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沢田 啓明さんのサッカーコラム復活!!(9)
沢田 啓明さんのサッカーコラムは、週1度程度の定期コラムで何時も楽しみに待っていますが今回の(9)は5月11日のリオで開催された第一回ビーチサッカーのワールドカップに於ける日本の活躍振りを活写、堂々の世界第4位入リとラーモス監督の偉業と今後のJリーグ監督としての活躍を洛セしている。1年後に迫ったドイツに於けるワールドカップの出場チームも日本が一番乗りを決め、ポルトアレグレでパラグアイに4−1で快勝、ブエノスアイレスで南米代浮戟E゚るかと期待されたアルゼンチン戦に1−3で完敗、その敗因を分析しています。フランスに於けるコンフェデレシオン杯に於ける日本との試合、決勝で当る可柏ォのあるアルゼンチン戦の雪辱戦?残り3試合の南米卵I、ブラジル選手権の行方等々これからも目が離せないブラジルサッカーをコメントしてくれます。
写真は、ポルトアレグレに置けるブラジル4-1パラグアイを観戦に行った時の長女、弥生と撮ったものです。


<ビーチサッカーもなかなか面白い!> 5月11日掲載分
 5月8日からリオデジャネイロのコパカバーナ海岸で、ビーチサッカーの第1回ワールドカップが行なわれている。 
 ビーチサッカーは、ブラジルが発祥の地だ。縦35メートル、横26メートルほどのサイズのピッチ(砂地)で、1チーム5人ずつでプレーする。試合時間は12分ずつの3ピリオドだから、正味のプレー時間は36分。ただ、ボールがピッチの外に出ると時計が止まるから、2回あるインターバル(各3分)も合わせると試合に要する時間はたいてい60分程度になる。
 1995年から世界選手権が行なわれていて過去10回の蜑・フうちブラジルが9回優勝しているのだが、今回初めてFIFA(国際サッカー連盟)の主催で「ワールドカップ」の名称を用いて開催されている。
 大会では参加12カ国が3チームずつ4グループに分かれて総当りで対戦し、グループの上位2カ国が12日からの決勝トーナメントに進む。
 初日(8日)は4試合が行なわれ、ウルグアイが南アフリカに、フランスがオーストラリアに勝った後、地元ブラジルがタイと対戦した。
 ブラジル選手は、深い砂の上なのにまるで土の上を走っているかのような高速ドリブルと柔らかいテクニックでタイ選手を翻弄する。ヘディングのパスを6回連続で交換してゴールを決めたり、ボールを相手選手の頭上に跳ね上げてかわしてから(これはサッカーで「シャペウ=帽子」と呼ばれるプレーだ)ボレーシュートを叩き込んだりと、見ている方が思わずのけぞってしまうような華麗で意外性にあふれたゴールを次々と決めて9対2で完勝した。
 一方、日本は強豪ポルトガルと対戦し、0対4で敗れた。守備はまずまずだったが、攻撃の組み立てがままならない。第2ピリオドを終わった時点で3点リードされ、最終ピリオドでFKを決めたかに見えたもののキックの前に味方選手の反則があったという理由でFKのやり直しを命じられ、今度は失敗。その後、さらに1点を追加されて完敗を喫した。
 しかし、9日のアメリカ戦では意地を見せた。第1ピリオドに先制されたが、第2ピリオ
ドでGKからのロングフィードを頭で折り返し、これを中央で黒木が強烈に蹴り込んで大会初得点。さらに、自陣からのFKを當間が直接決めて逆転した。その直後に失点して再び同点とされたが、最終ピリオドに中村が右サイドを突破し、角度のないところからニアサイドの上隅に決めて勝ち越し。その後、アメリカの猛攻を浴びたが、GK加登を中心とする守備陣が懸命に守って記念すべき初勝利をあげた。
 試合終了の瞬間、日本選手たちは抱き合って大喜び。試合中、「ジャポン!ジャポン!」と盛んに応援してくれた日本びいきのブラジル人観衆に向かって両手を突き上げた(それにしても、ブラジルでは何のスポーツでも日本チームが出てくるとたいてい応援してもらえる。本当にありがたいことだ)。
 日本の監督は、あのラモス。いつも精神力を強調するこの人らしく、「選手全員の気力でもぎ取った勝利だ」と興奮状態だった。
