丸紅ブラジル会社に5年間勤務された杉井 皓一さんからの寄稿文。
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杉井さんとは丸紅当時に御一緒に仕事をさせて頂いた古い仲間です。私が丸紅ブラジル会社を退社した95年の前の年に丸紅大阪本社でお会いして以来ですが、7月末にお仕事でポルトアレグレまで出張してこられ一晩食事をご一緒しながら昔のブラジル談義に耽りましたが、今回ブラジル勤務当時と現在のブラジルの差異、貿易立国としてのブラジルの経済回復への道を商社マンらしい観点からご指摘頂いていおります。ブラジル生れのエヅアルド君が既に27歳との事、時の隔たりを感じます。写真は、7月末にポルトアレグレに来られた時に撮ったものです。真ん中の若々しいのが杉井さんです。 |
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ブラジル回顧録 2002年9月5日 杉井 皓一
私は1973年から1978年までの5年間Sao Pauloに家族と共に駐在していましたが、この間に生まれた
長男(Eduardoと名付けましたが)も米国留学を経て今や27歳になりました。
赴任当時のAvenida Paulistaは長い間工事中で夜も薄暗く雨が降ると泥んこ道になり暫く晴天が続く
と埃道と化す様な状態で、夜になるとピンクのセーターに黒ブーツ履きの立ちんぼが現れるという
些か危ない通りでしたが、今やすっかりビジネス街となり地下鉄まで開通して市内の主要地区へ行く
のが大変便利になったのは大きな変化です。 夜に地下鉄に乗るのは危険かとも思いましたが明るくて
清潔で全く問題ありませんでした。
当初住んでいたAlameda Francaのマンションは既に取り壊されていると思っていたら近隣の新築
マンション群の中に古いまま残っていて懐かしい思いでしたが、娘がよくチョコレートを貰っていた
角のconfeitariaは今や靴屋になっていました。
当時はVolkswagenの小さな車でよくドライブ旅行に行ったものです。 Belo HorizonteからBrasilia
を回って3,000kmとか、Porto Alegreまで往復2,400kmとかのドライブは今から思うと信じられない
位ですが良い思い出になっています。 もっとも小さな子供達にとっては親の身勝手で苦痛だけだった
かも知れませんが。 旅行好きなためブラジル以外にもIguacuの滝やAsuncion, PeruのCuzco –
Machupichu, ArgentinaのMendozaからChileのSantiagoまで路線バスでのアンデス越えや
Barilocheでの夏スキーなども体験し、アルバムを取り出して見れば若かった当時を懐かしく思います。
車と言えば当時は社有車もopara 4100ccなどの大型車だったのですが、今回気付いたのは走っている
車がみな欧州なみの小型車になっていることで、これも燃費効率の影響なのでしょうか。
今回の出張は7年振りで、前回は丁度通貨がrealになった直後でしたが対米ドル換算比率1:1が
その後随分暴落したせいで今やホテル代や食事代などすべての物価が随分安くなった印象を受けま
した。 ここまで通貨安になると輸出産品の国際競争力が出て来てブラジル経済にとってはむしろ
プラス要因になるのではと思います。 しかし価格以上にもっと輸出促進対策が必要なのではと思う
次第です。 ブラジルと言えば暑い国でコーヒーくらいしか産物が無いというのが一般日本人の感覚
ですが、もっと各産業協会や国自体が補助金でも出して世界の展示会に出展するとかの宣伝活動が
必要だと思います。 例えばアパレル産業では著名なデザイナーやモデルがいる様ですが、欧米では
知られていても日本では殆ど無名に等しく、今年7月に東京で開催されたIFF(国際ファッションフェア)
に初めてブラジルのアパレルが出展された様な状態です。 革靴にしても欧米向けを中心に年間16億
ドルも輸出されているにも拘らず日本向けは僅か3百万ドル程度です。 これも欧米の靴見本市には
出展されているものの日本で開催されているISFなどの靴見本市に出展されていないので知名度が
低いのも要因だと思います。 革靴輸入には輸入枠があるもののポルトガル、ドイツ、イタリア、
スペイン、フランスなどの靴メーカーは毎回出展しており、ブラジルは遠いというハンデイキャップ
があるだけに一層のアピール活動が必要ではないでしょうか。 また食料品分野でも季節差を利用した
果物や野菜などの取引が可能なのではないでしょうか。 ワインなど多数の国々から輸入されている
のにブラジルワインは店頭で見かけることが殆ど無いのも努力不足と言えるのではないでしょうか。
今回サンパウロの日本料理屋で驚いたのは鮪、鯖、ヒラメ、スズキ、アジなど殆どの魚が近海で獲れる
とのことで、以前は鯛とボラくらいなもので他はチリや米国からの輸入でしたからブラジル近海には
魚が少ないと思っていましたが、実際のところ需要が少なかったせいで獲っていなかっただけなの
ですね。 Argentinaからはメルルーサという魚が輸入されているのですからブラジルからも魚輸出の
可能性が無きにしも非ずと思うのですが。 私は生活用品分野以外の事は良く分かりませんが他の
資源や産業でも同じ事が言えるのではないでしょうか。
輸出増強を一つの手段として一刻も早くブラジル経済が回復することを願って止みません。
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