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ブラジルに外国資本をいかに誘致するか(前編)
私が参加させて頂いているBATPAPOと云うブラジル日本商工会議所のコンサルタント部門を中心とするとMLにジェトロサンパウロセンターの桜井悌司所長が、掲題の『ブラジルに外国資本をいかに誘致するか』を公開発表されました。JETROでの35年に渡るお仕事を通じての経験と知識、蘊蓄を傾けての力作感心しました。ブラジルに40年以上住んでいる者が仕事上、日頃感じている問題点を巧く捕らえ分析しそれを判り易く具体的にまとめた提言は、ポルトガル語に訳して関係官庁にも配られるとの事、良いお仕事をしておられると思います。
『私たちの40年!!』HPにもブラジルの政治・経済情報の欄を設けており桜井所長の了承を得て全文を掲載させて頂く事にしました。前編は、総論にあたる部分で世界情勢(世界で投資誘致に成功している国々)、ブラジルの現状分析です。
写真は、送って頂いた桜井さんの近影です。


2004年4月
ジェトロ・サンパウロ・センター
所長 桜井悌司

1) はじめに
2003年のブラジルの外国投資受入れ額は、101億4400万ドルであった。2002年が165億9000万ドルであったので、ブラジルにとっては、必ずしも満足すべき額とは言えない。中央銀行によると、2004年は、130億ドル程度になるという。
ブラジルの政府高官は、外国人ビジネスマンに対し、頻繁に、「どうしてブラジルに投資しないのですか?ブラジルは、ポテンシャリテイがありますよ」と尋ねる。しかし、それは一部の高官のみであり、誘致慣れした海外投資家にとっては、ブラジルの関連機関は外資を誘致する気がないように見えるのである。ところでブラジルは、今までに組織的計画的、継続的に外資を誘致する努力をしたことがあるのだろうか。
ブラジルは、過去の何回かの外資ブームがあった。50年代のクビチェック大統領時代、60年代から70年代にかけて、ブラジルが奇跡的経済成長を遂げた時代、95年代のレアルプランでインフラが収まり、憲法改正により内外資本が無差別になった時代である。
 これら一連のブームの結果、世界の大企業500社の450社が進出するという世界でもまれにみる投資受入国になった。しかし、その原因は、世界の多国籍企業がブラジル市場の潜在性を認識し、進出してきたのであって、ブラジル政府の組織的な外資誘致策によってではない。
確かに、ブラジルは、誰がみてもポテンシャリテイの高い国であり、政府が何もしなくてもそれ相応の外資が入ってくる。しかし、発想を替え、ブラジルが仮に90年代以降、組織的に外資誘致政策を策定し、地道に実行に移していたとすれば、もっともっと多くの外資を誘致できたであろうし、もっと持続的発展に繋がる良質な投資や裾野産業の形成に役立つ優良な中小企業の誘致も可能になったのではないかと思われる。ブラジルは多くのビジネス・チャンスを失ってきたのである。
本稿は、筆者の35年以上のジェトロでの経験に基づき、「ブラジルは、どうすればもっと外資を誘致できるのか」につき、プロモーション活動の視点から考えたものである。本稿は、ジェトロの見解ではなく筆者の個人の見解を表明したものであるが、読者の各種コメントをいただければ幸いである。

2)世界で投資誘致に成功しているのはどのような国々か、その共通の条件は?
 では、最初に世界で外資誘致に成功している国々の共通点をあげてみよう。世界には、外国資本の誘致に成功している国や地域がある。アイルランド、英国、フランス、米国の南部の州、中国の上海地域、華南地域、タイ、マレーシア、シンガポール、最近では、東欧のハンガリー、ポーランド、チェコ等が世界の投資家から注目を浴びている。南米ではチリが良好な投資環境をつくるべく最大限の努力をしている。それらの国々は、外資の誘致に成功していない国と何処が異なるのであろうか。以下共通点を述べてみよう。

@ 政府が、外資誘致の重要性を認識し、外資を積極的に誘致したいという強い願望を持ち、種々の施策を行動に移すという強い意思を持っていること
トップから下のレベルまで外資を誘致することが国の発展、雇用の増進にとって役立つことであり、是非とも推進すべきであるという共通の認識を持っている。

