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サンパウロの農大会館でバイオ燃料に就いて講話された麻生 悌三さんの講話概要
既にこの欄でも紹介しているサンパウロにお住まいの東京農業大学OBで長く日本商社においてブラジルの農産物を扱う商社マンを遣っておられた麻生 悌三さんが母校の後輩の短期実習研修生の受け入れ時にサンパウロの農大会館でバイオ燃料に付いて話をされた時の講話概要を送って呉れました。時宜を得た話題でもあり収録しておくことにしました。
『農大の研修生は1ヶ月の短期間ですがバイオ学科の学生でアルゼンチン実習7名、パラガイ2名、ブラジル2名の計11名に引率教官2名の合計13名でした。サンパウロから各地に実習に散って行きました。』とのことです。
写真は、私も始めて聞く名のバイオ植物Jatropha(日本名:ジャトロファ もしくは ヤトロファ)の緑のオリーブに似た実をgoogleから探し出したものです。


サンパウロ東京農大会館における麻生さんの講話概要
ブラジルは食糧とエネルギー資源に恵まれた国と云えます。その対比としては日本で、食糧自給率40%、エネルギー自給率10%しかありません。今日、ブラジルでも問題としてなっているアイテムは1)環境問題 2)エネルギー問題の2点が挙げられます。環境問題ではさまざまな分野がありますが、農業問題としてのひとつに、森林(熱帯雨林)の伐採による環境変化があります。熱帯に穀倉なし、のたとえどおり、熱帯圏では水田の米作以外、穀物(作物)の生産性は乏しいといえます。その理由は、原始林のままでは有機質が堆積していますが、伐採を行うと、表土の有機質が強烈な日光と雨により、加水分解されて,無機質土壌になり生産性を極度に低下させるによります。伐採―焼き畑農業は、零細農家から大規模資本農業にひろがりつつあります。南のリオグランデドスール州から大豆栽培の、栽培前線は北上し、ブラジル農試EMBRAPAの品種改良の成功(熱帯地域での品種改良による栽培可能)等も追い風となり、熱帯雨林地帯のMato Grosso do Sul,
Acre,Rondonia州にも栽培が広がっています。原生林伐採―焼き畑―大豆栽培―草原化―
再生林―原生林の周期には数世紀の年月を要し、環境破壊に深刻な影響を及ばしています。
現在ブラジルの大豆生産量はアメリカについで世界第二位、生産量は5900万トー年間で栽培面積は約2000万ヘクタール(平均1Haで3トンの収穫量)で、そのうちの50万ヘクタールが熱帯雨林地帯の栽培です。尚、よだんになりますが、GMO(遺伝子組み換え)とNON−GMO(遺伝子非組み換え)の2種類の大豆がありますが、御隣のアルゼンチンでは100%GMOですがブラジルも、GMOへの切り替えがすすみ約70%が
GMOだろうと推測されています、理由はGMOの方が除草剤散布可能等、栽培コストが安いことが起因しています。
第二のエネルギー問題ですが、ブラジルは世界に先駆けて、砂糖黍よりとったアルコールを自動車燃料に取り入れ1979年にアルコール燃料車を開発市売しました。まだその当時は環境問題からのアルコール燃料転換が理由ではなく、当時、確か石油の自給率が60%ぐらいだった筈で、石油輸入の節約を目的としていました(現在は新油田がリオ州沖のカンポスに発見され100%の自給)。アルコール車は1980年には全自動車生産台数の80%を生産されまいた(現在は生産台数の2%がアルコール車)現在ブラジルでは、アルコール車、ガソリン車、その両用を使用するFLEX車と呼ばれる車の3種類の自動車が製造されています。FLEX車に関しては、一般的にアルクールがガソリンの価格の60%以下ならアルコール燃料を使用する方が得策と言われています。現在ブラジルの石油生産量は日産200万バーレルです。アルコールの生産に関しては、砂糖黍生産量の50%を砂糖の生産、50%をアルコールの生産とシェアーを分け合っています。アルコールのガソリン燃料への混入率は上限25%までと決められており、現在のガソリン車のアルコールの混ぜ合わせは24%です(ブラジルには100%ガソリン車はありません)。石油自給率100%でアルコールをガソリンに混ぜれば当然ガソリンに余剰がは発生します。御承知の通り、ブラジルでは鉄道が未発達で輸送の大部分をトラックに依存しており、その燃料はジーゼル燃料です、そこでブラジルはガソリンを輸出し生産不足のジーゼルを輸入して辻褄を合わせています。昨年2006−2007年までの1年間の砂糖黍と砂糖、アルコールの生産量は下記になります。
砂糖黍生産量        426百万トン
砂糖生産          296百万トン
アルコール生産       170百万トン
このジーゼルの植物燃料に現在、注目が集まっており、ブラジル、ではまだ試作段階ですが、中国、インド等では本格的生産が始まった、作物Jetrophaの概要を御紹介いたします。
ジェトロッハは中国では古河財団がインドネシアでは九州電力が栽培を開始しております。
この植物は荒地に栽培可能で、低雨量地帯でも栽培でき、驚くべき経済性(油の含有量は種子の38%)を持っています。

JETROPHAの特性概要

学名Jetropha curcas L。和名ナンヨウアブラギリ、トウダイクサ科。原産地は中米だがパラガイ国のチャコ地方にも自生。ブラジルではPinho Manso 英名ではBarbados Nutと呼ばれる。多年草の低木で草丈2−4メーターに達す。種子繁殖の栽培が一般的で、播種あと2か月で苗を移植、本格的収穫は定植後、3年で40年ぐらい収穫可能、種子より搾油した油はそのままジーゼル油として使用可能。(永年作物である点に注目)
JETROPHA OIL AND DIESEL OILとの特性比較
                   Jetropha Diesel
比重                 0,9186        0,82−0,84
着火温度               240・110C     50C
残留炭素               0,64         0,15 以下
セタン                51,0         50,0以上
蒸留温度               295C         350C
Kinematic粘性            50,73cs      27cs以上
硫黄                 0,13%        1,2%以下
カロリー               9740kcal/kg 10170kcal/kg
溶融温度               8,0C          10C
色調                 4,0           4以下

各種搾油作物の生産性比較

作物        油含有率      生産性(Kg/Ha) 搾油量Kg/Ha/Year 

ヒマシ油       50%      1500         750
ひまわり       42        1600         672
ゴマ         39       1000         380
落花生        39       1800         702
菜種         38       1800         686
でんで椰子      20      10000         2000
大豆         18       2200           396
綿花種子       15       1800         270
ババスー椰子     04      15000         600
Jetropha       38       4000         1520
灌漑Jetropha     38      12000         1460

上記よりJetrophaは化石燃料に代わる、緑の油田と言っても過言ではない。
以上
麻生
2007年8月4日                    



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