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今東光和尚の【南米漫遊記】丸善石油高等工学院の学院だより15号から転載(3)
今 東光和尚の南米漫遊記第3部です。【巨大な新都市ブラジリア】では、ことに面白かったのは、ブラジル。今ブラジルはインフレで困っています。なぜ困っているかというと、何しろ巨大な新し都市をブラジルのど真ん中にこしらえた。またそうゆうことを考えるのが大変な奴ですね。いかに土地がひろいとはいえ、いかに世界中でフルシチョフが独裁であろうと、ケネディがえらかろうと、ワシントンという首府を新しいところへ持っていって建てようということはできない。【大活躍する日本青年】【日本人二世でもつ陸軍】【日本人の雄飛すべき南米】と続く。写真は、最後の極道辻説法の表紙から転載しました。


巨大な新都市ブラジリヤ

 ことに面白かったのはブラジル。いまブラジルはインフレで困っています。なぜ困っているかというと、何しろ巨大な新しい都市をブラジルのど真ん中にこしらえた。またそういうことを考えるのが大変な奴ですね。いかに土地が広いとはいえ、いかに世界中でフルシチョフが独裁であろうと、ケネディがえらかろうと、ワシントンという首府を新しいところへ持っていって建てようということはできない。モスクワをどこかへ移すなんて、これもできない。いわんや、パリなんてことはできやしない。ブラジルだけがリオデジャネイロから千キロ離れたところへやった。それがどのくらい大きいかというと、現在の東京に奥多摩の半分ぐらいを加えたぐらいの、2倍の町なんだ。えらいものをこしらえるね。
 私はその町にいって驚いた。道の向側ににいる人がアリみたいに小さく見える。それを作った人が自動車事故で奥さんを亡くしたので、歩いている人が、自動車にぶつからないようにと作ったもんだから、道たるやものすごくよい道なんです。すごい速力で車は走るんだが、ひこうたってだれも人がいないんだからひきようがない。日本ではひくまいと思っていてもひいてしまうしまうけれども、向こうはひいてやろうと捜さなくてはならないんだ。そのでかい新しい都市をジャンジャンこさえている。だから金が非常にかかるんですね。金がかかるから一首のインフレが起こっているけれども、私は今後百年・二百年・三百年後のブラジリヤを考えると、世界最大のよい市になるんじゃないかと、本当に羨ましいやら、情けないような気がして、その町を見てきました。
大活躍する日本青年

 ところがいまのジョン・ブラウという大統領に私はお目にかかりましたが、この人の2代前クビチェックという大統領がいた。この人の代りに都をこしらえることを計画して、いよいよとりかかった。そして役人は全部家ぐるみ新都へ引っ越せといわれたが、世界で三つの美しい町、古い町だから、だれも動きたくない。ことに新都が野原の真ん中なんだから。みんななかなか動きたくない。
 ところがブラジリアにいの一番に乗り込んで商売した青年がいる。それが日本の青年だった。これは痛快至極な話だ。是非その人に会おうと思った。アマゾンを見るよりはよいね。アマゾンがいかに大なりといえども、地面の上を水がはっているだけだ。これは僕がいったって喜びもしないし、さよならいったって見送りもしない。
 ところがこのブラジリアにいる二人の青年というのは、これは大変です。さからブラジリアに着いたときに、大統領にお目にかかった後で訪ねた。サンパウロで何をしていたのかといいますと、写真屋だ。つまらん顔を写していてはしようがないじゃないかというので、この二人の日本の青年が、写真屋を止めてしまって、ガソリンスタンドをやった。ところがまだだれもいっていない。商売になるかならんか分らないけれども、まあやろうということでやった。
 ところが、それがクビチェック大統領に聞こえまして、大統領がヘリコプターで飛んできた。そしていの一番にガソリンスタンドに降りて、おれのヘリコプターにガソリン積んでくれと。ブラジルの奴らはおれがこれだけいってもなかなか腰を上げないのに、君らはよくきてくれたと。さすがに東洋一の国・日本の青年である。まことに嬉しいというんで、大統領自ら訪問した。それがワーッと新聞に出たというんで、あ奴らはえらいことをやりおったなあと人はいないけれども車は朝から無数にきている。サンパウロ間に道ができたからドンドンと車はきれ目がない。最初ブラジリアを作るときには石の一つまでみんな飛行機で運んだんだそうだ。そうしながらどんどん広い道をつけちゃった。するとトラックもドンドンやってきた。ガソリンスタンドなど人相手じゃないでしょう。車さえくればよい。それでドンドン商売になった。いよいよ相当な建物ができて、新しい遷都のお祭りをやった。そのときは世界各国の外交官や色んな人がみなここへやってきた。この日のガソリンの売り上げがなんべいはじまって以来ない売り上げだった。一日に6万リットル売った。どうです。痛快な話でしょう。まるでうちの油を売ったような話ですね。それからはどんどん売れる一方、つまらない写真を撮っておるより、うんともうかたるのですから。私がいったときでもう数百万ドルもうけておる(百万ドルは3億6千万円)いやになっちゃったね。私なんか原稿書いたって億なんて稼げやしない。丸善のスタンドをブラジリアでやろうと思ったくらいですよ。その人がどんなことをしているか一つ見てやろう。一つ激励もしてやろうといったのですよ。そして英国製の洋服でも着て、パイプくわえていたらおきゅうを据えてやろうと思っていったのですよ。
 いってみて驚いたね。シマのオーバーオールを着て、運動帽を被って二人で走り回っている。黒人を何十人と使って一生懸命指図しながら、まっくろになって働いている。わたしはこの姿を見て感心したなあ。日本人はこれだからほめられる。本当にわが国民の、民族の誇りというものを、この二人に感じてね。写真写して握手して別れてきた。その中の一人は、二世で私のことを知らんで、一人は私のことを知っていてよろこんで抱きついてきたんだがね。
 向こうは平気だが、油だらけで抱きついてくるんだからしようがない。・・・・・こっちもやぁやぁとかなんとかやりましたが、実際両方とも感激してね。両方とも涙が出た。日本人が、本当に一人もいない新都に乗りこんでいって、一日6万リットルの油を売る。まさにこれ男子の本懐だ。そういうことは、ぜひ諸君に聞いていただきたい一つの話です。
日本人二世でもつ陸軍

