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山下晃明のブラジルで損せぬ法(196)(197)
『実業のブラジル』誌に好評連載中(2003年12月号/2004年1月号)を掲載します。2003年度のルーラ政権1年目の総纏め、評価と2004年度の予想、ブラジルの政治と経済を知りたい人必読の山下 節が冴える第196回と197回一挙公開です。197回と言うと実に単純計算しても17年間の歳月を掛けておりその超人的な活動に驚異を感じます。
最近、仕事でリオに出向く機会が多く良くお会いして旧交を温めておりますが、ぼそぼそと語り掛ける口調は、紙面で見せる毒舌とは少し違う感じでその素朴さと独特の風貌は、ますます存在感を感じさせます。神戸高校の同級生とは言えブラジルに於いては数年先輩に当る山下君の今後の飛躍を期待したい。
写真は、リオで撮らせて頂いた近影です。


一年が過ぎ去った その成果は? 数字を見ると、ブラジルは今から投資をスタートするのに最高の条件となった

 インフレ

 ルーラ政権スタート以前からインフレが昂進し、4月には過去12か月累積で32.75%にまで上がり、物価や給料を過去インフレで調整すると年30%以上のインフレに暴走が危惧されたが、パロッシ蔵相がまことにPTらしからぬオーソドックス手法、マラン前蔵相以上の厳しい金融引き締めで乗り切った。インフレは過去12ヶ月で10月末現在FGV/DI指数で15.78%だが年末までには8%程度に下がるだろう。

 株式証券と金利

 株式は、年初のBOVESP指数が11,268から11月20日で19,240に上がった。C-BONDは年初66.25%から96%に上がった。今年は内外の資産家で思わぬ儲けになった人が多いだろう。
 金利はSELICが年初25.5%からピーク時26.5%まで上がり11月20日には17.5%に下がった。中南米諸国の金利はインフレ並みだから計画インフレを年10%とすると未だ高い。

 ドルレートと貿易収支

 ドルレートは年初の3.5レアルから11月半ばで2.9レアルに下がった、というよりも近年初めての現象だが、REALの価値が上がったので登録資本金のドル換算額が20.7%増える会社が出るだろう。
 輸出が好調で過去12ヵ月累積で10月末貿易収支233億ドルの黒字、本年度は輸出720億ドル、輸入490億ドルの実績となりそうだ。為替レートが安定したことが部品輸入コスト安定に役立っている。

 問題は債務残高

 債務残高は内債外債合わせると実に4400億ドル規模である。
 国債残高はドル換算で年初1820億から2475億ドルに増えた。地方財政や司法が足を引っぱっている。そのうち780億ドルは2004年に支払い期日到来となる。
 外債は現在年初1873億ドル程度であったのが、10月末で1944億ドル規模であろうが、2004年はFHC政権の置き土産370億ドルの期限が到来する。大きな負担となるが、恐らく先送りになるだろう。
この債務支払い期限引き伸ばしを続ける限りブラジルは何時までたっても借金地獄から抜け出せない。債務の残高を少しでも減らす動きが出れば、将来が明るくなる。対策として今が従来考えなかった独創的手法で債務を減らすチャンスではなかろうか。
 外債、内債の債務残高を毎日公表し、国民にも注目させて減らす努力をするのである。借金をしてまで無駄使いをするなの風潮を政界内外に創出する必要がある。

 新規投資

 何か大規模事業を民営化して2002年のスペインのような300億ドル規模の新規投資を導けると良いのだが、民営化以外にルーラ大統領が自ら動いて外貨余りアジアから公共投資を引き出す、また債権者と直接ネゴして、国中に無数にあるやりかけの公共事業や不動産などを交換清算するなどして不良資産と債務を交換する手がある。
 工業貿易開発省によれば来年の国内投資はペトロブラスや鉄鋼、パルプ、自動車などを中心に679億ドルになるだろうとのこと。

 税制年金改革

 税制改革も年金改革も政治がらみで、予定通りには進まない。2004年には選挙で審議が中断するかも知れない。しかし来年末までにタイムリミットを伸ばせば、例え部分でも法案成立の可能性が高い。重要なのはこれらはPT政権でなければ絶対に出来ない改革である。
 ICMS統一も各州知事の猛反対があるから極めて困難で、法令通過を妥協で成立させた時には一次的に増税も覚悟しておかねばならぬ、それでも税法を一本化させて将来税率を下げるメカニズムを作っておくのは長期的には歓迎である。いじわるな言い方をすれば、司法改革もルーラに必ずやってもらえば、その次の政権はPTで無くても良いことになる。

