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沢田 啓明さんのサッカーコラム復活!!(3)
沢田さんには、何時もブラジルサッカーの最新ニュースを送って頂いており忙しさと一緒に行く仲間不足でピッチに立つ事が少なくなって来ているだけに貴重な情報源の一つとなっています。広いブラジルで北伯や南伯のチームの試合も見て貰いたいのですが、もう少し強くなり中央のチームと覇を争う地位に上らないと注目して貰えないのかも知れませんね。我が赤いチーム、インテルは、1勝1敗1分けで10位ですが、青の仇敵グレミオは、何とコリンチアンスに4-0で勝ち1勝2分けで4位に付けている。まだまだ始まったばかりで24チームのホームとアウエアーの総当り46ゲームの長丁場、12月まで続きますが、意外性のスポーツと沢田さんが定義つけている通りどの様な悲喜劇、ドラマが生れるのか、ドイツ大会に向って新しいヒーロが現れるのか?昨日ハンガリーを4-1で下し自信を取り戻した選抜軍、無事南米予選を突破できるのか、前回優勝チームは次回大会に自動的に出場できる権利が無くなり予選で苦労するブラジルですが、全大会出場チームの伝統を守り抜いて呉れるでしょう。
写真は、コリンチアンスに4-0で勝ち2ゴール目をブルーノ選手と喜び合うグレミオのエース、クリチアンです。地元ゼロオーラ紙の1面からお借りしました。


<意外性のスポーツ、サッカー> 4月27日ブラジルサイトに掲載分
 4月21日、ブラジル全国選手権が開幕した。これから12月中旬まで、24チームがホーム&アウェーの総当りで46試合を戦ってブラジルのクラブ・チャンピオンを決める。
 僕は、22日にモルンビー・スタジアムで行なわれたサンパウロFC対アトレチコ・パラナエンセの試合を見てきた。地力に優るサンパウロFCが勝つだろうと思っていたのだが、結果はともかく、試合の展開は全くの予想外だった。
 サンパウロFCは、試合開始早々にルイス・ファビアーノがスルーパスを受けてGKと1対1になったのだが、シュートを失敗してチャンスを逃す。そして、その後はアトレチコ・パラナエンセに中盤を支配され、両サイドを突破されて大きなピンチを招く。GKの好守と相手のシュートミスに救われて0対0で前半を終えたが、ホームチームとしては全くお粗末な内容だった。
 後半になると、サンパウロFCの状況は一層悪くなった。後半10分、サンパウロFCのMFマルキーニョスが不思議な退場処分を食らう。味方のDFがファウルを犯してFKを取られ、ファウルをしたDFに対してマルキーニョスが文句を言ったところ、これを自分への抗議と勘違いした審判がマルキーニョスにレッドカードを突きつけたのである。さらにその3分後、サンパウロFCのMFベウベールがボールのないところで相手選手に足払いを掛けて倒してしまい、一発退場を食らう。こちらは、全くバカバカしい退場だった。これで、サンパウロFCは選手が2人少なくなってしまった。
 サッカーでは、選手が一人少なくなってもそれほど影響がないことがある。一人多い方のチームがかさにかかって攻め込み、逆にカウンターを食らって失点して負けることも時折ある。しかし、2人少ないとなると、そうはいかない。人数をかけて攻め込んでボールを取られるとすぐに決定的なピンチを迎えるから、事実上、組織的な攻撃ができなくなる。
 退場で2人を失ってからのサンパウロFCは、ほとんど攻撃を放棄して守備に専念し、せっかく相手ボールを奪っても攻めないで時間稼ぎをするようになった。
 ところが、こんなサンパウロFCの中にも一人だけ攻める気持ちを忘れていない選手がいた。左サイドバックのグスタボ・ネリーである。左サイドを単独ドリブルで攻め上がり、シュートを試みる。とはいえ、味方のサポートが全くないから、無駄な抵抗とも思えた。
 しかし、驚いたことに、この「たった一人の攻撃」が試合終了間際に実を結ぶ。グスタボ・ネリーがドリブルで相手DF2人をかわし、ほとんど角度がほとんどないところから左足で強烈なシュートを放つと、これがGKの手をかすめてニアポストの上隅に突き刺さったのである。サンパウロ・ファンは狂喜し、彼の名前を叫び続けた。
