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沢田 啓明さんのサッカーコラム復活!!(4)
サッカー評論家の沢田啓明さんには、継続してブラジルサッカー、ラテンアメリカのサッカー情報を送って頂いております。今年の南米チャンピオンを決めるリベルタドール杯が決勝を迎えていますが、今年の決勝戦は、連勝を狙うアルゼンチンのボッカ・ジュニオールとブラジルのサントス、サンパウロを打ち破ってきたコロンビアのマニサレスと言う地方都市の無名に近い新興チームに近いオンセ・カルダスとの対決、ボッカが有利との予想ですが沢田さんがいわれるサッカーは、意外性のスポーツとの定義、どちらが生き残り南米1に輝くかは、分らない。6月中は、このリベルタドール杯の戦評が続きそうですが、ドイツのワールドカップ予選大会、ブラジル選手権と沢田さんの突っ込んだコメント、戦評が楽しみです。南米予選では、ロナルドを擁するブラジルがアルゼンチンを3−1で破り首位に飛び出しチリーとも引き分けて首位をキープしており全大会参加を続けられるようです。ブラジル杯は、今年はドングリの背比べで星の潰し合いが続いています。
写真は、我が赤いチームINTERNACIONALのホームグランドベイラリオの航空写真をお借りしました。州チャンピオンとして是非来年はリベルタドール杯で活躍して呉れる事を願っております。


<リベルタドーレス杯準決勝の激闘>    6月19日ブラジルサイト掲載分
 前回のコラムの最後に、「オンセ・カウダスの攻撃力はそれほどでもないから、アウェーであってもサンパウロFCが点を取って勝利をつかむことも十分に可能だ」、「サッカーでは、何が起こるか、最後の最後までわからない」と書いた。6月16日にコロンビアのマニサレスで行なわれたリベルタドーレス杯準決勝のオンセ・カウダス対サンパウロFCの第2レグは、概ね、この通りの展開となった(ただし、試合の結果は予想外だったが)。
 サンパウロFCは、前半27分に先制されたもののMFダニーロのゴールですぐに追いつき、後半は優勢に試合を進める。そして、後半36分、FWルイス・ファビアーノからのパスを受けたMFグスタボ・ネリーがGKと1対1になるという絶好のチャンスをつかんだ。しかし、グスタボ・ネリーがシュートを打つのが遅れてGKにボールを掻き出され、
得点できない。逆に、試合終了直前、カウンターアタックからオンセに決勝ゴールを許して1対2で敗れ、決勝進出を逃した。
 試合終了の笛が鳴ると、サンパウロFCの選手の多くは涙を流しながらピッチを去り、クッカ監督は「大変なショックだ」とうめいた。選手個々の能力ではサンパウロFCが優っていただけに、悔やまれる敗戦だった。
 もう一方の準決勝は、ボカ・ジュニアーズ(以下、ボカ)とリバープレート(以下、リーベル)というアルゼンチンのライバルチームどうしの顔合わせ。この両者の対戦は「スーペルクラシコ」と呼ばれていつも大変な騒ぎになり、ファンどうしが衝突してしばしば死傷者が出る。それがリベルタドーレス杯の準決勝で対決するとなると大勢の死傷者が出るのはほぼ確実だから、アルゼンチン・サッカー協会はボカのホームゲームではリーベルのファンの入場を禁止し、リーベルのホームゲームではボカのファンの入場を禁止するという措置を取った。
 第1レグは6月10日にボカのホームで行なわれ、ボカが1対0で勝ったのだが、前半31分、ボカのカシーニとリーベルのガジャルドが小競り合いを起こして2人とも退場処分を受け、これが両チームの全選手を巻き込む大乱闘に発展した。ガジャルドは元アルゼンチン代表のMFでものすごくうまい選手なのだが、退場処分を受けた後もピッチに残り、ボカのGKの顔を爪で引っかいて流血させた。
 アルゼンチンの選手は非常に技術が高くて勝負に対する執念もすごいのだが、「戦う気持ち」が強すぎて、サッカーと格闘技を混同しているようなところがある。
 6月17日にリーベルの本拠地「モヌメンタル・デ・ヌニェス」で行なわれた第2レグでは、後半開始早々にリーベルが先制。そのまま試合が終了するかと思われた後半43分、ボカがFWテベスのゴールで同点とするが、リーベルがロスタイムに決勝点をあげて2対1で勝った。
