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山下晃明のブラジルで損せぬ法(248)/(249)/(250)、8月、9月、10月号
リオの山下晃明さんは、豚インフルエンザの各国の現状を毎週纏めて送って呉れて居りメーリングリスト、BLOGでも報告していますが、最近怠っていた掲題の実業のブラジルの『ブラジルで損せぬ法』を一挙4月号まで彼のHPに収録したとの連絡を受けました。3ヶ月分づつ掲載しても3回分に成りますが、是非収録して行きたいと思います。
今回は昨年の8月、9月、10月号の3日分で北京オリンピックとかサブプライム問題とか少し話題性に時差がありますが、彼のブラジルを通じての世界経済解説は、時を経てもその時代性を反映した普遍性を持っておりそれが実に20数年書き続けて来ているべストセラーの根底に流れていると云えるでしょう。
同じ『実業のブラジル』誌に彼の紹介で書き始めた私の『南伯便り』は、1ページの南伯に置ける動きを拾い集めたニュースレター程度のものですがそれでも3年書き続けています。20数年は、途方もない年月です。
写真は、昨年12月にリオのサントスヅモン空港で昼食を御一緒した時の写真を使いました。


山下晃明のブラジルで損せぬ法(248)

テルモリオ火力発電所見学

 リオ商工会議所の見学会でドュッケ・デ・カシアスのテルモリオ火力発電所の見学に参加した。1995年にブリゾラ知事が発表したころは、原油価格も安かったし、建設予定地の野原を見るに、ICMをリオに落とすことを熱望する政治的発言であろうと多分に眉唾の感で見ていたが、2003年末にペトロブラスが43%の株式を取得し経営権を握ってから、本格的に工事が進み近年完成、現在天然ガスを50%はボリビアからのパイプラインで、残りはリオのカンポス沖から供給で稼動している。最新技術の蒸気とコンバインド・サイクル高温発電システムで出力1036メガワットと発電所としても大きい部類に入り、この発電所のみで450万人への電力供給が可能とのことである。
 参考までに日本で有名な黒部第4水力発電所が335メガワットであるので、テルモリオはその3倍の発電力である。世界最高水準の発電熱効率で汚染排水もなく二酸化炭素排出量も非常に少ない公害にやさしい発電所だそうだ。
 リオには、発電ではアングラ・ドス・レイスにブラジルで唯一の原子力発電所もあるが、カンポス沖にブラジル最大の油田があるので、石化コンビナート計画も進んでいる。
 ドュッケ・デ・カシアス市には1961年からREDUCというペトロブラスの大型精油地区があり、RIOPOLというポリエチレン製造などの石油化学工業地帯が完成している。
 2012年完成予定のイタボライ市近郊の4500万平米の土地に84億ドルを投資して建設中の重質油も精製する石化コンビナートCOMPERJが稼動すればラ米最大の石化コンビナートとなるとのことである。
 リオの自慢をもう少し許していただければ、セペチーバを中心に9ヶ所、3港と6つの積み出しターミナル建設に、投資総額53億レアイスの鉄鉱石の積み出しを主目的とする民営港湾施設の計画があり2012年までにはすべて完成する。オ・グローボ紙によれば、すでに工事を開始し、本年完成予定のCSAのターミナルのみで年960万トンの積み出しが可能になる。RIOには世界企業に成長したペトロブラス本社があるとはいえ、ブラジルの底力であろう。
 またリオが2016年オリンピックに立候補したことで、IOCの事前指摘でガレオン空港の不備が問題となり、州知事がINFRAEROの民営化や株式公開の提案をするようになった。リオが大化けするかもしれない。

