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中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書=どうなる?! 日本との絆=コロニア必読の重要な方針=(前編)ニッケイ新聞WEB版より
日本外務省ホームページに掲載されている記事をニッケに新聞が特別の許可を得て同紙に掲載していたのをWEB版からお借りして私たちの50年‼BLOGに10回に分け掲載したものを『この提言は今後10年、20年、日本と日系社会の関係を方向付けるもので、コロニア必読の内容』とニッケイ新聞でも位置付けており40年‼寄稿集にも前編、後編の2回に分け残して置くことにしました。ブラジルを含む中南米には、現在推定210万人を超える世界最大の日系社会がある。この日系社会と日本政府の新しいあり方を検討するための。「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」が3度持たれその提言が発表されている。今後の指針として是非具体化させて行く必要がある。
写真は、連載第1回にニッケイ新聞に掲載された懇談会の様子(外務省サイトより)を使わせて貰いました。


 この提言は今後10年、20年、日本と日系社会の関係を方向付けるもので、コロニア必読の内容といえそうだ――。「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」は日系人との連携推進を目的に、岸田外務大臣の下に設置され、3月6日に第1回会合を行った。メンバーは堀坂浩太郎上智大学名誉教授を座長に、山田啓二・海外日系人協会会長(全国知事会会長、京都府知事)、飯島彰己・三井物産会長(日本経済団体連合会副会長)、北岡伸一・独立行政法人国際協力機構理事長、柳田利夫・慶應義塾大学文学部教授、浅香幸枝・南山大学外国語学部准教授、ウラノ・エジソン・ヨシアキ筑波大学人文社会系准教授ら、自治体や経済界、学界、関連団体からの有識者委員が参加した。第2回会合は3月29日、第3回は4月17日に開かれ、5月9日に薗浦健太郎外務副大臣提出された。この文書は日本外務省より許可を得て同HPより転載した。
 【はじめに】 中南米地域は、我が国と自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、環境への配慮等の基本的価値を共有し、国際社会の平和と繁栄のために共に貢献する重要なパートナーであるとともに、極めて親日的である。この親日感情の根底に、いまや推定210万人を超える世界最大の日系社会がある。
 我が国の日系社会に対する政策は昭和30年(1955年)に設置された海外移住審議会の答申・意見に基づいて行われてきた。昭和60年(1985年)の答申では、日系人の活動支援は重要な課題であるとして、初めて日系人との協力が打ち出された。平成5年(1993年)の意見では、移住者支援の観点からは少なくとも概ね三世までを対象とすべき旨を述べるとともに、更に日系人を支援し、居住国における日本の理解者として育成していくことが日本と当該国との良好な二国間関係の促進に資するとの考えが示された。
 平成12年(2000年)の海外移住審議会の最後の意見では以下の基本的考え方が示された。即ち、@日系人の活躍は我が国にとって有形無形の財産であり、日系人は日本との「懸け橋」、A日系人の間にある、日本語や日本文化を学びたい、日本におけるルーツを確認したい、日本との関わりを求めたい等の要望に応えることは、日系人社会の居住国への一層の貢献に役立つ、B我が国との関係は互恵的であるべきであり、「支援」から「協力」へと移行する意識が重要、C日系人社会の求めるところの変化に合わせた支援継続の必要性、D移住の歴史・日系人社会の現状についての正しい国民理解の促進の必要性、である。
 また、この考え方を踏まえた具体的施策として「日系人の招へいや研修」、「日系社会による日本語、日本文化普及への協力」、「日系人材の活用・雇用」、「県人会を通じた交流、海外日系人大会」等が提言された。これが今日の「日本と海外日系社会の在り方」の一つの基礎となっている。
 平成12年(2000年)の海外移住審議会の意見後17年が経過し、この間、中南米地域の日系社会では世代交代が進み、更に現地社会と融合し、様々な分野で大きな影響力を持つ日系人が多数活躍するようになり日系人としての意識にも変化が現れつつある。最も新しい世代として日系六世の存在が報告された国もある。
 さらに、日系社会やその活動に参画する非日系人も増え、また、国境を越えるネットワークも拡がりを見せている。このような中、安倍総理は中南米地域を訪問する際には、各国の日系社会と交流し、絆を深めてきた。
 平成26年(2014)年、安倍総理はサンパウロにおいて日系人が現地で築いた信頼に賛辞を呈するとともに、日系人が誇りを持てる日本をつくり、日本と日系社会、若いリーダー達との絆を強化すると述べた。
 また、平成28年(2016)11月にアルゼンチンを訪問した際には、あらためて、架け橋となってくれている日系社会のおかげで日本と中南米がjuntos=together(一緒)でいられるとも述べている(注)。
