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日系コロニアの将来を考える 第1回「ブラジル社会に日系コロニアは必要か?」(その1)
『サンパウロ新聞社主催で1月23日に開催した「日系コロニアの将来を考える」の第1回座談会「ブラジル社会に日系コロニアは必要なのか?」の発言内容を掲載する。ただし、主催側の想像以上の参加者を得て座談会の形式を取ることが困難となったため、発言者ごとの意見を複数回に分けて掲載する。(順不同、敬称略)』
上記の書き出しでサンパウロ新聞社が日系コロニアの将来を考える 第1回「ブラジル社会に日系コロニアは必要か?」とのテーマで座談会を開催しています。我々ブラジルに住む者に取って基本的な問題提起でコロニアの代表的な方々が真剣に討議しておられそれを忠実にテープ起こしの作業を通じて新聞の読者にも伝えて呉れています。3回に分けて全文を収録して置きたいと思います。
写真もサンパウロ新聞掲載分からお借りしました。



日系コロニアの将来を考える 第1回「ブラジル社会に日系コロニアは必要か?」(1) サンパウロ新聞WEB版より

サンパウロ新聞社主催で1月23日に開催した「日系コロニアの将来を考える」の第1回座談会「ブラジル社会に日系コロニアは必要なのか?」の発言内容を掲載する。ただし、主催側の想像以上の参加者を得て座談会の形式を取ることが困難となったため、発言者ごとの意見を複数回に分けて掲載する。(順不同、敬称略)

 田辺 豊太郎(1世)
 私はブラジルに来て82年になります。82年間もブラジルで生きてきたのだから、何とかコロニアに良くなってもらいたい。皆さんの意見をこの場で聞くことは大切ですが、地方にも日系の団体があります。この場で出た意見はきちんと地方にも届け、全伯で考えていくべきではないでしょうか。
 ブラジルには世界最大規模の日系人がいます。これだけの数を有し、しかも100年という歴史があるのだから立派なものです。文協の会長など多くの役職を2世が占め、世代は移り変わってきています。しかし、幸いにして今回のような場に大勢の人が参加するということは、やはり日本人としての意識が根底にあるからです。
 日系コロニアとは何なのか?ということを追究していくと、その起源は日本人、日本民族ということになります。「エウ・ソウ・ブラジレイロ」と言いますが、日系人の起源は日本民族なんです。日本というのは何千年という歴史の中で生まれてきた国です。私たちの父親や祖父の世代の先輩たちは、幸いにしてブラジル社会で活躍してくれました。
 「日本人の恥になるようなことはするな」というのは、皆さんが随分聞いてきた言葉なんです。何で父親たちがフィロゾフィーを持っていたのか。それは何千年の歴史がある国であればこそ、こういう思想ができたのではないでしょうか。
 ブラジルは多民族国家で、それぞれの民族はいいものを出し合ってこそ、ブラジルが良くなる。つまり、日系人には伝統ある日本の文化を広げてもらいたい。そういう日本の文化を2世たちに継承していく義務が、我々1世の世代にはあるのではないか。継承できるような働きをやっていかなければなりません。
 文協の木多会長に「この座談会は、文協がやるべきことをサンパウロ新聞がやってくれている。文協はこの活動をアジューダするのは当然のことではないか」と冗談まじりに話しましたが、基本をはっきりすることが大切です。文協はあくまで文化団体。日系コロニアで一番必要なのは文協です。
 コロニア全体で、日系とは何なのかを考えていただきたい。次の100年に向かって何をやるべきか、という考えを持ってもらいたいと思います。全伯の日系団体が一堂に会して動いていかなければなりません。今一番問題になっているのは日本語の問題です。「言葉を失った民は滅亡する」という言葉があります。言葉が大事なのだということを念頭に置いて、皆さんがそれぞれの所属団体で考えてほしいです。
 移民100周年の後から見て、全伯で地方団体がいろいろ活動しており、アマゾンや聖南西のほうがきちんと機能しています。これは立派なことです。根底にしっかりとしたものを持っているからです。これを基本に、日系コロニア全体でしっかりやってほしいと思います。

