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ブラジルに外国人観光客を誘致するには(その1)JETROサンパウロ所長、桜井 悌司さんの提言。
JETROサンパウロセンター所長の桜井 悌司さんは、これまでにイタリア他多数の国々での勤務を通じて日本との貿易促進に力を注いでおられますが、この程、任地ブラジルが有り余る観光資源を持ちながら観光立国とは程遠い2002年度のブラジルへの観光客が僅か400万人で世界39位である事に注目し観光立国への諸策を具体例として提唱されておられます。先般ポルトアレグレを訪問された時にも昼食をご一緒した時に熱ぽく語っておられ日本語だけでなくポルトガル語に訳したものも送って頂き既に『私たちの40年!!』ポルトガル語版には掲載させて頂いておりますが、今回サンパウロ新聞でも連載で紹介され始めています。『私たちの40年!!』HPでも送って頂いた日本語版を掲載して置きます。
写真は、ポルトアレグレに来られた時に撮らせて貰った桜井さんです。


ブラジルに外国人観光客を誘致するには

2005年4月
ジェトロ・サンパウロ 桜井悌司

1. はじめに

2004年10月13日号のEXAME誌に、「ブラジルにおける観光、美はたくさん、お金は少し」(TURISMO NO BRASIL, MUITA BELEZA E POUCO DINHEIRO)というタイトルの特集号が発行された。本文では、「いかにもっと多くのの観光客をブラジルに誘致するか」(COMO ATRAIR MAIS TURISTAS AO BRASIL)というタイトルになっており、2002年の観光客は、400万人で、世界第39位と低迷していること、観光誘致においてブラジルが学ぶべき国の例として、南アフリカ共和国(年間650万人の外国人観光客、以下同じ)、オーストラリア(490万人)、シンガポール(610万人)、ドウバイ首長国(470万人)、メキシコ(1,970万人)、タイ(970万人)、をあげている。ブラジルの観光を考える上で興味深い記事であった。

 確かにブラジルの観光資産のポテンシャリテイから見ると、年間400万人で世界ランキング第39位は何としても低調すぎる。では、何故そうなのか言うと、やはり一番に来るのが、政府の観光誘致政策が助ェに機狽オていないからであろうと思われる。2004年4月に、「ブラジルに外国資本をいかに誘致するか」というところでもふれたが、外資誘致政策と同じく、ブラジルは過去において、組織的、計画的、中長期的に外国人観光誘致政策を展開してこなかったのであろう。少なくとも外人観光客の誘致に成功している前述の国々と比較すれば、そう言えるのではないか。

このレポートの目的は、1外国人として、どのようにすればブラジルに外国人観光客を誘致できるかにつき考えてみることにある。筆者は、ブラジルに赴任以来、1年5ヶ月しかたたないが、それでもブラジルの15州と8世界遺産を回った他、世界の65か国、世界遺産130箇所を訪れている。本レポートは、これらの経験に基づき執筆したものである。助ェなデータが揃わず必ずしも系統的ではないし、アカデミックなものでもないということを最初にお断りしておきたい。また、ここに書かれた内容は、筆者の個人的意見である。

2.観光誘致に成功している国々

 今、世界の観光客誘致ランキングをみてみよう。2002年、2003年のWTO(世界観光機香jの国別ランキングによると、下記のようになっている。

浮P 外国人観光客誘致数 (単位;100万人)
国  名 2002年 2003年 伸び率%
フランス 77.0 75.0 −2.6
スペイン 52.3 52.6 0.3
米国 41.9 40,4 −3.6
イタリア 39.8 39.6 −0.5
中国 36.8 33.0 −10.3
英国 24.2 24.8 2.6
オーストリア 18.6 19.1 2.6
メキシコ 19.7 18.7 −4.9
ドイツ 18.0 18.4 2.4
カナダ 20.1 17.5 −12.7
                               (出所)WTO
浮Q 外国人観光による外貨収入(単位:10億ドル)
国  名 2002年 2003年 伸び率
米国 66.5 65.1 −2.2
スペイン 33.6 41.7 24.1
フランス 32.6 36.6 13.2
イタリア 26.9 31.3 16.2
ドイツ 19.2 23.0 20.0
英国 19.6 19.4 10.5
中国 20.4 17.4 −14.6
オーストリア 11.2 13.6 21.0
トルコ 11.9 13.2 10.9
ギリシャ 9.7 10.7 9.9
                               (出所)WTO
2002年のベスト20の国をみると、11位、香港、12位、ハンガリー、13位、ギリシャ、14位、ポーランド、15位マレーシア、16位、トルコ、17位、ポルトガル、18位、タイ、19位、スイス、20位、オランダと続いている。これら20カ国を地域別にみると、欧州が12カ国、アジアが3カ国、1地域、北米が2カ国、ラテンアメリカ
1カ国、中東、1カ国となっている。

