情熱のブラジルサッカー 華麗・独創・興奮 の著者沢田啓明さんからの寄稿文です。
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掲題の「情熱のブラジルサッカー」を平凡社新書131(定価760円)で出版人気を博しているサンパウロ在住の沢田啓明記者から友人として7月1日付け報知新聞に掲載されたコラムをメールで近影と共に送って頂きました。
1955年山口県防府市生まれ。上智大学外国学部フランス語課卒業。サッカージャーナリスト。1986年末にブラジルに渡り、以来、サンパウロに住んでブラジルと南米のサッカーを見続けている。1986年創刊時より「ワールドサッカーマガジン」(ベースボール・マガジン社)のブラジルサッカーのページを担当、また『報知新聞』にも常時ブラジルサッカー情報を提供している。(同書【著者】欄より)
W杯サッカーで唯一、四回優勝している最強国・ブラジル。ペレ、ソクラテス、ジーコ、リバウドらの名選手を輩出し、そのスーパテクニックは世界のファンを魅了してきた。スタジアムの熱狂、歴史、さらに南米予選の苦闘を収め、ブラジルサッカーの将来をも視野に入れる。サッカーファンはもちろん、ラテン気分に浸りたい人は必読!(同書【扉注釈】より)
是非まだお読みでない方はお読み下さい。サンパウロでは高野書店に多数入荷しております。
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「ロナウドが7点以上取って得点王になれば、ブラジルの優勝だ」(フ
ェリペ監督)。「僕が得点王となり、ブラジルが優勝するよ」(ロナウド)。
大会前にブラジルのフェリペ監督とロナウドが言った言葉が、そのまま現
実のものとなった。
ロナウドは、4年前のワールドカップ・フランス大会の決勝で原因不明
のひきつけを起こして散々な出来に終わった。その後、99年11月に右ひざ
じん帯を損傷して手術を行ない、2000年4月に復帰したものの今度は
右足じん帯を断裂して再び手術を行なう。1年5ヶ月後にカムバックする
が、その後も右太ももや左太ももの故障を繰り返して「もはや限界か」と
まで言われた。しかし今年3月、2年半ぶりにブラジル代表に復帰。今大
会では8得点をあげて得点王となり、優勝の立役者となった。
それにしても、ブラジルにとっては幸運が重なった大会だった。まず、
グループリーグでの相手に恵まれ、ここで大量得点をあげたことでチーム
が波に乗った。そして、フランス、アルゼンチン、イタリアなどが早々と敗
退してくれたため決勝トーナメント以降も強豪との対決が少なく、比較的
楽に勝ち進むことができた。
もちろん、幸運だけでワールドカップを勝ち取ることはできない。ロナ
ウド、リバウド、ロベルト・カルロスらのタレントに恵まれたことが最大
の勝因だろうが、忘れてはならないのがフェリペ監督の功績だ。ブラジル
が南米予選で不振にあえいでいた時期に監督を引き受け、予選の最終戦で
辛うじて本大会出場を決めた。その後も「ロマリオを代表に呼べ」という
圧力に苦しんだが、「チームワークを乱す選手は不要だ」として頑として
ロマリオの召集を拒んだ。そして、スター軍団を一つにまとめあげて栄冠を
つかんだ。
ロナウドとフェリペ。勇気を持って自分の信念をどこまでも貫いた男た
ちが、世界で最高の栄誉を手にした。
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