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日本ブラジル交流協会第24期生 杉山 茉莉子さんの報告書
現在サンタカタリーナ州のラージェスの町にあるヤクルト商工の林檎ジュース工場で研修しておられる24期生の杉山茉莉子さんから7月に報告書が届いています。これまでにも送って頂いていたのですが、手書きだった為にタイプアップする時間が無く紹介出来ませんでしたが、今回はメールでデジタル化された報告書でしたのでそのまま転載させて頂く事にしました。ブラジルで一番寒い地域のラージェスの町で零下4℃を経験したとのことでここもブラジル?と信じられないと思いますが雪も経験するのではないかと楽しみにしているとのこと。若い感受性を武器にどのようなブラジル報告を届けて呉れるか楽しみです。研修テーマは、ブラジルに伝承されている民話、伝説を集める事。報告書にも紹介されています。
写真は、追って送って頂くようにお願いしていますが、それまでは24期生の名簿に掲載されているものを使用しました。


引き受け人直撃インタビュー

 私は、日ごろ仕事でよく接触する人たちにインタビューをした。その中で全員に共通して言えることは、真剣に一つ一つについて考えて、答えてくださったことである。大切な時間を割いて下さって本当に嬉しかった。自分のことをしっかり把握しているという印象を全員から受けた。そして、自分の国に対してもいろいろな面から自分なりの意見を持っていて、またたくさんの新しい刺激を得た。
 表の補足なども含めて、インタビューについて考察をする。

御簾納良樹さん(引き受け人)
・ラージェス市におけるヤクルト商工の役割とは?
  Lagesは、りんごの生産地である、São Joaquim(SC), Fraiburgo(SC), Urubici(SC), Vacaria(RS)の中心に位置しているため、1970年代に農産加工の波に乗って工場を設立した。日本と反対の季節であることから、ブラジルから輸出して一年中日本でりんごジュ ースを提供できるようにした。
・ブラジルにおける教育についてどう思いますか?
   ブラジルは、貧困層が多いため、勉強する為に努力をしなければならない。そして年齢に関係なくいつでも勉強できるようになっている。たとえば、初等教育を完了してなかったら、最終地点から再開することができる制度がある。そのため、働くようになってから大学に入るためにsupretivoというところに通って、単位を得る人は多い。そして、企業が採用するときも、学歴をそれほど重視することはなく、入ってから勉強をする人が多い。これが日本との大きな違いだと思う。日本は、どちらかというと、“させられる勉強”であるため、勉強ができるように努力する意気込みの違いがあると考える。そして、この“させられる勉強”についていけない人は不良化して社会からはじき出されてしまう。こういう事態は、今のブラジル教育ではないからいつでも好きなときに勉強することができるというブラジルの教育の一つの利点だと考える。
・ブラジルにおける宗教とは?
  カトリックについて言えることは、儀式が多いため、子どもの頃から宗教に慣れ親しみ、自然と身につくものだと思う。各儀式には、cursoがあり、それを経て行われるため、情 操教育になる。日本のように道徳の授業はないが、この宗教的な儀式の準備となるcursoがあるから必ずしも、ブラジルに道徳の授業がないとはいえない。反対に、今日本で道徳や美術などといった教養を身につける授業がゆとり教育制度のために削られているから日本の将来が心配だ。
 ブラジルでおもしろいのは、有る人から無い人へ物を与えることは普通とされ、与えると、その人に向かって感謝するのではなく、まず神様に向かって感謝をするのである。これが、日本の考えとは違うため、最初は戸惑った。
・ブラジル人とは?
お金に縛られず、たとえ、お金が無くても楽しむ術を持っている。そして、日本との大きな違いは、年金入りを楽しみにすること。日本のようにローン地獄などで年金どころではない、ということはなく、楽しみにして色々と計画を立てている。
家族で集まるのがとても好きだと思う。そして、よく集まるからこそ日本のように大事にはならない。

Angelo Miguel Barbosaさん(工場課長)
・ブラジルとは?
  ブラジルは、自由がある。それゆえに、考えの柔軟性が優れていて、ものを作り出す力が強いと考える。しかし、反対に自由であるがために、まとまりがないこともある。

