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中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書=どうなるの?! 日本との絆=コロニア必読の重要な方針=(後編)ニッケイ新聞WEB版より
外務省サイトより特別の許可を得てニッケイ新聞が10回に分けコロニア必読の重要な方針として掲載されていた記事をWEB版よりお借りして前編、後編として2回に分けて40年‼‼寄稿集に掲載させて頂いています。今後10年、20年、日本と日系社会の関係を方向付けるもので、コロニア必読との事、今後の指針として生かして行きたいものです。
写真は、ニッケイ新聞掲載時の第7回に使用されていた『ブラジル日系社会を代表するイベントに育った県連日本祭り』を使わせて貰いました。


 (イ)中南米日系社会の若い世代間のネットワークの伸長については、各種青年交流プログラムや青年商工会議所等の組織・ネットワークの活動に加え、日系農業者等の国際的な交流促進を支援することが有意義である。
 (ウ)また、移住世代が日本の勤労倫理や文化的価値に対する中南米諸国の信頼を得るうえで貢献したように、日本への関心と接点を持つ新世代の日系人に、今日の日本の多様な魅力を通じた国際交流を担う現地社会とのしなやかな架け橋となってもらうことへの期待もある。
 今日の日本や日本文化に関するコンテンツの日本からの発信事業やジャパン・ハウス事業との連携を視野に入れていくことが重要になろう。
 加えて、日系人にとって、日本出身であることのみならず、どの都道府県、市町村の出身であるかというルーツが重要性を持っており、故郷感を醸成し、日本の出身地域と連携していくことが重要である。
 (エ)従来、日系社会や日本の情報の共有において現地邦字紙が大きな役割を果たしてきた。今日、その役割はSNSやインターネット等デジタル・メディアによっても担われるようになっていることに留意し、日本から中南米日系社会への発信や日系社会内の情報流通について取組を進めることが重要である。
 
 《ウ》小規模な日系社会の活性化のための施策
 小規模な日系社会においては、日系団体への支援とともに、各種招へい事業等も活用し、非日系人材の参画を推進し、他国の日系社会との連携やネットワークの伸長等を通じて、若い世代を惹きつけ、活動を活性化する手助けをすることは意義があると考えられる。
 また、さまざまな政策を動員しつつ、スポーツ大会や文化事業等の行事の開催を通じて他の中南米日系社会との連携を求める取組に留意して、オールジャパンとして様々なレベルでの支援を求めたい。

 《エ》その他
 (ア)中南米への移住が国民にとって身近なものでなくなって久しい今日、中南米日系社会に関する日本国内の関心と理解を高めることが重要である。
 そのために様々な方法の取組を通じて、中南米日系社会の歴史や現地での存在感、成功事例や現在の状況等について日本人の国民レベル・地方公共団体レベルの認知が拡がることが期待される。特に日本の若い世代への教育の観点からは、教科書等教育の場における取り上げも有効と考えられる。
 また、日本人の海外移住の歴史や中南米日系社会について何らかの形でとりまとめ、開発教育に取り入れることも重要である。
 また、日本の国民体育大会への中南米日系社会代表者の参加等は、日本国内の中南米日系社会への認知度を高め、国民レベルで双方の距離を近づける高い効果が期待される、或いは、中南米の日系競技会に日本人選手が参加するという提案もある。
 県人会その他日系諸団体や新世代リーダーの交流事業等日系人の中南米地域内ネットワーク活動等と連動して、若い世代の相互訪問や交流の機会を推進することは、中南米日系社会の日本への関心を喚起し、日系社会が世代を跨いで持続的に発展することの力になるであろう。
 また、日本の若い世代にとっても、中南米日系社会の同年代を通じて中南米各国社会を識ることは極めて有益であろう。
 また、「新日系人」が日本と日系社会をつなぐ新たな役割について着目すべきである。
