菊の御紋を消さないで・・・ B、C 文化・教育・産業の中枢都市 活発な活動展開の日系社会 サンパウロ新聞 4月17日、4月20日版より
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これまでににもサンパウロの日本語新聞のサンパウロ新聞、ニッケイ新聞に何度かポルトアレグレ総領事館の閉鎖問題に付いて記事にして頂いており,『私たちの40年!!』HPにもその都度転載させて頂いておりますが、今回は、最近のサンパウロ新聞の特徴でもある問題点を取上げ徹底した取材と掘り下げた取り上げ方をして呉れており若手記者の後藤英樹さんを3泊4日の日程でポルトアレグレに派遣、コロニアの中心的機関である南日伯援護協会の学生寮に陣取り顔を合わせる機会のあった多くの地元の皆さんの声を集め南伯日本商工会議所、カトリック大学日本文化研究所、イボチ移住地等にも足を向け徹底取材の上、新聞でしか出来ない客観性に立脚した分かり易い解説によりこの問題を浮き彫りにして呉れています。これを読まれた皆さんのご意見を『私たちの40年!!』HPのバーチャル座談会に取上げて話しあって見たいと思います。皆さんの率直なご意見を賜りたく、宜しくお願いします。
写真は、ポルトアレグレに取材に来られた後藤 英樹記者(左端)がカトリック大学日本文化研究所長医学博士森口幸雄教授と撮ったものです。同記者は、サンパウロ新聞には1年強のまだまだ駆け出し記者(失礼!)、銀行マンとしての日本での生活の方が長く、奥さんと4歳のお嬢さんがブラジル人と云う日伯交流、親善を基盤とした地に足が付いた姿勢で記事を書いておられ将来が嘱望されている有能記者です。後藤さん今回のポルトアレグレ総領事館存続問題の取材、報道本当に有難う御座いました。
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菊の御紋を消さないで・・・ B 文化・教育・産業の中枢都市 活発な活動展開の日系社会
国連人間開発指数で全国一教育水準が高いリオ・グランデ・ド・スール(RS)州は、近年、優秀な人材を輩出している。その中でも評価が高い大学にあげられているのが、南リオグランデ・カトリック大学(PUC)だ。
現在、同大学で老年医学研究所所長・大学院教授として活躍している森口幸雄先生(七九・一世)に、総領事館閉鎖問題について聞いてみた。
「ブラジルに帰化してパスポートはブラジルですが、心は一〇〇%日本です」と話す森口先生は、「総領事館は心の拠り所、総領事は私たちにとって『父親』なのです」と総領事館の重要性を語る。
「RS州は、サンパウロ、リオに並んで政治的、経済的発言力が強い州であり、教育、文化、芸術の分野でも重要な位置付けとなっている。例えば、同大学では、上智大学との交換留学制度や、日本政府の援助による『第三国研修協力プロジェクト』では、ラテン・アメリカ十七か国およびアフリカ二か国から大学院コースの研修員を受け入れ、卒業生を世界各地に送り出している」と森口先生は説明した。
このような技術協力の集大成は、同地域に在住するものの地元の誇りであり、郷土愛の発露を意味する。
RS州に日系社会が存在し総領事館が設置されていたからこそ出来たことであり、現在の日系社会の発展と経済基盤の確立も、両者の相互関係に依るものが大きい。
技術協力などの投資がどのように結実されるか、大きな期待と将来への展望を考える時、総領事館は必要不可欠なものであり、百年の大計からも、南伯の要衝としての国益、権益を想定する時、その重要性は他に比較するものはない。
リオ、サンパウロに次いで、同地に総領事館が開設された経緯は、それなりの位置付け、理由が外務省で検討され、政治的、経済的要因が国益に繋がると判断されたからであり、同地の在留邦人数を考慮すると同時に、同地に開設した原点に立ち返る必要性がある。 また、総領事館が中心になって行っている各種文化交流事業では、日本文化センターが、カトリック大学、リオ・グランデ・ド・スール連邦大学、ウニシノス大学に設置、日本文化普及の発信基地となっている。