A 外国人投資家が投資を決定するにあたり、どのような点を考慮するかを十分に知っていること
民間企業は、あくまで利益を得るために投資をするのであって、相手国や相手国政府に喜こばせるために投資するのではない。外国資本がある国に投資をしようとする場合、その国のポテンシャリテイに加え、下記のような点につき、他の国と比較し、冷静に分析した後に決定を下すことになる。条件の劣る国は、誘致合戦に敗退する。
(1) 設立関連(現地法人、支店、駐在員事務所)
設立手続きの複雑性、
ビザ、滞在許可、労働許可、住民登録
会計制度
(2) 税制関連
所得税、法人税、地方税、付加価値税、その他税
(3) 雇用
賃金水準、社会保障、年金、保険等企業の負担分
       雇用、解雇、臨時雇用
       労働組合
       人材派遣制度
(4) 資金調達
資金調達の難易
銀行制度
為替管理
(5) 政府の外資導入政策
政府の外資政策
外資に対するインセンテイブ
インフラ  通信、輸送、電力等 工業団地
(6) 投資誘致機関の協力
国の機関    組織、活動、協力の範囲、誘致に対する熱意
州・市の機関  組織、活動、協力の範囲、誘致に対する熱意
    (7)その他  言葉やコミュニケーションの問題
  
B 諸外国に比して、十分に競争できる各種投資制度、環境をつくるべく最大限の努力をしていること
  欧州やアジアの国々は、外資の誘致に非常に熱心である。お互いに激しい競争を繰り広げている。自分の国の投資制度や投資環境が悪いと外資は他の国へ行ってしまうことになる。そのために常にポテンシャル・インヴェスターや既進出外国資本と情報交換を行い、自国の強み、弱みを分析し、弱みを極力なくするように努めている。

C 外国投資を促進するための優秀な機関を持っていること
  世界には、非常にすばらしい投資誘致機関が存在する。前述のアイルランドのIDA(アイルランド開発庁)、英国のUK TRADE & INVESTMENT(BRITISH TRADE INDUSTRYの傘下のTRADE PARTNERS UKとINVEST UKが2003年に統合)、フランスのDATAR,アジアに目を転じれば、韓国のKOTRA(KOREA TRADE-INVESTMENT PROMOTION AGENCY)やマレーシアのMIDA(MALAYSIA INDUTRIAL DEVELOPMENT AUTHORITY)等は学ぶに値するエクセレントな機関である。わがジェトロもここ数年で一気に対日投資活動を活発化させている。

D 国単位の競争のみならず、州単位でも激しい競争を広げていること

連邦政府に加え、州政府や市が活発に投資誘致活動を展開している。日本の例で説明すると、現在、日本市場への輸出と日本企業の誘致を図ることを目的として設置された外国の州・市の東京事務所の数をみると、米国が30事務所、ドイツが8事務所、フランスが7事務所、英国が9事務所、スペインが7事務所、ベルギーが2事務所、中国が15事務所となっている。以上のことだけをみても、競争は、国レベルから州・市のレベルになりつつあることが理解できよう。今や連邦政府にはまかせておけないという事態になっているのである。

2) ブラジルの現状について)

では、次に上記の5つの条件につき、一つずつブラジルの現状をみてみよう。
@ ブラジル政府は、外資を積極的に誘致したいという強い願望を持ち、種々の施策を実行するという強い意志をもっているか?
この点については、必ずしも十分ではないというのが筆者の感想である。今年の2月にルーラ大統領がジュネーブのフォーラムでブラジル市場の魅力につき、欧州のビジネスマンに訴えたと報道されている。このようなことが日常的に行われることが望ましい。しかし、ブラジルが外資誘致の戦略を策定し、国別ターゲット、業種別ターゲットを絞って組織的にかつ中長期に行動に移したといったことは聞いたことがない。一体どの役所が責任を持って外資誘致を担当しているのも外国人の目からみてはっきりしない。日本での例で説明するとよくわかる。日本は過去10数年経済不況に陥っているが、それでも世界の有数の投資国である。ジェトロは、2001年から2003年の過去3年間に諸外国、州政府などの要請にしたがい、234回の投資誘致セミナーを行ってきた。その中で、ブラジル・デレゲーションによるブラジル投資誘致セミナーを組織したのは、わずか2回である。このことからみてもブラジルが外資を誘致するためのプロモーション活動を十分に実行してこなかったことが理解できる。