  そして、10日に行なわれたポルトガル対アメリカの試合でポルトガルが9対3と大勝したため、日本のグループ2位と決勝トーナメント進出(ベスト8)が決定した。
 12日の対戦相手はウルグアイ。相当に手強い相手だが、日本がどこまでやれるか楽しみだ。
(「ブラジル・サイト」 www.brazil.ne.jp/ より)">http://www.brazil.ne.jp/ より)

<ビーチサッカー日本代普A奇跡の大逆転!>  5月16日掲載分
 5月8日から15日までリオデジャネイロのコパカバーナ海岸で行なわれた「FIFA(国際サッカー連盟)ビーチサッカー・ワールドカップ」は、ラモス率いる日本代浮ノとって素晴らしい大会だった。
 日本はグループリーグでポルトガルに敗れたが、アメリカに逆転勝ちしてグループリーグ2位で準々決勝に進出した。
 準々決勝では強豪ウルグアイと対戦し、最終ピリオド6分(残り6分)まで3点のリードを許していた。しかし、FW河原塚がロングシュートを決め、DF牧野が右サイドからのスローインを頭でねじ込む。さらに、自陣でボールをキープしていたウルグアイ選手にFW當間が猛然と襲いかかってボールを奪い相手GKをかわすと無人のゴールに蹴り込んだ。これで同点。日本びいきでウルグアイ嫌いの地元観衆は、「ジャポン(日本)!ジャポン!」の大コールで騒然となった。
 そして、試合終了54秒前、GK加登のロングスローを河原塚が頭で角度を変えると、これが相手GKの頭を越えてゴールに飛び込んだ。逆転だ!
 その瞬間、日本選手は狂ったようにピッチを走り回り、スタンドの観衆も飛び上がって大騒ぎとなった。そして、残り時間のウルグアイの猛攻を懸命の守りでしのぎ、4対3の大逆転勝ちを収めたのである。
 僕も長い間サッカーを見ているが(そしてビーチサッカーはサッカーと似て非なるスポーツではあるのだが)、試合の最後の6分間に3点をひっくり返したのを見たのは初めて見た。
 日本が勝ったという喜びよりも、「こんなのあり?」という驚きが先に立ってしばらくは声が出なかった。
 日本選手のほとんどは、アルバイトで生活費を稼ぎながらビーチサッカーのプロを目指して練習に励んできた。無職で貯金を切り崩しながらビーチサッカー中心の生活を送ってきた選手もいる。
 決勝点を含む2点をあげた殊勲の河原塚は、試合後、「この大会で何としても結果を出すんだ、という気持ちで死に物狂いでプレーした。その気持ちが最後に実ったと思う」と嬉し涙を流しながら語っていた。
 また、忘れてはならないのが地元観衆の日本代浮ヨのサポートだ。対戦相手のウルグアイがブラジルの仇敵という事情も味方して、日本選手は徹底的に応援してもらった。このことが日本選手を励まし、大きな力を与えたのはまちがいない。
 選手たちの強い気持ちとハングリー精神、ビーチサッカーをよく知るラモス監督の好指導、そして観衆の大声援が、常識では考えられないような逆転劇を生んだ。
 日本代浮ヘ、準決勝ではフランスに1対4で敗れ、疲労の極にあった3位決定戦ではブラジルに11対2と大敗した。しかし、4位という成績は大いに誉めていい。
 とはいえ、日本のビーチサッカーはまだまだこれからだ。この大会で大方の卵zを上回る好成績を残したとはいえ、フランス、ポルトガル、ブラジルといった世界のトップクラスとは技術、パワー、フィジカル、戦術などすべての面でまだまだ差がある(今回のワールドカップでベスト4に残ったからといって、世界で4番目に強いと考えるべきではない)。  
 選手たちの今後の頑張りを期待したい。
(「ブラジル・サイト」 www.brazil.ne.jp/ より)">http://www.brazil.ne.jp/ より)

<コリンチャンスの苦悩> 5月23日掲載分
 ファンの総数が2000万人を超えると言われるサンパウロ州最大の人気クラブ、コリンチャンスが苦しんでいる。