 第1レグと合わせて勝ち点、得失点差で両チームが並んだことから勝負はPK戦に持ち込まれ、ボカが5対4で勝って決勝進出を決めた。
 決勝は、第1レグが6月23日にブエノスアイレスで、第2レグが6月30日にマニサレスで行なわれる。オンセが初の決勝進出であるのに対して、ボカは2年連続6回目の優勝を狙う。オンセの粘り強さ、勝負強さはかなりのものだが、リベルタドーレス杯の戦い方、勝ち方を熟知しているボカが有利だろう。
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<フェリッポンの勇気と強運> 6月28日ブラジルサイト掲載分
 6月12日からポルトガルで行なわれている欧州選手権で、ブラジル人のフェリペ監督が率いるポルトガルがグループリーグ最終戦で23年ぶりにスペインに勝ってベスト8に進み、準々決勝でも延長、PK戦の末にイングランドを破って準決勝に進出した。大会前、フェリペ監督は「最低限、ベスト4には残る」と話していたから、その公約を果たしたことになる。
 現役時代のフェリペは、闘志あふれる、しかしテクニックには乏しい不器用なディフェンダーだった。33歳のときに現役を引退して指導者の道に入り、小さなクラブで実績を積んだ後、グレミオとパルメイラスを率いてリベルタドーレス杯で優勝して一流監督の仲間入りをする。そして、2002年ワールドカップの南米予選で大苦戦していたブラジル代表の監督に就任すると、強烈なリーダーシップでチームをまとめて予選を突破し、2002年ワールドカップで優勝を遂げた。
 こわもてで無骨で頑固な半面、人間味があって義理堅い。選手のモチベーションと闘争心を高めるのが実に巧みで、ブラジルのメディアからは「選手の能力を200%引き出す男」と呼ばれている。加えて、一発勝負に強く、類まれな強運の持ち主だ。
 ポルトガルはブラジルの元宗主国であり、両国は現在も兄弟のような間柄である。それでも、ポルトガル・サッカー協会がポルトガル代表の監督にフェリペを選んだとき、ポルトガルのメディア、国民からは賛否両論があった。また、フェリペがブラジル人MFのデコを帰化させてポルトガル代表のメンバーに選んだときは反対意見が多かったし、GKに人気者のビトール・バイアではなくてリカルドを起用することに対しては非常に強い批判があった。しかし、フェリペは「2002年ワールドカップの南米予選で、私は1億7千万人のブラジル国民がロマリオのブラジル代表入りを望んだときにそれを拒んだ男だ。仮に1千万人のポルトガル国民が反対したとしても、私は自分の信念を貫く」と言い放った。
 その言葉通り、欧州選手権が始まってからもフェリペは周囲の雑音を無視して思い通りの選手起用を行なう。衰えが見えるルイ・コスタ、パウレッタ、フェルナンド・コウトらのベテランを控えに格下げする一方で、デコとクリスチアーノ・ロナウドをレギュラーに抜擢。さらに、イングランド戦で1点のビハインドを背負うと、後半途中から大黒柱のフィーゴを下げて若いポスティーガを起用し、さらにDFを下げてルイ・コスタを入れた。この起用が見事に当たってポスティーガが同点ゴールを決め、延長戦に入ってからはルイ・コスタが逆転のゴールをあげた。その後、イングランドに追いつかれてPK戦となったが、フェリペがあれだけ起用に固執したGKリカルドがイングランド選手のPKを止め、しかも自らPKを決めて勝利の立役者となった。
 これまで、ポルトガルは高い技術を持ちながら勝負には弱かった。そのポルトガルを、フェリペが勝負強いチームに変身させた。
 それにしても、あれだけ思い切った采配を振るっていて負けていたら、今頃、フェリペはポルトガルの国中から痛烈な非難を浴びていたにちがいない。しかし、フェリペは自らの信念を貫き、勝利をつかんだ。
 フェリッポン(フェリペの愛称で「大きなフェリペ」を意味する)の勇気と勝負強さには、全く驚く他はない。
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<ブラジル人監督の能力> 7月6日ブラジルサイト掲載分