A 外国人投資家が投資を決定するにあたり、どのような点を考慮するのか?
筆者の目からみると、外資の進出を容易にする環境つくりを責任持って実行する組織も存在しないし、ポテンシャルインヴェスターや既進出外国資本との意見交換の場も少ないという印象を受ける。こう言うと、INVESTE BRASILは、GIE(GRUPO DE INVESTIDORES ESTRANJEIROS、外国投資グループ)と定期的に意見交換していると言うだろう。しかし、この点については、追って説明する。

B 諸外国に比して、十分に競争できる各種投資制度、環境をつくるべく最大限の努力をしているか?
この点についてもブラジルは多くの問題を抱えている。いわゆる「ブラジルコスト」の問題である。この点については後述するが、同じことがブラジル人、外国人を問わず昔から一貫して話題になっていることをみれば、ブラジルは、「ブラジルコスト」の改善に十分な努力をしてこなかったと言えよう。

C エクセレントな投資誘致機関が存在するか?

外資を誘致することによって多くのメリットが得られる。とりわけ,工場や事務所の新設や拡張は、経済発展に役立つし、雇用の増進、技術移転にも繋がる。人材教育も可能になるし、地域の発展も可能となる。さらに外資企業は、ブラジル市場のみならず外国に輸出するので、輸出振興にも繋がる。(サービス産業は必ずしもあてはまらない)ブラジルは、2002年、INVESTE BRASILという半官半民の投資誘致機関を設立した。ブラジルの歴史始まって以来のことで大いに祝福すべきである。設立以来積極的に活動を展開しているが、@予算が不十分Aマンパワーが不十分、B半官半民というあいまいな組織、B世界のネットワークを持たない等の面で問題が多い。以下一つずつふれてみよう。
筆者は、ジェトロに入会以来、35年間、輸出振興、輸入振興、日本企業の海外投資の促進、外国企業の対日投資の促進という4つのプロモーション活動に従事してきたが、仕事の困難性、輸出振興と比較しても、対内投資の促進が圧倒的に難しい。それは、仕事の範囲と中味を分析すれば容易に理解できる。仕事の多様性に加えて職員のセールスマン的センスも必要とされる。しかしながら、INVESTE BRASILの従業員は、25名と極めて少ない。さらに興味深いのは、民が出資すれば官も同額出資するといった世界でも極めてユニークな組織なのである。世界の常識から言うと、対内投資は、国とか州の予算で行っている。
現在、世界の投資誘致機関が大いに力を入れている点は、既進出外資企業を大切にすることである。経営にあたっての問題点などを取材し、外資政策に反映したりする。なぜなら、既進出企業による追加投資額は、新規投資に勝るとも劣らないからである。INVESTE BRASILは、教えを乞う立場にある外国商工会議所やGIEからも資金協力を受け取っているのである。

D ブラジルには競争があるか?
  ブラジルには、外資誘致運動に関して、競争相手がいるのであろうか?現在、世界的規模で展開されている外資誘致競争情勢にあってブラジルは不幸にも競争相手がいないように思われる。
  したがって、良好な投資環境を作らなければ、競争に負けてしまうという切実感、危機感が欠如することになる。欧州諸国では、外国から投資を誘致するために激烈な競争を繰り広げられているし、アジア諸国間の誘致合戦もすさまじい。無敵と思える中国ですら、政府は外資誘致には特別の配慮をしているし、省間、都市間の競争は驚くほどである。その点、ブラジルは、ライバルを持たないのである。アルゼンチンは、経済的、政治的に不安定だし、チリは政治的、経済的にエクセレントだが、市場が小さい。パラグアイ、ウルグアイも市場が小さい。コロンビア、ペルー、ヴェネズエラも種々の政治的、経済的問題を抱えている。となると残りは、ポテンシャリテイに富み、資源も豊富なブラジルとなる。それゆえ、真剣に誘致努力をしなくともある程度の外資が来るのである。要するに真剣な外資誘致策を策定する必要もなかったのである。
  しかし、グローバリゼーションの一層の進展に伴い、今後、ブラジルは、中南米諸国との競争から、中国、インド、メキシコ、その他アジア諸国、南アフリカ、欧米主要国等との競争が激しくなることが予想される。ブラジルは、それらの国との競争に立ち向かわなければならないであろう。



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