 こうした経緯を踏まえて、岸田外務大臣が立ち上げた各界を代表する有識者からなるこの懇談会が中南米地域の日系社会との連携強化に向けて報告を行うこととなった。有識者懇談会は、現在の日本と中南米日系社会との関係を調査し、現在の変化を踏まえて今後の連携のあり方について議論を行った。
 以下、現在の中南米日系社会の現状、日本との交流の状況を明らかにした上で、中南米日系社会との連携に関する基本的な考え方、考慮すべき点及び連携強化に向けた今後の具体的対応策を提言する。
(注)日本の中南米外交における、安倍総理の「三つの理念」:発展を共に、主導力を共に、啓発を共に。
【1】中南米日系社会の現状
 本有識者懇談会の議論の参考とすべく、外務省は中南米23か国に開設されている日本国大使館、総領事館、領事事務所計33公館を対象に中南米日系社会の現状に関する調査を行った。日系社会の規模を正確に把握するのは困難であるが、在外公館からの報告を集計すると210万人余りであった。
 中南米の日系社会においては、二世から三世、四世、五世へと世代は移りつつあり、活動の中心世代も新しい世代に移行している。世代交代にともない活動を休止・廃止する日系団体も出て来ており、邦字紙等伝統的な媒体には、様々な課題に直面しているものも見られる。
 他方、文化団体・スポーツ団体の活動は拡がり、各地の日本祭りをはじめとするイベントも年々盛大になっているところも少なくない。
 また、日本への関心の希薄な、日系団体に参加していない日系人や若い世代の日系人であっても日本に関する情報や体験機会を得られれば、自らのルーツへの意識や日本への関心が高まることが把握されている。
 一方、日系人の訪日への関心は高く、その目的は留学、研修、観光、就労を含め多様化している。
 このような日系社会における世代の移行に鑑みると、現在は、中南米日系社会と日本との将来にわたる連携のための取組を進める上で極めて重要な時期にある。海外移住審議会が移住の延長線上で日系人・日系社会を捉えてきたのに対し、今回の有識者懇談会では、日系人・日系社会を主題として捉え、「協力」からさらに一歩進めて「連携」に比重を移している。
 民間の日本語学校については、日系団体が設立した学校がかなり広範囲に存在するが、近年、日系の生徒や教員が多数でない場合も多くなっている。
 日系諸団体(文化団体、福祉団体、スポーツ団体等)についても、非日系人の参加が見られる。非日系の配偶者や家族だけでなく、地域の非日系住民が参加するケースもあり、日系社会の外縁は確実に拡大している。
 さらに、パンアメリカン日系大会や日系体育大会、また青少年育成プログラムや若手日系企業家のグループ等居住国の国境を越えた日系ネットワークの形成・活動も見られる。
 また、多くの日系社会は現地社会と一層融合しているほか、様々な分野で極めて大きな影響力を持つ日系人が多数存在し、中には全く日系社会と関わりを持たず活躍される方々が多く存在している。
 もっとも、進出日本企業と日系社会との関係は、多くの日系人が雇用されてはいるものの、未だ部分的なものに留まり、必ずしも緊密であるといえる状況にはない。
 しかし、駐在員やその子弟の中には、現地に深く根をおろし「新日系人」として架け橋となる人も出始めている。
 日系社会の存在により日本と中南米各国との間では、外交関係樹立に加え、移住開始年、県人会その他日系諸団体の設立年等多様なレベルでの周年記念事業が両国関係強化の契機となっている。
 各公館が把握した平成29年(2017年)の中南米における日系社会主要行事は200件以上に上り、延べ参加者数は200万人以上に達すると見込まれている。行事のカテゴリーも日本祭りをはじめ、スポーツや慰霊行事等多岐にわたる。この中には、国境を越えて日系人同士が交流するようなものや、SNSを通じた頻繁な交流も含まれており、若い世代の新しいネットワークが着実に拡がりを見せている。
 これらの行事やその他の日系社会の活動・事業は、@日本の様々な活動主体・年齢層が中南米の日系社会と連携して、中南米社会に訴求する機会を提供するものであり、A日本と日系社会が多層的で互いに想い合う関係を発展させる重要な契機となるものと考える。
【2】中南米日系社会との連携に関する基本的な考え方
 (1)基本理念
《ア》安倍総理は平成26年(2014年)に中南米を訪問した際、中南米日系社会との連携に関する3点の基本的な考え方を明らかにしている。
 @中南米の日系社会は中南米地域の日本に対する信頼の基礎であり、今後とも、日系社会が築いた信頼を継承し発展させる、A中南米の未来を担う若い日系社会のリーダー達との絆を強化する、B日系人が誇りを持てる日本をつくる取組を通じ、絆を強化する、の3点である。これらの考えを指標として、中南米日系社会と我が国との連携を強化していくことが重要である。
《イ》今後、日系社会の世代が下る中でも、新しい世代の日系人が自らのルーツや日本への関心を持ち、中南米で日系社会が獲得してきた信頼感を担っていくよう、手を携えていくべきである。
 また、日系社会が各国で主体的に展開する事業・行事・ネットワークと連携することを通じ、日本に対する彼らの期待に応えると同時に、共に中南米各国社会に訴求し、日本を発信することを目指すべきである。それは日本各地の国際化にも寄与する。そして日本と中南米が共に発展することに貢献する。