 (イ)日系社会の実勢や、諸団体・ネットワークによる様々な行事や事業に関する情報、また日本に対する関心等を、政府や海外日系人協会が継続的に調査し情報提供することは、国内の関係各層が中南米との関係を深めていく上で重要であり、日本が中南米日系社会との継続的関係を構築していくとの重要なメッセージとなると考えられる。
 今後、世代交代の更なる進展にあわせ、中南米日系社会の状況を把握しつつ、日本側の対応を適切に更新していくことが必要である。
 (ウ)政府は、日系社会対策を強化すべく、その体制を見直すべきである。
(2)中南米日系社会とのオールジャパンの連携のための施策
 中南米日系社会との連携に向けて、政府・政府関係機関、地方公共団体、経済界、学界などオールジャパンの取組となることが期待されている。その際、日系社会や非日系知日派・親日派まで視野に入れた取組を進めるべきである。
 また、日本の魅力の発信と共に日本語教育のより一層の拡充を図るべきである。
 《ア》総論
 (ア)日系社会諸団体・ネットワークが中南米において展開する、日本語・和食・日本文化・武道等スポーツ・日本式教育や日本的経営手法の普及、或いは医療・福祉といった分野での事業や、日本祭りや周年事業をはじめとする諸行事に、日本の各界各層が日系社会と一緒にそれぞれ持つコンテンツやリソースを提供して参画することは重要である。
 それを通じて、事業・行事の成功に寄与するとともに、中南米各国社会・国民に対して効果的に発信し、訴求し、友好関係のさらなる進展をはかる。
(注)こうした事業・行事は、地方の日系団体において大きな意義と効果が期待され、また、従来の日系諸団体に必ずしも参加しない若い世代の日系人に対する発信と関心喚起の面でも有意義である。
(注)平成29年(2017年)には中南米地域で206件の日系社会関連行事が予定されている。「日本祭り」が42%を占め、スポーツ系行事が9%。また、参加者1万人を超える行事は年間46件に上る。
 (イ)将来の中南米日系社会との連携増進を図るに当たっては、その対象を、世代を重ねる移住者の子孫たる日系人に限ることなく、様々な形で定住者となっている新世代やその子孫、長期にわたり日本での生活を経験して母国に戻った日系人、また今日の日系社会の活動や事業に参画する知日派・親日派も含めて取り組むことが適当である。
 中南米諸国民への日本語学習や日本文化体験の機会の提供や、愛好家向けのクールジャパン関連のイベント等を、日系ネットワークの集客力ある事業や行事と共催することもできる。パンアメリカン日系大会でも、日系二世や三世が非日系の知人・友人を伴って参加し、日本文化に親しむ窓口となっている。
 これら日系団体が実施する事業の中で、特に発信力のある啓発事業に日本から関係者が出席することは理解促進とともに事業の広報効果を高めることにつながる。学界の国際的共同研究の場でも、活躍著しい日系人研究者と組む機会もある。
 (ウ)中南米における各分野の日系高度人材やオピニオンリーダー、知日派・親日派を戦略的に発掘し育成することも重要である。例えば、在外公館を通じて各分野における日本留学・研修人材を同窓会組織等を活用し引き続き支援する。
 また、オピニオンリーダーの発掘・育成のための専門部会や異業種交流会の設置、日本側の関係団体や企業等との交流を通じ、地方公共団体との連携や、経済界、教育機関等による日系人材の積極的な活用を進めていくべきである。
 さらに、高度人材育成のため、留学生・研修生の受入拡大や、有力大学への日本語教育・日本研究の寄付講座の開設や交換留学等を含む中南米各国の高等教育機関等との連携も有意義である。
 各国の日系人数やどのような分野で日系人材が活躍しているか等について継続的に調査を行うこと、現地日系社会にあまり関与していない日系人材の発掘は、それ自体日系人との連携を深め、新たな施策立案に資する。
 (エ)海外日系人協会が主催し、毎年開催される海外日系人大会は、中南米を中心とする海外日系社会の意見や要望を集め、日本と海外日系社会との連携のあり方を議論する重要な機会である。新しい世代の意見も取り入れて海外日系人大会の議論を深化させ、具体的な連携につなげていくことが重要である。そのためには大会使用言語の多言語化、新世代の参加増進が一層望まれる。