 試合はそのまま終了し、サンパウロFCが1対0で開幕戦を飾った。一人の選手の強い気持ちがもたらした、奇跡に近い勝利だった。
 僕はこれまでブラジルでたくさんの試合を見てきたが、2人少ない方の
チームが点を入れて勝ったのを見たのは初めてだ。
 これだから、サッカーはわからない。そして、この意外性こそが、サッカーの最大の魅力の一つなのだろう。
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<リベルタドーレス杯の激闘>  5月7日ブラジルサイト掲載分
 5月5日、南米クラブチャンピオンの座を争うリベルタドーレス杯の決勝トーナメント1回戦(ベスト16)のサンカエターノ(ブラジル)対アメリカ(メキシコ)の第1レグの試合を見てきた。
 サンカエターノは、今年が創立15年目という若いクラブである。本拠地は、サンパウロの郊外にある人口14万人の工業都市サンカエターノ。市の援助を受けて練習施設や下部カテゴリーを徐々に整備し、サンパウロ州の5部リーグから着実にステップアップしてきた。2000年にブラジル全国選手権の2部で準優勝すると、同じ年のブラジル全国選手権の1部に特別招待され、ここでも準優勝して一躍有名になった。2001年も、ブラジル全国選手権で準優勝。2002年のリベルタドーレス杯でも、決勝まで進出した。そして、今年、サンパウロ州選手権で優勝してクラブ創立以来初のタイトルをつかみ、ビッグクラブの仲間入りを果たした。
 サンカエターノの基本戦術は、「しっかり守ってカウンター」。ボールをしっかりつないで攻めるチームが多いブラジルで、これはかなり珍しい。また、不思議なことに、監督や選手が入れ替わってもこの戦術は変わらない。
 一方、アメリカはメキシコシティーに本拠を置く名門クラブだ。1998年のワールドカップ・フランス大会のドイツ戦で相手選手二人に囲まれた際、ボールを両足の間に挟んでピョンと飛んで二人の間を擦り抜けるという漫画のようなプレー(「ブランコ飛び」と呼ばれた)で有名になったメキシコ代表のクアウテモック・ブランコがいる。
 試合は、サンカエターノのホームスタジアムで行なわれた。サンカエターノは、サイドチェンジを繰り返しながら相手の守備が手薄なところを探し、相手守備陣の裏側に選手を走り込ませて突破を狙う。しかし、アメリカはサンカエターノの選手を最後まできちんとマークし、なかなか裏側に飛び込ませない。逆に、カウンターアタックからブランコが絶妙のスルーパスを通し、これを走り込んだFWが蹴り込んで先制する。前半は、アメリカの1点リードで終了。ホームのサンカエターノにとっては、非常に苦しい展開となった。
 しかし、サッカーでは、ほんのちょっとしたことで状況が変わる。ハーフタイムの間に強い雨が降り出し、雨の中で後半が始まる。後半開始早々、サンカエターノはゴール前でFKのチャンスをつかみ、直接、ゴールを狙う。このボールが濡れた芝でワンバウンドして加速し、ゴールネットを揺らした。同点である。
 その後は、サンカエターノの攻勢が続く。そして後半37分、右CKからニアポストに上がったボールにサンカエターノの長身FWが飛び込み、これを阻もうとして一緒に飛び込んだアメリカのDFがバックヘッドでゴールに流し込んでしまった。アメリカのオウンゴール。サンカエターノが、逆転に成功した。
 試合はこのまま終了し、サンカエターノが2対1で勝った。サンカエターノとしてはできれば2点以上の差をつけて勝っておきたかったところだが、試合の状況からすると、勝てただけで上出来といっていいだろう。
 とことん勝負にこだわる、典型的なリベルタドーレス杯の試合。派手なプレーこそ少なかったが、両チームが最後まで必死に戦い続けた好ゲームだった。
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<ファンの応援を最大限に利用して勝つ>  5月15日ブラジルサイトに掲載分

