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ブラジルで損せぬ法  連載 206/207 11月号/12月号  山 下 晃 明
山下さんのブラジルで損せぬ法2004年11月と12月号(206&207)を掲載します。サボっている訳ではないのですがいつでも出来ると思うとつい後回しになってしまいます。御免なさい。『私たちの40年!!』MLではきっちり皆さんに送っているのですが。内容に季節要因もありますが、山下さんの20年近く書き続けているロングランのコラムは、時代を超越した話題と何時読んでも新鮮さを感じさせる論法で少々遅れての掲載も問題はないと判断します。
写真は、久し振りにリオのレーメ海岸にある海鮮料理MARIUSで歓談しながら撮らせて頂いた写真です。


山下晃明のブラジルで損せぬ法(206)2004年11月号
豪華になったブラジルの自動車ショー
 サンパウロのサロン・デ・アウトモーベルへ行った。今年は大変豪華で、従来の内国見本市から国際見本市に変った感がある。美女も特別多かった。同じ時期にF1レースとボート・ショーが重なったことも幸いしているがサンパウロのホテルが久しぶりにいっぱいになった。 
 オープニングにはルーラ大統領も出席する力の入れようで、日本製の玩具を拡大したような奇抜なデザインのトヨタのコンセプトカーやハイブリッドのプリウスを始めとする世界各社の新車や、ネルャ刀Eピケやアイルトン・セナの載っていた車も展示された。
 日本のトヨタ自動車は2日付けの日経社説によると、2004年9月中間期の連結決算は、営業利益は過去最高、販売台数も6期連続で過去最高を更新。年間50万から60万台のペースで増加し、今期は連結でフォード・モーターを抜き世界2位の座を確実にし、2年後には首位のゼネラル・モーターズを追い越す勢いとのことだ。
 評論家的に分析させていただくと、F1開催と重なったこともあるが、もともとブラジルの自動車業界は工業生産では対前年比率で23%と成長している。中でもTOYOTA/CorollaとHONDA/Civic/Fitなどの乗用車が、国内で大変人気で生産も伸びており、さらに両社共にF1に参加しており、宣伝に絶好のチャンスであった。
 HONDAのオートバイはマナウス基地から米州に輸出が好調でオートバイも別にブースを作り全種展示。ゴーンのNISSANも新乗用車を輸入して展示を行い、期せずして日本の全メーカーが事前に垂オ合わせたごとく力を入れた揃い踏みであった。
 F1の方は、1位はBMWに乗ったコロンビア人のモントーヤ、2位はマクラーレンのフィンランド人のライコネン、3位はフェラーリのブラジル人のバリケロ。日本車の方はHONDAの佐藤たくまが6位、TOYOTAはイタリヤ人のツルーリ、ブラジル人のゾンタと2台参加したが上位には入らなかった。
 これらの経済波及効果はみのがせない。ホテルもそうだが、見本市やF1のの資材を運んだ運送関連、見本市の会場手配の業者、車を回転させる回転台を売り込んだ業者や、デモガールなどの関係者や浮ノ出ない裏方さんも合わせると、大変な産業になる。景気は回復に寄与することまちがいなし。この機会に自動車工業以外でも自動車ショーとF1にデイーラーを招待したメーカーも多く、かなりのプロモーションになった。
 ブラジルの自動車業界高景気の原因
 このような見解を述べるとしかられるかもしれないが、今のブラジルの自動車景気の原因は実はアルゼンチンなのである。1998年までアルゼンチンは通貨のペモ対ドル1:1に保ち、部品輸入組み立て製品輸出産業を強化した。小型乗用車はブラジルの市価の半値で、製品はどんどんブラジルに流れ込んだ。結果ブラジルの貿易収支を大赤字にして1999年1月ついにブラジルは為替を対ドル1から2.5に切り下げを余技なくされた。アルゼンチンの輸出にも大打撃を与え、ペモフ1:1経済政策を破壊する原因ともなった。したがって今起きているアルゼンチンのデフォルトもブラジルが原因といえないこともない。アルゼンチンがどんどん借金をして安くブラジルに物を輸出した結果である。デフォルトになってからはアルゼンチンへは当然外貨は入らないし、輸出するほど生産ができなくなったから、ブラジルから輸入する。かくてブラジルの自動車業界、家電業界は現在輸出力がついて大儲けなのである。こうと知ればブラジルはアルゼンチンの方に足を向けて寝られまい。アルゼンチンが先日発浮オた非常に一方的な対民間債務の75%を踏み倒した後の残高30-60%削減30-40年払いの手形に交換するの、むしの良い提案にも理解を示さねばなるまい。
