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【任期の折り返し点に来たルーラ政権】(前編) ソールナセンテ人材銀行 赤嶺 尚由さんの新春紙上座談会(経済報知掲載用原稿)。
サンパウロ日本商工会議所コンサルタント部門のメーリングリストBATEPAPOにメンバーの赤嶺さんが毎年邦字経済紙の【経済報知】に毎年掲載しておられる紙上座談会の2005年度版に掲載された原稿を送って頂きました。15千語の大作で1度には掲載出来ませんので前編、後編に分けて掲載させて頂きました。ルーラ大統領の任期の半分2年間が過ぎた段階でのこれまでのルーラ政権の実績と再選を目指すこれからの後半への期待と注文を座談会風に読み易く分り易く紹介した格好のブラジル政治、経済時評であり大変興味深く且つ参考になります。メンバーの皆さんの感想文等も含めご紹介して置きます。
写真は、2年前の就任時の若々しい写真が見つかりましたのでこれをお借りしました。


任期の折り返し点に来たルーラ政権   赤嶺 尚由
   
 2003年1月1日に発足したルーラ現大統領が今年からいよいよ任期4年の折り返し点にさしかかった。政界における今後の大きな焦点一つは、PT(労働者たちの政党)に支持基盤を置くこの革新政権が来年10月に予定されている次期大統領選挙を視野に入れながら、まず現大統領の再選のための政治的な根回しや地固めを果たしてうまく演出できるのか、昨年の統一地方選挙で、数よりも内容の濃い勝利を収めた野党陣営の中の最大勢力であるPSDBが次なるより大きな戦いに向けて、どのような対抗のための布陣を敷いてくるのか、といった点に絞られそうである。有力伯字紙のベテラン政治ジャーナリストの一人は、「昨年下半期から顕著になりかけている経済回復のリズムさえ維持すれば、ルーラ再選の可能性は、80%前後もある」と、既に強気の見通しを明らかにしている。本紙恒例の紙上座談会では、その辺の政界事情も含め、最近の政治経済面の動きを中心に追ってみることにした。
 
伝家の宝刀に頼り過ぎる大統領
T 去年は、統一地方選挙があったし、来年は、次期大統領、上下両院議員を含む総選挙が行われる。プラナルト宮や国会を中心とした政界が比較的ゆっくりと仕事できるのは、その間に挟まった今年しかなさそうだ。ブラジリアの国会議員は、火曜日に来て、金曜日にはもう自分たちの各選挙地盤に散って帰って行くという、いわゆる火来金帰の悪癖を相変わらず繰り返してきているが、それにかてて加えて、昨年の6月以降、地方選挙のために、ほとんど開店休業みたいな状態のままだった。今年は、少しはまじめに仕事が出来るだろうか、政治が経済の足を引っ張ることもよくあるから、是非そうあって欲しいなあ。
A 主として、輸出産業に支えられての好調な経済分野を除いては、とりわけ社会政策面が遅速拙速というよりも、最初から停滞したまま全然動かないケースの方が一段と目立ち、「行政面におけるルーラ政権の経験の足りなさをさらけ出してしまった。大統領が就任式で<これから全く新しい国造りをしよう>という意味合いを持たせて14,5回も唱えたあのムダンサ(変革)の波は、どこへ行ったのか」と、激しい批判の矢面にも立たされたりした。しかし、ルーラ政権が経済分野以外で総じてノロノロ運転を続けてきた背景には、国会議員たちが何かの理由を見つけては、法案などの審議になかなか応じないで、まともに仕事しようとしなかったという事情も隠されている。背に腹は変えられないから、たとえ急場しのぎの意味があるにせよ、何とか国を治めていくためには、いきおいFHC前政権を上回る速度でより一段とMP(大統領の暫定措置)に頼ろうした訳だ。
T ルーラ大統領を中心としたプラナルト宮に陣取る官辺筋は、一体どれ位の頻度でこの暫定令を援用しようとしたのかい?