 森 和哉(1世)
 日系社会を守っていくために、どう守っていくのか、そしてどう変えていくのか、あとはどう捨てていくのか、という三つのバランスが大切だと思います。どれか一つに偏っても駄目だと思いますし、何かを守り通していっても結局後に続かないかもしれないし、変えすぎても今の日本のようにぐちゃぐちゃになってしまう。すべて捨ててしまえば、もう日系社会の意味はなくなってしまう。このバランスをどうするかという点については私にはよく分からないので、皆さんのご意見をお聞きして勉強したいと思っています。
 私事で恐縮なんですが、私は剣道を25年間続けてきました。これを例に少しお話をさせていただければと思います。今、実は剣道も日系社会と同じような状況を迎えているんです。昨年サンパウロで世界大会があって日本が優勝しましたけれど、世界化ということで、スポーツ剣道になっていくのか、それとも伝統を守っていくのかということで、日本の選手もすごく迷っているところなんです。
 単なるスポーツでいくと当然世界に広がっていくんですが、やはり体格の大きい人が勝ちますし、ポイント制になってしまうと日本の伝統だとか、剣道にもともとある理念といったものが度外視されていってしまう。本当にこれでいいのかという思いがあります。
 私もこちら(ブラジル)のある道場で剣道をさせていただいているんですが、そこで一つ気づいたことがあります。その道場はとても活気があるんですが、以前たくさんのブラジル人が剣道を習いに来るようになったんです。その理由の一つが、数年前に公開された映画『ラスト・サムライ』を見てブラジル人が格好いいと思って入ってきたんです。
 しかし、その道場ではまず礼儀作法から教えるので、1か月もしないうちにほとんどのブラジル人が辞めてしまったんです。私はそれを聞いて、すごく真っ当だなと思いました。剣道を上っ面だけ理解して、ただやってみたいというものではなくて、ちゃんと礼儀作法から教えるということ、これは素晴らしいことを先生方はされたなと思いました。
 その一方で、その道場では練習中は一切水を飲んではいけないという決まりがあるんです。これは日本でも昔はありましたけれど、現在は日本でも行われていません。水を飲まないというのは科学的にも体に良くないし、昔は精神力ということで「水を飲むな」という一つの教えだったと思うんですけれど、現在は水を飲まないと体に悪いということが判明していますんで、「飲むな」と言い続けたばかりに大変有能なブラジル人が辞めてしまった。これが今回のコロニアのテーマにも通じる部分だと思います。
 必要なものは当然残していかなければなりませんが、時代が変わって合理的でない部分などは変えていく、あるいは緩めていく必要があるのではないでしょうか。

 森 瑞恵(1世)
 私は日系人の存在に非常に感謝しています。駐在2年目になるんですが、まだポルトガル語もろくに話すことができず、英語もそれほど得意でない私にとって、いつもアジューダしてくださるのが日系人の方々であり、日系コミュニティーに属する方々なんです。 (つづく)
写真:座談会全体
写真:田辺豊太郎さん、森和哉さん、森瑞恵さん(左から)
 2010年2月3日付

日系コロニアの将来を考える 第1回「ブラジル社会に日系コロニアは必要か?」(2) サンパウロ新聞WEB版より

サンパウロ新聞社主催で1月23日に開催した「日系コロニアの将来を考える」の第1回座談会「ブラジル社会に日系コロニアは必要なのか?」の発言内容を掲載する。ただし、主催側の想像以上の参加者を得て座談会の形式を取ることが困難となったため、発言者ごとの意見を複数回に分けて掲載する。(順不同、敬称略)

木多 喜八郎(2世)
 今回座談会に参加させていただきましたが、皆さんのご意見をよく聞いて勉強しながら、日系社会の取り組みについて考えていきたいと思っています。サンパウロ新聞がこのような機会を設けてくださって感謝しています。私たちは文協として皆さんのご意見をお聞きし、それを貴重な指針として受け取り、そこから文協がどうあるべきかという部分に使用させていただきたいと思います。
 ブラジル社会において日系社会が今後発展していくには、文協だけでなく日系社会すべてがその方向に向かっていかなくてはならないと強く感じておりますので、皆さんと共に頑張っていきたいと思っております。今日このように日系社会のリーダーが一堂に会し、日系コロニアの将来の問題に取り組んでいくことは素晴らしいことだと思っております。