 温暖化ガス排出問題に思う

 洞爺湖サミットでも、結局、具体的な削減目標も義務期限も決まらず、中国やインドなどが反対のまま無策で終わったようだが、地球の危機は、まったなしに来るのに、こんな手ぬるいことでよいのだろうか。
 ドシロウトの意見と笑われそうだが、一挙に解決できそうなよいアイデアがある。水道料金はご存知のように上水道料と同じ水量の下水料が集金されている。上水を使用しただけ当然下水も流すのであるから良い考えである。家電製品では廃棄処分料を新製品に加算するシステムが出来てきた。同じことを石油に適用してはどうだろうか。
 すなわち世界温暖化ガス排出処理料を算出しそれを世界石油消費量で割って1リットルあたりのコストを計算し、原油かガソリン価格に上乗せするのである。どれくらいになるか知らないが、例えばこれで原油かガソリン価格が倍になったとする。反対であろうがなかろうが消費する国は消費量に応じて温暖化ガス排出処理料を払うことになる。
消費者は高いと文句を言うだろうが、なれば使わなければ良い。ガソリン車に乗るのを止めて電池や他の燃料で動く車に変えることを奨励することになる。さらに莫大な、ガソリン価格の倍の、温暖化ガス排出処理資金がどこかにプールできるだろうから、これを新エネルギー開発、二酸化炭素の処理技術開発に投資すればよいのである。

 世界的なインフレ傾向

 ブラジルのFGV-DI指数は7月が1.12%で、過去12ヶ月累積が14.82%になったが、世界中がインフレ傾向である。なにしろ主エネルギーの原油と食糧が猛烈値上がりしたのだから仕方ない状況ではあるが、今回のインフレは過去と少し様相が異なるようだ。
 前回の石油ショックのときは、物価も上昇したが、同時に昇給ストの声も上がった。今回は労組がそれほど騒がない。市民も車の遠出を控えたり、外食を控えたりする傾向が強いようだ。中国やインドの消費加熱が資源や食糧不足を招いているとするむきがある。もちろんこれらの国に需要の猛烈な増加があるが、これ以上にグローバリゼーションで一ヶ所に集中した巨額な資金が投機として集中投資されたことにより必要以上に値を押し上げていると見ることができる。これを恐れる先進国もあって、WTOでも米国が中国とインドを名指しで攻撃した動きにみられるように、消費加熱への危機感は強い。
 最近日本で多発している、家庭の破壊や無差別殺人とか、グローバリゼーション時代に乗り切れなかった層の社会への不満行為と見ることができる。地方の不況を含めこのような世相では、労組が昇給ストに走っても民衆が簡単には追従しない状況があり、逆にどちらかというと消費を抑えようとする方に賛成の動きがでる。
 食糧高騰のインフレはエンゲル係数の高い低所得層を直撃するから中国やインドなども深刻な政治問題になるが、世界中で、消費を抑える傾向がでると世界スタグフレーションに陥ることになる。

 
 iPhone3G日本発売3日で300万台

 アップル社のiPhone3Gは昨年6月米国発売から1年後、7月に日本での発売で3日間で300万台売った。携帯かパームPCなのかわからぬ商品だが、16ギガのメモリーを有し、タッチパネル、もちろんインターネットはつなぎ放題、使用OSの自動アップデート、地域差、言語差なしと米国人の発想はすごい。日本人はハード、ソフト、コンテンツ、通信を別々に代価を取ろうとするが、iPhone3は使用ソフトやデジタル・コンテンツの手数料収入も含めて価格を設定、You tubeなども自動対応、iPODなどはおまけで付いてすべてを包括している。
 価格も199ドル程度と安いが、ハードのみで500ドル以上の価値の商品を各ソフトメーカーのソフト使用補助金その他を価格に組み入れて値下げを達成している。インターネットは映像や音楽のコンテンツの価値を限りなくゼロに近づけているが、これにハードを含めたことが斬新なアイデアである。今話題のデジタルDVDの「ダビング10」法なども含めコンテンツの著作権保護法をことごとく無能にしてしまった。