 アルゼンチンのデフォルトや外債が問題だというが、いつかは解決するわけで、その後に外資が入りはじめると、輸出のための部品輸入が可狽ノなる。このときはブラジルの輸出工業は打撃を被ることになる。1998年ごろ小型アルゼンチン乗用車が半値、スーパーの牛乳までアルゼンチン製になったのを、よもやお忘れではあるまい。
 この2国の工業製品輸出は両方同時に見て判断する必要がある。進出メーカーも一人の社長が両国を見ることをおすすめする。すなわち同じマーケット内で一方が伸びれば他方がへっこむのである。そのときの為替や政策の様子を見ながらあちらで製造したり、こちらで製造したり臨機応変に切り替えれば良いのである。
 ブラジルの自動車産業
 サンパウロのサンベルナードで始まったブラジルの自動車産業がメ−カー別にどこに工場があるのかみると現在は6州で展開している。この裾野の広い産業は鉄板からゴム、電線、電機、電球、電装品、ガラス、プラスチック、塗装と各種産業が参加する上に巨大な燃料供給産業もあり、あらゆる産業に貢献するといえる。電子関連でもラジオからCDプレヤーさらに電子化が進めば半導体、カーナビなど自動車関連ハイテク電子工業もブラジルはこれからが本番だろう。
ブラジルの自動車工場数(州別)
  SP RJ MG BA PR RS
FIAT   2        
FORD 2   1      
GM 3          
HONDA 1          
PEUGEOT     2      
RENAULT         1  
NISSAN         1  
TOYOTA 2          
VM 3 1 1      
DAIMLER*         1  
*DAIMLER/CHRYSLER/BMW
 メキシコ、アルゼンチンと3国で
 メルコスルをにらんだ南部の州での生産も良いが、メルコスルはなにしろ市場が小さい。もっと先を読んでブラジル、アルゼンチン、メキシコに拠点を持って、2国の官民共同で輸送や通関方法を改善し、この3国で分担開発製造でも始めると米国、EU、アジアにも輸出する世界市場戦略へ展開の可柏ォがある。
 そう思って見ると、さすが欧米系、VW、GM、FORD、FIATなど皆さん3国に工場がある。それからルノーと手を組んだニッサンも10/27付VALOR紙によれば乗用車のメキシコから乗用車Sentraの輸入とブラジルからメキシコへのFrontierの輸出が開始されるとのことで、世界戦略展開の可柏ォがあるだろう。
  ブラジル アルゼンチン メキシコ
FIAT ○ ○ ○
FORD ○ ○ ○
GM ○ ○ ○
HONDA ○ ○  
PEUGEOT ○ ○  
RENAULT ○ ○  
NISSAN ○    
TOYOTA ○ ○  
VM ○ ○ ○
DAIMLER* ○ ○ ○
*DAIMLER/CHRYSLER/BMW
出所:ANFAVEA/ADEFA/AMIA
 原油高騰はブラジルに益するのでは
 現下の状況として原油価格の高騰はブラジルにとって逆風にはならない。ガャ潟唐ェ値上がりすればアルコール燃料や天然ガス燃料が見直される。石油は早ければ来年にも自給率が100%に達する見通しである。エコロジー問題で廃棄ガスが問題になればブラジルのアルコール車が注目される。
 新時代の低燃費新燃料、アルコールや太陽電池、その他の開発実験市場にも向いている。
 謎多きテロリスト
 米国の大統領選挙間際になってビン・ラデインが自分が9.11の責任者だったと警告メッセージを出した。恐怖のメッセージが、はたして米国民のテロ撲滅運動を弱める効果があっただろうか、「こんな男を何時までも威張らせて良いのか」と西部劇のグリンゴ達は悪を徹底的にやっつける思想しかないのである。なぜこの期にビン・ラデインがブッシュ再選を応援になるような発言をしたか歴史の謎であろう。
 テロ問題も極端にひどくなると、従来方式では解決できないことは確かである。既にイラクは引くも地獄、押すも地獄の様相である。日本の野党方式の何もしないという選択技もあるが、疫病や公害などをもし何もしなければ人類は滅亡するだろう。テロもその一種だ。中国のインフルエンザ・ビ−ルスが昨年より熱に強くなったと報道されたが世界の出来事は自然現象を含め油断できない。