A ちょうど私の手許にそれに関する簡単なデータがあるが、昨年12月までに下院の本会議で審議に付され、承認された126件に上る主要な提案事項のうち、実に88件が大統領側から出されたMPだったそうだ。これは、前年の57件を大きく上回って、立法府が自分たちの本来の仕事である「法律を作る」ことをまともに果たさず、この面でも完全に行政府の風下に立たされていることを証明している。

見せて欲しい三権分立の精神
T 昨年は、確かにルーラ政権の行政経験の足りなさが目立ち、再び大統領の暫定措置を多発しての行政スタイルが浮き彫りになった1年でもあったが、軍事政権当時の上意下達式で専横的なやり方をほうふつとさせる大統領の暫定措置に軸足を置いての行政手法は、決してほめられたものではない。ルーラ大統領が20年以上にわたる苦節の野党時代に、国会無視という理由で、一貫して強く非難してきたものの一つが独裁的な色合いの強いこのMPであっただけに、尚更のことだ。
A 話は、最初から大統領の専権事項であるMPの採用に偏りがちになったけれども、この暫定措置は、大統領(行政)側の都合に合わせて、まあ自由勝手に採用され、僅か4ヵ月程度の短い効力しか与えられていない。その期限内に国会で後から承認を受ける、つまり追認されなければ、効力を失う規定になっている。とは言え、行政府が立法府の権限とか役割をしばらくの間でも奪い、介入してしまうような弊害を常に伴っており、三権分立という民主主義の根本に立ち返って、お互いの守備範囲を出来るだけきちんと元のあるべき姿に戻す必要性が久しく指摘されてきた。それだけに、任期の折り返し点にさしかかったルーラ政権のこれからの重要課題の一つでもあるだろう。
T しかし、どうかなあ、次の大統領選挙が近付けば近付くほど、国民の目に見える成果を可及的速やかに挙げるためにも、即効性を持つMPを乱用する風潮の方が逆に高まりそうな気もするよ。大統領の暫定措置は、確かに行政が手っ取り早く難所から一時的に脱出するには極めて有効な手段であるが、行政がいつまでもこの伝家の宝刀みたいなものに頼ろうとすると、国会が本来の立法活動に立ち戻れないことは、既に衆目の認めるところだ。
A もう一つ、三権分立の一角を占める司法府のノロノロ運転が目立ったが、昨年末に司法改革を規定した憲法修正案の承認により、裁判の遅速等が大分改善されそうだ。立法府と司法府ができるだけ早く本来の与えられた機能を取り戻さないことには、いくらルーラ大統領が新しい国造りのために、行政府の方からムダンサの旗色を鮮明にしようとしても、うまく行かない。昨年の年末もいよいよギリギリになって、これまで民間資本の参入を大きく制限してきた道路、港湾などの大型インフラ部門を対象に、政府の投資能力不足を補うべく、最初の段階から民間資本の参加を認め、それ相当の利益も保証してやるという内容の注目すべきPPP(官民合同プロジェクト)案が承認に持ち込まれたが、これがもしうまく動けば、ルーラ政権の標榜するムダンサという新しい国造りの一端に繋がって行くのではないだろうか。 
財政を厳しく引き締めて尚成長
T それはひとまずさて置いて、昨年を振り返って見た場合、経済面に関する限り、ルーラ政権になって以来、初めて本格的な明るさを取り戻したのではないか。強烈な革新色と急進性を持つ筈だったルーラ政権が案に相違して、大変健全で穏やかというべきか、国際間でも極めて理解され易いというべきか、兎に角、そういった性格を持っているとの印象を与えつつ、まずインフレ抑制(経済の安定)のために高金利を一貫して採用し、又、いったん作った債務の利子の返済用に何が何でもプライマリー財政収支の黒字計上を達成すべく、常に税収アップを図りながら、もう一方では、支出削減を厳しく徹底させて行くという厳しい引き締め政策を着実に実施、運営して行った。高金利の水準と財政面の引き締めは、FHC前政権を上回る程だと指摘されながら、それでも5%台に達するこの国にしては、稀に見る高い経済成長を達成した。その実績は、もっと特筆されてもいいように思われる。