 北京オリンピック

 北京の開会式は雨が降りそうであったが、中国の気象当局は、ヨウ化銀を装てんした小型ロケット1000発を上空の雨雲に向けて発射して雨雲が会場上空に来る前に人工的に雨を降らせたと伝えられている。国威をかけた開会式、実に大勢の人間が一糸乱れず絵のように動くのは凄い。現在世界にこれだけの人員を動員し訓練できるところは独裁国家か大宗教以外にはないだろう。
 その意味では中国は世界に国威を十分に見せつけたが、相手国によっては感心するよりも脅威の感を受けたかもしれない。なお意地悪な見方をすれば如何に人数が多くても、全員同じ考えで同じ動きであればただの一人と同じこと、共通の弱点をつかれると総くずれになる、やはり、なるべく多くの人がまったく別の価値観を持つ多様性、独自なアイデアが人類には必要であろうと思う。
 なおNHKの国際放送を見ている人はオリンピックの実況映像がほとんど見られないことに気がついたと思うが、グローバル投機の時代は放送権料ももうれつに値上りしており今回のオリンピックの世界放送権は17億ドルとのことだ。オリンピックばかりでなくワールドカップなども前98年大会から02年大会に放送権が実に10倍に値上がりして14億ドルになっており、民放はスポンサーがみつからず放映できなくなっている。
歴史的に殆どのスポーツは、テレビ報道のおかげでポピュラーになれたのであるが、皮肉にもこれではTVボイコットである。将来デジタル多チャンネルの時代になると、スポーツ・クラブは自分のテレビ・チャンネルを持って、自分のチームの試合の放送を安価に行う時代になるだろう。

山下晃明のブラジルで損せぬ法(249)
インフレ進行が一段落か

 政府は、インフレはコントロール下にあると公表していたが、7月には支払い手段M1の増加をゼロに抑え、M1の過去12ヶ月累積増加率をインフレのそれ以下にして通貨引き締めを図った。物価指数FGV-DIが8月はなんとマイナス0.38%で、過去12ヶ月累積が12.82%となった。このまま月1%で推移すると年末には12.33%であり、年末に20%を越える事態はまぬがれたようだ。
 なおFGV-DIは家賃修正などに直接影響するから、まだ予断は許さないが、外貨の投信はインフレ傾向を嫌って引き上げを開始しており、株価は下がり、為替は9月12日のドルが1.815で中銀の買いがストップするほどになった。対ユーロでもドル高になっている。
 また選挙まじかで、バハマスあたりに置いている選挙資金を戻すために為替レートを操作させたという人もあるが、それもありうることである。

 
 原油高騰・本誌6月号の4倍説が的中

 スペキュレーションの上限4倍説で、今回の原油高は150ドルでひとまず収束すると本誌で予想したが7/3の145.29が山で値下げが始まった。原稿を書いていたころのプロの予想は180ドルは普通で200ドルになってもおかしくないと言っていたが4倍説が当たった。

 逆グローバル化現象

 米国では投資会社1位のメリル・リンチがバンク・アメリカに身売り、2位のリーマン・ブラザースが経営破綻と騒いでいる。日本の不動産デベロッパーの大手も行き詰まった。
 飯田流陰陽自然学では、2009からすべてが変わり、今年中にその兆候が出て十月には旧潮流が完全崩壊終焉する。今までの政治経済、文明の常識、規制概念、価値観の一切が通用しなくなって生まれ変わる。一部が壊れるのではなく、あらゆる領域で一度崩壊して新生出直しとなる
 過去の延長ではなくまったく異なった方向へ、全体としては集中から分散に向かう。
 これは逆グローバル化現象と見るべきで、必要があれば何でもいくらでも輸入できて大量消費は美徳であった過去から、一転して、消費の削減、運賃燃料節約「地産地消」の経済に変わる。
 大都市集中グローバル経済を止めて、小都市でマーケット・シティを形成する。自転車で行けるくらいの比較的狭い地域にマーケット、病院、住居などを集中し、公共交通機関を置く、個人的にもまとめ買いを止めて必要なものを必要なだけ買うようにすれば在庫の無駄がはぶける。これまさに個人の看板方式ですな。地方都市の駅前マーケットで、昔は魚の切れ身や大根を半分買えた筈だ。現在閑古鳥が鳴いている地区の再活性化を真剣に考える時期にきたようだ。自動車メーカーさま、遠隔地農家用に、今こそ一人乗りのインドのタタ社の車より燃費の良い無公害小型自動車が必要です。
 まじめな国日本で、ブランドごまかし、産地ごまかし、品質ごまかし、次から次へと出るは出るは、これでもかというほど不正が発見された。中南米人が「おそれいりました」と脱帽するくらい激しいが、これもこれからの社会が変わる。これら政府とつるんだ旧悪システムが崩壊する兆候であろう。