 今回の大統領選挙で主要メデイアがブッシュ再選の反対運動したが効果なかった。我々は世界の動きをメデイアを通じて知るが、メデイアの編集者の思想が入りすぎる嫌いがある。問題の国の電柱にすべて監視カメラをつけてインターネットで世界中、誰でも市内が見るようにしてはどうだろう。状況を客観的に知るために報道カメラの取らない角度を自由に見たいのである。

山下晃明のブラジルで損せぬ法(207)2004年12月号
日本からの価値ある最新情報
 セブン・イレブンが書籍をインターネットで注文すれば、最寄りの店で到着払いで受け取れて「送料ゼロ」と宣伝をしている。
これまでもインターネットで注文できる書店はアマゾン・コムを始めとしていくつかあったが、宅配便の送料が加算されて書店で買うよりかなり高い買い物になっていた。
 コンビニではすでに売れ筋雑誌を取り扱っているが、これで新刊書もコンビニに客を取られるだろう。
 コンビニはこれまで、街の商店街の八百屋をつぶし、果物屋をつぶし、パン屋をつぶし、肉屋をつぶし、米やをつぶし、雑貨屋や小間物屋をつぶし、酒屋をつぶし、今度は本屋もつぶすことになりそうだ。結局コンビニは個人商店の殆どをつぶしてしまい、昔の商店街にまだ生き残っているのは理髪店、美容店と老舗の菓子店と食堂ぐらいのものか。  
 銀行のATMも銀行へ行くよりコンビニの方が便利になりつつあり、贅沢な銀行のATMブースなど無用の長物になりそうだ。
ローャ唐ェ郵便小包みを取り扱うようになったが、郵便物や宅配便の受渡しもコンビニが受け持つことになる。
 店舗は小さいが全国各地に店数が多く、集荷と配達拠点としてのシステム力を持つコンビニが、消費者一人一人が携帯するセルラーを、注文と連絡端末としたインターネットに結びついて猛威を振るい始めた。
 インターネット時代の寵児
 もう一つ街の職業を淘汰しつつあるグループがある。最近YAHOO、楽天、ライブドアーの3社の社長が、野球の球団の買取りで話題になったが、200億や300億円はいつでもポケットマネーで払えると豪語して注目された。 
 この3社の取り扱い品は、ホ−ムページをのぞいて見るとわかるが、ありとあらゆる商品の販売、中古品売買、骨董品競売、不動産、書籍、音楽記録、映像記録、車輌、家電、株式証券、それ以外にも情報検索や地図路線など情報関連、ゲームや占いなど趣味娯楽、航空券などトラベル、辞書など実用関連、健康などくらしと生活、仲間サークルなどの業界のすべてをインターネットで結んで牛耳る時代に入った。昔は百貨店が一番取り扱い商品が多かったが今では時代遅れになり、対抗するすべもなくダイエーが赤字になるわけである。
 格安航空券も直販開始
 11月初めよりYAHOOが格安航空券のオンライン販売に乗り出すと発普B楽天も年内に開始するとのことである。従来はYAHOOの場合、百数庶ミの格安航空券の情報のみを掲示して客は直接販売会社から購入する必要があったが、YAHOOは世界50社の航空会社の蘭システムに接続し、これからは自分のパャRンかセルラーで空席確認や蘭と購入が可狽ノなる。また航空券は行きと帰りの航空会社が異なっても良いという便利なもの。街の旅行会社をつぶすことになるだろう。
 生産者と流通経路情報
 インターネットとズピードの早いブロードバンドの普及、関連ャtトの開発でこれまで不可狽ニ思われてきた情報がつぎつぎと無償で提供される時代になったが、スーパーの店頭で牛肉の製造者から販売までの流通径路がインターネットで見られるようになった。刻々変化する情報を無料で提供できるインターネットならではの強みである。あらゆる産業活動にかならずインターネットがからみ、限りなくゼロに近い料金でサービスを提供する時代になってきた。
 インターネットの本格的応用の時代
 インターネットの応用サービスはWEBやEMAILの単なるネット通信システムとしてではなく、一人一台所有するセルラー客を高速インターネットで繋いで火がついた感がある。すでに始ったデジタル・テレビも映像や音楽の媒体もすべて巻き込んで、その本格的応用の時代に入っている。
 ただこの業界の進歩は極めて早く、変化はさらに加速されるので、あと数年のうちには、今のインターネット・システムそのものを含め、現在最も優れたシステムへの投資が償却もしないうちに、さらに安くて良いシステムやサービスが出現し、現行の装備がまったく無用になることが考えられる。業界の寵児があっというまに倒産しても誰も驚かないきびしい競争の時代に突入するかもしれない。