5月12日に行なわれたリベルタドーレス杯の決勝トーナメント(ベスト16)第2レグのサンパウロ対ロサリオ・セントラル(アルゼンチン)戦で、珍しい光景が見られた。ハーフタイムにサンパウロの選手が更衣室に戻らず、ピッチの脇にあるベンチで休息を取り、ファンの熱狂的な声援を聞きながら後半に備えた。サンパウロの監督が「ファンの熱気をもらってチームを勇気づけたい」と考えたからである。
 サンパウロは第1レグ(アウェー)で0対1で敗れており、この試合に2点差で勝つか、最悪でも1点差で勝ってPK戦に持ち込む必要があった。しかし、ロサリオは試合巧者だった。早く点を取ろうと気がはやるサンパウロの攻撃をガッチリ受け止めると、カウンターから中央を突破して先取点をあげた。
 サンパウロにとっては、最悪の展開。ロサリオの選手の体を張った守備の前になかなか得点を奪えず、時間ばかりが過ぎてゆく。ようやく前半のロスタイムにゴール前でFKのチャンスをつかみ、右に振ってからの折り返しを押し込んで待望のゴールをあげた。こうして同点のまま前半が終了し、ハーフタイムとなった。
 この夜、サンパウロの本拠地モルンビー・スタジアムは、6万人の大観衆で埋まっていた。ハーフタイムになってもピッチに残った選手を見て、ファンは燃えた。総立ちになってクラブの名前を叫び、クラブの歌を合唱して選手を鼓舞しつづけた。この熱い気持ちが、選手に伝わらないはずがない。後半、サンパウロはロサリオの堅い守りと時間稼ぎに苦しんだが、32分、ミドルシュートを相手GKが弾いたところを押し込んで試合をひっくり返した。この時点で、サンパウロとロサリオは勝ち点、得失点差で並ぶ。そして試合はこのまま終了し、勝負はPK戦に持ち込まれた。
 PK戦でも、大変なドラマがあった。サンパウロは、1人目が失敗。一方、ロサリオは4人が続けて成功し、4人目を終えた時点でロサリオが4対3とリードしていた。サンパウロが生き残るためには、自分たちが成功して相手が失敗するしかない。サンパウロの5人目のキッカーは、GKのロジェリオ・セニ。このプレッシャーがかかる場面で、ロジェリオ・セニは冷静に決めた。そして、ロサリオの5人目(こちらもGKだった)がペナルティ・スポットに立つと、ファンは大声を上げ、椅子をガンガン叩いてプレッシャーをかけた。
 このファンの祈りが通じる。ロサリオのGKのキックをロジェリオ・セニがキャッチし、サンパウロは生き残った。そして、サンパウロは6人目が成功し、ロサリオの6人目のキックを再びロジェリオ・セニが止めてPK戦を制した。その瞬間、ピッチでは選手たちが、そしてスタンドでは6万人のファンが飛び跳ね、抱き合って喜びを爆発させた。
 サンパウロは、ファンの応援を力にして試合をひっくり返し、さらにPK戦をひっくり返して勝ち抜いたのである。
 サッカーでは、ファンの果たす役割が非常に大きい。そして、ブラジルのチームはそれをよく知っていて、ファンの力を最大限に利用して試合に勝とうとする。そのことを改めて感じさせられた試合だった。
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<「マラドーナは死ぬぞ!」コールが炸裂> 5月22日ブラジルサイトに掲載分
 5月20日にサンカエターノで行なわれたリベルタドーレス杯準々決勝第1レグのサンカエターノ対ボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)の試合前、スタンドを埋めたサンカエターノ・ファンの野次を聞いて笑ってしまった。スタンドの一角に陣取って「フォルサ・ディエゴ(頑張れ、ディエゴ)」の垂れ幕を掲げる数百人のボケンセ(ボカ・ジュニアーズのファン)に対して「オウ、オウ、オウ、マラドーナ・バイ・モヘール!」(「マラドーナは死ぬぞ!」)というコールを執拗に繰り返していたのである。
