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【ブラジルのタバコ】 麻生 悌三さんの今年最後の寄稿です。
今年2009年度も毎月欠かさず麻生さんがブラジルの農産物を一つづつ取り上げて原稿を送って呉れました。今回が今年最後になりますが、農業関係の主要産品は、ほぼ網羅したことから来年2010年の1月からは、趣向を変えて『ブラジル不思議発見』と言うタイトルで面白い事象、珍獣、奇獣、奇人等を探して原稿を送って下さるとの通知を受けておりどんな寄稿が届くか楽しみにしています。
今年最後を飾るのは【ブラジルのタバコ】です。私の住むブラジル南部リオグランデドスール州はブラジル最大の葉タバコの生産地で州内の主要農作物の一つとして位置付けられています。世界で中国に次ぎ2番目の生産量を誇り輸出では世界最大との事で今年日本の元専売公社(民営化されてJTと呼ばれているそうです)が当州の大きなタバコ生産、輸出会社2社を買収したとの事で来年からは、日本向け輸出産品として注目されることになりそうです。
産地のサンタクルスまで葉タバコの写真を撮りに行けば良かったのですが、間に合わない事から可愛いい日本の葉タバコを散歩の途中で見つけたとの事でBLOGに掲載しておられた写真を御本人にお願いして使わせて頂くことにしました。ブラジルの葉タバコはもう少し背丈が高く葉も大きいように思います。


ブラジルのタバコ
タバコはナス科のニコチアナ属の植物で、ボリヴィアとアルゼンチンの国境のアンデス山中に分布する野生の植物が起源と考えられている。BC1000年に中米のマヤ族の儀式にタバコが使われていた。粘土製のパイプも出土している。1492年にコロンブスが
71日間の航海で、エスパニョール島に到達し、タバコと出会った。コロンブスが欧州に伝え、全世界に広まった、代表的なものはタバコと梅毒と云われている。日本にタバコは
1601年にスペイン人によって伝えられている(スペインは1571年にマニラを建設している)一方、梅毒は日本で1512年に発症の記録があり、タバコの広がりには約百年を要しているが、梅毒は20年で世界に広がった。1855年にスエーデンで赤燐マッチが考案され。喫煙習慣が広まったことで、紙巻タバコ(シガレット)の大量生産が始まったことで、喫煙が一般庶民にも拡大した。ブラジルの葉たばこ(原料)生産は中国に次いで世界2位であり、葉たばこの輸出では世界1位のタバコ大国である。

―世界のタバコ
1)世界の主要葉たばこ生産国と栽培面積(2005年)
生産国        生産量    2007年生産量      栽培面積
中国         2685千トン 2397千トン      1402千Ha
ブラジル        878     919          491
インド         578     555          492
USA         290     353          124
インドネシヤ      141     180          145
日本           49      40           33
世界合計       6156    6326         3981
中国、ブラジル、インドの3国で世界の60%の生産を占めている。タバコの企業的栽培は1580年にスペイン人がキューバで行ったのが最初といわれている。世界的嫌煙運動の中でタバコの消費は最盛期の90年代に比べ半減している。
2)世界の葉タバコ輸出
輸出国        02/03 03/04 04/05
ブラジル       476千トン  466千トン    581千トン
USA        153     146       156
インド        120     125        90
マラウイ       124     121       110
イタリー       119     120       110
世界合計      2091    2076      2096
04・05年度ではブラジルは世界の28%のシェアーである。ブラジルのタバコ産業には約220万人が関わっている主要産業である。ブラジルの企業的栽培は1600年に東北伯で行われたのが最初のタバコ栽培と云われている。  
3)世界の紙巻きタバコの生産量(2001年)
生産国          生産量
中国           1兆7千億本
USA          5800億本
ロシヤ          3640
日本           2372
インドネシヤ       2300
ブラジル          980
世界合計 約       5−7兆本
紙巻タバコ(シガレット)は1825念にスペインで考案され産業革命の波に乗り、全世界に広まり、タバコ消費の主流となった。2009年のシガレットの消費本数は3−4兆本と推測する。
4)世界のシガレットの目安価格(円換算)と税率
消費国          20本入り箱価格      税率
ノルウエイ        918円          78%
イギリス         794         82,4
USA          539         19,9
ドイツ          346         80,4
フランス         340         80,9
日本           273         63,2
ブラジル          71         74,7
世界的嫌煙運動の中、各国政府のタバコの税収は減って来てはいるが、タバコ税はまだ各国政府の貴重な税源である。日本のタバコの政府による独占は、1896年に日清戦争(
1894−1895年)後の税収増大の為に定められた。その後、1985年に専売公社が民営化されJT(ジャパンタバコ)に名称が変更される。ブラジルはシガレットの価格の安さは群を抜いている。これは原料葉の生産コストの安さに負う処が多く、葉たばこの輸出で世界の王座に君臨するゆえんである。因みに、3カ国の原料葉の価格は下記の通り。
ブラジル    US$ 1,50/Kg
USA        11,00
日本         21,00