 約2000万ドルという巨額の負債を抱え、昨年末、英国系スポーツ投資会社とスポンサー契約を結んで、事実上、今後10年間のクラブの経営権を譲り渡した。このスポーツ投資会社はロシア・マフィアの裏金で経営されているという情報があり、ブラジル検察庁からマネーロンダリングの疑いをかけられているのだが、ともあれ、この(怪しげな)スポンサーの潤沢な資金のおかげでアルゼンチン代浮eWカルロス・テベスをはじめとする有望選手を続々と入団させた。さらに、今年3月、1978年のワールドカップ・アルゼンチン大会で優勝したアルゼンチン代浮フ主将でその後アルゼンチン代浮ニウルグアイ代浮フ監督を務めたダニエラ・パサレラを監督に招いた。
 当初、パサレラはチームを掌握するのにやや時間がかかったが、その後、コリンチャンスは10試合連続負けなしと好調だった。その原動力となったのがテベス。持ち前の高い技術に加えて旺盛な闘志と豊富な運動量でチームを引っ張り、たちまちコリンチアーノ(コリンチャンス・ファン)のアイドルとなった。
 コリンチャンスは、今シーズン最大の目標であったコッパ・ド・ブラジル(ブラジル杯)の2回戦でパラナ州の小クラブ、シアノルチにアウェーで0対3と完敗したが、ホームで素晴らしい攻撃サッカーを展開して5対1と大勝し、コリンチアーノを狂喜させた。そして、コッパ・ド・ブラジル3回戦でサンタ・カタリーナ州の中堅クラブ、フィゲイレンセにホームで2対0と快勝する(今にして思えば、この頃がパサレラ率いるコリンチャンスの絶頂期だった)。
 しかしその後、状況が急変する。
 ブラジル全国選手権の緒戦で引き分け、第2節で完敗。その直後、パサレラが「ミスが多い」としてチームリーダーの一人であるGKファビオ・コスタをチームから追放してしまった。以来、チームの雰囲気がおかしくなり、アウェーでフィゲイレンセに0対2と完敗し、PK戦も敗れて大会から敗退してしまう(ファビオ・コスタと同様、以前パサレラにチームから追放されたことがあるMFロジェールがPK戦でゴール上空に高々と蹴り上げ、「パサレラをクビにするためにわざと失敗したのではないか」という声すらあった)。
 さらにその4日後、ブラジル全国選手権のサンパウロとの試合で1対5と見るも無残な大敗を喫してしまう。こうなると、荒っぽいことで有名なコリンチアーノたちはおさまらない。ピッチに乱入したり、警備の警官と立ち回りを演じたり、と大魔オてしまった。
 「ブラジルのビッグクラブの監督は3連敗するとクビが危ない」と言われるが、その言葉通り、パサレラは3連敗であっけなくクビ。アシスタント・コーチのマルシオが監督に昇格して、チームを立て直そうとしている。
 コリンチアーノは、自分たちのことを「ャtレドール(苦しむ人)」と呼ぶ。
 楽に勝てないことを自覚しており、それでいて愛するクラブを決して見捨てない、という覚悟のほどが感じられる。そして、実際その通り、コリンチアーノたちはたっぷり苦しむのである。
 ブラジルでサッカーファンをやるのも楽じゃない。
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<ロビーニョのマジックに酔った夜> 5月28日掲載分
 5月25日にサントスの本拠地ヴィラ・ベウミーロ・スタジアムで行なわれたリベルタドーレス杯決勝トーナメント(ベスト16)第2レグのサントス対ウニベルシダ・デ・チレ(チリ)戦は、「神童」ロビーニョのワンマンショーだった。
 ロビーニョには、ポジションなどない。中盤からトップまで、右タッチライン沿いから左タッチライン沿いまでを自由に動き回り、得意のまたぎフェイント(ボールの上を両足で交互にまたいで相手を撹乱し、バランスを崩してから抜く)で相手守備陣を翻弄し、スペースに走り込む味方選手にスルーパスを送ったり、あるいは逆に自分がスペースに走り込んでパスを受けてシュートを放つ。
 サントスは第1レグのアウェーゲームで1対2と敗れており、ベスト8に進むためには1対0で勝つか2点差以上で勝つ必要があった(2対1の勝ちならPK戦による決着となり、引き分け以下ならウニベルシダ・デ・チリが勝ち上がる)。