A ブラジルの金利水準は、周知の通り、世界中でもトップクラスに入る。昨年12月の最後の通貨政策審議会(COPOM)で決めれた政策(標準)金利が年17.75%にもなり、ちょうど一年前の高い水準に逆戻りしてしまった。その理由の殆どが「景気回復の兆しで消費の伸びが見込まれ、生産活動がそれに追いつかず、需要インフレを抑えるのに前以って手を打つ」という内容に終始していたようだ。
T それでいて、昨年のPIB(国内総生産)の伸びは、年初に大方の金融市場関係者の出した3.6%成長説を大きく上回って5.3%(予想数値)に達し、ここ10年間では2番目に高い数字となった模様だ。又、後でも触れるが、経済成長の牽引車だった輸出が約30%伸び、お陰で貿易黒字も年初の190億ドル予想から約330億ドル(予想数値)の大台に達し、それまで不安のあった経常収支や外貨準備高の改善にも大きく結びついた。
A ただ、期待を裏切ったのは、インフレの上昇と金利高で、IPCAをベースにして計るインフレ指数が年初の5.9%から7.4%(予想数値)に達しそうな勢いにあること、金利の水準も14%水準が反対に17.75%まで上がってきている点だ。中銀筋が月例会議の後で今後とも比較的長く金利の高目誘導を示唆しているのは、これからも尚インフレ上昇に警戒感が必要だということだろう。
T 言うまでもなく、金利を引き上げると、あらゆる分野の生産活動を鈍化させるようなマイナス要因となり、経済成長の失速につながり、やがて雇用不振と失業増加という社会問題を引き起こすから、極力避けたがるものだが、蔵相以下の経済スタッフは、インフレ抑制(経済安定)を第一の優先目標に置いたまま譲らず、主として生産分野の激しい反対意見の中でもひるまずに高金利政策を実施し続けているように見受けられる。

栽培の時期が過ぎて穫り入れへ
A ルーラ大統領は、就任からこの方一貫して政権の不人気につながりかねないパロッシ大蔵大臣の引き締め政策を陰に陽に擁護してきたが、昨年後半から「蔵相を守るべし」の口調にも一段と力がこもってきた。ひとつは、ジルセウ官房長官ら閣内にいる引き締め政策反対派の批判を牽制、封じ込める意味もあったかも知れないが、経済成長をより持続ある性格にするには、まず引き締め政策で以って、財政基盤をしっかりとしたものにすべき、と主張する大蔵大臣側の方針の正しさを大統領自身が確信し、承認し続けてきたと言うことかな。その点では、忍の字でよく蔵相を信頼し、任せてきたルーラ大統領の最高指導者としての我慢強さも、相当なものだと言える。
T 政権発足から今までの2年間は、まあ、前政権から受け継いだ大きな規模の「負の遺産」の対応や後片付けに追いまくられたが、それと平行して持続性のある経済成長のためのアケシメント(肩慣らし)を一緒に進めてきたと言えそうだ。
A さっき、大統領の我慢強さという話が出たが、昨年12月に入ってすぐの記者会見で「これまでの2年間は、種を播いてそれを育てる時期だった。これからの2年でそれを大量に収穫したい」といった意味合いの発言をしていた。最低賃金を来年5月以降、これまでの260レアルから300レアルに引き上げる方針を前以て公表したり、さらに、中間層のために所得税の課税表を一応納得の行く線で是正したり、やっとこの政権自体に少しは先を見通せる一種の余裕みたいなものが出てきた感じもする。特にインフレ上昇分を相殺して実質的に10%近い300レアルという最賃の調整の仕方にも大統領の強い息込みが伺え、ある有力伯字紙の人気コラムニストが「どうもルーラ政権に何らかのムダンサの意味合いに似たものが現れ始めた」と、評していたのが印象深い。
