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健やか長寿謳歌しよう=森口医博が健康指南=聖市講演会の要旨紹介=
森口幸雄博士(慶応大学医学部卒)は、南伯のポルトアレグレ市に30数年住んでおられ岳父アマゾンのシュバエツアーと云われた細江静男ドクターの遺言を守りブラジルのリオグランデドスール州連邦大学医学部より医師としての資格付与を得てから32年間に渡り南部2州の日系コロニアを巡回診療して周り毎年5000km500人近い日系人の健康管理、予防医学を実践して来られており今や南伯のシュバエツアーの称号がお似合いですが、昨年の春の叙勲では勲3等瑞宝章を授章されました。1月25日(土)の南日伯援護協会の第22回定期総会に顧問として出席されていた森口先生の写真を撮らせて頂く機会がありましたのでニッケイ新聞新年特集号に掲載されている森口先生の著書出版記念講演会の要旨を転載させて頂きます。


2003年1月1日(水)
 森口幸雄リオ・グランデ・ド・スル州カトリック大学老年医学研究所長(同大学院教授)が十月、『すこやか長寿の秘訣─在ブラジル日本人の健康のためにー』をニッケイ新聞社から上梓した。これを記念した講演会と出版記念会が十七日、聖市リベルダーデ区の文協ビルで開かれた。本紙とサンパウロ日伯援護協会(和井武一会長)との共催。森口教授は、約二百人の聴講者を前に、二十歳若返るための八カ条を挙げた。以下に〃講演要旨〃を改めて紹介したい。