 PRE-SAL層の新油田発見騒動

 ブラジルのカンポス沖の海底油田は水深1300メートルの海底を掘りその下2000メートル巾の岩石層(POS-SAL)から採掘しているが、岩石層の下の岩塩層を掘りその下のPRE-SAL層、水面下3600から4600メートルでガスと石油が発見されたのがきっかけである。リオ・サンパウロの州境付近の多国籍企業との共同開発鉱区ツッピーなど多数の鉱区のある海底2000メートルを掘ったPOS-SAL層の下の岩塩層をさらに3000メートルを掘り下げた水面下5000から7000メートルになるが、ここのPRE-SAL層とも油脈はつながっており、推定埋蔵量700億バーレルというガスと石油があるとされている。
 これの探掘には6000億ドルかかり、30年間に関連産業1兆ドルの事業になること。多大の資金投入の前に、PETROBRAS以外にPRE-SAL層専門の新公社を設立すべきと、政治的かけひきが話題になっている。
 またイデリ・サウヴァッチ上議は、地質学的見地よりの境界新法案ではツッピー、ジュピテル鉱区を含めリオ州は外れてサンパウロやサンタ・カタリーナ州に利益をもたらす可能性が出て、俄然政治的動きが活発になってきた。ルーラ大統領は鉱区が沿岸から300キロメートル離れた地点だからローヤリティーはどこの州にも入らないと発言しているが、果たしてどう収まりますか。
 今回の発見鉱区の場合、水深2000メートルの海底を掘ると、その下海面から3000メートルまでがPOS-SAL層で、その下に岩塩層が同じく5000メートルまで続き、石油があるのはさらにその下のPRE-SAL層である。2000メートルの海底で、水面下5000から6000メートルでの採掘となるが、既存の技術では調査が目的の探鉱井戸は掘れても営業採算的採掘はまだ無理で、まったく新しい技術とそれを基にした新資材の開発が必要となる。さらに2012までに最低12のプラットフォームが必要、2042までには138プラットフォームが必要、さらに地上処理のための港湾施設増強も必要なことを考えると、その資金源、建設期間など多くの難題があり、今の段階での利権獲得運動は「捕らぬたぬき」に近い状況であろう。ちなみに現在世界で一番深い採掘は石油で5500メートルくらい、ガスの場合で7000メートルくらいの深度から採っている井戸があるとのことである。

 北京オリンピック

 中国は国威をかけて、オリンピックに投資し、意表をつく開会式で世界を驚かせたが、世界一、金メダルの数51個にも驚ろかされた。選手にプロコーチをつけて徹底的にしごいたと思われる。何しろ銀、銅の合計よりも金メダルの方が多いのであるから、初めから世界一以上の記録を目標に、才能ある選手を開拓して特訓をしたことになる。日本のようにオリンピック記録になるべく近い記録の選手を選考し強化合宿するのとは根本的にことなる。
 開会式や閉会式は香港の有名な映画監督チャン・イーモウ演出、舞台装置にも大変な金がかかっている、ちょっと危険で落下事故がなくてよかったが、メイン会場の中空に張りめぐらせたワイヤーに中吊りのカメラや照明映写装置、無数の花火のコンピュータシンクロなど、一体どれほどの人員と予算を使ったのかは知らないが、他の国には到底まねのできない芸当であろう。
なお閉会式に出てくるあどけない子どもまでが、訓練された作り笑いをしている。何処かで見たことがあると思って、気がついたのはサーカスである。世界中が中国国家サーカスをみせつけられたのかもしれない。
 また例え中国といえども、人件費が上がっているから、これだけの人員を一つの催しもの、それも1回限りのショーに動員出来るのはこれが最初で最後になりそうである。
日本は世界第2の経済大国と自負しているが、スポーツに関する限りは、ユーラシア・太平洋地区でも中国、ロシア、オーストラリア、韓国にも劣っており、イメージはかなりダウン、日本の国際的な出番はなくなったように思われた。
 ブラジルはBRICSの中ではインドよりは上であったが中国とロシアには大きく離された。COBがオリンピックのための予算6.9億レアイスの過半は選手に使わず委員会の運営費に出費したことが問題になっている。 