 休んでいるWEBを再興させる法
 これからはインターネットの時代になるからとホ−ムページ(HP)を作ってはみたが、消費者が自社のHPを見てくれないので商売には直接結びつからと、何年もそのままに放置している人が多いと思う。
 公開日記帳というか「BLOG」というのが数年前に出来て、この1年ぐらい非常に注目されている。最初は個人的公開日記であったのだが、コマーシャルに使うと直接消費者とコンタクト出来ることを発見した人があって火がついた。
 早く言えば公開日記で誰でも書き込めるが、売りたいものを紹介し相手の反応を見ながら日記の記入を変えていくとYAHOOやGOOGLEなど検索エンジンにも掲載されやすいのがミモナある。簡単に自作可狽フHPの形態で発信して、内容に興味を持った消費者を自分のWEBへクリック一つで導くことが可狽ニなった。
 有名なのはwww.blogger.comで、ブラジルではOGLOBO社がwww.blogger.com.br、日本ではライブドアーのhttp://blog.livedoor.comや楽天のhttp://plaza.rakuten.co.jp/などがある。
 金かけてHPを開設してみたが、商業ベースでは全然機狽オていないと感じている人はBLOGに挑戦してみることをお薦めする。
 好調のブラジル経済
 輸出が好調で工業生産の20%以上を輸出している。輸出業は今年レアル高に悩まされたが輸出は記録的で1-10月で昨年同期の31%も伸びて、本年総生産が5.3%増の卵zと発浮ウれた。為替は安定というかレアル高、国家リスク指数も最低になった。 Selic金利が17.25%と高いのとインフレがIGP指数で10%を超えそうなのを除けばおおむね順調だ。外資に見なおされることを期待しよう。
 中国・韓国・ロシア首脳の訪伯
 チリのAPECの帰途とはいえ、短期間にこれらの国の首脳がブラジルを見たことはブラジルにとって大きなプラスになっただろう。ブラジルは世界食料供給とエタノールなど燃料供給国になるべく、日本やこれらの国に資金協力させて本格的な輸出回廊を整備して次世代に備えるべきである。
 ロシアが食料、地下資源の他にブラジル国内のリオ・バイアのガス・パイプラインに投資する話しがあり、遠いロシアに何のメリットがあるのかと疑う人もいるが、供給に制限のあるエネルギー源は地球上のどこの場所であれ、供給元を確保すればこれを売って自国の近くで何か別の燃料を買うことが出来るのである。日本も例え自国で使わなくともエタノールなどを確保する戦略が必要と思われる。
 年の終りに思う
 始めてのPT政権の各種改革は、最初の意気込みとは程遠く、2年経過しても議会の票決が遅々として進まない。ルーラ大統領は今まで海外旅行をしただけだと言う人もあるが、司法改革は上院を通過し下院の阜・待つことになった。この前世紀的な大変時間のかかる裁判制度をいち早く解決してもらいたいものである。司法改革でカルトリオを廃止する話しもあったが、現状はどこのカルトリオも値上げし拡張しており、先進国にくらべて実に無駄の多いシステムである。
 最近、RADARという輸出入関連企業経営者責任のための企業登録は、期限が過ぎて登録できていない社は輸入通関ができなくなったが、登録には何ヶ月も時間がかかり、早くするためにはそでの下が必要と聞く。単に自社の登録のために、どうしてこんなに時間がかかって金を払わねばならないのか、この伝統的ブラジルの公務員の悪知恵は国の発展を阻害するものである。
最近分厚い本が刊行された。Economia Brasileira Contemporaneaという題だが、ブラジルは1982から22年間政策の失敗の連続で停滞しいるというのだが、筆者もそう思う、韓国も中国も同じ期間にブラジルを抜いて飛躍的に発展したのである。
今議会に停滞している多くの改革案を労働法も含めて懸案事項を全部通してしまって、金利も国際水準に下げ、政府手続きをもっと簡素化し、世界一になった税金率も下げ、過去のブラジル・コストを忘れて前向きに未来の世界食糧供給基地国として、きちんと長期計画を作り、世界の協力を得ながら、一歩一歩実現させるわけにはいかないものかと年の終りに思うのである。



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