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【来年の大統領選挙を占う】  赤嶺 尚由さんのニッケイ新聞への投稿文です。
日本ブラジル商工会議のメンバーが中心と成って管理運営しているBATEPAPOと云うメーリングリストがあり南伯の日本商工会議所のメンバーとして仲間に入れて頂いていますが、今回このBATEPAPOのメンバーで元邦字新聞の記者として活躍、現在ソールナッセンテ人材銀行を経営されている赤嶺尚由さんの掲題の【来年の大統領選挙を占う】をメーリングリストを通じて送って頂きました。この原稿はニッケイ新聞に掲載されており1年後の大統領選挙に付いて理解する日本語による恰好の解説文としてまた1年前の予想と実際の結果との対比を可能とする歴史的な書き物として『私たちの40年!!』寄稿集に収録して置きたいと思います。
赤嶺さんの予想は、ずばり野党PSDBのセーラ候補がアエシオ ミナス州知事を副大統領候補として組めればルーラ大統領が押すジウマ ロウセフ候補を破るのではないかとの予想です。結果を楽しみにしたいと思います。
写真は、ニッケイ新聞の記事を送って頂いていましたので縮小してそのまま使わせて頂くことにしました。


来年の大統領選挙を占う  赤嶺 尚由

 この国の運命をも左右しかねない注目の次期大統領選挙まで1年を切ってしまった現在、折角「政経ノビダーデ」と銘打ち、綺麗なデザインも付けて貰っているからには、とかく政界のバスチドーレス(舞台裏)だけに封印されがちで、容易に表舞台に出てこようとしないマル秘情報などもできるだけ歯に衣着せない形でズバズバ取り上げたいと考えている。
 次期大統領選挙は、来年10月3日(日)がいわゆるプリメイロトゥルノ(第1次投票)の行われる日だ。そして、そこでもし全有効投票総数の50%プラス1票(絶対過半数)を獲得した候補が現れなければ、上位2者だけに絞り、同月31日(日)にセグンドトゥルノ(決選投票)が実施される仕組みである。第1次投票の段階で、勝負の決着を付けてしまうのは、意外に難しいことで、92年と96年の大統領選挙でも、ルーラ現大統領(64歳 PT所属)は、決選投票への進出を余儀なくされた。
 来年の大統領選挙に正式に出馬を表明しているか、非公式であっても、ヤル気充分の候補を挙げると、先ず、ルーラ現大統領の意を汲んでいる、というよりも、どうしても当選して欲しい、いや、当選してもらわなければ困る、という風にその悲願の込められた与党陣営のジウマ ロウセフ現官房長官(61歳 PT所属)が筆頭だ。彼女は、64年3月の軍事クーデター以降に、軍政打倒を目指してゲリラ活動に身を挺したこともある鉄の女性タイプである。
 彼女と真っ向から対決する野党候補は、ジョゼ セーラ現サンパウロ州知事(67歳 PSDB所属)になる公算が大きい。一応アエシオ ネーヴェス現ミナス州知事(49歳 PSDB所属)も同党内での対抗馬となりそうな1人に目されているが、セーラ候補本命説が揺るぎそうな気配は、なさそうだ。それは、同候補が92年の大統領選挙に出馬した時、決選投票の段階まで進み、当選したPT所属のルーラ候補を相手に32、3%を獲得して善戦した実績があるからだ。
 実はルーラ大統領の胸の内には、来年の大統領選挙を勝ち抜くために、思い描いている秘策があった。もしそういう展開の仕方を演出できれば、秘蔵っ子候補のロウセフ女史の勝算がぐんと高まりそうな戦術だった。それが何かといえば、与党陣営の中から、セーラ候補が出馬してくるのは、まず避けられないにしても、その他の候補は、有力であるか泡沫であるかを問わず、皆立候補を断念させたい意向であった。
 読者の皆さんは、ここまで読んできてくださったなら、私の文章の中のある共通点に既にお気付きになられたかもしれない。それは、あった、とか、だった、とか、更に、であった、という風に全て過去形にした点だ。ということは、折角のルーラ大統領の描いた秘策が現実のものとはならずに、夢幻の如く消えてしまったことを併せて意味するものである。
 ルーラ大統領が来年の大統領選挙に向けて、是非とも実現したかった事柄は、与野党候補だけでポラリザソン(2極化)の形にして最後まで対峙させ、勝敗を決めさせるということにほかならなかった。何故そのような戦術の採用を考えついたのか。それは、国民投票の形にすれば、通算8年間に亘ったルーラ革新政治に<シン>か<ノン>かの信認を1億人強の有権者に直接問い質すことができる、そして、自分の高い支持率を背景に国民から確実に下る筈の有利な審判をそのまま即ロウセフ与党候補の勝利へと繋ぎたい、という筋書きだった。
 ところが、シーロ ゴーメス元セアラー州知事(52歳 PSB所属)が先ず出馬を表明し、マリーナ シルヴァ前環境大臣(51歳 緑の党所属)も名乗り出て、ルーラ大統領のこの秘策は、ものの見事に葬り去られ、想定外のものになってしまった。シーロ候補は、一応与党陣営の中に属しているから、サンパウロ州知事選に鞍替えさせ、強力なアウキミン前知事(57歳 PSDB所属)あたりと対決させるなり、いわゆる自家薬籠中の者としてどのようにでも扱えそうだ、との判断が大統領側には確実にある。
 しかし、簡単に行きそうにないのが野党のマリーナ候補の場合だ。彼女は、ただの文盲階層から一念発起して大学まで卒業し、国際的に知名度の高い環境専門家になり、ルーラ政権の誕生と共に入閣を果たしたが、アマゾンなどの環境保護の必要性を一貫して主張し続け、経済成長一辺倒を是とするロウセフ官房長官と絶えず意見の齟齬(そご)をきたし、PTを脱党して閣外へ去ったという事情と経緯がある。
その支持層もかなり厚く、とても一筋縄では行きそうにない。自分の息のかかった後継者を是非誕生させたいルーラ大統領の悩ましい問題の1つが実はここにある。また、任期切れが近付いても、高水準のまま推移してきている国民からの支持率を何とか秘密兵器みたいなものに変えたいという想いも逆に強まりつつある。<続く ソールナッセンテ人材銀行代表)

