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【小泉首相のブラジル・メキシコ訪問。】前ブラジル日本商工会議所会頭、三菱商事中南米代表 工藤 章さんの寄稿。
小泉首相は、今回初めての中南米を訪問、ブラジル、メキシコを歴訪されました。ブラジルに於ける諸行事、公式日程に付いては、『私たちの40年!!』MLでも邦字紙のニッケイ新聞、サンパウロ新聞からお借りして御知らせしておりますが、今回小泉首相の公式行事に直接参加された前ブラジル日本商工会議所会頭、三菱商事中南米代表の工藤 章さんからのご報告をBATEPAPO欄で受け取りました。是非皆さんにもご紹介したく了解を得て転載させて頂きました。
BATEPAPO欄でも男子マラソン銅メダリストのバンデレイ・デ・リマ選手の美挙に対する賛辞が寄せられていますが、その最初のコメントが工藤さんの発言でそれを赤嶺さんがニッケイ新聞にも紹介掲載されていますのでこれも一緒に掲載して置きます。
写真は、適当なものが見つからず地元紙の9月18日付けのO SUL紙に掲載されている写真をお借りしました。写真説明では、小泉首相の要請でデリマ選手がアテネの競技場でテープを切る前に見せたアビオンジンニィオ(腕を挙げて飛行機の両翼を示すジェスチアー)を披露しているところです。工藤さんもこの近くにおられたのですね。有り難う御座います。


赤嶺さん、山田さん、伊豆山さん、和田さん(順不同)、皆さん
デ・リマ選手に関わる拙文の件では皆様からいろいろな便りを頂き、いささか困惑しておりました。更に赤嶺さんの発想から生まれたニッケイ新聞への掲載によって、とんでもないことになったと思っていました。
そして9月16日ブラジリアで何とそのデ・リマ選手と握手をし会話を交わす機会に恵まれました。
来年に東京か琵琶湖で走ることが出来そうで、楽しみにしていると淡々と話されました。大統領や首相に喝采されても、あくまで謙虚さを崩さぬ姿を目の当たりにして、再度感激しました。
小泉首相の今回の訪問では、15日のサンパウロでのアルキミン州知事との午餐会、16日のブラジリアでのルラ大統領との午餐会、17日のメキシコ・シティーでのFTA調印式、フォックス大統領との午餐会、そして商工会議所での祝賀会(10分程度ご臨席)に参加するという幸運を得ました。
それぞれの行事については詳しく報道されていますが、小生が強く印象付けられたのは、ブラジルとメキシコの小泉首相の迎え入れの温度差です。
メキシコでは中南米で始めてのFTA締結という重要な行事があり、重みのある訪問が厳粛に進められ、調印式のあとの午餐会も同様の雰囲気のなかで静かに取り進められました。
ブラジルはと言えば、サンパウロでもブラジリアでもメイン・ディッシュが終わらぬ内に、日系の方が首相を目指しダッシュ、そして短いながら会話を交わして写真撮影、そんな方達の長い列。派遣社員もその波に紛れて写真に納まる、ともかく大騒ぎの興奮の渦。
移住100年の重みとブラジルの型破りの度合いを肌で感じ、今再び熱い血を持ったブラジルに思いを巡らせています。
メキシコでのFTA調印後の両首脳の記者会見の席で、構造改革に対し自らの生命を賭けているという小泉首相の熱弁を異郷の地で聞き、更にブラジルやメキシコを含む中南米と日本は新しい時代の幕開けを迎えたという小泉首相の発言は、用意された原稿を棒読みされたものではなく、首相個人の熱い思いと受け止めました。
また小泉首相は、移住の皆さんや駐在の我々が日本の担い手だと発言されました。日本にいると、経済は低成長だし外国企業の勢いに圧倒されて日本は駄目だ駄目だとうんざりするくらい暗い話しか聞かぬが、今度中南米に来て日本の製品はすばらしい、日本の企業は信頼できるパートナーだと、明るい話を沢山聞いた、これからも海外にいる日本人の方に活躍してほしいとも言われました。
今回の小泉首相のブラジル・メキシコ訪問に参加して、中南米でのビジネス拡大や、多くの人との出会いで日本との交流を深める一役を担うことに更に挑戦しようと、新たに気を引き締めて居ります。
ハリケーン崩れの低気圧の去った秋晴れのニューヨークにて。