 VEJA誌の40年特集号の表紙

 銀行のコマーシャルではあるが、表紙、表紙裏、裏表紙、裏表紙裏の4ページに購読者の名前が印刷されている。デザインの鉛筆の絵の中にも4色刷りで名前が入れている。オフセットの印刷には4か5色の色分解フイルムが必要で1枚だけ別の印刷すると大変な経費がかかる。
 デジタル・プリンターのようなフイルムなしの高速多色刷印刷機で名前入れをプログラムで印刷したものであろうが、公称発行部数110万部の雑誌の個別印刷は口で言うほど簡単にできることではない。最新技術の応用であろうが、将来、マスコミ雑誌がインターネットと同様に、購読者各自に表紙のみでなく、個別のメッセージを印刷することも技術的には可能であることを示したとすれば画期的なことで、雑誌という商品が将来どう変化するか注目すべきである。

山下晃明のブラジルで損せぬ法(250)
グローバリゼーションの終焉

 米国の主要投資銀行が相次いで破綻、銀行に身売り、世界中の株価が記録的な値下りをしている。陰陽自然学の飯田亨先生によれば、この10月には次の改革時代への強烈な新分裂解体の動きが見えるようになるという。
 「システム統合画一化を続けてきた長い旅路が最後の加速をし、2008年4月〜6月にその画一化の鎖が解け始め、10月に完全崩壊する。旧潮流の事実上の終焉である。」(地球核力激震10年22ページ)
 これらの恐慌的できごとの切っ掛けとなったサブプライム問題をつっこんで考えてみよう。9月24日号ベージャ誌に興味ある記事が掲載された。1980年から2006年まで世界のGDPは380%増えているのに対し株価や債券など金融商品の時価総額はその3倍以上1300%も増えているというのである。
 もう少し詳しく内容を見ると、世界のGDP総額48兆ドルに対し金融商品は170兆ドルその内訳は株式時価55兆ドル、銀行預金45兆ドル、デリバチブ金融商品44兆ドル、外貨準備と公債26兆ドルとなる。中でも金融デリバチブ商品の44兆ドルは実担保が1兆ドルほどしかなく、今問題のサブプライム証券はここに含まれる。
 投信などは金利以上の利益を最終目標にして、常に右上がりの値になるように高給取りのプロが最新のコンピュータソフトを駆使して自分の職命をかけてゲーム感覚で誘導する。金利と同じ儲けであれば投信など買う人はいないから、年利子が数%とすれば、目標利益を10%以上に誘導するのも極めて当然であろう。かたやGDPは、企業活動の結果で経営者が地道に利益増に努力するも平均純益率は数%程度である。地球全体の経済がゼロサムであるとして、GDPに含まれないウラ経済もあるが、地球全体の自然増加はその間に取り込んだ資源やエネルギー、労働人口増程度であるから、これ以上大きな儲けのあるときは一方で大きな損もあると覚悟せねばならない。
 前述の金融商品の数字は2006年までで、ちなみにこの期間の平均増加率を見るとGDPが年5.5%で金融商品のそれが年15%である。両者がその後も同じ率で増えたとすると2008年末にはGDPが53兆ドル、金融商品が225兆ドルとなってその差は4.24倍になる。この差は開く一方で、これはまさしく金融バブルであろう。
1997年からの日本の銀行破綻再編成の時も誰もが想像しなかった巨額な救済資金が必要となり、同時に金融政策不安で市場が疑心暗鬼となり長くデフレが続いた。なぜこのような巨額な赤字が発生するのか、政府当局者もいまだ真の原因を究明しておらず、ただ新資金をつぎ込み経営者を変えただけで継続していると想像される。
その意味で現在の赤字の証券会社や投資銀行を別の金融機関が買収した場合も、従来と同じ証券操作を継続した場合は、この金融機関が将来再びもっと大きなスケールで大赤字に突入するリスクを持つことになろう。
 最近は投信銀行や証券会社が破綻する度に、先進国一国の国家予算レベルの救済が必要になっている事実にお気づきの方もおられよう。
 金融商品バブルがGDPの4倍以上もあれば、それがはじけた時は国家予算以上の損金が発生することは容易に理解できる。極めて問題なのは、政府が救済しようとしても、税金では対応不可能なことである。なぜならば金融デリバチブ商品だけで現在60兆ドル以上といわれており今回の7000億ドルを注入してみても少なすぎて市場価格上昇への起爆にはならぬ恐れがある。何よりも税金はGDPの一部であり、絶対にGDP以上ではないことから、資金源として未来の税収を当てるとしても、例えば世界税収がGDPの平均20%として10兆ドル程度とすると60兆が焦げ付いたときの赤字を補填するには6年間の税収を全部充当せねばならぬ計算になる。