《ウ》日本の政府・関係機関、地方公共団体、経済界、学界、関連諸団体、市民団体等様々な主体が、中南米日系社会と多層的な関係を織りなしていくことを念頭に、事業内容に応じた大小の拠点づくり、それらを結びつけるネットワーク化、そして多様な主体が出会うマッチングといった取組を推し進めるべきである。
(2)考慮すべき点
 我が国が中南米日系社会との連携を強化する上で、以下の諸点に考慮すべきと考えられる。
《ア》中南米各国毎、また個々の国内においても、日系社会の歴史的成り立ちや規模、世代状況等の個別の事情が異なることを勘案し、また、海外移住審議会の意見「海外日系人社会との協力に関する今後の政策」平成12年(2000年)も踏まえた取組を実施しつつ、中南米日系社会との連携を進める。
《イ》日本に関心を有し、日系社会活動に恒常的に関与する中南米地域の知日派・親日派も含め連携を進める。また、若い世代をはじめ、日系団体に属しない日系人に対しても発信し、連携の機会を提供する。
《ウ》政府は在外公館等を通じて、日系社会の状況、行事・事業、関心、ニーズを把握し、日系社会と日本の多層的な関係の発展に資するための国内外への情報提供を行う。
《エ》日系社会における日本語の継承を含め、広く中南米における日本語の普及に注力しつつ、英語、スペイン語、ポルトガル語による発信の抜本的強化にも取り組む。
《オ》日本在住の日系人は、今日の日本への理解やそのための発信等を担うことの出来る中南米諸国と日本の重要な架け橋の一つであるとの認識のもと、引き続き彼等に対する取組を進める。
【3】今後の具体的対応策
(1)中南米日系社会の世代を跨いだ発展に資するための施策
 中南米の日系社会を更に発展させ、次の世代に引き継ぐには、周年事業や訪日プログラムを通じて日系団体の再生産と我が国との連携を強化することが重要である。
 また、日系社会の若い世代や日本に関心を持つ非日系人に対して、日本への関心を呼び覚ます施策が求められている。日系社会が世代を超えて更に成長するためには、日系社会が中南米各国において獲得した信頼感、存在感が県人会その他日系諸団体の組織や活動を通じて次の世代に受け渡されると共に、新しい世代が訪日機会の増大等を通じて日本への関心や現地の日系人ネットワークへの関心を育むことを支援したい。
 また、個々の日系社会の実情を踏まえ、小規模の日系社会等には配慮が必要と考えられる他、日本国内においては中南米日系社会の日本への理解を強める取組も重要である。
《ア》中南米で日系社会が築いてきた評価やその存在感を、今後の世代に引き継いでいくための施策
 (ア)中南米各地の日系団体の持続的発展を引き続き支援することが重要である。
 例えば、我が国の地方公共団体が、日系団体の若手リーダー育成事業への支援や周年事業への参加等を通じて、中南米の県人会その他の日系諸団体の活性化と発展を図ることは引き続き中核的な取組の一つであるといえる。
 県費留学や研修制度、中小企業の進出支援、中南米日系社会と我が国地方公共団体の連携を強化する事業や、国際協力機構(JICA)が行う日系団体をカウンターパートとする事業、日系人にJICAボランティアとして活躍してもらうこと等は、日系団体の持続的発展に有効であると考えられる。
 日系団体の財政基盤を安定させるために各国の日系団体の参考事例をとりまとめる作業も有益である。
 また、海外県人会と地方公共団体との連携を高めるとともに、海外日系人協会の役割を見直し、強化していくことも必要であろう。
 (イ)たいへんな努力を経て中南米各地で評価を勝ち得るに至った世代の足跡を散逸させず,次世代に引き継いでいくため、JICA横浜海外移住資料館をはじめ、日本や各国・各地にある移住資料館等拠点の整備・運営、相互のネットワーク化の支援を強化し、また、国内外での巡回展示・講演等を支援することは今日求められる取組といえる。
 また、叙勲や各種表彰制度等を通じて、先駆者の功績を積極的に顕彰することも重要であろう。
《イ》新しい世代の日本や日系ネットワークへの関心を育むための施策
 (ア)日本への留学機会、研修や招へい事業の拡充、SNSを含めた母国語による発信の拡充等を通じて、中南米日系社会の新世代が日本に触れ、日本への関心と意識を喚起する機会を積極的に拡充すると共に、スポーツや教育面における交流や様々なコンテンツのPRなどを通じた新世代相互のネットワークと連携すべきである。そうした取組と併せ、新世代が日本語を学び、継承する機会を充実させていくべきであろう。
 各論としては、中南米各国との政府当局間の留学協定・枠組みの整備や、地方公共団体レベルや大学レベルでの連携の強化、JICAの次世代育成研修をはじめとする次の世代の日系人向けのプログラムの実施、国策として移住した日系農業者等の若い世代に対する専門家による研修や日本への招へいを通じた農業・食品分野の交流、また、中南米地域における高校・大学・専門学校レベルでの日本留学支援の充実が望まれる。
 在外教育施設と現地校との生徒間や教員間の交流を行うことは有意義である。
 さらに、スペイン、ドイツ、イタリアといった諸国については、二重国籍の容認など我が国と比較してより柔軟な国籍制度が若い世代の頻繁な往来やルーツ意識の喚起に貢献しているとの指摘がある。(つづく)



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