 ウニベルシダ・デ・チレは、中盤から強烈なプレスをかけ、ボールを奪うとカウンターを狙うしぶといチーム。サントスにとっても決して楽な相手ではなかった。それでも前半33分、ロビーニョがゴール前正面に走り込んだMFリカルジーニョに絶妙のパスを送り、リカルジーニョからのヒールパスを受けたMFフラビオが左足で決めてサントスが先制する。そして後半26分、サントスは左サイドから右サイドに展開し、右からのクロスを後方から猛然と走り込んできたロビーニョが押し込んで2点目を決めた。
 圧巻だったのは、サントスの3点目。後半43分、ロビーニョがゴール前正面で後方からグラウンダーのパスを受けると、右足の爪先で浮かせて相手DFの頭越しにボールを通し(これはブラジルで「シャペウ=帽子」あるいは「レンャE=ハンカチ」と呼ばれるプレー)、自分は相手の脇を擦り抜けた。そして、2人目のDFを股抜きでかわし、シュートを放とうとしたところで別のDFに足を掛けて倒された。もちろんPK。サントスではふつうPKはリカルジーニョが蹴るのだが、このときはリカルジーニョがロビーニョをキッカーに指名し、ロビーニョがきっちりと決めてサントスの勝ち上がりを決定付けた。
 ロビーニョの華麗で意外性に満ちたプレーは、「マジック」としか阜サのしようがない。
 スタンドの観衆は総立ちになり、大歓声が起こり、そして「フィッカ・ロビーニョ(ロビーニョ、行かないで)!」の大合唱に変わった。これは、リベルタドーレス杯終了後にロビーニョがヨーロッパのビッグクラブ(おそらくはレアル・マドリー)に移籍するという奄ェ強いことに対するサポーターからの意思楓セだ。
 リベルタドーレス杯はベスト8が出揃い、ブラジルのサントス、サンパウロ、アトレチコ・パラナエンセの3チーム、アルゼンチンのリバープレート、ボカ・ジュニアーズ、バンフィールドの3チーム、そしてメキシコのチーバスとチグレスの2チームという顔ぶれとなった。
 準々決勝の第1レグは6月1日、第2レグは6月15日に行なわれ、サントスはアトレチコ・パラナエンセと、サンパウロはチグレスと対戦する。
 リベルタドーレス杯は、これからが佳境だ。今後、どんな試合が、どんなプレーが、そしてどのようなドラマが見られるのか。非常に楽しみだ。
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<ロナウド抜きのブラジルがパラグアイを粉砕!> 6月6日掲載分
 6月5日、ブラジル南部のポルトアレグレで2006年ワールドカップ南米卵I第14節のブラジル対パラグアイの試合を観戦してきた。
 試合前の最大の話題は、ブラジルのエース・ストライカー、ロナウドが欠場したこと。パレイラ監督に「疲れているのでコンフェデレーションズ杯(注:6大陸の王者と世界王者ブラジル、開催国ドイツの8カ国による大会で、6月15日に始まる)を欠場したい」と垂オ出たことがCBF(ブラジル・サッカー協会)の怒りを買い、「そんなに疲れているのならコンフェデレーションズ杯だけじゃなくて南米卵Iも休め」と命じられたのだ。
 ロナウドを欠くことは、普通に考えればブラジルにとってかなりの痛手となるはずだった(余談だが、スタンドに「ロナウド、俺の妹と結婚しないか」という横断幕があり、これには笑った。「そうなれば俺もおこぼれにあずかって金持ちになれるから」という意味で、結婚と離婚を繰り返すロナウドに対する強烈な皮肉だ)。
 結局、パレイラ監督は攻撃的MFにロナウジーニョとカカ、ツートップにアドリアーノと21歳のサントスの新鋭ロビーニョを起用したが、このメンバーで一緒に練習したのはわずか1日とあって、コンビネーション不足も大きな不安材料だった。
 ところが、ブラジルは試合開始直後からロナウジーニョ、ロビーニョ、カカらが盛んに動き回り、華麗なドリブルや意浮突いたパス交換でチャンスを作る。そして前半32分、左サイド深い位置でロナウジーニョからパスを受けたロベルト・カルロスがクロスを上げると、これがパラグアイDFの手に当たってPK。ロナウジーニョが決めてブラジルが先制した。さらに前半41分、ロビーニョが右サイドをドリブルで突破し、ペナルティ・エリア内で相手DFに倒されて再びPK。今度もロナウジーニョが決めて追加点をあげた。
