西郷勝弘さんの【ブラジルの魚・釣り】 日伯協会季刊誌≪ブラジル≫への投稿記事
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サンパウロ在住の西郷勝弘さんは、釣りバカを自認する釣りの名人ですが、神戸の日伯協会の季刊誌≪ブラジル≫のコーヒーブレーク欄に掲題の【ブラジルの魚・釣り】を寄稿されています。連載のようですが、その1とその2を送って頂いておりますので寄稿集に収録して置きたいと思います。西郷さんの趣味は釣り以外にもサッカーの専門家でもありその内サッカーに付いての寄稿もお願いしたいと思っています。
写真は、西郷さん送って呉れた西郷正夫君(お孫さんより若い息子さん)と若い奥さんの3人の幸せそうな写真をお借りしました。
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ブラジルの魚・釣り(1)
私のブラジルへの移住の理由はブラジルの大きな可能性とブラジル人の大らかさだったのですが、豊な自然も大きな魅力でした。
移住した36年前、私達家族がシュラスコ(ブラジルバーベキュー)に度々招待して貰って週末を楽しく過ごしたポ語家庭教師のお父さんの農家に大きく口を開いた魚の頭の剥製がかけられていました。これは淡水魚のピライーバというナマズだそうで、釣れて引き寄せても暴れるとボートに取り込めないため、拳銃弾を頭に3発打ち込んで止めを刺したそうで、頭に穴跡があり驚きました、ちなみにピライーバはアラグアイヤ川とアマゾン本流に生息する世界最大のナマズで昔は3mを越えるものもいたそうですが、今では2,5m、150kgくらいが最大だそうです。
この剥製の傍で噛めば肉汁の出る美味しい牛肉でビールを飲みながら聞く話は釣り人の大法螺のような話でしたが楽しいものでした。
その後、私も誘われてパンタナルという大湿原地帯のボリビアとの国境沿いを流れるパラグアイ川に毎年釣りに出かけるようになりましたが、釣りは1週間で、大物がかかったときに釣り糸がアクシデントで手等に絡むと水に引きこまれて危険だということで、糸を切る為のナイフや、止めの拳銃を腰につけて、探検のようなワクワクするような気分で出かけました、初めて行った時に
7kgのピンタードという大ナマズを釣った時には腰が抜けるほどの興奮を味わいました。
その頃は釣った魚は種類、大きさ、量について無制限でしたが10年前から資源保護のための法律で、規定したジャウー(95cm)ピンタード(80cm)、ドラード(55cm)、パクー(45cm)等、皆が狙う稀少の魚について大きさを規定し大物1匹と他の魚の総重量が12kgまで持ち帰って良いとなりましたが、今では持ち帰りは上記サイズの大物1匹のみとなりました。
最近ではこれらの規定されたサイズ以上の魚は1週間の釣りで1匹釣れれば満足というほどになりました。それ以下の小さな種類で規定されていない魚を釣ろうと思えばいくらでも釣れますが、大物用の仕掛けで人指し指の長さほどの釣り針で大きな生きたムッスンというウナギのような魚が餌ですから、小さな魚は釣れませんが、何時も獰猛なピラニアに食い荒らされて餌を盗られてしまいます。
30年前はパラグアイ川上流のカセレスでは100kgのピンタードやジャウーが良く釣れたそうですが、いまや幻になってしまいました、
乱獲と奥地への移住者の増加、食文化の変化もありますが、自然破壊でジャングルの伐採とプランテーションの建設、大規模な農薬散布が最大の要因となっています。
真剣に考えなければならないことがブラジルには欠けているように思いますが100年後の未来に遺恨を残すと心配されます。
ブラジルの魚・釣り(2)
ブラジルには5000種類もの淡水魚がいると言われていますが、ブラジルの魚と言えば私はブラジルの熱帯魚に取り付かれた一人の日本の友人が頭に浮かびます、その人はブラジルまで出向いて来て、数人のブラジル人アシスタントを連れてアマゾン、パンタナル大湿原の川という川をワゴン車で一ヶ月以上走り回り川に潜って新種を探し求め、それが高じてブラジル熱帯魚輸入の第一人者になった人で、アグア社の松坂實さんですがブラジル現地人顔負けの土人のような容貌で「ナマズ博士」とも呼ばれています。既に80回以上も新種を求めてブラジルとペルー(アマゾン上流)を旅し、松坂さんが発見した新種は30種にもなり、本人が名をつけた日本名のアマゾンの魚は850種登録されており出版された図鑑や雑誌は50冊を越えて電子書籍としても出版されています。
一度、その採取に私も同行させて貰いましたが、釣れたり、網にかかるような魚には珍しい魚はおらず、川に沈んだ大木の枝の隙間に隠れるように暮らす魚に未だ人知れない魚が多く、松坂さんは、このような魚を36年も追い続け、1年の7ヶ月はアマゾンの水中に潜っているような人です。
採取は小さな隙間で網などは使えませんので手掴みしていましたが、私もプレコと言う体長3cmくらいの魚の採取を試みましたが1時間かけてやっと1匹捕れる程度でしたがナマズ博士は数分おきに掴み取っていました。これらの魚には逃げる方向に上、右、下とか、又別の方向の習性があってそれを知って捕らえるのだそうです。新種が見つかればその付近で200匹くらい採取出来、マニアの間で高額で取引される為、ナマズ博士が見つけて市場に出すと同業者がブラジル人アシスタントを引き抜いて採取場所を聞きだし直ぐ荒らされるということで信用出来る少人数で隠密行動をとっていました。
最初のきっかけは、36年前、魚が好きで1ヵ月半アマゾンを一人で探検し、開高 健さんと友達になりオーパ展を手伝ったのがアマゾン川にどっぷり入り込んだきっかけだそうで、今では世界で一番アマゾンの魚に詳しい人と言われ、アマゾン、ペルーアマゾン、ボリビア、コロンビア、エクアドル等アマゾン水系を今でも放浪しています。
日本でも水族館、熱帯魚ショップ、アマゾン展等のイベント等を手がけています。
添付写真の大ナマズ150kgを釣ってそばに立っているのがナマズ博士です。
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