 欧州諸国は、伝統的に観光誘致に熱心であるが、ハンガリー、ポーランドなどの旧東欧が上位に入っていることは、注目に値する。また、アジアでは、中国やタイは、歴史が古く、観光資源に恵まれているので上位にランクされるのは当然であるが、香港やマレ−シアが大いに健闘しているのは興味深い。

では、これらの諸国が何故観光誘致に成功しているかをみると、まず第1に考えられるのは、いずれも観光誘致の重要性を助ェに認識していることであろう。観光産業を盛んにすれば、外貨が流入するし、観光業、ホテル業、レストラン業等で大幅な雇用が生まれる。また観光に伴うギフト、スーベニアなどの生産も増大する。第2は、これらの国々は、観光の重要性を認識するのみならず、効果的な誘致策を策定し、実行に移している。観光業に従事する人材育成、インフラの整備等国内の受け入れ態勢をしっかり整備していることである。第3は、助ェな観光資源をもっていることがあげられる。

3.何故人々は、外国に出かけるのか

外国旅行の楽しみについて考えてみよう。外国に行けば、自分達の国と異なることに遭遇する。非日常的な世界を体験できるのである。大きく分類すると下記のようになろう。
1)見る     自然、文化遺産等
2)鑑賞する   オペラ、テアトロ、音楽(シンフォニー、ジャズ、ロック等)
         美術館・博物館、サッカー等スポーツ観戦等
3)食べる    郷土料理、エスニック料理等
4)買う     おみやげ、民芸品、ブランド等
5)体験する、触れる、参加する  エコ・ツーリズム、アグリ・ツーリスム、その地の人々との交流、ホスピタリティ
6)保養する、休養する

 これらの5点から判断すると、トップ10にランクされている国々は、食べる点では、合格点をつけられない国がいくつかあるが、総合点で合格点と言えよう。

では、ブラジルにこれらの5点を当てはめてみよう。

1) 見る
ブラジルには、現在UNESCOに登録されている世界遺産は、17箇所ある。このことは、一部の観光産業従事者以外の人々は、ブラジル人、外国人を問わず、殆ど知らない。このことだけでも、ブラジルが、世界に観光資源をしっかり広報していないことがわかる。UNESCO世界遺産を含めたブラジルの観光資源を大きく独断で分類すると下記のようになろう。
@ 絶対的に知名度が高く、行ってみると必ず感激し、他の人々に語りたくなる観光地
これらは、ブラジルが世界に誇りうる観光資源である
「例」アマゾン、パンタナル、イグアス、リオ・デ・ジャネイロ
A ヨーロッパの影響を受けた植民地都市
これらは、素晴らしい観光地であるが、ヨーロッパの文化遺産を見慣れた人からみるとそれほど驚かないであろう。ポルトガル人、フランス人、オランダ人がそれぞれどのような都市をつくったかという面からは大いに関心を持つ人がいるかもしれないが、旅慣れた外人観光客は必ずしも感動するわけではない。
「例」サルバドル、オウロ・プレット、オリンダ、ボン・ジェスス・デ・コンゴ−ニャス、サンルイス歴史地区、ゴイアス歴史地区、デイアマンティ−ナ歴史地区等
B すばらしい観光資源であるが、まだ世界的にそれほど知られていないところ
「例」カピバラ山地国立公園、デイスカヴァリー・コースト大西洋森林保護地区郡、サウス・イースト森林保護地区郡、セラード保護地区・ヴェアデイロス平原国立公園とエマス国立公園、ブラジルの太西洋諸島・フェルナンド・デ・ノローニャとロ環礁保護地区郡等
  C ビジネス都市  サンパウロ
    エキサイテイングなコスモポリタン都市、見本市等ビジネスの中心地
D 人工都市    ブラジリア
一度は行ってみたい都市
E 東北ブラジルのトロピカル・ビーチ
バイヤ州からペルナンブコ州、セアラー州、マラニョン州にかけての4000キロメートル以上にわたる海岸線
F その他の都市