 欧州チャンピオンズ・リーグでポルト(ポルトガル)が17年ぶりの優勝を飾り、南米のリベルタドーレス杯では伏兵オンセ・カウダス(コロンビア)が常勝ボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)に勝って初優勝し、そしてヨーロッパ選手権では優勝候補のフランスとチェコを下して決勝に進んだ「サッカー小国」ギリシャが地元ポルトガルを破って初優勝……今シーズンのサッカー界では、番狂わせが続出している(というか、番狂わせばかりだ)。
 もともと、サッカーは番狂わせが多いスポーツではある。イレギュラー・バウンドしやすい丸いボールを、デコボコがあるピッチの上で、それも足と頭という人間の体の中では不器用な箇所を使って操るのだから、無理もない。室内の平らなコートの上で、器用な手を使ってボールを扱うバスケットボールであれば、強いチームがたいてい勝つ。しかし、サッカーでは、強いチームがいつも勝つとは限らない。弱いチームでも、やり方によっては勝てる可能性がある。だからこそ、サッカーは面白いのだ(ただ、あまりに番狂わせが続くと、さすがにゲンナリすることもある。しかし、それでも長い目で見ればやはり強いチームが勝つことが多いから、サッカーとしてのロジックは保たれているのだ。また、そうでないと、さすがに面白くない)。
 それにしても、フェリペ監督率いるポルトガルは良く頑張った。今回のポルトガルは、テクニックはあっても勝負弱かったこれまでのチームから、テクニックも戦術も優れていて、しかも勝負強いチームに変身していた。これには、監督であるフェリペの力が大きかったと思う。
 これまで、ブラジル人監督が国外で成功を収めることは少なかった。
 ヨーロッパでは、1966年のワールドカップでオットー・グロリアがポルトガル代表を率いて3位になり、1993年にカルロス・アルベルト・シルバがポルトを率いてポルトガル・リーグで優勝したくらい。中東や日本ではブラジル人監督が代表チームやクラブを率いてそれなりの実績をあげてきたが、これまでに世界のトップクラスの監督という評価を得たブラジル人はザガロ、パレイラなど数えるくらいしかいない。これは、一般に「ブラジルのサッカーが強いのは選手の能力が飛び抜けて高いからで、監督・コーチの手腕によるものではない」と考えられてきたからだろう。また、ブラジル人監督の側にも英語などの外国語が苦手だという語学力の問題
があり、外国のチームにとって使いづらいという一面があった。
 しかし、優秀なブラジル人選手を育てているのは他ならぬブラジル人コーチだ。また、ブラジル人選手は練習をサボったり戦術的な指示に従わないという「ディシプリン」の問題を抱えている(毎年、シーズン前のキャンプに大幅に遅れてくる浦和のエメルソンのような選手がゴロゴロいる)から、ブラジルで監督が選手を管理し、チームをマネージメントしてゆくうえでの苦労は、あるいは他の国以上かもしれない。
 ポルトガル代表を率いてヨーロッパ選手権準優勝という実績をあげたフェリペを見てもわかるように、ブラジル人監督の能力は相当に高い。そのことを、もっと正当に評価するべきではないだろうか。
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<コッパ・アメリカ開幕> 7月16日、ブラジルサイト掲載分
 7月6日からペルーでコッパ・アメリカ(南米選手権)が行なわれている。1916年から行なわれている世界最古の大陸選手権で、要するにヨーロッパ選手権やアジアカップの南米版だ。従来は南米10カ国だけで行なわれていたが、1993年以降は他地域の2カ国(今回はメキシコとコスタリカ)を加えて12カ国が参加している。
 参加国は4カ国ずつ3つのグループ(今回は地元ペルー、ブラジル、アルゼンチンがシードされた)に分かれ、各グループの2位までと3位のうちの上位2カ国が準々決勝に進み、ここから先はノックアウト方式となる。
 南米では昨年の9月から2006年ワールドカップ南米予選が行なわれており、南米各国にとって最も重要な大会はワールドカップ予選だ。だから、このコッパ・アメリカに対する各国の「真剣度」は少しずつ異なる。