 ご存知の通り、マラドーナはアルゼンチンが生んだスーパースターだ。1981年から1982年にかけてボカ・ジュニアーズに在籍しており、自身が熱狂的なボケンセであると公言していることもあって、ボケンセにとっては神様にも等しい存在である(アルゼンチンにおけるマラドーナの別名は「EL DIEZ」=エル・ディエス=背番号10=で、ボケンセたちは「10」と「DIOS」=ディオス=神様=を組み合わせてマラドーナのことを「D10S」と表記する)。そのマラドーナが、4月中旬、心肺機能の疾患のためブエノスアイレス市内の病院に入院し、現在は薬物中毒者のための施設に収容されて治療を受けている。20年以上も前からコカインを服用しつづけてきたせいで体がボロボロになっており、一時は重態と伝えられたが、現在は生命の危機は脱した模様だ。
 マラドーナの入院以来、ボケンセたちはマラドーナの回復を必死に祈っている。そこで、サンカエターノのファンはボケンセのマラドーナに対する感情を逆手取って、嫌がらせをしたのである。
 このコールは、試合中にも何度か起こった。ボカの選手は全員マラドーナに心酔しているから、これを聞いてカリカリしたことだろう。
 試合の方は、地味ながら、なかなか見ごたえがあった。
 サンカエターノとボカはいずれも「しっかり守ってカウンター」というスタイルを貫く似た者どうしのチーム。前半はサンカエターノが中盤を支配してほとんど一方的に攻めたが、ボカの体を張った激しい守備のためになかなか決定的なチャンスが作れない。それでも、守備ではボカの中盤のパスの出所をつぶしてボカのテベスとスケロットのツートップにほとんど仕事をさせなかった。
 後半に入るとサンカエターノの中盤のマークがやや甘くなり、ボカにもいくつかのチャンスが生まれる。逆に、サンカエターノの攻撃は膠着状態に陥り、疲れがみえるツートップを入れ替えて勝負に出たが、あまり効果がない。試合終了直前、サンカエターノのファビオ・サントスが左CKを頭で合わせたが、ボカのGKがこのシュートを右手で弾き、これがゴールポストに当たって跳ね返ってしまって惜しくも得点には至らない。結局、試合は0対0の引き分けに終わった。
 それにしても、ボカはアウェーでの戦い方が本当にうまい。勝てない場合でも、絶対に負けない試合運びをする。さすがに、リベルタドーレス杯で過去4年間に3回優勝しているだけのことはある。
 とはいえ、サンカエターノもしぶとさには定評がある。アウェーでの戦い方もうまい。第2レグでホームのボカが攻めてくると、逆にサンカエターノにもカウンターのチャンスが生まれるだろう。サンカエターノにもまだ準決勝進出のチャンスはありそうだ。
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<「ゴラッソ」と「ゴレアーダ」に遭遇する幸せ> 5月28日掲載分
 5月25日、スペインのバルセロナでブラジル代表がカタルーニャ選抜と親善マッチを行なった。カタルーニャ選抜というのはスペイン・カタルーニャ地方の地域選抜チームのことなのだが、この試合でブラジルのジュリオ・バチスタがとてつもないゴールをあげた。ブラジルが3対0とリードして迎えた後半18分、ブラジルにペナルティエリアの右外側でFKが与えられる。キッカーは、エドゥ(アーセナル)。ふつうならゴール前にハイクロスを上げるところだが、ゴール前の密集地帯の後方にいたジュリオ・バチスタ突然前に走り出してきてフリーになったのを見て、グラウンダーのパスを送った。ジュリオ・バチスタは、このボールを右足のつま先で跳ね上げ、ゴールに背を向けると、右足を一閃してオーバーヘッド・シュートを試みた。すると、これがものの見事にゴール左上隅に決まったのである。意外性に満ちた、実に美しいゴールだった。
 ブラジルでは、美しいゴール、スーパーゴールのことを「ゴラッソ」と呼ぶ。このジュリオ・バチスタのゴールは、ゴラッソ中のゴラッソ。この試合でブラジルのエース・ストライカーのロナウドも2得点をあげたのだが、試合後、ロナウドは自分のゴールのことなどそっちのけでジュリオ・バチスタを賞賛し、「あんなにすごいゴールでも1点にしかならないというのはおかしい。あれは2点か3点にカウントするべきだよ」と冗談を飛ばしていた。