 証券会社を監督する国際機関が必要

今のIMFにその能力があるかどうかわからないが、全世界の証券発行を監督する国際機関が必要と思われる。表裏経済関係なく世界中の資源供給、労働人口、太陽熱や風など受け取るエネルギーなどの増加を量的に把握し、債券証券の発行量を把握する。給料、利子、家賃、利益の総和を知る必要があるが、特に表裏の経済の「世界黒字」―「世界赤字」を定期的に発表する必要があるだろう。

 株価の値上がり値下がりとは何か

 世界に一つの株式会社があり、一人の株主が株価を決めるとすれば、株価とは資本金の価値評価であって、バランスシートを作成すると、株価の値上がり分とは、資産の含み利益か未受け未来利益金であろう。
 では世界中の株価が半値になった。この株価の値下がりとは何か、株価の下がった分は、資産の含み損バブル清算か、未来の損金であろう。
 企業が社債を発行するのも基本は株と同じで、会社の規模、業績、計画など市場の状況や決算書、計画書を見ながら価格を決めるのであるからその数字が実態と大きく乖離することはない、ところがここにハゲタカ・ファンドが入って敵対的買収をしかけたときは話が違ってくる。国家予算に近い資金が動き、株価をはねあげ、株価をバブルにするが、買収に勝つためには一夜に巨額な資金が必要になり、投資銀行はペーパーを売りまくって資金調達をすることになる。

 金融機関発行証券の値上がり値下がりとは

 証券会社の運営は、企業の経営とはすこし異なる。株式のように資産実価値や業績の実力を追求するのではない。要するに実価値や安全性よりも短期間の利ざやが重要視されるのである。例えば少々リスキーな証券でも値が下がれば買う、値が上がればもちろん売るが、値下りが続傾向がある場合も、損の増加を防ぐために一度売り逃げるのが普通である。
 世界に一つの証券会社があるとしてバランスシートを作成すると、証券価格の増えた分は、未受け未来利益であろう。
 では証券価格の値下がりとは何か、証券価格の下がった分は、未来の損金であろう。
これが今回のサブプライム問題でもあるが、不思議なことにこの証券には発行の上限の枷がないのである。購入者は銀行や証券会社の資産や担保価値をチェックしてから買う人はいない。格付け機関の発表する格付けとファンド・ネームを信用して買っているのである。
 不動産会社が発行するABRなど債券には不動産など物的担保があるだろうが、証券会社がそういう債券を買って、その購入資金手当てにCDOなど別の債券を発行した場合、保証は証券会社のネーム・バリューと未来の値上がり利益しかないことになる。証券の市場価格は格付け機関のさじ加減一つで投資適格になればその証券は高く売れることになる。

 ブラジルは大丈夫か

 ブラジルの場合、ルーラ大統領はサブプライムは米国の問題でブラジルは大丈夫と言っているが、これだけ外貨準備高が増えていて、米国の株、国債、債券、証券を直接間接に米国でまったく運用していない政府、銀行、大企業があるだろうか。値下りが起きても、保有していれば簿価は買い値になっているが、売却したら必ず売却損が発生する。企業の資産価値を下げて決算を赤字にするはずである。タイムラグはあるが米国の不況が続いたらブラジルにも必ず大影響があると言わねばなるまい。



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