  以上の観光資源からみると、ブラジルは、総合的に観光資源に恵まれている。したがって、しかるべき観光誘致政策をとれば、もっともっと外国人観光客を呼び寄せることができよう。しかし、それには、大いなる努力が必要であるが、その点については、後述する。

2) 鑑賞する
 鑑賞の対象となるのは、大別すると次の3つになろう。
@ 音楽、オペラ、バレー, テアトロ等と芸箔Iなもの
A サッカー, バレーボール、F1等スポーツ観戦
B 博物館、美術館等鑑賞

@ 音楽については、例えば、サンパウロの場合、TEATRO MUNICIPALやSALA SAO PAULOという立派な劇場があるし、全体で85のテアトロがあると言う。リオにもマナウスにもベレンにも世界で誇れるような劇場がある。サンパウロでオペラやコンサートを鑑賞したが、なかなかのものであるし、料金も極めてリーゾナブルである。しかし、日曜日を除くと21;00というような遅い時間から始まる。日頃治安の問題に頭を痛めている外国人にはなかなか行きずらいし、チケットの購入の方法がわからない。どこか1箇所で一手に販売してくれるところがあれば、すばらしいがそんなところもない。筆者は、20%の手数料を払ってticketmasterで購入するが、ごく一部のチケットをカバーしているに過ぎない。事前に当該劇場に行って購入するか,当日直接劇場で購入するという方法があるが、総じて劇場は、治安の悪いところに位置している。コンサート等は、当然ながらブラジル人のためにあるので、外国人がコメントする必要を認めないというのであれば、それまでだが、自国の観光客にブラジルやサンパウロの魅力を訴えたいと考えている外国人在住者すら見に行けないとすれば、やはり問題であろう。

A サッカー, バレーボール、F1等スポーツ観戦
筆者は、サッカーが大好きである。ブラジルに来てからサッカーを見物することを楽しみにしていた。しかし、1年5ヶ月たつのに、まだ5回しか見ていない。ミラノでは、ACミランやインテルのシ−ズン・チケットを購入し、息子と一緒に良く見学した。ミラノでは、メインスタンドだと190ドル,その反対のスタンドであれば、その半分くらいの金額である。しかし、サンパウロでは、一番良い席でも40〜50レアルである。何と助ェの一以下なのである。しかし、ここでもチケットがスタジアムに行かないと購入できない。平日のサッカーの試合は、ノベラとの関係か、始まるのが21;00と治安を考えれば、外国人にとって禁止的な時間である。2004年10月のF1ブラジル・グランプリを見学する機会があった。97年にイタリア・グランプリを見る機会があったが、その時は,ルールもわからないし、モンッアのサーキット場は,ごく一部しか見えないため、何が起こっているのか全くわからなかった。しかしブラジル・グランプリ会場のINTERLAGOSのサーキットは、ほとんどが見渡せるすばらしい会場である。おりしも、自動車ショウがANHEMBIで開催されており、相乗効果満点であった。スポンサー企業には広報する必要がないが、観光客にはもっともっとPRすべきであろう。

  B博物館・美術館鑑賞
    サンパウロに赴任以来、いろいろな博物館、美術館、文化センターを20以上見学した。その中で実際素晴らしいと思ったのは、MASPとPINACOTECAだけである。ブラジルは大国であり、もっと博物館を充実させるようもっと努力を払うべきである。ブラジルは、移民によって成り立っている国でもあるので、連邦政府や州政府は、もっと立派な移民博物館をつくるべきであろう。サンパウロの今の移民博物館の展示内容の充実が望まれる。

