
T 私の記憶から容易に去らないジルセウの言葉がある。下院の本会議で賛成293票対反対192票でその政治追放が承認、決議されてから間もなくのことだったと思うが、Forumという専門雑誌の記者との単独会見で「ルーラ大統領というのは、難しい人柄(の指導者)だ。政府内には、PTの人間がもう皆弱体化してしまい、誰も残っていない。オレをはじめ、ルイス・グシケンしかり、ジルベルト・カルバーリョしかり、最近のパロッシもしかりだ。オレは、既に2004年の上半期と下半期に3回ずつ、このまま行けば、PTが上院と下院で多数派から少数派に転落してしまい、政権を不安定化させる狙いでCPI(議会調査委員会)を立ち上げられてしまうぞ、テーマは、先ず間違いなく不正汚職の追及だろうよ、と注意したことがあった」と話していた。
A この時のジルセウの言葉からすると、ルーラ政権が政治面で破綻を来たすとすれば、まず国会対策の行き詰りからだろうということを既に察知していた節が伺える。今、大統領の後押しで下院議長に出世しているアウド・レベーロ前政治調整担当大臣が国会対策を担当していた頃、確かにジルセウが彼の手からそれを取り上げようと試みた経緯があるが、大統領が難色を示したために、うまく行かなかったらしい。あの時、もし自分の言うことに従ってくれていれば、ここまで(政権が)追い詰められなくとも済んだのに、と悔やむ言葉にも聞こえる。
T 多分、ジルセウは、国会における多数派工作も自分でなければやれないという自負と共に、当時から一部の消息筋の間で、奄ェ立ち始め、きな臭ささも感じられ始めていた今回の不正汚職事件の解明を目的に、必ずCPI(議会調査委員会)の設置が具体化してくることを誰よりも先に認識していたに違いない。脛に傷持つ者は、常に防衛本狽ェ強い。もう一つ、92年頃に事故死したウリセス元PMDB党首の言葉だったと記憶しているが、「CPIなるものは、最初はこれくらいで収めさせようと(政府の)押さえや牽制が効いても、一旦、走り出してしまった後は、何処へ向かって走って行くか、知れたものじゃない」といったこの国で今でも立派に通用する政界の格言も厳然としてある。
 政治が駄目なら経済で
A 不正汚職事件を中心に、政治面で先ず思い切った活路の見出せないルーラ大統領にとって、残された唯一の望みは、経済政策の面にある、と言っても決して過言ではない。それには、ルーラ政権の発足当時から、ドルの俣ォとインフレの桝魔ゥら国内経済を守り、国際金融社会からの信用を繋ぎ止めるという名目で、パロッシ蔵相が握り続けてきた固い財布の紐を何とか緩めさせなければならない。特に自分の再選が実現するか、葬られてしまうかの瀬戸際に立たされる今年の4月から投票日(10月1日)の直前にかけて、落Z支出(投資)を目立って増やし、経済成長、雇用促進、所得分配、貧困対策に何とか繋げて行く必要がある。特に経済成長は、最低5%が至上命令のようだ。
T 信頼できる消息筋の情報によれば、ルーラ大統領は、自分の再選含みで今年5月以降の最低賃金をこれまでの水準から名目で16.7%、インフレ上昇分を差し引いて実質でも11%の引き上げを行い、350レアルの線に持って行く強い意向を固めていると伝えられる。最賃が上がれば、政府の支払う年金恩給や社会保障費などへ連鎖的に46億レアルの追加負担増になる。それでも、最賃決定が選挙に与える影響は、タイミング的に計り知れなく大きい。だから、350レアルが無理なら、悪くても340レアルの線を確保したい腹だそうだ。再選への切り札と考えている節が強い。
A <ルーラ再選>のもう一つの大きな鍵である経済成長の水準がこの体たらくではどうしようもないのではないかい。一昨年4.9%を記録した経済成長率は、期待されていた昨年の場合、次々下方修正され、最終的には、3.5%前後を記録するのではないかと見られていたが、昨年の第3四半期に更に1.2%というもう一段低い思いがけないマイナス成長を記録したため、通年では、2.3%から2.5%前後の一段と低い成長率に落ちつく可柏ォが強くなった。この低い経済成長の原因が世界一断トツの金利水準と基礎的財政黒字の目標達成による投資支出削減を原因とした超引締め策にあることは、明白だ。爪の先に灯を点すように、こうも財政が引き締められては、経済成長が出来ないよ。参考までに、世界で2番目に金利水準の高い国が確か年利10%前後のメキシコ、3番目が年利6%のトルコ順となっている。
