麻生悌三のブラジル不思議発見 24 アマゾンの軍隊蟻(Marabunfa)
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麻生さんのブラジル不思議発見24をお届します。今回の11月号で連載24回目になり、丸2年休みなく寄稿頂いている事になります。息の長いブラジル不思議発見シリーズです。何時まで続くか楽しみです。
今回も不思議発見の宝庫アマゾンの話題でアマゾンの軍隊蟻(Marabunta)です。本当にアマゾンは不思議発見の宝庫ですね。麻生さんも東京農大を卒業され農業移住者と来伯、最初に入られたのがアマゾン、若い感受性の強い頃に見聞きしたアマゾンの不思議は、幾つになっても忘れられない事象なのでしょうね。こうして『私たちの40年!!』の寄稿集に寄稿して頂きブラジル不思議見聞録を残して置かれるのは、麻生さんに取っても良い機会だと思います。その内まとめて出版されると良いですね。
麻生さん有難う御座います。
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ブラジル不思議発見 − 24 アマゾンの軍隊蟻(Marabunta)
南米の熱帯雨林に軍隊アリ(英名Army Ant)と呼ばれる、おっかない蟻が生息している。この蟻の特徴は決まった定住する巣を持たず、絶えず移動している。女王蟻が産卵を行う場合のみ、木の祠とか石の下に仮住居を設けて、産卵、子育てを行うが、それ以外は、軍隊のような秩序、命令系統を持ち、隊列を組んで行進し、行く手の獲物(動物、昆虫等)にかたっぱっしから襲いかかり、白骨にしてしまう、陸のピラニヤと例えられている、獰猛な蟻で、水辺の王者アナコンダも、密林の覇者ジャガーも、ただ逃げる以外ない、地上最強の軍団である。体長は1cm余りで余り大きくはないが、顎の力は強い。目は全く見えない盲目の蟻である(普通の蟻は近眼)。目は見えないが、2本の触覚によるコムニュケーションとフェロモンの匂いを発し、匂いの道しるべで行動している。 女王蟻を中心に、4種類の役割分担があり、メジャー=働き蟻の統率、サブメジャー=獲物の運搬、メヂア=獲物を攻撃する兵隊蟻、マイナー=橋を作り、道を整備する工兵蟻。軍隊のような、規律と命令系統が確立されている。蜂のように刺すことはしないが、顎と牙は相当強い。20万―100万匹の蟻が隊列を組むと、隊列の長さは20mにも及ぶ。時速1kmで行進し、行く手に家があれば、入り込み、逃げ遅れたダニ、昆虫は食い尽くす。さえぎる、小川があれば、蟻が団子状に球形になり、川を浮かんで渡る。必要とあれば、梯子状に連なり、空間に橋を架ける。世界中に蟻の種類は8千種類以上といわれているが、ここまで、やる蟻は軍隊蟻以外いない。この蟻が行動を起こす時は、早朝と夜間に限られる。太陽が高いときに動けば蟻が発散するフェロモンが蒸発して、命令が伝達できず、隊列が支離滅裂になる。
1954年に制作された映画でチャールトン ヘストン主演の映画、黒い絨毯、はヴェネズエラの農場を軍隊蟻の大群(隊列の長さ30km、幅は3km)が押し寄せ、ダムを爆破して、洪水を起こし、蟻の大群をやっつけるストーリーの映画で中々、迫力があった映画と記憶している。軍隊蟻は女王蟻には羽がなく飛べないが、オス蟻には羽が或る。交尾は他のコロニーのオス蟻が飛来し、女王蟻と交尾して繁殖する。交尾後、女王蟻は働き蟻を引き連れ、別のコロニーをつくる。コロニーには女王蟻は1匹しかおらず、数十万匹のコロニーもたった1匹の女王蟻が生み出したものである
(写真は兵隊蟻)
付録 葉切り蟻(英名Leafcutter Ant)ポ名 Sauva)
中南米各地に200種類ぐらい生息している蟻で、植物の葉を食いちぎり、巣に運び、白カビを植え付け、蟻茸を培養し。それを食料としている蟻で云わば、蟻の農耕種である。女王蟻、働き蟻、茸培養係り、工兵蟻、兵隊蟻、子育て係り等、役割分担している共同社会を形成している。この蟻の農業被害は大きく、サウーヴァに滅ぼされるか、ブラジルがサウーヴヴァを撲滅するか、どちらかだなどとの例え話もある。葉を刈る木を決めたら、大軍が襲いかかり、木は一晩で丸坊主にされる。ちぎった葉をくわえて、巣に戻る隊列を辿ると巣穴が見つかる。(工兵蟻は障害物を取り除き巣穴までの道路を整備する)
その他の。面白い蟻では、日本にサムライ蟻と云う蟻がいて、その蟻は、他の種類の蟻の
巣を襲い、卵、幼虫を奪い、巣に運び込み育て、労働が可能になったら、奴隷働き蟻として使用する。謂わば、奴隷狩り蟻である。
又、南米にアブラムシに寄生し、アブラムシが分泌する養分を食用としている蟻がいる。
蟻は外敵からアブラムシを守ったり、適当な木にアブラムシを運んだりする、共生関係を持っている。謂わば、牧場蟻である。
(写真は葉きり蟻がちぎった葉を運んでいる)
附録 北ロライマの野生馬
ブラジルの最北端に位置する州で、南はアマゾナス州、北はヴェネズエラ、東はギアナ、
西南はパラー州に囲まれた、北半球に位置する州で、面積224km平方を持っている。
ブラジルの州の中、最も人口が少ない州で、人口は50万に満たない。熱帯雨林地帯であるが、州の北部には、サヴァンナ地帯が南北200km、東西100kmに亘り、ヴェネズエラの国境まで広がって、東北伯のセラード地帯に似た、乾燥地帯である。1718年頃、武装ポルトガル人が入植し領土の防備を固めた。多分に国策的入植で、北海道開拓の屯田兵的入植だった。ブラジルが防備を急いだ理由は、ヴェネズエラからはスペイン人、英領ギアナからイギリス人、蘭領ギアナからオランダ人が、ロライマのインジオを捕獲して、奴隷とすべく、奴隷狩りに越境して来る、奴隷狩りの草刈り場だったからだ。領土の保全と奴隷の流出を防ぐため、入植したポルトガル人はイべリヤ半島から、馬を連れて来た。その馬の一部が、サヴァンナで野生化し、今日でも200頭位い生息している。今は、宮崎県の都井岬の野生馬(弥生時代に中国より渡来した在来馬で小型馬)の如く、政府が保護している。北ロライマの野生馬も300年間に亘る、厳しい、野生生活で、体格は小型化し、背高は成長した馬で150cmと低く、体重も280kgしかない。(普通の馬は背高170cm、体重400−500kg)然し、小型化したが,耐病性、耐久力、は発達し、時速60kmで30分、疾走する体力がある。背丈147cm以下の馬をポニーと呼び、愛玩用としているが、ロライマ野生馬もポニーに毛の生えた大きさに、矮小化したが乏しい牧草や旱魃に耐え、ジャガーやピューマの襲撃から逃れ、野生に順応し、自然淘汰が行われ、選抜され、独特の種が形成された。最近、ブラジルのTVグローボが、この馬を取材し、放映している。(写真は北ロライマの野生馬)
2011年11月1日
麻生
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