 後半に入っても、ブラジルの攻勢が続く。後半25分、MFゼ・ロベルトがゴール左上隅に見事なミドルシュートを決めて3点目だ。
 ところがその直後、パラグアイは右からのクロスを頭で決めて1点を返す。そして後半33分、ブラジルのDFルシオが2枚目のイエローカードをもらって退場処分を受けた。
 しかし後半37分、ブラジルはカカからのパスを受けたロビーニョがGKの股間を抜いて4点目。パラグアイの息の根を止めた。
 パラグアイは、守備が強くて攻撃はカウンターとセットプレーが得意。ブラジルはこれまで苦手にしてきたのだが、この日はコンビネーション不足を個人技で補って粉砕してしまった。
 試合後、エースのロナウドが欠場していたことを思い出した人はほとんどいなかったはずだ。
 この勝利で、ブラジルは勝ち点を27に伸ばした。南米からは卵Iの上位4カ国がワールドカップ出場権を獲得し、5位の国がオセアニアとのプレーオフに回るのだが、4位以内に入るには勝ち点が25ほどあればいいと考えられており、アルゼンチン(勝ち点28)とブラジルはワールドカップ出場をほぼ確実にしたと言っていい。
 6月8日、ブラジルはアウェーでアルゼンチンと対戦する。現在、おそらくは世界の2
強であろうこの両国がどんな試合を見せてくれるのか。本当に楽しみだ。
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<セレャ刀A苦手アルゼンチンに完敗!> 6月10日掲載分。
 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに行って、6月8日に行なわれた2006年ワールドカップ南米卵I第14節のアルゼンチン対ブラジルの試合を取材してきた。
 ブラジルは例によって4−4−2のフォーメーション。前節と同様、攻撃的MFがロナウジーニョとカカでツートップがアドリアーノとロビーニョだ。一方のアルゼンチンは3−5−2で、トップ下がリケルメ、ツートップがクレスポとサビオラ。
 大歓声の中、南米最大の「スーペルクラシコ」が始まった。試合開始直後からアルゼンチンが猛烈なプレスでボールを奪って中盤を制圧し、華麗なパスワークでゴールに迫る。前半3分、ルイス・ゴンサレスがゴール前中央のスペースに走り込んだクレスポにスルーパスを送り、クレスポが右足を一閃すると、ボールはゴール左下隅に吸い込まれた。アルゼンチン、いきなりの先制。スタンドの観衆が一斉に飛び上がって歓喜を爆発させる。
ブラジル選手はあまりにも早い時間帯での失点に動揺が隠せず、ふだんならありえないようなミスを連発。アルゼンチンの攻勢が続く。前半17分、ゴール前中央でボールを受けたリケルメがドリブルでマーカーを振り切って左足でミドルシュートを放つと、これがゴール左上隅に飛び込んだ。
 その後も、アルゼンチンはタイトなマークでブラジル選手にスペースを与えず、パスの出所を押さえて攻撃を封じる。そして前半40分、アルゼンチンが右CKを短くつなぎ、サビオラからのニアサイドへのクロスをクレスポが頭で流し込んで3点目をあげた。
 後半に入って、ブラジルがロナウジーニョ、カカらのドリブル突破やパス交換からようやく攻撃の形を作り始める。26分、ゴール前やや右寄りの位置で得たFKをロベルト・カルロスがゴール左上隅に叩き込んで1点を返す。後半38分、ゴール前でボールを受けたアドリアーノがDF2人をかわしてフリーでシュートを放つが、これは左ポストに阻まれる。結局、ブラジルは追加点をあげることができず、アルゼンチンが3対1で快勝して南米勢で初めて2006年ワールドカップ出場を決めた。
 ブラジルの最大の敗因は、アルゼンチンに中盤を制圧されたことだろう。 選手一人一人を比べると、守備力でアルゼンチン選手がブラジル選手を大きく上回る。このため、この試合のようにブラジルが攻撃の選手をアルゼンチンより1人多く使うと、アルゼンチンの守備力によってブラジルの攻撃が封じられる一方でブラジルの守備はアルゼンチンの攻撃を抑え切れず、劣勢となって