 外貨直接投資

 外国投資家は、まだ新政権の様子見をしている。本年は昨年の30%減で、ここ何年かの最低記録になるだろう。ブラジルへの投資は国内市場とFTAをにらんだMERCOSULなど長期に見て実行するべきであって、ルーラ政権の閣僚たち、今年は何もしなかったが、現政権をそれほど意識する必要は無いと思う。
 したがって、先ずは食料や燃料資源輸出供給基地とその関連、次ぎは公共投資である。ぜひとも日本に頑張ってもらいたいものである。来年のルーラ大統領に期待しよう。
 
 飯田流陰陽学の2004年

 来年は新しい90年期が始まる非常に重要な変化の年であるので、2004年版ガイドは一般書店で発売に変更するとのことで、ブラジルに本が届いたら案内させていただくのでご期待乞うだが、出版手配に時間がかかっているようだ。
 陰陽学の2004年とは、基本に戻る10年間が最初にあって、次の十年に時代のすべてが変化していくのだが、最近の世相を見ていて、大改革、大変化というのは誰かリーダーが出現して、ある日突然変るのではなく、逆に破壊する人が増えて、世の中どうにもこうにもならなくなり、皆の考えが、これではだめだ、基本に戻って皆で一致協力してやり直す。その時にはそれにふさわしい環境、新技術、新条件が自然に出現するシナリオが見えてきたように思う。
 飯田先生の節を引用すると、2004年から、過去の歴史の大きな歪み是正、調和復活への新エネルギーが躍動し始め、世の総ての"従来方式"が崩壊し生まれ変わる。
 自然界も天変地異でこれに参加、メチャクチャ繁盛する世界とカタストロフ破壊が拮抗。
 個人もこの節目を越えるのに、"自分流の従来方式"を捨てて生まれ直さねばならない。
 国家、法人、結社という人間の集団レベルでは個人の英智は喪失し、そうした当たり前の自然摂理を全く無視して盲目自滅の繁栄を追い求めるのみとなる。人間は集団化して自己と自然の本質を見失う、か弱き愚物である。少しでも賢明に生きたければ集団を排除し、個人で考え、決断すべきである。そういう個人的精神ルネサンスの時代が来る。

 2004年の変化

 それでは新しい30年期に時代はどう変わるかというと、まず世界中の政界財界大乱世。
 *七〜八月から株価、為替レートが激震、失政と天変地異(火山、大火災、大地震、異常気象、大水害、大旱魃、山火事、大火、霜害、豪雪、雹害、竜巻、大凶作)七〜八月を境に時代が激震し根底から変わる。
 集団から個人、個人主義的新型集団へ。世界はエネルギー、食料危機から"衣食住"基本見直しへ。投機経済、通信産業、権力構造の見直しへ。経済絶対、メディア、ネット、新聞主導が新型自由変化対応時代へ。
 激しい精神イデオロギー革命、教育革命、生命科学革命時代へ。飽食贅沢高級志向が消失して安全快適清貧志向へ。飲料水質汚染、原発攻撃、放火大火災、細菌汚染、送電妨害、ネットウィルステロへ、世界エネルギー危機、食料危機へ。
 法の無力化、無法特権主義時代が平等思考へ。農地、地方土地の価格が上昇し始める。
 右左翼の過激活動が活発化する。暴力団抗争が激化し、社会不安の間隙に再浸透していく。あらゆる業界分野で内紛、代表者の波乱、後継者争いが勃発する。土地、不動産、建設業界のトラブル犯罪が続出しする。消化器系、婦人科系、子宮卵巣系のトラブル、関連の発明発見がある。国所有の土地施設の払い下げ不正が発覚する。主婦を狙う新手の詐欺集団が横行する。幼児を狙う変質犯罪が激増する。社会は憔悴腐敗して猟奇犯罪が横行する。

 2004年から、全力を投入すべき産業と事業

 イデオロギー新分野構築(学術領域)、新エネルギー開発、生命科学、農業再興(備蓄)、漁業振興(栽培)、山林温存、新時代教育、水質濾過、地方町村再生。"ハイテク技術"もここに集積すべき。まったく新しいスタイルの文化経済が勃興するヒントがここから出現。
歴史は姿形を変えて繰り返す。過去あり得なかったことが本当に起こると覚悟すべきである。
 歴史は間違いなく時間の選り好みをし、第一次世界大戦、関東大震災、世界恐慌、第二次世界大戦が起きた歴史が再来する。世界戦争テロの激化、第五次中東戦争、第三次世界大戦勃発の危機、核使用か。世界紛争の後、国際権力構図が一変、新しい国際スタイルへ。
それは"変化"などと生易しいものではなく、激しい革命闘争になるだろう。