Erina Hondaさん(現場責任者)
・一ヶ月休暇をもらえたら何をする?
  一ヶ月は、長すぎる。こちらの労働制度により、20日だけ休んで、あとの10日を会社に売る。毎年必ず、30日の休暇はもらえることになっているから、あまり特別に感じないが、家族のもとへ旅行すると思う。

Rosane Aparecida do Amaral(Laboratório責任者)
・ブラジルと他の国との違いは?
  人種が混ざり合っていること。アフリカ系やヨーロッパ系がインディオと混ざって、だんだんアジアの方とも混ざるようになったから、世界各地からの文化も混ざっていると思う。このため、ブラジルの文化を一言で表すことは、とてもできないが、そこに魅力があると考える。そして、この混合した文化こそ、大事なものだと思う。人種差別がないと思うのは、あらゆるものが混ざり合っていて、何が違うか違いをつけるのが難しいからではないだろうか。

Luise Francieli Madruga(Laboratório従業員)
・ブラジルの宗教とは?
  カトリックが自分の宗教だから他のについて言うのは難しいけど、神が存在して信じる宗教ならば、受け入れることができる。自分の一部を捧げたり、何かを犠牲にしなければならない宗教は正直に言うと、受け入れがたい。しかし、まだそういう人に会ったことがないからよくわからない。
考察
 この中から、キーワードを拾うと、自由・人種の坩堝・praia・夢と考える。なぜなら、これらの単語がインタビュー中によく表れ、ブラジルを表わす単語だと感じたからである。
一ヶ月の休暇は長すぎるようで、全員praiaと家族訪問以外はあまり考えないようである。日本の広告を思い出すと、大抵、長い休暇の前には海外旅行の宣伝をして、海外へ行くよう勧める傾向があるように思える。国の大きさの違いからか、海外へ行こうという人に会わなかった。お金の心配がないという場合でも、やはり、他の国へというのはなかったのが、おもしろいと思った。
このインタビューを通して良かったことは、じっくりとその人の考えなどを聞いたりすることで、その人なりの考え方などを少し知ることができ、より近くに感じられるようになったことである。
ブラジルの労働法が日本よりも、労働者を保護することに力が入っているように感じた。過労死はブラジルでは、ありえないと言っていたが、私はむしろ、ブラジル人はよく働くと思った。そして、働くのは、ローン返済などを目的とするのではなく、年金入り後の人生を楽しみに、そして夢を持っていることに人間性の豊かさを感じたのである。


ガウーショについて
 前回に引き続き、ガウーショの歴史とガウーショにまつわる伝説等について調べている。今回は、伝説を1つ、ラージェスでのガウーショのあだ名の起源を語ったものを2つ見つけたので、それを紹介することにする。

Lenda da Serpente do Tanque −Tanqueの蛇の伝説−
 月曜日は、Tanqueで女の人たちがおしゃべりをしながら洗濯をしている。おしゃべりの中で、Tanqueにまつわる伝説がよく登場する。
 その伝説は、一人者の女の人が妊娠をしてしまい、恥ずかしさから生まれた子を日々働いているTanqueに捨てた。しかし、奇妙なことに子どもは死ぬことなく、蛇に変身した。
 その蛇の頭は、Tanqueにあり、身体は、Carahá川に広がっている。Lagesの守護聖者のNossa Senhoraは、非人道的な母親が行なった恐ろしい罪を承知して、世間にこの恐ろしい蛇が現れないように足で蛇の頭を押さえつけた。
 この聖者がいないときは、街が洪水に飲み込まれ、Santa Cruzの泉だけがその被害から免れた。真実の予言でも何度か、聖者の像を儀式に使うために祭壇から取ったとき、豪雨が襲い、世界が水に飲み込まれてしまうのではないかというほどだった。そのため、像を元に戻すと、太陽が現われ、大洪水になることが嘘のようであった。
 このため、洗濯する女の人たちは、恐ろしさから絶対に一人でTanqueに行くことはなく、何人かで行くようになった。そしてだれも夜に近くを通る人はいない。なぜなら、カエルが鳴いている横で、悲痛にすすり泣く声が聞こえたり、苦痛と絶望の叫びが聞こえるからだ。