 ジュリオ・バチスタは、23歳のミッドフィールダーである。身長183センチ、体重81キロのごつい体で、ニックネームは「タンク(戦車)」。2000年にサンパウロFCでデビューし、以来、ポジションはいつもボランチ(守備的MF)だった。主な役割は身体能力を生かして相手チームのエース・ストライカーをつぶすことで、前線に飛び出してゴールを狙うことなどめったになかった。それが、昨年の7月にスペイン・リーグのセビリアに移籍するとチーム事情からFWとして起用されるようになり、ストライカーとしての才能を開花させて20得点をあげる大活躍を演じた。「無骨なボランチ」というイメージが強かっただけに、この変身には本当に驚いた。このような常識では考えられないようなことが可能となるのも、ブラジル選手が持っている高い資質がなせるワザなのだろう。
 サッカーファンなら誰でも、自分のひいきチームや自国の代表チームの勝利を強く願う。それだけに、「どんなに不恰好なゴールでもいいから、とにかく点を取って勝ってほしい」と思うのがふつうだ。しかし、ブラジルのファンは少々異なる。非常に欲張りで、ただ単に勝つだけでは満足しない。美しいゴール(ゴラッソ)を、それもできるだけたくさん見たい、と願うのだ。そして、実際に、ブラジル選手の技術の高さが「ゴラッソ」を、ブラジルのチームの攻撃力が大量得点(ブラジルでは3点以上取って勝つことを「ゴレアーダ」と呼ぶ)を、しばしば可能にする。「ゴラッソ」や「ゴレアーダ」を目の当たりにしたとき、人はとても満ち足りた幸せな気持ちになれる。だからこそブラジル人はサッカーが好きなのであり、全く同じ理由で僕もブラジルサッカーから離れられないのである。
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<ロナウド3−アルゼンチン1>  6月5日ブラジルサイト掲載分
 6月2日の夜にベロ・オリゾンテで行なわれた2006年ワールドカップ南米予選第6節のブラジル対アルゼンチンの試合を見てきた。
 試合が行なわれたミネイロン・スタジアムは、5万人の観衆で超満員。ブラジル・ポピュラー音楽の巨匠ジルベルト・ジルとミルトン・ナシメントが国歌を斉唱することになっていたのだが、観衆が総立ちになって大声で国歌を歌ったため、両巨匠の声はほとんど聞こえなかった。
 ブラジルとアルゼンチンは、いずれも世界のサッカー大国であると同時に、南米の隣国として互いに強烈なライバル意識を持っている。この両国の対戦は、ナショナルチームどうしの対戦としては世界で最もレベルが高く、かつ最も白熱するカードと言ってさしつかえないだろう。
 ブラジルの持ち味は選手個々の高い技術と創造性で、一方のアルゼンチンはうまくて激しくて汚いプレーが身上だ。組織力と守備力ではアルゼンチンに分があるから、ブラジルが勝つためには個人技でアルゼンチンの堅牢な守備ブロックを打ち破ることが必要となる。
 試合は、前半16分にロナウドが相手DFをかわしてペナルティ・エリアに侵入したところで倒されてPKをもらい、これを当のロナウドがゴールの真正面に決めてブラジルが先制する。後半22分にもロナウドが相手DFを次々にかわし、ペナルティ・エリアの中で反則タックルで倒される。再びPK。今度もキッカーはロナウドで、落ち着いてゴール左隅に蹴り込んでブラジルが2対0とした。
 しかし、アルゼンチンもしぶとい。後半34分に右からのクロスをアイマールがヘディングシュートし、ゴールポストに当たって跳ね返ったところをソリンが押し込んで1点差とする。その後、アルゼンチンの攻勢の前にブラジルは防戦一方となり、あわや同点か、という場面もあった。しかし、ロスタイムに入ってアレックスからの縦パスを受けたロナウドが相手GKに倒され、この試合3つめのPK。これをロナウドがゴール中央に叩き込み、ブラジルが3対1で快勝した。
 ロナウドがスピードとテクニックでアルゼンチンの屈強なDFたちを翻弄し、ファウルで倒されて3つのPKをもらい、これを彼自身が決めてブラジルを勝利に導いた試合だった。