■「ありがとう、ブラジル」=リマ選手と共に住める幸せ ニッケイ新聞より
                                9月15日(水)
 ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)のコンサルタント部会では、約二年前から、毎日の情報やお互いの意見交換のために、ネット上でBatepapoというメーリングリストを実施してきている。ブラジル国内のマナウスからポルトアレグレはもとより、遠く日本、メキシコまで輪が広がってきている。さきのアテネ・オリンピックの競技中、ゴールを目前に、走行妨害を受け、惜しくも金メダルを逸してしまったブラジルのワンデルレイ・デ・リマ選手の「金メダルはとれなかったが、自分の満足は、それより遥かに大きい。誰も恨まない」という、あの一言が、この欄でも大きな反響を呼び、次のようなやり取りが行われた。
 立派な人生観に強い衝撃
 会議所のメンバーのみなさん、ベネズエラのカラカスに滞在中の工藤章です。
 アテネ・オリンピックは小生にとっては、忘れる事の出来ぬ大会になり、幸せです。爽やかであり大きな包容力のある人生観を持ったワンデルレイ・デ・リマ選手と出会ったからです。
 毎日毎日練習に明け暮れ、雑念や余計な欲望に屈する事なくアテネに向かい、全力を尽くすべくゲームに臨んだ事でしょう。自分のすべてを燃焼すべく、ひたすら走ったのでしょう。そしてあのアクシデントに遭遇してしまった。
 衝撃と痛みを振り払って残りの距離を黙々と走り、追い抜いて行く二人の選手の背中を見ながら、それでも走り切った。
 走り終えたリマ選手が「金がとれたかもしれない。でも、神が与えた試練を乗り越えて完走し、メダルを貰う事が出来たことに満足しています」と言ったのを聞いて、自分の耳を疑いました。こんな立派な人生観を持った人がいたんだ、と強い衝撃を覚えました。
 そして、この彼はブラジルに生まれ育ったということを改めて思い、リマ選手に感謝するとともに、自分が人生の一部をブラジルでブラジル人と共に過ごせることに感謝しています。(三菱商事中南米代表、八月三十一日記)
 さらに光彩放つことを
 三菱の工藤章さん、赤嶺尚由です。
 本日(九月七日)は、ブラジルの独立記念日のため国祭日です。そして、今日の主役の一人は、何と言っても、アテネ五輪でマラソン競技中に、走行妨害を受け、惜しくも金メダルを逸しながら、誰も恨むことなく、世界中に爽やかな感動を与えた、あのワンデルレイ・デ・リマ選手です。
 政府当局者らは、独立記念日を迎えるに当たって、国威発揚のために、手をかえ品をかえ、一躍英雄みたいになったリマ選手の名声に便乗し、あやかろうとしましたが、いくら派手に戦闘機を飛ばしたり、戦車を走らせて誇示しようとしても、所詮リマ選手の清潔感と政治家の腐敗色(臭)とは、言わずもがな、相容れず異質のように思えてなりません。
 かてて加えて、本欄における「リマ選手に感謝するとともに、自分が人生の一部をこのブラジルで過ごせることを誇りに思う」という三菱商事中南米代表の工藤章さん(商工会議所前会頭)から発信されたメールが、いかにもComovido(感動的)であったために、なかなか忘れられません。「工藤発言」には、この国で一時的に過ごす一駐在員の節度、気遣い、思いやり、といった美質が一杯詰まっているように考えられたからです。
 いかにも感動的なあの言葉を口にしたマラソン銅メダリストのリマ選手は、物質的には決して豊かではありませんが、それだけにこの国のレーゾン・デートル(存在価値)を一番発揚すべき今日の独立記念日には、最も似合いそうな主役の気がしてなりません。この国では、現在、激しい貧富の格差や失業などを主因に、強盗殺人などのさまざまな社会反罪が発生して、混沌とした状況の中にあります。
 しかし、爽やかな人生を送っている立派な国民もまだ数多くいます。リマ選手の素晴らしい発言が一段と重みを帯び、さらに光彩を放つことを切に願っています。(ソールナッセンテ人材銀行代表、九月七日記)。




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