 地元ペルーは、ベストメンバー。これは、開催国だから当然だ。
 2002年ワールドカップで惨敗したことでビエルサ監督と主力選手がメディア、国民からまだ許してもらえていない(叱られ続けている)アルゼンチンは、このコッパ・アメリカで優勝して国民の信頼を取り戻したいと考え、クレスポとアイマールを除くベストメンバーを送ってきた。
 これに対し、2006年ワールドカップ南米予選で現在首位に立っているブラジルは、無理をする必要がない。ヨーロッパの厳しいシーズンを終えたばかりのロナウド、ロナウジーニョ、カカ、ロベルト・カルロス、カフーらの主力に休養を与え、これまで代表で出場機会が少なかった中堅、若手にチャンスを与える大会と位置づけている。つまり、事実上のBチーム。とはいえ、Bチームといってもブラジルやアルゼンチンのそれはたいていの国のAチームよりもはるかに強力だ。ルイス・ファビアーノ、アドリアーノ、バグネール・ラブ(以上FW)、アレックス、ジエゴ、フェリペ、エドゥー、レナート、クレベルソン、ジュリオ・バチスタ、ドゥドゥ(以上MF)、ルイゾン、フアン、クリス、マイコン、マンシーニ(以上DF)といった錚々たる顔ぶれ。大会への準備期間が短かったからチームとしての完成度は低いが、個々の選手はこの大会で活躍して代表に定着し、あわよくばレギュラー・ポジションを獲得することを目指しているから、モチベーションは結構高い。
 ブラジルは、8日のチリとの緒戦にルイス・ファビアーノが珍しくヘディングでゴールを決めて1対0で勝つと、11日に行なわれたコスタリカ戦ではアドリアーノが爆発的なパワーを見せてハットトリック。4対1と圧勝して早々とグループリーグ突破を決めた。14日のパラグアイ戦では少しメンバーを落として戦い、1対2で敗れたが、この敗戦はあまり気にする必要はないだろう。
 準々決勝では18日にメキシコと対戦する。メキシコに勝てば、準決勝ではパラグアイと再戦することになりそうだ。そして、パラグアイに勝てば、決勝の相手は宿敵アルゼンチンだろうか(というようについつい先読みしてしまうのだが、「意外性のスポーツ」サッカーでは予想通りにいかないことの方が多い)。
 ともあれ、こういう大会は、やはりグループリーグが終わって一発勝負となってからがスリリングで面白い。17日から始まる準々決勝以降の試合が楽しみだ。
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<ブラジル「B」、コッパ・アメリカの決勝に進出> 7月23日ブラジルサイト掲載分
 7月6日からペルーで行なわれているコッパ・アメリカ(南米選手権)で、ブラジルが決勝にたどりついた。7月18日の準々決勝でメキシコに4対0と快勝し、21日の準決勝ではウルグアイと1対1の同点の末、PK戦を制したのである。
 メキシコ戦は、この大会におけるブラジルのベストゲームと言っていいだろう。メキシコは、グループリーグでアルゼンチンを1対0で破っている好チーム。監督は、1978年のワールドカップで優勝したアルゼンチン代表の控えGKだったリカルド・ラボルペだ。いかにもアルゼンチン人らしく、試合前、「ブラジルよりもアルゼンチンの方が強い」、「ブラジルと対戦するといっても、別に寝つきが悪くなるわけでもなければ食欲が減退するわけでもない」となどと語ってブラジルを挑発していた。
 ところが、いざ試合となると、メキシコ選手は自陣に引いて守りを固めてきた。ブラジルの攻撃力を警戒したのだろうが、実を言うと、こういう相手の方がブラジルにとってはやりやすい。前半27分にPKを決めて先制すると、後半20分にはアドリアーノが強烈なミドルシュートを叩き込んで2点目。後半33分と41分にもアドリアーノが追加点をあげてメキシコを粉砕した。試合後、ブラジルのテレビのアナウンサーは「今夜、ラボルペは食欲もなければぐっすり眠れもしないだろう」といかにも楽しそうに皮肉っていた。