3) 食べる
ブラジルには、ありとあらゆる食べ物がある。一説によるとサンパウロだけでも13,000のレストランがあり、日本レストランだけでも600軒あると言われている。
牛肉、鶏肉、豚肉、豊富な野菜や果物も大いに魅力である。イタリアや日本と比較すると味は、それほどではないが、価格が極めてリーゾナブルなので、助ェすぎるほど競争力がある。

4)買う
  旅行の楽しみの1つは、訪問先で何らかのギフトやスーベニアを購入することである。例えば、私が、日本に帰る時、日本の友人に持参するブラジルみやげと言えば、プロポリス、アガリクス、各種石鹸といったところである。勿論、ブラジルには、世界に冠たる宝石、貴石、半貴石やピュ−ター、コーヒー、ガラナ等がある。また、Tシャツ、水着、靴・履物等もある。さらに地方の民芸品の中には、オリジナリテイ溢れるものが多い。しかし、ブラジルのNORDESTEに行っていつも思うのは、陶器や土器の人形や壷の類が非常に大きなサイズであることである。観光客があんな大きい物を実際購入しても、一体どのようにして運ぶのであろうかと考えてしまう。民芸品の類は、もっと小さいもので、品質の良いものが望まれる。

5) 体験する、触れる、参加する
この分野でもブラジルは大いに競争力がある。アマゾンやパンタナルでの体験や釣り、サンバやカーニヴァル、ブラジル人のホスピタリティは世界でも超一流である。

6) 保養する、休養する
白い砂浜、緑の椰子の群生、青い空と海、透明な明るい日ざし一杯のトロピカル・ビーチは、ヨーロッパの寒い冬から逃げ出すにはおあつらえ向きである。80年代の半ば以降少しずつ開発され、今や欧州諸国からの定期、不定期便が就航するようになった。今後の発展が大いに期待できる。

以上の点をみると、やはりブラジルは、観光面で大いに競争力があると言えよう。

4.観光振興計画を立案するに当たって

観光振興計画をたてるにあたって、重要な点は、下記の3点であろう。

1) 自国の観光資源の強みと弱みの分析
これは上記のような点を詳細に分析することである。

2) 外国人観光客の特性の分析
外国人観光客も、国内観光客と同じくいろいろなタイプがある。
@ できるだけ多く観光地を見て歩きたいというタイプ
文化・自然見学重点型
A 1箇所に留まってゆっくり過ごし、休みたいというタイプ
長期滞在レジャー型
B 特定の目的を持ってやってくるタイプ(エコ・ツーリズム、フィッシング、音楽鑑賞ツアー、サッカー見物ツアー、美術鑑賞ツアー等)
特定趣味追求型

    前述EXAME誌には、EMBRATURの実施した外人観光客に対して実施したアンケートの内容の紹介がある。以下その内容をみてみよう。これらの調査も今後の計画策定に貴重な情報を提供してくれる。
・ 外人観光客の49%が年齢28歳から45歳
・ 外人観光客の70%が高等教育を受けている
・ 外人観光客の平均年収は、年収30,600ドル
・ レジャーを目的とするのが54%
・ 平均滞在日数は、13日で一日当たりの支出は、平均88ドル
・ 66%が友人や親戚に影響されて訪問している
・ 67%はリピーター
・ 97%がまたブラジル訪問を希望している

 ブラジルを訪問する外人観光客が、悪いと思っている点は、
  第1位  交通標識       10.3%
  第2位  公共の場の清潔さ   10.1%
  第3位  公共の治安       9.3%
  第4位  コミュニケーション   8.6%
  第5位  都市交通        7.9%
  第6位  タクシー        5.0%
  第7位  夜の娯楽        3.4%
 以上の点も計画策定に当たっては、考慮に入れておく必要がある。

3) ターゲットとする国の分析
@ 所得水準
A 海外旅行の実態の分析(どこに、どれくらいの人が行き、どのようなツアーを好むのか等)



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