T 金利高で一番得したのは、やはり金融機関だろうね。PTが野党時代から一貫して目の敵にしてきた金融機関が<ルーラ政権>で受難の時期を迎えるだろうといった卵ェは、ものの見事に外れ、高金利プラス活発な金融商品の運用で、各銀行がFHC時代以上に我が世の春を歌い、それに反して、生産部門が皺寄せを受ける形になった。ブラジルの経済成長率が如何に低い状況にあるかは、2005年に中南米諸国に見積もられていた経済成長率は、4.3%、新興諸国全体の卵z経済成長率が5.6%だったから、ブラジルが中南米諸国の経済成長の足を引っ張ったことになる。参考までに、石油景気で湧くヴェネズエラの経済成長率は、中国並みの9%、モラトリアムの後遺症を乗り越えてまだ日も浅いアルゼンチンが8.6%だそうだ。このままでは、この国がいくらBRICs諸国の一員に加えられているからと喜んでいても、やがて経済成長がより好調な他の新興諸国へ魅力が移って行ってしまい、糠喜びに終わってしまいそうな気がしないでもない。
A ただね、中南米諸国には、狂犬とまでは言わないにしても、絶えずポプリズム(大衆迎合主義)という名の大変気の移ろい易い指導者タイプが多い。だから、経済(成長)だけ好調だからという理由で、危ない狂犬にとても良く似た大統領のいる国へ簡単に投資先を変更したら、手を噛まれてしまう心配もある。
T その点、ブラジルが今年の大統領選挙で仮に政権交代を伴う結果になっても、どちらかと言えば、共に中道左翼の政治勢力として収斂し、接近してきているPTからPSDBへのバトンタッチになる公算が大きいから、経済政策面に急激な大振れまで引き起こすことなんてまずあるまい。政権与党になった後のPTは、左の方から中道の方へ政治的な軸足を移し、既に中道からやや左寄りの政治勢力と自他共に許していたPSDBと陣取り合戦を演じてきた。その結果として、最近の両党の党色は、限りなく似通っている感じだよ。
A 実は、我々がやっているメーリングリストであるBatepapoの日本側の有力メンバーで、最近から日本ブラジル中央協会の広報理事という要職にも就いていらっしゃる大学講師の桜井敏浩氏が一昨年末に当地へ来られた時、宿泊先のホテルで長時間に亘り日本側の視点に就いて教えていただいたことがあったが、「FHC政権がルーラ政権に変わった時でも、欧米の金融市場関係者やその道の観測及び分析を専門とする筋の間では、ブラジルの経済政策そのものの振れる幅がそう大きくないことを既に卵ェしていたそうだ。それが今でも強く印象に残っている。
T 一時流行した言葉で言えば、<卵ェの範囲内>に収まったということかな。ここで今にも天が落ちてきそうな杞憂でてんやわんやしている最中に、さすがにその道の専門筋と言われる人たちの見方は、大したものだな。外から観測した方が事の本質をより正確に把握できるということかもしれないが、まあ、ひとつ言えることは、この国が国際金融システムいう確固とした枠組みの中に既に組み込まれて活動し、今後ともその資金の流れに依存して行かなければならない以上、いくら政権交代があっても、自分勝手で無茶な経済政策の立案や運営は、出来ないということだろう。ただ、少し蛇足めいたことになるが、その頃だったか、米国のメガ投資家ャ鴻X氏が米国で出した「もしセーラ大統領以外なら、カオス(混沌か大混乱)しかないぞ」は、ルーラ革新政権が実際に誕生してみれば、大いに的外れの形となり、いかにも上手の手から水が漏れた感じの卵ェだった。
 焦眉の急は経済成長に