T 昨年のこの市場座談会では、発足直後のルーラ政権がポプリズム(大衆迎合主義)に走り、これまでの経済政策を急旋回させ、モラトリアムなどの非常手段に訴えるかも知れないといった大方の見方に全く相反する形で、至って穏健な方針を採用し、国際金融社会からの理解と協力の得られる方向へ歩み始めた事実を指して、貴方は、荒々しさからより大人しい穏健な方向へ、ルーラ政権の<大化け現象>が始まった、と表現していた。こういった意外な変身は、一部の国際観測筋の間では一足先に予想され、既に織り込み済みになっていたようだが、その後もずっと周囲に否定的な驚きを与えることなく、順調にこの<大化け現象>が持続してきていると言えるのではないか。国際通貨基金などの国際金融社会との関係も良好と言うより、むしろ、付かず離れず式を保ちながら、ブラジルに不利にならない形で交渉を進めてきた形跡も感じられるよ。例えば、さっき出た政府のプライマリー財政収支の黒字計算に当たって、目標とする黒字額がより出やすいように、重要なインフラ部門への投資をこれまでの経費扱いの対象から除外させている。
A 私の言ったルーラ政権の<大化け現象>とは、極めて第一印象的なものと言うか、もっと単純明快なものであり、要するに、強烈な革新色を持つ筈だったルーラ政権が発足すると同時に、大方の予想をほぼ完全に裏切る形で、極めて理解の得られる大人しい性格を帯びる逆の方向へ歩み始めるようになったという点だけを指していた。それとその中には、そういった納得できる政権に脱皮したがために、一番懸念され、さっきも指摘されていたポプリズムに走り、政府財政負を乱脈化させ、国際信用まで失ってしまう事態をひとまず回避してくれた、といった意味合いを含めていた。要は、これまでの<大化け現象>からこのまま引き続いて<本化け現象>にまで進むかどうかということだろう。

7年振りに低い水準のリスク
T 国際信用の高低を計る一つのバロメーターが米国の有力銀行によって発表される一国のリスクの水準だと思われるが、とりわけ、この面では、大変な改善が見られた。国のリスク度は、ある国に一旦貸した金が果たして無事に帰ってくるだろうかどうかを数字で表したもので、それが低ければ低いほど、信用が高くなる。現在のこの国のように、厳しいプライマリー黒字の計上で、相変わらず大変きつい借金生活ではあるけれども、貸した金を間違いなく返済してくれそうだ、おまけにインフレは低いし、念願の経済成長もやっと息を吹き返したし、さらに、金利が高いとなれば、他の途上国に回していた資金を新しくブラジルの方に回して投資しようか、という気運にもなりそうだ。
A 昨年12月17日ごろの時点での米JPモーガン銀行の発表によると、ブラジルのリスク水準は、遂に400ポイントを下回り、その後、上昇傾向に転じたものの、97年以来約7年ぶりの低水準を記録した。それにその他の要因が加わって国内でのドル相場も下がる一方だし、むしろ、輸出業者の不安感を高めている。
T PTという極めて急進的だった政党の初期の段階での一種のメタモルフォーゼ(変身)現象は、まあ比較的スムーズに運んだ形跡があるが、それによって失ったものも少なくなかったのではないか。
A 1980年に金融資本などを特に批判の対象にし、一般国民の味方を唱えて止まない革新政党を旗揚げして以来、あるいは、それから間もなくして手を握り合った党友たちが次々離反して行った。党内に潜伏していた恰好の約30人近い過激派の分子たちが袂を分かって、次期大統領選挙を睨んでPTよりもっと左寄りの新党結成を目論んでいる。又、これまでずっとPTの精神的な支柱役を務め、ルーラ政権の誕生時には「この国にもやっと政治面での大きな地殻変動が起きるぞ」と、盛んにエールを送っていた高名な社会学者のフランシスコ・デ・オリベイラ氏(USP教授)らもPTの経済政策の在り方、とりわけ、所得配分などに関して完全に意見を異にし、失望する形で党外へ去って行った。
T なるほど、昨年下半期からの急速な経済成長と平行して、4.50%という国際通貨基金との協定に基づくプライマリー財政黒字の目標を遥かに上回る水準で達成して一旦借りた資金の利子払い能力が充分にあることを示しつつ、さらに、インフレの暴走を何としても阻止して経済の安定を維持するために、金利の水準を常に高目に誘導しつつ、言わば二兎も三兎も一緒に追う形で待望の経済成長を演出することができた訳だ。それに伴い、パロッシ蔵相以下の経済スタッフの舵取りの巧みさと、ルーラ大統領の「いったん任せた以上、景気回復を忍の字で待つ」といった我慢振りに改めて賞賛に似た注目が集まるようになった。2年間の臥薪嘗胆振りがやっと実りつつあると言える。あの政策発足当時の危うさといったものを考慮すると、決して褒め過ぎではない気もするよ。

