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【ブラジル人って何だ?】 三菱商事南米総支配人 工藤 章さんの寄稿
世界を股に東奔西走したおられる三菱商事南米総支配人(前ブラジル日本商工会議所会頭)の工藤さんからのBATEPAPOの仲間へのお便りに『ご無沙汰しておりますが、中南米の国々を回っていると、ブラジルへの期待度が非常に高いことを実感します。スキャンダルで揺れているルラ政権の立ち直りを切に祈ります。美談やピアーダではありませんが、小生の経験談を添付致します。2005年7月10日』とのメールと共に【ブラジル人って何だ?】という小文を受け取りました。寄稿集への転載許可をお願いしたところ『拙文の転載は気恥ずかしい気がしますがOKです。』とのご返事と共に近影を送って下さいました。
赤嶺さんのコメントも一緒に収録させて頂いております。


1998年6月にチリのサンチアゴからリオ・デ・ジャネイロに移動して未だ間もない頃でした。真面目で勤勉な国民と、砂漠、アンデスと氷河の美しい国、しかし何処か面白みの無い国から異動したこともあり、毎日が新鮮でもあり戸惑いも多い日々を過ごしていました。

ブラジリアに業務出張して午後のリオ・デ・ジャネイロへの帰りの便でした。ブラジルでの仕事のやり方も不慣れながら今回の業務も大過なく完了したこともあり、離陸後心地よい眠りに入って大分経った時でした。
バサッと大きな音が機内に響き渡り亘りました。ビクッとして目を覚ますと目の前に酸素マスクがブラブラ揺れています。寝ぼけ眼で周りを見渡すと全席に酸素マスクが降りておりました。更に思考が回復するまで乗客の動きを観察していると、マスクを手にとってどうしようかと思案している人、マスクを素早く手にとって口に当てている人、態度を決めかねてキョロキョロしている人、そのうちにマスクを口に当てる人が増えて来ました。すぐ横の人もそうするのを見て小生もマスクを口に当て、チョロチョロ出ている空気を吸い始めました。

スチュワーデスがコックピットにすっ飛んでいったので、結局全員が酸素マスクを口にした儘の状態で、事態の成り行きをじっと見る形になりました。そのスチュワーデスが戻って来ても機内を行ったり来たりするだけで、肝心のアナウンスも無いまま暫く時間が過ぎていきました。スチュワーデスがマスク無しで動いているのを見て、マスクを恐る恐る口から外す人が多くなり、結局全員が何だかうろたえて必要の無いことをして跋が悪いと言った気持ちでマスクを外しました。
暫くすると着陸の態勢に入るとのアナウンスがあり、周りの乗客もマスクがブラブラ揺れるこのうっとおしい飛行機が無事に着陸するのを静かに待ちました。着陸の時は大変でした。ブレーキが架かる度にマスクが大きく揺れるので首をあちこちに回さねばならずひと苦労でした。

兎も角、無事に着いたということで皆の顔から安堵の笑みがこぼれました。
そして、「本日は、ブラジルが誇るバスピをお選びになり有難うございました。またのご搭乗をお待ちしております。」とのマニュアル棒読みのアナウンスがポツンとありました。一瞬静まり返った機内。その後に猛烈な拍手と爆笑が沸き起こりました。

ブラジル人の皆に合わせた拍手をした自分だが、その当時は誰かを掴まえて「何で拍手するの、笑うの」と聞かなかったことを残念に思っていました。しかし、今考えるとそんな質問しなくて良かった、更に「バスピのサービスに対して怒りを感じないのか」なんて愚問を発しなくて良かったと、ブラキチの一人が時々この経験を思い出しながらほくそ笑んでいます。


工藤さんの【ブラジル人って何だ?】に対するコメントがサンパウロにお住みの赤嶺さんから届いていますのでこれも寄稿集に収録して置く事にしました。
 <着陸の安堵感> 赤嶺さんのbatepapoへの書込み。
 
 工藤さん、その後、Todo Bem?。ちょっと所用で1週間ばかり出かけておりまして、貴信を目にするのが遅れてしまいました。小生もマナウスの山岸さんと同様、これがブラジル(人)らしいさりげない、しかし、立派に通用する美談の一つだと思いました。昔、調子が良かった頃、Varigに乗ってよく日本に行く途中で、経由地のロスとか目的地の成田に何事もなく着陸した時など、ブラジル人乗客の集団からから期せずして、まず三々五々にパチパチと軽く手を叩く音が聞こえ、それがやがて機内に大きな拍手となって響き渡るのを体験したことがあります。何で拍手するのか、しなければならないのか、人間の安全性、無事を求めようとする本箔Iなものを理屈で考えようとするのは、野暮なことで、やっと地に足の着く所へ運んで貰ったという安心感とささやかな(神や乗務員に対する)感謝の印(しるし)だと言う風に受け取りました。

 あるいは、運動神経が人一倍発達したブラジル人たちは、着陸技術の上手下手さ加減まで何となく判るらしく、いわゆるャtトランディングですと、拍手の鳴り方も間髪いれずに、大きく響くような気がしたこともあります。


赤嶺 さん
 <着陸時の安堵感>同じような体験を良く経験しております。一度自分が先頭を切って拍手して見ようかとも思うのですが、やはり工藤さんの様に危ない思いをした後でないと期せずして皆が強調すると言った事態にはならないでしょうね。
赤嶺さんのコメントを工藤さんの寄稿集の後に一緒に収録させて頂きましたので事後承諾とさせて下さい。





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