《イ》地方公共団体による連携のための施策
 (ア)地域の魅力の発信や訪日観光客の誘致等、地方公共団体の国際化の課題を中南米地域において推進する上で、海外県人会その他日系諸団体のネットワークとの連携を進めることは有効である。
 (イ)こうした連携を通じた地方のプロモーションや観光客誘致の取組を更に有効なものとするための補完的取組として、例えば、中南米から日本への短期滞在に関する制度の緩和や中南米各国における物品等の通関手続きの改善、日系農業者等と日本の地方の食産業関係者とのビジネス交流の促進を進めることへの期待がある。
(ウ)日本にゆかりのある方々も含め、中南米日系社会と地方公共団体の連携強化が重要であり、ルーツをたどることによって日本への親近感を高めるためにも、@県費留学生の受入等、海外県人会と地方公共団体との絆を深める取組について、政府とも連携した施策推進、A地方公共団体が行う中南米との文化交流事業等について、政府とも連携したその拡大のための施策推進、B海外県人会と地方公共団体をつなぐ組織体制の充実強化を図るべき。
《ウ》経済界による連携のための施策
(ア) 日系社会と日本の経済界との新たな接点を設けるため、日本の在外公館及び在外経済団体の仲介による進出日本企業と新世代日系人リーダーとの交流、新世代日系人のネットワークを活用したビジネス連携、ビジネスセミナー等の開催・講演等の連携事業、日系企業家と日本の中小企業のマッチング機会の設定、日系農業者等と日本の食産業関係者との交流といった取組を進めることが期待される。
 特に、若い世代の日系人は既存の日系団体に参加しないことも多いので、在外公館等政府機関が間に入って日系社会をまとめ、現地の日本商工会議所等と連携を図ることも一案である。
 また、進出日本企業が日系社会との連携を強化し、日系の優秀な人材を本邦及び現地の幹部として、一層積極的に登用することは重要である。これにより日系人の日本語習得や日系社会への帰属のメリットが高まると考えられる。この点につき、個々の企業のみならず政府及び経済界レベルでの支援も検討されるべきである。
 (イ)日系高度人材の活用のためのマッチングとして研修生の同窓会や日系技術者協会等の活用が期待できる。
 (ウ)経済界は、日系人を含め中南米から日本に来ている人達への支援をしている。現地の小学校に奨学金を出す、集住地で活動するNPOを支援する、日本から中南米に帰国した子弟が適応するための支援を現地サイドで行うなど、企業活動の中で取り組んでおり、今後ともこうした取組が望まれる。
 (エ)進出日系企業の駐在員はこれまで日系人の歴史、習慣を必ずしも十分理解してこなかった。駐在員やその家族もその点を意識して、また、セミナー等を通じてビジネスマッチング機会を持つことで面白い展開が期待できる。
 (オ)米国とのTOMODACHIイニシアチブのような、日本と中南米諸国の協働プロジェクトでの枠組みを活用した若者同士の相互交流の機会創出の事例も参考になる。現地職業訓練校の奨学金制度支援及び実地研修の場の提供・2か国政府の人材育成プログラムなどへの支援や武道等日本文化を通じたNPOとの関係強化、日系議員の活動支援などは、日系社会との連携を深める上でも有意義。
 また現地政府が主導する留学プログラムを絡める取組も面白いかもしれない。
《エ》JICAによる連携のための施策
(イ)  (ア)次世代人材育成、大学院レベルの留学プログラム、日系研修等の人材育成事業、日系社会との共生のためのボランティア事業や日本の若い世代の日系社会訪問・交流事業等のJICAの中南米日系社会向け事業は、各プログラムの対象及び内容を日系社会の進展を念頭において見直した上で拡充を検討すべきである。
 また、従来の移住支援事業の実績を踏まえ、日系社会の世代変遷に併せ、日系社会を核とする中南米の知日・親日社会と日本の各界・各層の連携を推進するために必要な取組についても検討が行われるべきと考えられる。
 (イ)日系団体・日系人との連携による在住国及び第三国における経済社会開発事業並びに文化・スポーツを通じた日系団体の人材育成事業の推進が期待される。