日系企業としては住友商事、三菱商事、倉敷紡績などが進出しており、南伯日本商工会議所としても今後の動向を注目している。
南日伯援護協会の栗原隆之事務局長(一世・七一)は、一九五六年第七次航海ブラジル丸で訪伯、現在、日本政府を相手に訴訟している第一次ドミニカ移民の移住者と同船者だ。
「四年後、日本人移民百周年、日本側の窓口があるとないとでは意味合いがかなり違ってくるでしょう。我々、日系人の新たなスタートになる二〇〇八年、大きな期待を持って準備を進めているだけに、我々の心を逆なでするようなことだけはしてほしくない」と静かに口を開いた。
(つづく・後藤英樹記者)
菊の御紋を消さないで・・・ 終わり 廃館は日本の損失にも 州政府・議会も存続を後押し
二日付けでブラジル大使に堀村隆彦氏が、五日付けで中南米局長に坂場三男氏が発令された。両氏とも本省にて中南米局を歴任、ブラジルには明るい見識を持っている。 「ぜひ、この人事異動が、ポルトアレグレ総領事館存続の呼び水になれば」と栗原隆之事務局長(南日伯援護協会)は話す。
「ポルトアレグレ総領事館廃止の動きは、ブラジル政府・経済界にも大きな損失になりかねない」と長島浩平ポルトアレグレ総領事は話す。
三月十五日には、ポルトアレグレ総領事館が管轄するサンタ・カタリーナ(SC)州議会で、「同総領事館が、今後も、日伯の発展のために継続されるべきであり、同総領事館を存続させようとするリオ・グランデ・ド・スール州政府の尽力に対し、全ての同州議会議員が結束、全面的に支援を要請する」と本会議で決議、長島浩平ポルトアレグレ総領事に本省に伝達するよう要請した。
また、先月(三月)十六日は、ブラジルの中で最も規模が大きく、重要な大学の一つ、RSカトリック大学(PUC)のノルベルト・フランシスコ・ラウフ総長から、川口順子外務大臣あてに、「同総領事館が、RS州、SC州と日本との交流関係の促進のために極めてダイナミックかつ大きな関心をもってその役割を果たしてきたこと、南伯地域の日本人社会にとって、かけがえのない存在であること」を伝達した。
長島総領事は、「現在の段階では、ポルトアレグレ総領事館が継続するか廃止するか具体的には決まっていない」と説明する。
世界的な流れとして、日本の利益、邦人保護などの観点から新公館を重慶(中国)など七か所に設立、アジアに目を向けていることは確かとしながらも、長島総領事は次の二点にいて、日本とブラジルの関係を強調した。
第一は、ブラジルは外交上、世界の中で政治、経済、食糧などの面で重要な位置付けにあり、ブラジルの国力を考えると、日本をはじめ諸外国と国際社会で連携・協力すべき関係にあるとしている。
第二に、日本とブラジルの二国間関係を考えた場合、国際紛争防止、軍縮などの面で日伯は協調路線を堅持、ブラジルは親日的であり、対日理解も諸外国に比べ進んでいる。「フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾ前大統領が池田維・前ブラジル大使に、『ブラジルと日本は兄弟』と述べたことは、まさに日伯の関係を代弁しているのでは」と長島総領事は両国の親密さを語る。
現在、ブラジルから約三十万人の日系人が就労のため日本に滞在している。社会的・経済的コストも日本人より少なく、韓国やフィリピンに比べ国内に感情的摩擦も少ないブラジル。
将来的視点に立って考えれば、ポルトアレグレ総領事館があることで、日伯をはじめ近隣諸国、ヨーロッパとの連携が期待できる。果してポルトアレグレ総領事館が存続されるのか、この数カ月で結論が出る。
(おわり・後藤英樹記者)
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