 日本の平均年齢は男性が七八・〇七歳、女性が八四・九三歳。男女合わせた平均が八一・五〇歳で世界一。高齢化が進むなか、本当の人生は六十歳以上から始まるという。
 老いて避けて取れないものが四つある。老化、病気、体の不自由、死亡だ。
 健やかに老いることはできる。どうしたらよいかー。
 森口教授は、二十歳若返る方法として、食事、運動などに関して八項目を挙げた。特に、重要なのが、毎日歩くことと禁煙だ。
 ▼歩くことは健康のもと
 歩くことは、心臓の機能を正常に保つ▽血液の凝固を防ぐ▽肥満の予防に役立つーなど有益な効果をもたらす。どんな医者にかかるよりも効果が大きい。
 ブラジルで死亡率の高い病気は心筋梗塞。ノルウェーでの四十─五十九歳を対象とした調査によると、毎週四時間以上歩いていると、心筋梗塞になる率が半減する。
 また、ヨーロッパ連合の各国が共同で五十年代より実施した疫学研究でも、歩かないで家や仕事で閉じこもっている人々の心筋梗塞は毎日、歩いている人の二倍であることが分かった。
 歩くというのは、何も持たないで止まらず、道、公園、広場を歩行すること。雨天の場合は、室内を歩く。朝食前に、コップ一杯の水を飲んで歩くのが最適。
 距離ではなく時間が大切で、リュウマチの患者も、一歩が一センチ幅でも歩くこと。
 年齢と歩行時間は次の通り。四十、五十代で六十分、六十代で五十分、七十代で四十分、八十代で三十分、九十代で二十分。
◇今すぐ禁煙実行へ
 ▼禁煙
 日本で死亡原因の第一位はがん。その中でも肺がん死亡率が最も高い。昔は胃がんの死亡率が最高だった。九三年に肺がん死亡率が上回った。これは明らかに、煙草の影響と言える。
 ブラジルで、成人の死亡原因の第一位は心臓疾患で、特に心筋梗塞が目立つ。一日に二十本吸うと、非喫煙者に比べて心筋梗塞になる危険性は五倍高まる。
 このほか、喫煙は脳萎縮、アルツハイマー、白内障、骨粗しょう症などを起こしやすくする。
 一本の煙草は三分の命を縮める。安らかに健やかに死ぬには、煙草は絶対ダメ。
 がんの苦痛はモルヒネで取ることができるが、体中に転移してしまったら、もう手遅れ。最後に苦しむことになる。
◇塩分少なめ野菜多く
 ▼生活習慣病と予防
 日本人がブラジルに移住すると、前立腺がんや乳がんが増える。ハワイ在住の日本人移住者は日本にいる日本人より糖尿病、心筋梗塞が多い。
 日本人がアメリカに行けば胃がんが減る。逆に、アメリカ人が日本に来れば胃がんが増える。
 がん、脳卒中、心筋梗塞に代表される成人病は遺伝よりも生活習慣に左右されるということだ。特に、食生活が大きな影響を与える。
 動物性油、塩は少なめに、魚介類、海草、野菜を多く摂取すれば長寿につながる。毎年一回は健康診断を受け、病気の予防を心がけるべき。
 アメリカは治療医学が主流を占める。つまり、病気になったら、医者にかかればよいとの考えを持つ。ブラジルはアメリカを模範としているため、予防について意識が低い。
 血圧が高くても、すぐに薬を使わず、歩いて減塩すること。
 慢性老人病となれば、病気との共存を考える。体が不自由になっても、精神的、霊的に生活の質を保ち、高めればよい。
 七十歳以上になれば少なくても、五つ以上の病気を持っている。
 ▼老いることは素晴らしい
 若い時には見えなかったものが見える∇若い時には悟ることが出来なかったことが悟れる∇若いときの価値観は不変でないことが分かるーなど年を重ねれば、知恵、賢明さが増す。
 年をとるということは、否定的に思われがちだ。愛する力、理解力、包容力という結晶性智能は、年齢に従って、高まる。老いるということは素晴らしいことなのだ。
日系人の健康守る=巡回診療は岳父の遺言
 森口教授は巡回診療に携わって三十二年。サンタカタリーナ、リオ・グランデ・ド・スル州に在住の日系人の健康状態をくまなく、観察してきた。『すこやか長寿の秘訣』はそのデータに基づいて書かれたものだけに説得力を持つ。
 巡回診療は国際協力事業団から委託を受け、南日伯援護協会(ポルトアレグレ市、刀禰康弘会長)が実施している事業。一年間にカシアス・ド・スル市、サンレオポルド市など日系人の居住地三十カ所ほどを回る。五百人前後が毎年、来診する。
 巡回診療に関わるきっかけは、岳父・細江静男医師の遺言だった。「日系人の健康を守るために尽くしてほしい」。そう言い残した。
 当時、ブラジル移住者の平均寿命は日本に比べて十七歳も少なかった。理由を解明しなければならないという、学者としての使命感に燃えた。 
 沖縄県出身者を例にとると、大豆を食べない▽魚介類を摂取しない▽塩分を三─四倍とるなどの原因が分かった。
 成人病は生活習慣からくる。治療で、投薬は最終手段。食事の改善を徹底させた。
 「これじゃあ、三カ月、持ちませんよ」。生活習慣の悪い来診者には、容赦なかった。あまりの厳しさに、翌年から受診を取りやめる患者も出たという。
 しかし、生活習慣の改善に向けた徹底した指導で、健康を取り戻した患者も少なくない。高血圧の患者は十分の一まで減った。
 栗林隆之・援協事務局長は、「ブラジル人と日本人の体質は異なる。同じように服用をしたら逆効果になることもある。巡回診療に処方箋や医薬品を持参、健康相談を持ちかける人も多い。みんな感謝している」と、森口教授の熱意を高く評価している。
二十歳若くなる健康法
一、毎日朝食をきちんと食べる
二、一日平均八時間は横になって休む
三、栄養はバランスを考え、一日二十種類は食べる
四、毎日歩く
五、深酒にならないように気をつける。酒なら一日一合、ビールは大瓶一本、ワインはコップ一杯程度
六、労働時間は一日九時間以内
七、ストレスをとる
八、タバコは吸わない



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