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アテネ五輪を終えて 心に残ったのは記録だけではない 作家 山本一力氏(9月3日付け毎日新聞夕刊より)
男子マラソンでアクシデンテに遭っても投げキスでゴールしたブラジルの選手は希望を与えた。8月29日の五輪男子マラソンで、パナシナイコ競技場に3位で入ったブラジルのデリマ選手=APとの毎日新聞の9月3日夕刊の記事をbatepapoの仲間の工藤 章さんが送って呉れました。新しく新聞、雑誌等をSCAN DISCに掛けPDFからワードに変換できるSOFTを丸紅当時の仲間が日本から持って来てくれそれで試してみたのですが、事務所に専用のSCANERを導入し四苦八苦して何とか操作は、できるようになったのですが、解読度、鮮明度等の関係でそのままは使えず結局自分で叩き直す羽目になりましたが、是非今後は新戦力といして使いこなして見たいと思っています。
写真は、工藤さんよりPDFで送って頂いた毎日新聞です。


今回の5輪を見て何をいいたいのかといったら、男子マラソンのあのブラジルの選手の見事なゴールだ。あれ一点に尽きる。ゴールまであとわずかというところで妨害に逢い、2人に抜かされる。あってはならないアクシデントで、納得できないよ。でも彼はゴールに入ってきた時、手を振りながら喜びを表現した。怒っているはずなのに喜んでいる。熱いものがこみあげたね。スポーツマンシップという型にはめた無理は全然感じなかった。うれしそうに投げキスした。あれは心底わき出たことだろう。
自分がもしトップを走っていて、あんな目に遭ったら、きもちはグシャグシャで怒りだけがわくだろう。それが顔に出るだろう。日本人選手が同じ目に遭ったとしたら、日本の国民はどう受け止めただろうか。「3等賞でよかったね」とはならないと思う。これは民度の問題ではない。ラテンという底抜けに明るい民族のなせる技なのかと思った。でも、彼が観衆の前に現れた時の盛大な拍手。民族というくくりを超越して人間が純粋に感動を覚えた拍手だったと思う。
 あのシーンを見て、自分をものすごく問い詰めた。おのれと彼とを重ねあわせた。自分にはできない。絶対できない。だからあこがれた。人生には不本意ながら受け入れざるを得ない結果がある。そのときにどういう反応をするのかということを学んだ。彼のような生き方の方が絶対ハッピーだなってこと。そして喜びとして受け止めた方が人は感動する。
 五輪というスポーツの祭典で起きたことだから、世界中がリアルタイムで感動を体験できた。形はマラソンのレースとして分かりやすく提示されたけど、伝えてきたものはそういうことじゃなかったと思う。世界中で戦争をやっているようなこの時代に、民族や国という境界を越えて世界がひとつになれるんだという可能性だ。こんな体験は初めてだ。スポーツでなくても、死力おを尽くしてやっているものを見たら、人間は国を超え、民族を超えて喜びを共有でき、深い愛を感ずることができるのかもしれない。その希望を見た。
 陸上や水泳などは、数値で明確に判定される大変フェアな世界。職場の昇進も、入試の論文も、文学賞の評価も、思えば現世のほとんどは主観的な基準で測られている。だから公平さへの要求が本能的にある。それがスポーツへの強烈なあこがれに通じているのだと思う。その中で見たのは、勝負とは全く異なる次元のものだった。人間はある部分では共有しあえるのだということをアテネ五輪の最後の最後に見ることができた。

やまもと・いちりき 1948年高知市出身。「あかね空」で直木賞受賞。近著は、「欅しぐれ」(朝日新聞社)。自転車が趣味だが、最近は毎日40分のマシンでのウオーキングに病みつき。



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