 21日の準決勝は、一転して厳しい試合となった。ウルグアイが試合開始直後から猛攻を仕掛けてきて、ブラジルは防戦一方となる。その後、ブラジルも反撃したが、前半21分、ウルグアイにゴール前中央やや左よりのFKを頭で合わせられて先制されてしまった。それでも、ブラジルは後半開始直後に右からのクロスをアドリアーノが押し込んで同点とした。その後、疲れのせいかウルグアイ選手の足が止まり、ブラジルが何度も決定機を作ったが、相手GKの好守もあって勝ち越し点が奪えない。勝負はPK戦に持ち込まれたが(コッパ・アメリカでは延長戦はない)、ブラジルが4人続けて成功し、ウルグアイの4人目の選手のキックをブラジルのGKジュリオ・セザールが見事にストップ。ブラジルは5人目のアレックスも決めてPK戦を5対3で制し、決勝進出を決めた。25日に行なわれる決勝の相手は、準決勝でコロンビアを3対0で退けた宿敵アルゼンチンである。 
 ブラジルは主力選手を休ませて事実上のBチームで大会に臨んでいるから、大会前、ノルマはベスト4あたりと考えられていた。だから、すでにノルマは達成しているわけで、気持ちに余裕がある。一方、アルゼンチンは優勝を目指してほぼベストメンバーで参加しており、ブラジルのBチームに負けるわけにはいかない。
 とはいえ、ブラジルもせっかく決勝まで進み、しかも相手がアルゼンチンということになると、下手な試合をするわけにはいかなくなってきた。
ブラジル「B」も、5試合を戦ってチームとしてのまとまりが生まれてきた。アルゼンチンは例によってガチガチくるのだろうが、若いブラジルには伸び伸びと戦ってもらいたい。
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<ブラジル、苦しみながらもコッパ・アメリカで優勝> 7月27日ブラジルサイト掲載分

 7月初めからペルーで行なわれていたコッパ・アメリカ(南米選手権)は、劇的な幕切れとなった。ブラジルとアルゼンチンという南米を代表するサッカー超大国が決勝で激突し、後半のロスタイムまでアルゼンチンが2対1でリードしていたが、ブラジルがラストプレーで同点に追いつき、PK戦の末に優勝をさらったのである。
 それにしても、厳しい試合だった。前回のコラムの最後に「若いブラジルには伸び伸びと戦ってもらいたい」と書いたのだが、全くそうはならなかった。アルゼンチンの激しいプレスを受けて、ブラジルは攻撃を組み立てることができない。前半19分にPKを許して先制され、その後も劣勢が続く。前半のロスタイムにゴール前左寄りのFKをDFルイゾンが頭で合わせて同点としたが、後半に入ってからもアルゼンチンが試合を支配する。ブラジルは懸命に守ったが、後半42分、ついにアルゼンチンに勝ち越し点を奪われてしまう。
 ブラジルは捨て身の反撃に移るが、もう時間がない。万事休すか、と思われた後半47分30秒過ぎ、右サイドからジエゴがクロスを入れ、そのこぼれ玉をアドリアーノが左足でシュート。これがゴール右隅に飛び込み、ブラジルが土壇場で同点に追いついた。奇跡的な同点ゴール。試合はそのまま終了し、勝負はPK戦に持ち込まれた。
 こうなると、追いついた方が精神的に有利だ。アルゼンチンは、1人目のキックをブラジルのGKジュリオ・セザールに止められ、2人目も失敗。一方のブラジルは、1人目のアドリアーノと2人目のエドゥが成功して優位に立つ。アルゼンチンは3人目と4人目が成功したが、ブラジルも3人目のジエゴ、そして4人目のフアンが冷静に決め、4対2でPK戦を制した。ブラジルにとっては5年ぶり7回目の優勝で、ワールド・チャンピオンにして南米チャンピオンとなった。
 勝利の瞬間、若いブラジルの選手たちは涙を流しながら狂喜乱舞する。72歳のテクニカル・コーディネーター、ザガロなどは、「最高だ!もう何も思い残すことはない!たった今、死んでもいい!」と絶叫して周囲の人になだめられていた。とはいえ、ブラジルの試合内容は決してほめられたものではなかった。試合後、アルゼンチンのビエルサ監督は「大会のベストチームはアルゼンチンだった。(ブラジルの優勝という)結果は、全く不当なものだ」と語ったが、わからないでもない。しかし、試合内容で優っていても勝てないことがある。それが、サッカーというスポーツなのだ。