2004年ルーラ政権の経済政策がスタート

 パロッチ蔵相の功績をグラフで見る。ルーラ政権最初の一年は、この人のみが活躍し、大統領は旅行ばかりしていた感があるが、前政権よりもオーソドックスな金融引締めで、今にも脱線暴走しそうであった路線を見事元の軌道に戻した手際は賞賛に値する。
 政権交代で1100億レアルまで緩んだ支払い手段(M1)を850億レアル水準に安定させ、インフレ(FGV-DI)と金利(SELIC)を2002年の9月ごろの水準に戻したのが一目でわかる。
 グラフの山の部分が政権交代、選挙などでブラジルの失った12ヶ月である。
 これで金融指数は軌道修正完了し2004年からが真の意味でルーラ政権の経済政策スタートとなる。
 考えてみれば、現行憲法も1988年、軍政から民政に移管した後、ルーラ率いる労働党勢力の台頭で、最悪の事態に備えて、法改正が議会の過半数では成立しないように、法令でなく改正に2/3の票決が必要な憲法に、細かく年金利の数字まで条令を盛り込んだのが真実である。今回ルーラ政権が税制、年金改革に成功しても、実は原因もこの人で原点に戻ったにすぎず、政治家の都合のためにブラジルは大きな回り道をしてきたと言える。

 ブラジルの動きは早い

 あのカダフィ大佐が方針を変更し、リビアが大量破壊兵器の放棄を決定した。18日イランの署名に続いて20日にリビアがIAEAの全面視察を認める追加議定書に署名を表明した。
 イラクの米国の衛星誘導ピンホール爆弾に恐れをなしたか、穴から出てきたフセインの惨めな姿がきっかけになったか、世界中のテロリスタ達が右に習えば、ブッシュのイラク進攻も効があったといえるかもしれないが、注目すべきはその直前に"旅行ばかりしている"ルーラ大統領がアフリカや中近東を訪問したときリビアも訪れ相互自由貿易協定を結ぼうとしたことである。
 ブラジルにはレバノンやシリア含め中東の移民も多いから、ある程度の情報は事前に入手したと見るべきで、ブラジルの外務省の情報力もたいしたものである。移民の多い国は貿易と外交に強くなるだろう。
 ルーラはキューバに行ってカストロ首相と親しく語ってきたが、リビアにも行って、精悍さが消えてぶよぶよと太ってしまったカダフィ大佐と肩を組んで通商協力の話しをして戻った、直後に大量破壊兵器の放棄をリビアが発表とシナリオが出来すぎている。

 反骨ルーラ

 ルーラは発展途上国G20と組んで、先進国の農産品輸入制限に対抗するFTA組織にしようとしている。
 FTAAにも北米にすんなり追従はせず、その前にMERCOSULやEUとの結びつきを強化しようとしている。ルーラはイラク攻撃には反対で、イスラム諸国に行ってアメリカは撤退するべきと発言している。
 歴史にもしは無いが、ブッシュがイラクへ進撃していなかったら、イラクの何万人かの兵隊と市民と400人かの米兵や国連のブラジル人のイラク代表などが死なずに済んだかも知れないのである。
 米英進攻のテロ攻撃は名目で、実際は石油の利権などが米英の目的と言う人がいるが、もしテロ国家手なずけるのが目的であれば、米英式の戦力を送って滅ぼす剛の道よりも、ブラジル人などのアミザーデの柔で制する平和的な解決の道があるかも知れない。国内にはパレスチナやイスラエル人もアラブ人もイラク人も移住して仲良く住んでいるのである。