 もう一つ、これはぜひ聞いていただきたい。いまの大統領ジョン・ブラウの前のジャニオ・パドロスという人が、7ヶ月大統領の職にある間に陸海空のクーデターによって、大統領のイスをすべり落ちて逃げちゃった。アルゼンチンが仮想敵国だから、アルゼンチンとの国境近くの南と北に配置してある瑠璃区群はブラジルの最精鋭だ。この連中がジャニオは少し赤い奴だから追い払えとブラジリアに向って進軍を開始した。それを聞くとジャニオは官邸から飛行機で逃げ出した。そんないブラジルの軍隊は強いのかと聞くと、国境に配置された軍隊は最精鋭で強いんだ、町にいるのとは比較になりません。その強いわけは、この軍隊を構成している大部分は日本の二世なんです。士官といい兵隊といい、みな日本の二世なんです。また日本人が入るというと、軍隊にピーンと筋金が入る。これを聞くと、何と日本は武の国だと、その武というものはいわゆる健全一如で、やはり裸で腹をこさえ、腕におぼえを持つ。そうなるとハワイの二世部隊、これはこの前の大戦のとき、イタリアの戦線の勲功によってハワイが一州になった。ブラジルにおいてもジャニオ、パドロスを7ヶ月でおっ放り出したのは日本の二世のまじった国境の精鋭部隊だったのです。そのくらい日本人というものは、ブラジルでは強い、ですからよく認識して日本人を迎えておる。
日本人の雄飛すべき南米

 うちの社はパナマとは特別な関係がある。社の人達もずいぶんあちらへ行きます。諸君も学校を巣立って他日南米で活動するときがあると思うのです。そのときにああ先生が、この辺を歩き回って日本人は中南米に雄飛しなければいけないと、いまの左翼の馬鹿な奴らはロシアとか、中国とか、何もいやがっている奴と貿易する必要はない。南米へいけばみんな喜んで歓迎している。何もいやがっているところへ、あの中華料理を食いにのこのこ行く必要はない。日本にいてもワンタンぐらいは食えるのだから、馬鹿な野郎ですよ。そんな奴相手にする必要はない。日本人だったら中南米へ雄飛すればよい。きてくれ、だいじにいたしましょうというところで働けばよい。
 南米は地下資源なんていうのはほとんどまだ手がついていない。ブラジルの鉄鉱というのは、すばらしいものがる。ペルーの銅山は銅鉱は世界第3位を確保している。ですからこれは日本人がやらなくちゃいけない。今後どんなのが出てくるかわからない。
 そういう意味で、中南米は本当に日本人のいくべきところ、旗をあげるべきところという気がして帰ってきた。ところがわが社はそういう意味でパナマと特別の契約をしている間柄のところです。つまり因縁ができている。コネができている。だから諸君は内地で一生懸命働いて他日中南米に行ったときに、パナマならパナマ勤務になれば、一生懸命お金をためて、休暇のときには飛行機でアルゼンチンやブラジルなどに飛んで行って見てそしてまた会社のために大いに雄飛する基礎をこしらえる。あるいは事実雄飛するのも男子の本懐かも知れない。それで大いな夢をもって勉強していただきたいと思うのであります。
      (文責・編集部)


<サンパウロで邦人を前に>


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