 まだ11ヵ月近くもある来年の大統領選挙で当選、勝利を握るのが与党陣営(主にPTとPMDB連合)のロウセフ候補(61歳 現官房長官)なのか、或いは、野党陣営(主にPSDBとDEM連合)のセーラ候補(67歳 現サンパウロ州知事)なのか、を占うのは、非常に困難であり、同時にいささか性急な感じも伴う。
しかし、独断偏見を敢えて承知の上で、更に希望的観測も付け加えて申し上げることにすれば、目下のところ、セーラ候補の方に軍配が上がりそうな気がして仕方ない。重箱の隅を突く所作になりかねないが、全国規模で発生したごく最近の大停電事故を始め、ロウセフ候補の言動などから推して、大統領の器に非ず、の印象を与えるケースに枚挙の暇もない。
 反対に、セーラ候補が勝つための必須条件がある。PSDB所属のアエシオ現ミナス州知事に大統領選出馬を取り止めさせ、自分に帯同する野党陣営の副大統領候補になるように説得することだ。ミナス州知事選には、3選禁止規定でもう出馬できないアエシオ候補が「副」を敬遠し、もし上院選に鞍替えした場合には、野党陣営の党勢と戦力が大いに削がれることになる。だ.から、セーラ優勢の下馬評も、途端に色褪せてくる。
 セーラ候補には、超深夜型の深酒プラス電話魔といった奇癖も多いそうだが、その頭脳と言語は、依然として抜群に明晰の様子だ。元々仲の悪くないアエシオ知事との間には、既に密約めいたものが成立しているような気もする。
肝心な密約の内容とは、今年67歳になる前者が大統領に当選を果たし最初の任期4年を終えたら、とっくに70歳を越してしまうので、そのまま勇退の形をとり、政権の座をアエシオ氏に禅譲するということではないか、と推測される。これなら、まだ50歳に手の届かない後者にも、まあ納得できそうな合意内容かもしれない。
 もう1つ、FHC政権を最後に、これまで8年間、下野したままで冷や飯に甘んじ、野党の悲哀が骨身に沁みてきたPSDBやDEMにとって、今回が天下盗(と)りの又とない絶好の機会であることを当事者の殆どが熟知していることだ。両党は、サンパウロ州知事の椅子を約20年間独占してきたが、中央政府の舵取りをすることの旨味とでは雲泥の差がある。
現政権下では、労組の中央指導部による専横的な振る舞いが目立ち、かつてのアルゼンチンのペロン型政治手法と酷似してきている。更に政党別にみると、PTとPMDB両党だけ優遇して同じくフィジオロジズモ(利権を誘導する風潮)に加えインプニダーデ(犯罪すら敢えて罰せずの風潮)の蔓延を白昼堂々と許してしまった。
ルーラ現大統領は、2002年に最初に政権の座に就いた時、イの1番に、過去の政治の悪弊と決別して国民全てに住み易い公平な社会を造りたいと公約したが、何のことはない。自分の再選を実現した後、PAC(経済加速計画)等の推進に邪魔の入りにくい意のままになる国会運営を図ろうとした余り、もみくちゃにされて却って高い代償を払う結果となった。
 いつものことながら、普段の国民は、政界の事柄を無関心に醒めた目でしか見ていない様子だが、選挙などの見るべき時に見るべき物を案外きちんと見ているものである。興味を引くIBOPEの世論調査で、先ず野党のセーラ候補にアエシオ副大統領候補をプラスした顔合わせの場合、36%の支持率を記録したのに対し、与党のロウセフ候補にテーメル副大統領候補を組ませた場合には、16%程度の支持率しか取れなかった。この結果は、ルーラ大統領を内心大いに動揺させた筈である。
 与党陣営が支持率面で今吹いている逆風をはね返し、形勢を有利に導くのに残された活路は、任期末が次第に近付いても68%の高い水準を保ち、政界全体の垂涎(すいぜん)の的であるルーラ大統領の未曾有の高い人気をできればそっくりそのまま即ロウセフ候補にトランスフェレンシア(乗り移らせる)ことだ。
投票日の直前になってやっと始まるTV、ラジオに新しくインターネットを加えた無料選挙宣伝番組により、何処までルーラ大統領とロウセフ候補のイメージを重ね合わせられるかがずばり正念場となりそうであるが、この国の有権者は、元々お仕着せや上意下達を嫌う側面を持ち合わせていて、ルーライコールロウセフとはなかなか考えてくれない。そこに選挙の年を迎える大統領の焦燥感と頭痛の種もある筈だ、と指摘して置きたい。(終わり ソールナッセンテ人材銀行代表)