―ブラジルのタバコ産業
1)市場の概況
ブラジルの喫煙人口は約3千万人と云われ、市場規模は1900年をピークに1641億本あったが、現在は半分の800億本−年間ぐらいではなかろうか。製造メーカーは二大メーカーの寡占市場である。
2)シガレットメーカー
BAT(ブリテイッシュ アメリカン タバコ)の系列会社(75%のシェアーホルダー)のSouza Cruzが市場の84%、フィリップ モーリスの子会社Santa Cruzが市場の15%と両社で99%を占めている。Souza CruzはLS,Free,KS,,Holly Wood,etcが代表的ブランドである。Santa CruzはMarbolo,が代表的ブランドのシガレットである。
3)ブラジルの葉タバコの輸出
年度       輸出量        輸出高        単価US$
2001     353022トン   US$841174千 2,38−Kg
2002     174472        944316  2,12
2003     471541       1008169  2,10
2004     592844       1425762  2,26
2005     629030       1706520  2,71
輸出州はリオグランデドスール州が87%、サンタかたりーナ州が13%のシェアーで南部2州で独占している。葉タバコの輸出業者は下記3社のシェアーが突出している。
Universal Leaf Tabacos シェアー  40,3%
Alianca One Brasil 31,9
Souza Cruz 22,8
4)ブラジルの葉タバコ輸入先
輸入国       2003      2004       2005
USA       US$16876千 US$41459千  US$179817
ドイツ          116876    147747     174361
オランダ          63321     57403     66632
ロシヤ             −       58959     104249      
中国            55679    101864     248822
輸出高合計       1007339   1289149    1499538
2010年以降は日本のJTがブラジル企業を買収し直接乗り出したことにより輸入国としては、上位にランクされると予想する。
5)ブラジルの地域別栽培面積(2002年)
地域            栽培面積        生産量
南部(RS,SC,PR)  406535Ha    889426トン
東北伯            25545       25707
中西部             1331         845
RS州の中心地はSanta Cruz do Sul,(州都ポルトアレグレより南西に160kmの人口10万の市。1849年にドイツ移民によって建設),Veranica Aires等。SC州の中心地はVale de Itajai地方。葉タバコの栽培は契約栽培であり、全生産量が収穫前に業者に売却される。1918年以来、このシステムが取られている。契約農家は種子、農薬、肥料、栽培指導等を与えられる。南部には小規模なタバコ栽培農家が15万戸あり、耕作面積は1戸当たり平均2Haである。
6)JT(ジャパン タバコ)によるブラジル南部の葉タバコ輸出企業の買収
09年7月、JTはブラジルの、葉たばこ会社Kennerberg & Cia及びKennerburg,barker half & cotton,tabacosを買収した。同時にイギリスの葉たばこ供給会社Tribag Leaf社を買収した。全買収金額は2億3千万ドルと発表されている。買収目的は葉たばこ(原料)の安定供給である。買収はJTの子会社でスイスに本部のある、JT Internationalが行った。Kenerberg社はRS州Santa Cruz do Sulに本社がある葉たばこ業者で契約農家の数は8500戸ある。創立は1953年で年間取り扱い葉タバコは4,2万トン。その80%は輸出している。中国を除いて、JTはBATとPMに次ぐ世界第3位のシガレットメーカーである。
 
世界的反煙草喫煙運動の中でブラジルも喫煙量は落ちており、過剰設備を抱えてシガレットの輸出を助長したが、逆密輸入防止の為、(逆密輸入とは近隣諸国に無税の輸出を行うと低価格を武器にその密輸出を企てブラジルに輸入品が逆流する現象)輸出税150%を課税した為、輸出も落ち込んだ。ブラジルもフェルナンドエンリッケ大統領時代(1995―2003年)、厚生大臣のジョゼセーラが嫌煙運動の急先鋒であり、各種の規制が設けられた(煙草箱の警告表示、公共の場での喫煙制限、成分規制、販売規制、広告規制等)。2003年にフェルナンド政権からルーラ政権に代わり、現実主義者のルーラは、これ以上の規制強化は取りやめている。煙草の年間売り上げは60億レアルで、政府の煙草による税収は45億レアルあり、あまり規制を強めれば(特に成分規制でニコチン成分規制)、外国製品の密輸入の増大につながり、却って、悪影響となるだろう。
以上
2009年12月1日
麻生




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