山田 彦次(1世)
 本日のテーマは非常に大きなものです。このテーマを議論する前に、ブラジルの中の日系社会というものはどういうものなのか、という議論を進め、その中で「日系社会は必要なのか」と考えていくべきではないでしょうか。
 私は長い間、県人会の運営に携わってきましたが、県人会そのものについて言いますと、恐らくこのままいけば県人会をはじめ日系団体はなくなってしまうのではないか、という危機感を持っております。それならばどのように守っていったらよいのか、会長になってから三十数年間ずっと考えてきたテーマですが、なかなかこれという結論が出ていません。
 ブラジル以外の海外の国において日系社会が存続していくノウハウを探してみたり、ブラジルにおける中国人社会や韓国人社会との比較研究などをしていかなければならないと思っていますが、結論が出ていないというのが現状です。
 今日皆さんの意見を聞きながら、今後の県人会活動をどのように行っていけばブラジル社会に役立つのか、あるいは日本のために県人会がどういうふうに影響していくのか、そんなことを考えながら私たちの子弟を育てていかなければならないと思いました。
 また、ブラジルで生まれた方々が民族性をどの程度感じながら、「どうしたらブラジル社会、日系社会、そして日本の社会の中で色々な経験ができるのか」というような責任ある考えかたができるようになるだろうか、と常に考えています。一番大きな問題は、我々1世が、そうした光り輝く誇り高い日系人を育て切れなかったことだと責任を感じております。

諸川 有朋(2世)
 私が大切だと思うのは教育についてです。私たちは何をするべきかということを考えますと、家庭の中で日本的な良い文化を身につけた、良いブラジル人を育てるということに尽きると思います。そして、家庭で教えることのできないことを、私たちが団体で指導することが必要になってくるのです。
 ブラジル国内には日本語センターの日本語教師が約1千人、学校が約300校あります。しかし、良いブラジル人を形成するところに目を向けている学校は非常に少ないんです。日本語を通して日本の良い文化を身につけ、良いブラジル人を育てることが私たちの目的です。
 ですから、私は幼少期における教育が大切だと思っています。クリチーバの日本語学校では、幼い子どもたちに対して日本の伝統的な精神を教えています。学校でも「義」や「人情」などの、日本の良い道徳を教えることが大切です。ブラジルの政治や様々なところを見ていても、そういった部分が欠けていますので、ブラジル社会に対しても役立つことになるんです。
 その教育を続けるためにも、日系コロニアは必要になってきます。現在、3世や4世の人たちが日本語の先生になろうと22人の方が講習を受けています。今後100年間で、私たちがコロニアで何を実質的にやっていくべきか。ブラジル社会のためになる人材をいかに育てていくべきか?
 私たちは今後100年も生きられませんが、日本人のフィロゾフィーを残していくことは可能です。私たちは地道に小さい子どもたちに日本の良い部分を教えていくことが義務だと言えるでしょう。私たちが今後の100年を考える場合には、自分の暇を割いてでも日本の精神を継承していく必要があります。もっとお金と規模を費やして、子どもたちが日本のいい部分を身につけられるようにさせてあげることがブラジル社会のためになり、このコロニアが発展していく道でもあるのです。

 石田 光正(1世)
 移民後100年続いてきた間に日本人同士がコロニアを形成し、助け合ったおかげで日系社会が続いてきたことを考えると、日系コロニアは今も必要ということになります。しかし、混血化が進んで4世、5世の時代になると、日本文化の継承がどんどん薄まっていき、「コロニア」という言葉自体がなくなる可能性もあるのではないでしょうか。
 今から30年、50年したら誰が日系人なのかも区別が付かないような時代になっているだろうと思います。コロニアの象徴的なものは県人会であり、山田会長から県人会のために必死になっているというお話もありましたが、1世の方々が一生懸命日本の文化を守り通していこうという思いでやってこられている。
 そのためにも、やはりどこかで守り、どこかで変えて、どこかで捨てていく選択を時代に合わせて考えていく必要があると思います。数十年先の視点で見ると、3世や4世の時代になったときに県人会もどうなっていくのか分かりませんが、諸川さんがおっしゃったように日系社会が残せるものは教育しかないんじゃないかと思います。
 例えば、ただ日本的な建物を建てるだけでは、その中に入る人たちが我々の日系人の誇りや精神を理解していなければ意味がありません。ですから、日系社会が教育を通して日本の文化を後世に伝えていくことが大切です。しかもそれは日系人だけを対象にするのではなく、ブラジル人に対しても言えることです。
 日本の教育の中には道徳があり、倫理観があり、優れた日本人としての資質が含まれています。そのような学校を作っていくことで、将来もしもコロニアがなくなったとしても、次の世代の人たちに「この学校は日本人の素晴らしい理念により作られたものなんだ」ということが伝われば、将来日本が困ったときにそういう世代の人たちが日本に手を差し伸べたり、または友好の絆を強めてくれるのではないかと思っています。(つづく、文責編集部)
写真:木多喜八郎さん、山田彦次さん(上 左から)
写真:諸川有朋さん、石田光正さん(下 左から)
2010年2月4日付