(コメント集)
赤嶺さん
早川です

掲題に関する赤嶺さんの論文を拝誦しました、痒いところに手の届くような内容で誠に結構でした、ただ一点、現在まで立候補が予想される、記述された、要人諸氏の人気事前調査結果の表示があれば更に良かったですね、或いは続編で書かれるお積り?
それに二極化と<国民投票>との関連、又ルーラに其の意向があったとは初耳でした、陣笠が国会でゴマスリ的な発言をしたことは覚えています、続編を楽しみにしています。


赤嶺さん、皆さん
  西郷です。

               なんでも有りのルーラ陣営

 赤嶺さんのニッケイ新聞に掲載された「来年の大統領選挙を占う」を興味深く読みました。

 世論調査によればセーラ候補が現時点ではロウセフ候補を引き離していますが、「なんでも有り」のルーラ陣営が今後、選挙に勝つ為に打ち出してくると思われる策略は、現在程度の差を逆転させる可能性が十分あると思います。
 
 既にBOLSA FAMILIAで約1千万所帯(夫婦として約2千万人の選挙人)をルーラ陣営に引き付けており、最近、話が立ち消えていますが、これらの家庭に携帯電話を少しとはいえクレジット付きで無償支給する等の案も発表されています。
 恐らくこの案はBOLSA FAMILIAの対象者には大受けするでしょうが、BOLSA FAMILIAの対象になっていない低所得者層から「あいつらが貰って俺らが貰えないのは不公平だ」という不満を持たれて敵に回られるのを恐れての立ち消えかと思いますが、兎に角、ルーラ陣営は何でも有りの低所得者層を対象にした票に繋がる策略を打ち出してくるはずで、セーラ陣営はそのことを考えた対案を今から準備して対応を検討しておかねばならないと思います。
 