しまう。これを避けるには、簡単に言えばブラジルが攻撃に専念する選手を減らして守備の選手を増やし、守備力を強化するしかないのではないかと思う。
それにしても、ブラジルはアルゼンチンが苦手だ。逆に、アルゼンチンはブラジルに対して自信を持っている。まあ、アウェーでアルゼンチンに負けるのは仕方がないだろう(と僕まで弱気になってしまう)。ただ、アルゼンチンに勝てなくてもワールドカップで優勝できればそれでいいと思うのだが、どうだろうか。
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<健闘した日本、無気力だったブラジル> 6月24日掲載分
  6月22日に行なわれたコンフェデ杯の日本対ブラジル戦は、なかなか楽しめた試合だった。
 前半3分に小笠原からのスルーパスを受けて右サイドを突破した加地がゴール左隅にシュートを決めたが、判定はオフサイド(試合を中継したブラジルのテレビ局「グローボ」は、試合のハーフタイムに「コンピュータで計算した結果、パスが出た時点で加地はブラジルの最終ラインの選手(左サイドバックのレオ)より36センチ後方にいたのでオフサイドではなかった」と伝えた)。
 立ち上がり、ブラジルは19日のメキシコ戦(攻撃が不発で0対1で敗れた)に比べてMFロナウジーニョ、カカらの動きが良い。前半10分にカウンターからロナウジーニョがドリブルで独走し、左サイドに走り込んだロビーニョにパス。ロビーニョがGK川口の股間を抜いて先制した。しかし、日本も前半27分に中村が強烈なミドルシュートを決めて同点。しかし、その5分後、ブラジルはロビーニョの左からのクロスをゴール前中央でロナウジーニョが蹴り込んで勝ち越した。
 ところが、後半に入るとブラジル選手の動きがガックリ落ちる(引き分けでも準決勝進出が決まるから、気を抜いた面もあった)。
ロビーニョらが単発で何度か決定機を作って追加点をあげるチャンスがあったが、決めきれない。逆に後半43分、ゴール前正面やや右側で得たFKを中村がゴール右ポストに当て、リバウンドを大黒が蹴り込んで追いついた。さらに、ロスタイムに右サイドからのクロスを大黒がフリーでヘディング・シュートを放ち、ブラジルのGKマルコスが辛うじてパンチングで逃げる場面があった。
 結局、試合は2対2の引き分けに終わり、ブラジルと日本がグループリーグの成績を共に1勝1分1敗で終えたが、得失点差で上回るブラジルがグループ2位となって準決勝に進み、日本はグループ3位となって敗退した。
 日本は大いに健闘した。FIFA(国際サッカー連盟)開催の公式大会で王者ブラジルと点を取り合って引き分けたことは、選手たちにとって大きな自信となったことだろう。
 ただし、課題も少ないない。中盤の守備が甘く、ロナウジーニョ、カカ、ロビーニョらをフリーにしてしまう場面が再三あった。
 日本国内では「決定力不足」が最大の課題と考えられているようだが、それ以前の問題として、世界トップクラスの選手に自由にプレーさせて失点を重ねてしまったら、その時点で試合が壊れてしまう。
 選手の個人迫ヘもまだまだ低い。つまらないパスミスや判断ミスがたくさんあった。
 ブラジルは、ロナウジーニョ、カカ、アドリアーノらの主力がシーズン終了直後で疲れていて、中2日の試合が続くと45分くらいしかもたない(この点、ヨーロッパ組も所属チームでフル出場している選手がほとんどおらず、国内組はシーズン半ばでコンディションがいい日本とは条件が全くちがっていた)。
 今回のコンフェデ杯におけるブラジルの目的は、左右サイドバックなどいくつかのポジションの控え選手を探すことと来年のワールドカップ開催地であるドイツに慣れること。
「どうしても勝たなくてはならない大会」とは認識されていないから、モチベーションも高くない。日本戦のブラジルは、ベストのときの60〜70%程度の出来だった。
 ともあれ、準決勝に進出したブラジルは25日に地元ドイツと対戦する。ブラジルにとっては良いテストになるだろう。
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