日系コロニアの将来を考える 第1回「ブラジル社会に日系コロニアは必要か?」(3)サンパウロ新聞WEB版より

サンパウロ新聞社主催で1月23日に開催した「日系コロニアの将来を考える」の第1回座談会「ブラジル社会に日系コロニアは必要なのか?」の発言内容を掲載する。ただし、主催側の想像以上の参加者を得て座談会の形式を取ることが困難となったため、発言者ごとの意見を複数回に分けて掲載する。(順不同、敬称略)

 千坂 平通(1世)
 ブラジルに赴任してから2年が経とうとしていますが、移民100周年記念行事が多々行われ、その中で色々と勉強させてもらいました。多くの書物の中には、日系コロニアの発展は偉大な人物によって成されたとあります。例えば、コチア産業組合を下元健吉さんが開かれたとか、あるいは文協の初代会長を務めた山本喜誉司さんなどです。しかし、最近はリーダーがいないという話をよく耳にします。ですが、私はそうは思いません。
 100年間の間には、戦前に来られて早くして両親を亡くした方のような、何とかして生きていかなければならなかった人がいると思いますが、そういった方々の精神力には頭が下がる思いです。
 日本人移民の偉いところは、父親がファゼンダに出て農作業をして家に帰ってきた後に、子どもが夜寝る前に絵本を読ませてあげた方がたくさんいたことです。こういう点が、日本人の教育への思いの高さにつながっていると思います。また、日本人の奥様方も、「さしすせそ」といいまして、裁縫、躾、炊事、洗濯、掃除、これを一手に担われていた。そういう生活の中で子どもたちを大学に入学するまで育て上げられたことは、本当に素晴らしいことだと思います。
 移民100周年を迎えてブラジル政府やサンパウロ市など各地域のブラジル社会団体から、日本人は勤勉実直にして農業分野で大変貢献していると評価されました。日本キュウリが「ペピーノ・ジャポネース」という言葉として残っていることは、食文化にも非常に貢献している証拠です。また、サンパウロ市内には日本食レストランが約650軒もあるんです。
 そういった中で、本日のテーマの「日系コロニア」についてですが、コロニアというのは、物理的に考えるとそこに住んでいる日本人がいなくなってしまえばなくなってしまう。コロニアを日系団体と捉えるならば、これはまさに「文化の伝承」ということになってきます。ブラジルでの2年間、文化の伝承というのは本当に難しいと感じてきました。何が日本文化の真髄なのかと考えると悩んでしまう。それは私自身が日本文化を表現できず、不勉強だということにもなるのですが……。
 問題は日系人の2世、3世が文化をどう意識してどう継承していくか。もちろんブラジル人も生花や剣道などものすごい勢いで日本文化を勉強していますが、日系人に対する日本文化の継承というのはなかなか頭の痛い問題で、まず解決しなければならない問題だと思っています。