それにしても、どうしてブラジルが優勝できたのか。直接には、土壇場で同点ゴールを決め、7得点をあげて大会の得点王となったアドリアーノ、ゴールを死守したGKジュリオ・セザールの活躍が大きかった。しかし、結局のところ、ブラジル選手のハングリー精神とアルゼンチンに対する強烈なライバル意識が不可能を可能にしたとしか思えない。ブラジルの若い選手たちにとって、このコッパ・アメリカは素晴らしい経験になった。コッパ・アメリカに出場した選手のうちの何人かは、9月に再開される2006年ワールドカップ南米予選に招集されるはずだ。今度は、ワールドカップ南米予選で頑張ってもらいたい。
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<ブーイングという贈り物>  8月9日ブラジルサイト掲載分
 アジアカップで、日本が2大会連続の優勝を遂げた。主力選手を何人も欠き、猛暑に悩まされ、苦しい試合の連続だったが、それだけになおさら価値がある優勝だった(その反面、日本がまだアジアでも傑出した力を持っていないことが改めて証明されてしまったが)。
 残念ながら、今回のアジアカップではサッカー以外のことが大きな論議を呼んでしまった。日本選手に対するブーイング、日本の国歌斉唱に対するブーイング、そして日本人ファンに対する嫌がらせなどなど。大会期間中、ジーコ監督は「試合中のブーイングは仕方がないが、国歌斉唱のときにブーイングが起きるのは許せな
い」と語った。
 それでは、ジーコ監督の母国ブラジル、あるいは南米ではどうか。
 ブラジルでは、ワールドカップ予選などの真剣勝負で相手国の国歌斉唱の際にブーイングが起きるのは当たり前。いつものことだ。相手国のファンも、放っておいたら地元ファンに囲まれて何をされるかわからないから、スタンドの一角に集められ、警官に守られて観戦する。試合が終わってからも、30分以上もスタンドに留め置かれ、地元ファンが退散したのを見計らってからひっそりとスタジアムを後にする。
 相手選手や相手国のファンに対するブーイングの程度は、相手国の強さにほぼ比例する。例えば、南米ではCクラスのボリビアに対してのブーイングはかなりおざなりだが、宿敵アルゼンチンに対するブーイングはすさまじい(それだけブラジル人がアルゼンチンの強さを認め、脅威に感じているということだ)。
 それでは、ブラジルとアルゼンチンの関係が悪いのか、歴史的に何か問題があったのかというと、そんなことはない。両国が戦火を交えたことは一度もないし、過去から現在に至るまで、政治的にも経済的にも何の問題もない。つまり、スタジアムでのブーイングはスタジアム内だけでのことで、政治的、歴史的な背景は一切ない。また、そのことを誰もがわかっているから、こういったブーイングが両国の間で問題になることもない。
 このような事情は、他の南米諸国でもほぼ同じ。どの国もホームでは対戦相手にブーイングを浴びせ、アウェーでは逆にブーイングを浴びる。南米では19世紀後半にパラグアイがブラジル、アルゼンチンと、チリがボリビア、ペルーと国境をめぐって戦っており、そのことが現在でもそれぞれの国民感情に微妙に影響を与えている。それでも、サッカーにおけるブーイングはスタジアム内だけのことで、誰もがサッカーはサッカー、政治は政治と割り切っている。
 スタジアムで対戦相手の国の国歌吹奏の際にブーイングをするのは、もちろん誉められたことではない。しかし、南米の場合は政治的背景がないのがわかっているから、まだ救いがある。
 僕は、サッカーに政治を持ち込むのは、サッカーに対する冒瀆ではないかと思う。ともあれ、ブーイングを受けながらも日本はアジアカップ優勝を果たした。
 かつての「敵対国」韓国がワールドカップ共催を経て「友好国」になってしまった現在、日本に対して猛烈なブーイングをしてくれるのは今や中国くらいのものではないか。おかげで、今回のアジアカップを通じて日本選手は得がたい経験を積み、精神的に逞しくなった。貴重な贈り物をくれた中国と中国人に、我々日本人は感謝するべきなのかもしれない。
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