麻生悌三のブラジル不思議発見(8) イグアスの滝の滝裏に営巣するアマツバメ
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麻生さんのブラジル不思議発見7月号です。色々ブラジルの不思議発見を毎月送って呉れていますが、今月号は世界3大瀑布の一つイグアスの滝壺の中に営巣するアマツバメに付いての考察です。イグアスの滝と云えば月夜に掛かる神秘の虹とか色々な話題が取り上げられますが、麻生さんは、あえてアマツバメを通じてイグアスの滝を紹介しておられます。イグアスのマツバメは、北米と南米を棲みかにして毎年1万5千キロ以上を往復するとの事。渡り鳥として鶏インフルエンザを運ぶ事もあるとか。これは防ぎようがないですね。リオグランデドスール州に棲むツバメは、アルゼンチン南部のパタゴニアと渡り歩く短距離移動のツバメだとのこと。
写真は、雄大なイグアスの滝の裏に飛び込み営巣をするアマツバメです。
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ブラジル不思議発見 − 8 イグアスの滝の滝裏に営巣するアマツバメ
イグアス国立公園はアルゼンチン、パラガイの国境地帯に在り、ブラジル側の面積は、250千ヘクタール(1ヘクタールは1万平米)でイグアス川から落ちる、大小275の滝が2,7kmの川沿いにあり、滝の高さは60−80mで、ヴィクトリア、ナイアガラと並んで、世界3大瀑布の一つである。イグアス川の水量は、乾季(7月)で3000立方米、雨季(2月)で6500立方米、である。落差と水量でかなりの水圧がかかる滝に飛び込み、突き抜け、裏側に出入りし、滝の裏側に営巣するツバメがいる。ツバメは代表的な渡り鳥で、ツバメ、アマツズバメ、イワツバメ、それらの亜種を含め、14種類位あるがイグアスに営巣するツバメに最も近い種類は、日本で言うオオムジアマツバメで日光の華厳の滝の岸壁に営巣するツバメではなかろうか(日光では滝裏には営巣しない)。このツバメはツバメの中では最も大型で体長は約20cm。普通南伯で見られるAndorinha Azulと呼ばれる、腹が白く背中が濃青色で尾は逆V字型のツバメは大きさは12cm位。飛翔速度も鳥類最速で水平飛翔で、最高時速170kmぐらいでる。飛翔しながら、昆虫を捕食し、水も川に嘴を入れ飛びながら飲む。交尾も蜂と同じく空中で行う。集団で営巣し、営巣は岸壁に皿状の巣を作り抱卵する。喉と腰部が白いのが特徴。ブラジルのツバメの多くは南北アメリカ15000−24000kmを縦断往復する渡り鳥であり、高度2千m位を1日500−700km飛翔する。南ブラジルの営巣地からアメリカ、カナダの営巣地まで、30日―45日かけて移動する。雛は孵化後40日ぐらいで巣立つが、移動前に、親子ツバメは一定の場所に集結して集団で旅たつ。移動コースは二つあり、一つは、アマゾンのアンデスの麓沿いをパナマ地峡まで飛び、ユカタン半島を北上し北米に入るコース、もう一つは、海岸沿いに北上しアマゾン河口を越え、ギアナに入り、ヴェネズエラを越え、パナマ地峡から北上し、アメリカに入るコースである。北米からブラジルに来るコースも全く逆のコースを取る。ブラジルに来るのは、8月―10月。旅たちは翌年5月―7月である。毎年、数百万羽が往復する。アメリカでもオオムジアマツバメが滝の裏側に営巣する記録は無い故、イグアスのツバメだけが、滝に飛び込み、水圧を抜け、営巣するツバメと思われる。滝の裏側なら、天敵の、蛇、トカゲ、猛禽類も近づけない。それだけ、イグアスには天敵が多いいと云う事だろうか。このツバメは木や電線にとまる事は出来ない。3本の鋭い爪でぶら下がる特性があり、垂直の崖にも、難なく、ぶら下がる。又、水平面を歩行も出来ない。リオグランデドスール州はブラジルでツバメの種類が最も多く、ある種のツバメは、パタゴニア(夏)とリオグランデドスール(冬)と往復する。此処で問題が一つある。ツバメ等の渡り鳥が、伝染病のビールスを運ぶ運搬の役割を担っている事である。昨今の弱毒性鶏インフルエンザのビールスも感染したツバメが北米からコロンビアに運び、養鶏場で弱毒性だったが、鶏インフルが実際に発病した事がある。又、ブラジル政府はマナオスで採集したツバメから弱毒性の鶏インフルを検出したが、南伯で同時期に採集したツバメからは検出されなかったので、ブラジルで発見のニュースは伝えられなかった、経緯も過去にあった。鶏インフルは渡り鳥が運ぶケースが多く、特に鴨、白鳥等の水鳥の伝播が多い。ブラジルは世界一の鶏肉輸出国(年間輸出量360万トン、約年間50億ドル)であり、鶏に発病が確認されたら、即、輸出禁止となり、国家経済に大打撃を与える。写真は飛翔中のオオムジアマツバメ。
2010年7月1日
麻生
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