 何しろ知識者層、金持ち層の票数は大勢を決するような票数ではなく、敵に廻しても良いとあからさまにいうのですから
なかなか始末の悪い、困難な選挙戦を戦うことになろうと考えます。
 
 ツキも実力のうちといいますが、日本と違って金を持っていてばら撒き政策が取れるルーラ陣営は現在の世論調査で劣っていても結果的には劣勢ということにはならないと思います。
 小生は決してルーラ陣営を担ぐ訳ではありませんが、総勢力を結集して戦っても、以上のような理由で苦戦を強いられる
と思われるPSDBが内輪もめしているように見える現状を危惧します。

追伸; どこで見つけてのことか小生宛(勿論全国大多数の人宛の一人として)にPSDB EXECTIVA NACIONALというとこ  ろから同党の宣伝、協力依頼メールが月1回くらい届き、提案意見なども求めていますので 

 小生は次のような提案しましたが今のところ音沙汰ありません
(提案)
 BOLSA FAMILIAはばら撒きで「魚を与えるのではなく魚の獲り方を教えよ」と言う非難をするだけではなく対案として
 PSDBの市長の市又は州で次のことを実施してみたらどうか

1.市、州、国で市の地区ごとに就労希望者受付所を設け、希望者に市の公園掃除、下水溝掃除
  等、どのようなものでも良いので単純労働に従事させて日給、昼食費、交通費を支払う。
2.多数の希望者が殺到することが予想されますが、1日あたりの就労者枠を設けて希望者には整理券を与えて、その日
  の枠がオーバーして就労できなくても別の日に就労することが保証される。
  1度就労した人が再度、何度でも就労希望整理券を貰うことは問題ない。
3.労働の質は期待できないが就労の代償として支給され、ただでばら撒くよりも働くという意識を持たせることが出来、単
  なる補助金支給よりも意味がある。
4.質を問わない、勤務態度をあまり期待しないことを覚悟で受け入れを希望する民間会社に対しても1日単位で市が派
  遣できる。
5.これはあくまで、ただの補助金をばら撒くよりも良いという考え方であり、その労務が必要かどうかなどは別問題となる。
  無理をしてでも作業を作らねばならないが、それをムダと考えてはいけない。

以上のことは以前日本で失業対策として取られていた事業だと思いますが当時のことをご存知の方の意見をお聞きしたいと思います。

以上


赤嶺さん、西郷さん、みなさん
赤嶺さんから、私の馬鹿馬鹿しいお話の紹介に、お褒め20%、お叱り80%を頂き、何もご返事を差し上げない訳には
行かないと思っていましたが、先ずは西郷さんから詳細なご返事があり、安堵いたしました。
赤嶺さんの、新聞へのご寄稿は、いつも拝見しております。 常に正しい洞察眼をもって居られるとも思い、応援をさせて
頂いています。 
但し、私はブラジルの選挙権もありませんし、政治談議に入る資格も知識も持ち合わせていませんので、何もコメントは
いたしませんが、ご容赦下さい。
次の政権には、これ以上マフィアがのさばらないように、(退治するのは既に不可能となりましたが) してくれることを願う
のみです。
伊豆山


西郷さん 伊豆山さん
      赤嶺です。

 伊豆山さん なんのなんの伊豆山さん、書いた本人の評価を勝手にひっくり返すなんて、行き過ぎですよ。小生は、あの貴信80%対20%の割合で素晴らしい点に賭けました。そして、これからも<伊豆山流>を大いに発揮してください。西郷さんらしくーソドックスの大統領選に関する見方を今後の拙文を書く上でも是非参考にしていきたいと考えているところです。伊豆山さんがちょっと指摘していらっしゃいましたが、政権交替(Alternancia?)があるのが当たり前で、これ以上PT政権が続いても益々労働者天国になりこそすれ、ろくなことはありません。第1、流れるべき水が淀めば、ぼうふらの類しかわきませんものね。それとセーラ野党候補の膝下にクエルシア元サンパウロ州知事がいること、これが不気味ですよ。彼は、勝てる戦しかこれまでしてきていませんし、何かそれらしき動物的な臭いをすでに嗅ぎ分けているのと違いますか。  



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