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2002年W杯へ「買い手がつけば、どこにでも売る」ブラジルを悩ませる経済格差【週間読売より転載】
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日韓合同のワールドカップは、５月３１日にフランスがセネガールに１−０で敗れる大番狂わせで始まり現在進行中ですが、2002年という年は、W杯を語らずには、過せない年でもあり、『私たちの４０年!!』HPでもいくつかサッカーの話題を拾って見ました。その第一回は、３月３日付け週間読売Yomiuri Weeklyに掲載された川島健司（運動部記者）の上記記事です。川島記者は、２月に取材のために来伯、ポルトアレグレにも来られ取材をお手伝いし一緒に地元イネルナシオナルの試合を観戦したり、携帯電話でブラジル選抜軍のフェリッペ監督にインタビュウしたりゼロオーラ紙に情報交換を兼ね表敬訪問しました。インテルのペルシオ･フランサ副会長の談話を捉えてのブラジルサッカー界の問題点を指摘しています。 |
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昨秋、欧州を回ったのに続き、W杯日韓大会出場国のサッカー文化を探る取材で、今度は南米に来ている。
最初に訪れたのが、今大会の予選では苦戦が続き、初の予選落ちも心配されたブラジルだ。ちょうど盆と正月が一緒に来たようなカーニバルの季節に当たり、取材相手をつかまえるのに苦労したが、運良く、予選中3人目の指揮官として、どうにか出場権を獲得したルイス・フェリッペ代表監督（元磐田監督）に話を聞けた。
「なぜ、今予選では、これほど苦労したのか」。数え切れないほど聞かれたであろうこちらの質問に、彼は「ブラジルは予選落ちした事がないので、だれもがあまりにも代表チームを信じ切っているのが問題だ」と答えた。本大会出場など当然という国民の期待が、少し調子を落とすと巨大な重圧となる。「『準決勝まで行ければ』なんて死んでも言えないに決まってるだろ！」サッカー王国ならではの悩みだ。
もう一つ彼が挙げたのが、やはりよく指摘される点だが、「欧州のクラブに所属する選手が、予選のために代表に合流するのが試合直前で、十分に練習する時間がないこと」だった。現在のブラジルで最高級の選手は、ほとんどが欧州の大クラブに買われてしまう。彼らを、代表の予選のたびに南米まで帰すことに大金を払っている欧州クラブ側は、いい顔をしない。いきおい、経験、実力で劣る国内組みを中心に代表メンバーを組み、大事な試合だけ欧州組を呼ぶ。
今予選で代表に呼ばれた選手の数は、計18試合で60人以上に及んだ。これではチーム力は安定しないし、選手間の理解も深まらない。欧州組のコンディションも、試合直前に合流するのでは、決して良くはない。選手の欧州行きは、母国とは比較にならない年俸をもらえる本人だけでなく、移籍金が入るブラジルのクラブも歓迎するが、困るのは代表チームという構図だ。
南米と欧州のクラブでは、どれほど経済力に差があるか。フェリッペ監督の故郷でもある南部リオグランデドスール州の名門クラブでドゥンガ（元磐田）やファルカン（元日本代表監督）ら名選手を生んだインテルナシオナルのフランサ副会長が、こんな話をいてくれた。
「我々のクラブでは、選手のサラリーは、最高でも月2万ドル（約270万円）。また、クラブでは、寮の管理人、庭師も含めて300人を越す職員がいるが、彼らの全員の給料なども込みで、クラブ年間予算は2000万ドル（約27億円）だ」
このクラブ出身で、現在はドイツの強豪レバークゼンでプレイしているルシオという選手がいる。昨年のコンフェデレーション杯でも来日、Ｗ杯メンバー入り確実といわれる堅実なセンターバックだ。
「彼の移籍金はいくらだったと思う？1200万ドルだよ」
それだけでクラブ全体の年間予算の６割がまかなえてしまう計算だ。巨額を惜しげもなくつぎ込むスペインやイタリアのクラブと違い、倹約家ぞろいといわれているドイツのクラブでさえ、こうなのだ。「買い手がついた選手は、相手がどこのクラブでも売るのが方針だ。絶対売れない選手というのは、悪い選手のことだ」とまでフランサ副会長は言った。
この経済格差がある限り、ブラジルから欧州への選手の流失は続くだろう。そして、南米サッカー連盟は、予選の試合数を多くして収入を確保するため、次回ドイツ大会でも、現行の10カ国総当りの予選方式を続けるようだ。選手はまた何度も大西洋を往復することになる。ブラジルにとって、次回予選も厳しいものになるかもしれない。
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