 とはいえ、この夜のブラジルの出来に全く非の打ち所がなかったというわけではない。守備ではいつもながらハイクロスの処理がまずく、危ない場面が何度もあった。攻撃面でも、ゲームメーカーのカカは効果的な組み立てができなかったし、先発のチャンスをもらったルイス・ファビアーノも決定的なチャンスでシュートを外してしまった。課題は決して少なくない。
 ともあれ、ブラジルは今回のワールドカップ予選の成績を3勝3分の勝ち点を12に伸ばし、勝ち点11のアルゼンチンを抜いて首位に立った。
 6月6日にはワールドカップ予選の第7節が行なわれ、ブラジルはアウェーでチリと対戦する。チリは、第6節でアウェーでベネズエラを破り、勝ち点10の3位につけている。ブラジルにとっても決して楽な相手ではないが、ぜひとも勝って首位をキープしたいところだ。
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<守備>攻撃か?>  6月11日ブラジルサイト掲載分
 6月9日の夜、サンパウロのモルンビー・スタジアムでリベルタドーレス杯準決勝のサンパウロFC対オンセ・カウダス(コロンビア)の試合が行なわれた。観衆は7万504人で、これは今シーズンのブラジル国内の最高動員数。巨大なモルンビー・スタジアムは、サンパウリーノ(サンパウロFCファン)で膨れ上がった。
 オンセ・カウダスは、コロンビアのマニサレスという地方都市に本拠を置く新興クラブだ。昨年のコロンビア選手権のチャンピオンだが、飛び抜けた選手がいるわけではない。ただ、とにかく守備が強くて粘り強い戦い方をする。
準々決勝では、サントスにアウェーで引き分け、ホームで1対0で勝って準決勝に駒を進めてきた。
 オンセ・カウダスのシステムは4−5−1で、トップに1人だけ残して他の10人で徹頭徹尾守り倒すというゲームプラン。ボールを奪われるとすぐにベッタリ引き、相手のトップの選手は常に2人、3人がかりでマークする。
 サンパウロFCは、ルイス・ファビアーノ、グラフィッチ、グスタボ・ネリーらが惜しいシュートを放つが、相手GKの好守もあって、どうしてもボールがゴールに入らない。後半は攻撃の選手を増やして必死に攻め続けたが、シシーニョのミドルシュートがゴールの左ポストをわずかに外れ、右からのクロスにフリーで飛び込んだグスタボ・ネリーのシュートがゴールの上を超えてしまう。結局、0対0のまま試合終了の笛を聞いてしまった。
 スタンドを埋めたサンパウリーノたちは、誰もがサンパウロFCの勝利、あわよくば大勝を期待していた。引き分けという思いがけない結果に肩を落とし、怒りをぶちまけながら家路についた。
 僕は、87年以来、毎年リベルタドーレス杯を見ている。この大会に出てくるチームは各国を代表する強豪だから、実力があるのは当たり前なのだが、とにかく、どのチームも本当に守備が強い。この印象は、当時から今まで全く変わらない。
 ふだん見ているブラジル全国選手権やサンパウロ州選手権の試合と比べて、攻撃面、特に選手個々の技術の点でそれほど差があるわけではない。それだけブラジル選手の技術が高く、ブラジルのチームの攻撃力が高いということなのだが、守備面、特にマーキングの激しさと執拗さにかけてはこちらの方が上だ。
 やはり、サッカーの基本は守備、とりわけ中盤の守備だということなのだろう。選手個々の能力ではブラジル・ナンバーワンのサントスが、そして現在のブラジル国内でおそらく最強であろうサンパウロFCがホームでオンセ・カウダスに勝てなかったという事実が、そのことを証明しているように思う。
 リベルタドーレス杯で勝ち進むためには、ホームで勝つ(それも、できれば2点以上の差をつけて勝つ)のが鉄則だ。サンパウロFCはその鉄則を守ることができず、苦しい状況に追い込まれてしまった。
 とはいえ、オンセ・カウダスの攻撃力はそれほどでもないから、アウェーであってもサンパウロFCが点を取って勝利をつかむことも十分に可能だ。
 サッカーでは、何が起こるか、最後の最後までわからない。
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