堅実な蔵相と忍の字の大統領
A 大蔵大臣の手腕とか能力に就いては、米最有力紙NYタイムスからも昨年末に「もともと公共衛生の分野のお医者さんである蔵相は、就任時に財政政策のスチレーザ(巧緻なところ)を少ししか知らないことを率直に告白して非常に控え目だったが、就任から2年この方で電撃的に素早い講義を受けたことにより、ウォール街の市場関係者や経済関係の専門化とも堂々と渡り合えるようになった」と、大変な賛辞が送られていた。
T 繰り返す形になるけれども、5.3%という経済成長が全く久方ぶりの水準なら、約330億ドルという貿易黒字も、間違いなく新記録だ。10年ぶりと言われるこの経済面での躍進振りがより長く持続されるように、これまでその下地を固めてきた蔵相の手腕に更に内外から注目が集まりそうな気がする。ただ、ちょっと気になるのは、それに伴って閣内のもう一人の実力者のジルセウ官房長との力の関係がどうなるかだ。一説によると、まだ暗闘とまでは行かなくとも、早くも二人の鞘当てとか綱引きの始まっているフシもある。
A 何が何でも、プライマリー財政黒字達成が最優先事項にされ、その上に経済政策の軸足のひとつを置いているお陰で、否定的な影響も強く受け、既に指摘された社会政策面での活動の停滞の一因になった側面が伺える。さらに、又、昨年後半から特に顕著になった今度の景気回復が本物かどうか、要するに、よく言われるところの、本当に持続性を持つ経済成長かどうか、それをよく見て判断するには、もう少し時間がかかりそうな気がするよ。長い間、景気低迷期が続いたので、前年の前期と比較するというような景気判断の仕方では、つい実相を見誤ってしまう、ということにだってなりかねない。
T 今回の経済成長は、どうもこれまでと比べてより足腰がしっかりしたものになる公算が大きいのではないか。ルーラ大統領が支持基盤にしているPTは、昨年の統一地方選挙では、(当選させた市長の)数では決して負けていなくて、むしろ党勢を伸張させたくらいだったが、影響力の大きいサンパウロ、リオ、ポルトアレグレなどの主要都市では、宿敵のPSDBやPFLからそれまでの鈍い経済活動に非難を受けたりして、挙って敗北を喫しており、内容や質の点で完全に負けてしまった。社会政策面の不備、とりわけ失業問題を追及されたのも大きく響いた。
A それを何とかして挽回するには、来年のルーラ現大統領の再選を是非とも実現する以外になさそうだ。もし、それがうまく演出できなければ、これまでの華々しく植え付けた革新政権のイメージが泡沫の如く消えて行く運命にある。いつものことながら、一つの政権交代には大きな混乱を伴うが、サンパウロ市で現役のまま、まさかの敗北を喫してしまったマルタ市長(当時)の不運と、それにすっかり寄りかかって生活してきていた多くの党員たちの年末での右往左往振りが鮮やか過ぎて今でも忘れられない。
T 景気回復の行方を観測するには、外国からの購買力(輸出)がこれまで通り好調のまま維持されるかかどうか、又、やっと現れかけた経済成長の結果、引き続き雇用水準を押し上げることに繋がって失業者が減り、働く人が増えて国内での購買力も高まるかどうか、さらに、その結果、貧困対策などの面に見るべきちゃんとした成果が出てきて、一般大衆に「ああ、この国も確かに変わりつつあるな」と、ムダンサそのもの足跡と恩恵を実感させ、認識させることができるかどうか、と言った点をもう少し時間をかけて見なければならないが、それがもしできれば、現大統領の続投という2006年におけるPT挙げての悲願を達成するための鍵とか切り札とかが一応出揃うことになる。



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