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ボルガ河畔の想い出 丸木英朗
久し振りに丸木さんの原稿が届いたので以前掲載済みの話題と重複する部分もあるかもしれませんが、全文を残して置くことにします。80歳の時にロシア連邦タタールスタン共和国の首都カザーニでの水泳マスターズ世界選手権大会の表彰台に立った瞬間の達成感と今年85歳の人生最後のチャンスがパンデミックで見事断たれてしまい延期された来年の日本での大会にチャンスを狙い駄目なら90歳-94歳の次回ブラケットに挑むという壮大な人生設計、目標を力強く語っておられます。90歳と云わず95歳、100歳まで泳ぎ続けて欲しいものです。丸木さんの活躍を最後までFLWできそうにもないですが。。。写真は、丸木さんが原稿に付けておられる水泳マスターズ世界選手権大会の表彰台でのガッツポーズです。見ていて気持ちが良いですね。丸木さん今後も泳ぎ続けて下さい。


ボルガ河畔の想い出 丸木英朗
 今年85歳の僕は半世紀を超えるブラジル、アメリカ、カナダでの移民生活には数多くの想い出があります。中でも最も心に残る生涯の想い出は、80歳の時にロシア連邦タタールスタン共和国の首都カザニでの水泳マスターズ世界選手権大会の表彰台に立った瞬間の達成感でした。日本での水泳競技会では地方大会予選落ちが殆どで、全国大会には2回出場しただけの3流選手の僕が、オリンピック メダリストに勝って世界選手権大会の表彰台に立てるとは夢の様でした。
 小学校では野球選手で、巨人のキャッチャーの藤尾が3番打者、ファーストの僕が4番、阪急でホームラン王になった中田が5番のクリーンナップトリオで阪神間では強豪チームでした。ところが、中学1年の時に学校でファーストミットを盗まれ、野球選手になる夢を泣く泣く諦めました。終戦直後の日本ではグローブは製造されておらず、ファーストミットは父の1ヶ月の収入ぐらいの値段でしたから再度買ってくれとは言えませんでした。そんな事で、金がかからず裸一貫でやれるスポーツは相撲か水泳しかなく、水泳に転向したのでした。野球を続けておれば、せいぜい甲子園どまりか、良くても六大学レベルで世界の檜舞台メジャーでの活躍は望むべくもなかったでしょう。当時は泥棒を恨みましたが、今では泥棒さん有難うの心境です。
 30年間のアメリカ勤務では毎年三百日は海外出張で、航空会社マイレージの二百万マイルメンバーになる程の多忙で泳ぐ暇はありませんでした。70歳でリタイヤー、酒飲んでテレビを観てるだけでは文字通りのカウチポテトになってしまうので、地元のマスターズ水泳クラブに申し込み、定員に空きの出るまで1年のスタンバイ後に入会出来ました。学生時代には平泳をやってましたが、現在の水泳界では4種目全てのトレーニングになっており、70歳の手習いでバタフライを学びました。40年以上のブランクがありましたが、初年度にオンタリオ州選手権大会に於いてバタフライで金メダルを受賞しました。石の上にも3年、3年後に全種目でカナディアン チャンピオンになりました。
 5年前の2015年8月、水泳世界選手権大会とマスターズ水泳世界選手権大会が史上初めて同時開催されるタタールスタンの首都カザニに到着したのは午前3時、空港には写真撮影禁止の警告が至るところに貼ってあるにも拘らず、デジカメやスマホを持ちだして忠告や逮捕されてる人々の列を尻目に、僕達選手団は入国通関免除のゲートから選手村行きのバスに案内されました。コンシュラー フィー免除のヒューマニタリアン ビザの為、競技期間中の滞在のみ許可され最終日の翌日までしかロシアに滞在出来ないのでした。選手村の宿舎に入居出来たのは夜明け前で、チェックインを済ませ宿泊費に含まれてる6時半からの朝食食堂のある道路の向かいにあるテニス アカデミーに食べに行きました。マリア シャナトバ等の世界的なプレーヤーを輩出してる国策テニス学校は豪華な設備で、さすがにカザニはスポーツ キャピタル オブ ロシアだけあると感心しました。
 寄る年波には勝てず、頭脳はいささか呆けてきましたが、今尚、体力は現役ですので、来年に日本で開催される世界マスターズゲーム関西大会(年齢別オリンピック、競泳は神戸5月)と再来年の水泳マスターズ世界選手大会(競泳は博多6月)で優勝し金メダルを獲得して故郷に錦を飾る所存です。
 末筆ながら、今年の初めにブラジルで午前中は海水浴で筋肉をリラックスさせ、午後にはスポーツクラブのプールでのトレーニングに参加し、絶好のコンディションでカナダに帰って来たら、3月末のオタワでのオンタリオ州選手権が中止、トロントでの5月のカナダ選手権も中止、コロンビアのメデインでの6月のパンアメリカン選手権も中止、ブラジルのリオデジャネイロでの9月のパンアメリカン マスターズゲームも中止となり、85歳から89歳ブラケットで最年少の今年は金メダル大漁の筈でしたが全てパーになりました。現在カナダでは未だにコロナウイルスによる非常事態宣言が解除されず、水泳クラブも閉鎖が続きトレーニング出来ず、住んでるアパートのプールも閉鎖され不運な年ではあります。




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