 このTanqueは、私の住んでいるところのすぐ近くにあり、小さな池とそれに隣接する公園がある場所である。土日は、小さな子を連れた家族や散歩をしている人で大変賑わっている。しかし、夜に近くを通ると薄暗く、少し不気味だと感じた。
 私は、この伝説を読んで,蛇の認識の違いに気づいた。キリスト教では、蛇はアダムとイブを唆す動物として悪と認識される。そして、蛇を少し変えたドラゴンもまた魔女の使いであるとか、何か悪いことの予兆として悪と認識される。しかし、日本や中国では、龍は神聖なものとされ、中国では方角の代わりに使われるほどである。そして、白蛇は神の使いとされ、神聖なものである。私の祖父の実家では、白蛇が庭に現われたことから脱皮したあとの皮を額に入れるほどである。そのほかにも、夢に蛇が現われるとよい方向に向かうなど、蛇にまつわる良い話がたくさん存在する。私は、このことを同僚に話したら、気違いだと言われた。ここに蛇に関する認識の違いをおもしろいと思った。
 そして、不思議に思ったのは、子を捨てた母親よりも蛇の方が罰せられていることである。聖者は、母親を罰することなく、むしろ母親が住んでいる地域を守るために蛇(子)の頭を踏みつけている。頭を踏みつけるという行為は侮辱なども入るから子が罰せられているのに、母親が罰せられないのは奇妙に感じた。このことを同僚に話すと、そうだね、でも蛇のほうが罰せられるべきだと言ったので、驚いた。一人の人の意見で決め付けるわけではないが、こういう意見が出るということは、よほど“蛇=悪”という図式が成り立っていることにつながるのではないだろうか。

Boi de Botas
 Lagesの市民は、“boi de botas”というあだ名が歴史的な関係からある。Farroupilha戦争にて、共和制を宣言し、たった一日の儚いものであったが、英雄的な行為を示した。無名の英雄達がLagesにて大事な歴史を築いた戦いは10年も続いていた。
 1839年、Lagunaで起こっている戦いに向けて、Cavalariaの小隊がLagesを通った。GuiseppeとAnita Garibaldiの間で戦いが起こった。争いの最中、牛によって引っ張られえていた大砲が泥にはまってしまい、lageanoの随行員によって元の道に戻された。そこで、David Canabarro指揮官がCoronel Serafim de Mouraに“Bois de Botasのように君の兵士は勇ましく、力強く振舞うね”と言った。この公徳心と勇ましさから“Boi de Botas”は、武勇を表わし、lageanoを称える言葉となった。

Ladrão de Cincerro
 サンパウロ州のソロカバに荷馬車隊や家畜を運ぶ人々は必ずLagesを通らなければならなかった。このことからLagesでは市場が開かれたりした。そして今日のSanta Cruz教会とそこの泉の近くで決まって野営をしていた。草を食むために家畜をその近くで放していた。いたずら好きなVilaという若者(lageanoの気質でもある)が夜、家畜に付けられている鈴を取ったり、とうもろこしのストローを詰め込んで、鈴の音を消したのである。
 朝になると、家畜を必死に呼び戻していた。しかし、鈴の音を聞くことができず、呼び戻せなかった。この様子を若者は、茂みの影から見て笑っていた。このことから、lageanoは、“鈴泥棒”というあだ名がある。
 このあだ名を聞いたことはないが、lageanoが勇ましい面もあれば、ユーモアもあるという魅力を称えた伝説だと思った。前回は、catarinense(SC)とgaúcho(RS)の気質の違いをpiadaで紹介したが、そのcatarinenseのlageanoは、少しgaúchoが混ざっているから勇ましいことなども強調されているのではないだろうか。Lagesの地域は、特にこれといった産業がないが、シルクロードのような商業の通り道だったため、さまざまな気質が混ざり合わさったものと考える。
 Lagesがガウーショと関係が深いのは、牛飼いの人などがリオ・グランデ・ド・スル州からサンパウロへ行く道の主要休憩ポイントとなっているからである、ということがこのあだ名の由来からも知ることができる。サンタカタリーナ州でもガウーショの文化と関係が深い所があるということがここで証明されている。





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