 峰村 靖子(1世)
 私の夫は原稿を書く人でしたが、亡くなる直前までコンピューターに今日のような問題を取り上げた文章を打っておりました。多分、彼の遺志は、日系社会を存続して日本人の良い所を、戦後受け入れてくれたブラジルのために尽くしたいという信念だったと思います。
 私は1933年生まれで、小学校に入ってすぐに戦争が始まりました。6年生の時に終戦になりましたが、右を向いても左を向いても何が何だか分からない状態でした。食べるものは無いし、なんでこんな国に生まれたのかと愛想が尽きてブラジル移住を我が生きる道だと考え、移住を決心しました。
 ただ、日本が偉いと思ったのは、日本はあの時代に教科書こそなくても授業は続けていたんです。それは日本政府やその時代の人たちによる素晴らしい考えだと思います。私と夫は1歳違いでしたが、よくあの時代に教育を受けることができたと思っています。それこそが、日本が教育立国として大成長を始めた所以かもしれません。
 私が申し上げたいのは、ここ10年が日本人の良さを残す1世の時代だと思うんです。1世があってこそ残せるもの、例えば私は現在俳句と川柳と体操の会に入っていますが、俳句と川柳は細かいニュアンスの問題で後世に伝えるのは難しいと思います。日系人とブラジル人は一人も入っておりません。
 しかし、体操などは新しい人がどんどん入っています。それから、年々盛んになってずっと続いているものに、生花、折り紙、習字、民族舞踊、そして一番大事なのが運動会です。これはとても大切で、青少年にとって良いことを始めたと思います。難しいことは分かりませんが、日本人が始めたこの国の良いものは私たち1世で10年間できちんと伝えていきたいと思います。

 近藤 照(1世)
 ブラジルに来て28年が経ちますが、一番目に付くのは貧富の差が甚だしいこと、ブラジルの貧しさ故に教育を受けられない子どもたちがたくさんいることです。それから特にリベルダーデ周辺の不潔さ。日本に行ったりすると、リベルダーデの汚さがなおさら目立って感じられます。もう少し、衛生面で日系人が気をつけて、と申しましても東洋街と言いますので日本人だけではどうにもならないかもしれませんが、清潔さを保ってほしいです。
 コロニアは必要か、ということにつきましては、自分の周辺レベルでしか分からないのですが、1世の時代にはコロニアというものは必要だったと思うんです。皆さんがコロニアを作り、その中で試行錯誤をしながら自分たちの生活を築いてきたわけですが、時代が変わって今は自分の家庭で2世を見ていると、彼らはもうブラジル人なんですね。ブラジルの社会に溶け込んでいます。そしてブラジル社会の中で仕事をしています。ですから日本語もあまり必要としません。それはちょっと残念なことです。
 家庭の中で見ると、娘の一人は日本語に興味を持っていますが、他のみんなはあまり関心を持っていないですね。そしてどちらかというと、国際語として英語を学び、ポルトガル語と英語が話せれば用が足せるので日本語にあまり関心を持っていません。孫たちにしましても、ブラジル人なんですね。日本語を教えようとしても、英語を学びたいという気持ちのほうが強いわけです。コロニアの県人会を見ていても、だんだん1世が少なくなっています。県人会の活動でも空手などが2世や3世には人気があるようですが、私としては茶道、書道、日語教室などでもう少し日本の文化を残していくことに力を入れていかなければ、日本民族が良いということがブラジル社会の中で忘れられていってしまうと思うんです。
 コロニアではだんだん1世の方がいなくなってしまって消滅のように思われているかもしれませんが、日系社会に興味を持っている人たちも多いです。長い年月が解決してくれると思っておりますが、日本文化の大切さ、能やお花や茶道などにもっと力を入れて日系人の文化の価値を認めてもらって、日本人の良さを認めてもらいたいと個人的に思っています。

 栗木 大樹(1世)
 現在、ブラジルの日系コロニアは良い方向に進んでいると思います。至る所で日本語の学校もありまして、日本語の勉強も熱心になされている。しかし、日本と連絡して新しい資材、材料をどんどん入れて、子どもたちに合った自然な教えを伝えていくように、みんなで努力していかなければなりません。
 しかし、私は日系コロニアの前途は洋々だと思っています。移民100年祭でも全員が団結して成功に終わりました。これからも素晴らしい人たちがいるので、日系コロニアは前進していくだろうと思います。(つづく、文責編集部)
写真:座談会全体
写真:千坂平通さん、峰村靖子さん(中、左から)
写真:近藤照さん、栗木大樹さん(下、左から)
2010年2月5日付



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