 イラク復興派兵はハリネズミ作戦で

 韓国も3000人イラクに派兵するが、胸に入れる大きな防弾板と装甲車に二重防弾ガラスを準備したとの報道に注目だ。新技術を駆使した空想小説のバリヤーのごときハリネズミ作戦で完全防御の戦略で、自衛隊も防御体制を十分整えて行き、一兵も失わずに戻ればそれも新時代の防衛手段として評価されるだろう。フランスの公立学校でイスラムベールの使用禁止令がでたそうだが、連合軍がもしイラクを民主化し宗教と政治の分離に成功すれば、イスラム社会の歴史的大改革になるだろう。派兵反対論者は米軍に撤退せよと言うが、米国が撤退すれば当然国際復興支援も止まるから、イラクの窮状は今より悪化し大混乱となる。逆に地球上のテロリストが元気付いて進攻前よりも世界中が危険になることは明白である。 
また米英、日もそれに加担、の行為が進攻から侵略になって全責任を持たされ巨額の賠償金を払わされるだろうから、今となって米軍は退くことはできず、攻めるも地獄、退くも地獄の様相を呈している。
 復興に巨額な資金が動き、参加する企業は儲かるが、米英企業が儲かるということは、壊した人が建設で儲けるのであるから、イラク側で面白くない人も出るわけで、不満分子の反撃は今後一層激しくなると見るべきだ。

 ブラジル新年早々の指針
 
 INTERNETでCNPJ票をプリントしておこう
 有限会社(LTDA)は、1月11日で新民法施行1年目になり、CARTORIOだけに登録されたS/C LTDAは正規の法人では無くなり、CNPJがIRREGULARになる可能性がある。資産の譲渡、口座開設とか公的手続きが一切不可能になる恐れがあるので、定款変更手続きが何らかの理由で11日現在まだ出来ていない方はINTERNETでCNPJ票のREGULARのものを数枚プリントして保存することをお勧めする。
 また新民法では夫婦別財産制度(SEPARACAO DE BENS)は無効になり夫婦の出資による有限責任会社も禁止になるので要注意である。さらに新民法で夫婦は法的に結婚していなくても債権債務共有になり、有限会社の責任も共有になるため1%のコータ所有出資社員の配偶者にも責任が発生するので、当然訴訟権も発生し、有限責任会社は事実上無意味となる。

 社主の節税研究会を設けよう

 ブラジルの税金は過酷である。所得税で徴収すると利益ごまかしで脱税されるので、売り上げから徴収しようとする。それでも非公式販売で逃げるから、銀行取引にも課税して小切手を振り出せば税金をかけることにした。かくしてブラジルは対GDPに対する収税が世界トップクラスになっている。そこへ本年よりCOFINSで更に増税するのである。
 まだ細則はまだ出ていないがCOFINSが二月に3%から7.6%に増税となる。商工業の純利益は数パーセントが普通であるから一口に売上げの7.6%といっても所得税100%を強制的に徴収するのと同じ効果があり、かなりの重税である。計理士とよく相談し対処する必要がある。
 CONFINSやCPMFなど頭から定率で課税する税金は徴収が簡単であるとはいえ、率を最初は0.3%とか少ない率の暫定で始めて、財政の出費を削減しないで、だんだんと増税していき、負担に耐え兼ねた工業から累積課税廃止の要請を利用して、減収にならないようにさらに増税する感覚はまことに理解しがたい。  
 売上げ税が7.6%にもなると経済に深刻な影響を与える。
 これ以外にISS、ICMS,IPI税もある。このような間接税をいとも簡単に制定してしまう政府や議員の経済的常識を疑うものである。
税制改革の方はISSと各州ICMSの統一が2004討議2005実施で、その後ICMS、IPI,COFINS、PISなどを統一したIVA設定の予想が2007年と先の長い話である。
 税金は今後かなり深刻な問題となるので、計理士や経理社員まかせにしないで、社主の節税研究が必要となる。

 金利は下がったが、国際的にはまだ高い

 コスト上乗せ方式は古い。インフレプラス実質金利と考えるのはブラジルのみで、高インフレ時代に出来た風習で、金融機関は過保護である。この考えでは、SELIC金利は現状で15%以下には下がらないことになる。
 一方中南米各国も先進国は金利とインンフレは別でインフレを考慮するとマイナス金利の国が多い時代である。
商工業でもコストの積み上げで売値を建てる時代遅れの方式では合理化は不可能であり、絶対に国際競争にも勝てない。

 当たり前の基準を変える新技術

 2004年からすべてが変わるのだが、得意の陰陽学は来月から解説してみたい。新技術が各分野の常識を急速に変えつつある。
 一番身近な例で、短期間に世界を大きく変えたのは携帯電話、一人一台が当たり前、さらにそれにカメラが付いてインターネットにつながるのも当たり前。何でも電話注文、鉄道の定期券や銀行口座操作、クレジットカードの代用にもなりTVも見れる。これだけ見ても時代は変わる。



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