A ブラジルみたいな開発途上国で、経済成長が必要不可欠になる理由のもう一つは、何時までも釣ってきた魚ばかり与えていないで、社会政策の対象になっている貧困層に魚の釣り方から教えてやって、本当の自立を促す必要性が指摘されているが、そのためには経済成長を伴わなければならない。パロッシ蔵相をトップとする政府の経済スタッフは、これまで第一に国際金融社会の信用を何とか失わないためにも、金融と財政面での引締めによるインフレ抑制、引いては経済安定に力を注いできたが、そろそろ経済成長により比重を移すように方向の転換、修正をすべきではないか。確かに経済成長には、インフレ高進が伴いがちだ。子連れ狼みたいにインフレまで一緒に連れて来て貰っては困るが、持続性のある本物の経済成長を是非これから期待したいね。
T インフレ再燃の懸念は、昨年の主だった各指数を見ていても、一応遠のいたと見ていいのではないだろうか。IPCF:ipeの消費者物価指数が4.53%、IGP-DIの卸し物価指数が1.22%、ICV-Dieeseの生活指数が4.54%、一番最後に出た政府の公式インフレ指数として採用されているIPCAが5.69%止まりで、許容範囲内に収まった。2006年も揃って低水準のまま推移行くとの見方が有力だ。
A ということは、インフレ再燃の可柏ォや懸念を理由に、政府の経済スタッフがこれまで援用してきた高金利政策が続け難い環境に入るということになる。尋常ではない高金利の水準が何とか改まれば、高金利を目当てに流れ込んで来ていた短期滞在型の外資の量も次第に正常化して行く筈だし、そうなれば異常なレアル高、ドル安の為替相場も是正され、再び輸出意欲を高めることにも繋がるのではないか。
T フォーメゼロ(飢餓撲滅)運動始め、いくつかの社会政策面での試行錯誤や失敗の後に月額60レアルのボウサ・ファミリア(家族手当)なる統一した貧困対策がやっと採用されたが、まさに釣ってきた魚を貧困層に与えて糊口をしのがせている。それでも与えておかなければ、貧しい人たちが死んで社会問題化してしまうという事情も伺えるが、このままではやはりいけないような気がする。  
A 選挙までに経済成長を演出し、雇用の創設や所得の向上の図れるような余地を造り、貧困対策につなげて行かないと、ルーラ大統領を初当選させた時のあの凄いカリスマ性もやがて一緒に燃え尽きてしまいかねない。
T 持続的な経済成長のためには、効率の良い落Z面からの投資や支出が必要になるが、大蔵省主導の引締めは、掛け声ばかりで、一方では、公務員の無駄な海外旅行や政府が必要とする資材の高額の買い物などでは、湯水のように大切な資金を無駄に使っている。これは、この国の歴代の政権の行政面に常に付き纏って離れない悪しき習慣だ。 
A パロッシ蔵相は、ルーラ政権発足以来、ジルセウ官房長官(当時)と共に、インヴェンシーヴェル(不倒の閣僚)という風に言われてきた。それがジルセウが閣外へ去った今、一段と揺るぎない不動の地位を固めるのかと思っていたが、そうではなかった。どの政治家が考えることも同じである。
T ルーラ大統領の胸の中には、蔵相の立場と地位を牽制しながら、再選目的に政府の投資や支出を何としても増やし、既に指摘されたように、政治が駄目ならば、経済面で巻き返しを図るぞ、勝負をするぞ、といった思いが強く固いのである。ルーラ大統領が就任した2003年の経済成長が0.5%、2004年が4.9%、昨年が2.5%止まりとすると、3年間の平均経済成長率も2.5%に留まり、8年間のFHC政権の2.2%を僅かに上回る程度だ。現大統領は、いつも前政権時代の低い経済成長率を非難めいた口調で指摘してきたが、これではやがて目糞が鼻糞を笑うのに等しくなる。
A このままではやっていけないという大統領の焦りに似た気持ちは、ロウセフ官房長官というジルセウに替わる新しい蔵相の好敵手を登場させたことでも良く理解できる。闘士型の彼女の簡単な自伝みたいなものをある有力な伯字紙で読んだことがあるが、64年の軍事革命の初期に政治追放された挙句、軍の兵士あたりからひどい目に遭わされた数少ない女性活動家の一人であり、それだけに筋金入りの感じだ。ブラジル経済の成長よりは、その安定(引き締め)を狙いとした守備型の高金利政策と基礎的財政黒字の目標達成には、ズバズバ注文を付けて憚らない。そろそろ経済安定よりも経済成長を重視すべきだ、とね。
 



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