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麻生悌三のブラジル不思議発見（１）サントスの傾斜ビル群
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昨年までブラジルの農業産品に付き統計資料を駆使した分かり易い解説的読み物を毎月寄稿して呉れていた麻生悌三さんが今年の1月から約2年前後の予定で『ブラジル不思議発見』と題して色々面白いお話を連載して呉れることになりました。第1回の原稿は随分前から送って頂いておりブラジル時間1月1日にリリーズする予定で準備していましたが、送って頂いていた写真が事務所にPCに入ったままで自宅のPCでは見つからずもたもたしてしまいました。私の所には既に4月号まで送って頂いているのですが、月に一度とのご希望ですのでキープして置きます。大蛇の話他面白い読み物が『ブラジル不思議発見』として寄稿して呉れるとの事ですので毎月お楽しみにして下さい。
写真も麻生さん提供です。
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サンパウロより海岸山脈を６０ｋｍを西に下ると、大西洋に面したサンパウロ州第二の都市サントスがある。標高６００メーターのサンパウロ市と違って、年平均温度２６度Ｃの温暖な所で年中海水浴が楽しめる。サントスに隣接する街サンヴィセンチは、ポルトガルがブラジルを発見して、３年後の、１５０３年にブラジルで最初の植民村が建設された。サントスが市となったのは１８６６年で、今日でもブラジル屈指の貿易港として知られている。又、サッカーの王様ペレーが所属していたサントスフットボールチームのホームグランドとしても知られ、ブラジルコーヒーの銘柄サントスの名も有名である。
サントスはサンパウロのリゾート都市でもあり、サンパウロの金持ちは、サントスにセカンドハウスを持つのが、ステータツのひとつであり、中産階級の夢でもある。海岸沿いに並ぶマンション群の景観は、リオのコパカバーナにも劣らない景観である。サントスの人口は４６万人だが、週末の人口は、週末を過ごす、サンパウロの人口で膨らむ。海岸沿いのマンションの６割ぐらいは、休日だけの住人ではなかろうか。
イタリヤにピザの斜塔と呼ばれる、高さ５５メーターの傾いた教会がある。着工したのは１１７３年だが、完成したのは１４世紀の後半である。１６世紀にガリレオによる、物体落下の実験が行われたと云う伝説もある。１９３５年に傾いた塔の地盤を直す為に、薬剤を注入して進行を遅らせる措置がとられたが、地下水の汲み上げが進み、傾斜は更に進行した。１９９０年から１０年間に及ぶ、傾斜是正の工事が終わり、２００１年から、公開が再開された。
サントス海岸は、サンヴィセンチの境界のモッフォイタラレと呼ばれる岩山より、港の入り口のポンタダプライヤ（海岸の先端）まで約７ｋｍの湾曲した通りで、幅５メーター位の排水溝の運河が海岸と垂直に６本掘られている。サンヴィセンチ側から、カナル１が始まり、ポンタダプライヤ側にカナル６がある。各地区はカナルの番号によって呼ばれる。
その海岸沿いに、１５回から２３階ぐらいのマンションが３−４百棟林立して建っている。
何と、その１００棟余りが、前後左右いずれかの方向に傾いているのだ。又、その内２０棟はねじれている有様である。傾斜が最も顕著の地域はカナル４から５の間のビル群ではなかろうか。顕著に傾斜しているビルの傾斜度は２，２（ピサの斜塔の傾斜は５，５)正確に測れば、もっと傾斜度は高いかもしれない。ピサの斜塔は１棟だけの傾斜さがサントスの場合は１００棟（市役所の公式発表）である。傾斜ビル群が将棋倒しで、なぎ倒されて、大惨事が起きる可能性がある。市当局は傾斜ビルで観光名所になるのは良くないと、余り触れたがらないが、９年位前から、対策に本腰を入れて来た事は確かだ。このビル群は１９４７年から１９６５年の建設ブームに建設されているが、サントスは地盤が弱く、砂地と粘土質が深さ１０メーター毎に重なり、岩盤までは５０メーターもある。下記はサントス海岸の地層である。
１０−２０メーター＝粘土
２０−３０メーター＝砂
３０−４０メーター＝粘土
４０−５０メーター＝砂
５０メーター＝岩盤
普通ブラジルでは地下７メーターに杭を打ち込み支柱とするが、抜本的に傾斜を直すにはサントスの場合は地下５０メーターまで支柱を埋め、水圧ジャッキで傾斜を是正する以外ない。工事中のビルには、かなり特殊な工法でもあり、海外からの、技術者の見学も多いい。ブラジルは地震が極めて少ないが、全く無い訳ではない。２００７年１２月９日にミナス州イタカランビ市（州都ベロオリゾンテ市より、６６３ｋｍ）で震度４，９の地震が発生し、家屋倒壊６軒、ブラジルで始めての地震による死亡者１名が出ている。
巷の噂では、傾斜ビルは１００棟なんて数ではなく、２００棟以上あるだろうとも言われ、
サントスの海岸通のマンションの価格は６０％程度、下落しているとの話もある。
いずれにしても、大惨事が起きる前に対策は急ぐ必要がある。
以上
麻生
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