 その中で例えば、JICAボランティア事業に、中南米等の日系人が参加しやすい制度や、日本在住の経験を有する日系人等、日本国籍を持たなくとも定住資格を持つ日系人でも参加できる制度とすべきことである。
 (ウ)JICA事業を通じて日系社会と日本の地方公共団体・経済界・学界等の連携を促進(産学連携も含む)することが重要である。例えば、日本側の各主体と協力して研修事業等を組成したり、日系社会ボランティア理解促進調査団を派遣することは有効である。
《オ》学界による連携のための施策
 (ア)日系移民の歴史的資料の保存や展示により、日系社会のアイデンティティ形成と日本や現地での理解を促進するために、JICA横浜海外移住資料館をはじめ、国内外の移住資料館との連携を推進する。この組織化により、研究の円滑化と社会への還元を進める。
 (イ)日系社会に関する学術研究成果を海外日系人大会や学会の研究大会等広く内外の機会で披露することにより、現代を共に生きる実態を共有し、各国の発展に貢献する。
《カ》日本語・日本文化発信事業における連携のための施策
 日本語教育については、継承言語教育に加えて、非日系人も含め外国語としての日本語教育のニーズの高まりが見られ、また、日系社会に限らず、中南米社会全体において日本文化への関心が増大している。
 かかる状況の中、海外移住審議会の従前の意見も踏まえ、デジタル時代への対応に留意しつつ、独立行政法人国際交流基金やJICAなどオールジャパンで、日系社会、日系ネットワークや現地日本語教育機関とも連携しつつ日本語普及や日本文化の発信事業を強化すべきである。
 例えば、現地日系機関を日本文化やブランドの発信拠点として活用することや次のような施策の推進を検討すべきである。
 (ア)現地の日本語教育ニーズの変化を踏まえ、また現地教育制度にも対応した日本語教育カリキュラム・教授法の導入支援
 (イ)日系学校等現地校のバイリンガル校化や、外国語としての日本語教育に関する支援
 (ウ)高等教育機関での日本語講座・日本研究講座の設置の促進
 (エ)日本語教育機関等への教師養成が可能な高度な日本人の日本語専門家・日本語教師・ボランティアの派遣、日本語教材の購入支援やスペイン語・ポルトガル語での出版促進
 (オ)巡回セミナー等による日本語教師研修や日本事情・文化の発信
 (カ)インターネットを通じた日本語オンライン授業の実現、デジタル教材の開発
 (キ)コラボレーション事業を含む日本文化・芸術分野の発信・交流事業やその他人的交流事業
 (ク)日本の放送コンテンツの紹介事業
 (ケ)インターネット等デジタル媒体を通じた日本事情・文化の発信,またデジタルインフルエンサーの活用
 (コ)スポーツや教育、文化面の交流や企業活動支援等を通じた、日系社会の若い世代の日本への関心の喚起
(3)在日日系社会に関する施策
 中南米地域の210万人を超える日系社会の約一割に相当する約21万人が日本に在住し、日本の経済活動に対する貢献及び日本と中南米諸国の人的交流に重要な役割を果たしている。
 在日日系社会から日本と母国を結ぶ人材が育ち、将来の日本と中南米の架け橋として活躍することを応援する体制つくりが必要である。特に、在日日系人や母国への帰国者の子弟は、次世代の日本と中南米を繋ぐ力となるべき存在といえる。これら子弟が高度人材として育つよう、高等教育へのアクセスも含め支援することが重要である。具体的には次のような施策を積極的に検討すべきである。
《ア》在日日系人子弟(小中高大生)等への教育支援・奨学金支給
《イ》日本からの帰国子女への教育支援
《ウ》日本企業での日系人によるインターンシップ等の促進
《エ》グローカル協力隊制度(JICA日系社会ボランティアによる渡航前、帰国後の在日日系社会支援活動)の活用
《オ》中南米に帰国する在日日系人に対する、進学、技術指導、企業支援等の支援。
《カ》高い専門性を有する日系人材を経済界等において、或いは、JICA専門家等として活用することの推進
《キ》在日日系メディアの発信力を活用した情報(外国語も含む)発信
《ク》四世以降の世代にも、在留資格について特別な施策を検討すべきである。(終わり)



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