エタノール工場Usina São João(8/29)見学会に参加して。JETROサンパウロ事務所長 渡邉裕司
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掲題のエタノール工場見学概要報告をJETROサンパウロの渡邉裕司事務所長がMLのBATE-PAPOに送っておられましたのでご本人の了解を得て掲載させて頂きますが、渡邉所長からは、「ジェトロは役所ではありません、納税者のために政府が国民の税金を使って創った組織(特別な法律で法人格を与え、職員の法的ステタスは全くの民間、公務員ではありません)です。秘密は一切なく、得た情報は納税者に平等に開示されますので、是非、利用してください。」との転載快諾と共にお写真も送って頂きました。写真は、渡邉さんより送って頂いた砂糖黍畑の収穫風景です。有難う御座います。 |
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エタノール工場見学概要報告 JETRO サンパウロ事務所長 渡邉裕司
エタノール工場Usina São João(8/29)見学会
(Usina São João-Açúcar e Álcool S.A.)2006年8月30日 渡邉
T.プログラム
07:40 サンパウロ発(バス)、Araras市へ
10:15 到着・講堂で企業CSRビデオ紹介、カフェー、60年記念誌もらう
砂糖きび農場視察〜機械刈入、廃液肥料投入。(14:00 昼食、工場食堂)
15:00 砂糖きび搬入・圧搾、沈殿等精糖工程、発酵・蒸留工程視察
16:00 講堂で製造工程ビデオ説明
16:30 工場発→19:15サンパウロ着
U.工場側応対者等
Sr.Ivan Chaves Rezende(Gerente 人事部長)他
V.基礎知識
<ブラジルのエタノール事情>
@エタノール生産年度サイクル:4月〜5月の1年間(収穫期5月〜10月頃)
A生産量:2005/6年度 1,700万KL→国内消費1,400万KL、輸出300万KL
2014/15年度 4,100万KL→国内消費 2,700万KL、輸出 1,400万KL (卵ェ)
Bきび作付面積: 600万ha〜2005/6年度(将来3倍へ拡大も、6倍まで可煤j
きび作付可薄ハ積:3,000万ha (全農業耕作可薄ハ積:9,000万ha、同耕作面積:6,000ha)
Cエタノール全工場数:313
(注:2006年に19工場が新設、UNICAは2010年までに400工場を卵ェ)
D原料きび生産:エタノール工場の自家生産が70%(30%は委託栽培等)
Eエタノール生産シェアー:サンパウロ州(UNICA)が全国の61%(伯が世界の36%)。
Fきび生産事情:植付後2年で収穫、5〜6回(5〜6年)収穫可煤B生産者農家5万人。
Gエタノール導入状況:1970年代からE100導入。現状E20(E25まで可)、E100。
<日本の事情>
@2005年の対伯エタノール輸入量 32万KL(飲料・医薬用等)。石油業界は2010年に伯等からガャ潟涛Y加剤ETBE製造用に36万KL輸入嵐閨Bガャ潟唐ヨの直接混合は未実施。
A「品確法:揮発油等の品質の確保等に関する法律」改正法(03年8月施行)でE3までガャ潟湯シ接混合可。エネ庁、E10への法改正検討中。ガャ潟棟チ費量6,000KL万/年
B石油業界試算:エタノール直接混合には3,400億円の追加設備投資が必要。
<世界の潮流>
@直接混合。ブラジルへ買付けが集中すれば安定供給に支障
A米国、中国はメイズ、欧州は甜菜/小麦でエタノール生産。砂糖きびが最もコストが安い。
世界の砂糖きび生産可白n域は地球上の北回帰線30N、南回帰線30Sの間。 以上
エタノール工場見学概要報告
2006年8月30日 ジェトロ渡邉
1.企業概要
Ushina São João-Açúcar e Álcool S.A.(Araras市、サンパウロの北170km)は19世紀イタリア移民オルメット・ファミリーが1944年に創業開始。4万haのファゼンダに砂糖きびを栽培、うち80%が自社所有地。サンジョアン製糖・エタノール工場は従業員2,300名。CSRとして環境保全事業、周辺地域の低所得者層子弟教育・救済事業に注力。
ブラジルのエタノル工場約300社中、きび処理量(圧搾迫ヘ)としては14位か15位にランクされる(工場説明)。きびは砂糖製造に70%、エタノールに30%投入。比率は今後、市場の状況で変化する可柏ォはある。
2.現場視察結果の主なポイント
@60トン/h迫ヘ国産収穫機18台所有、24時間(3シフト)稼動、80万レアル/1台。
農地の75%の収穫は機械化、25%は傾斜地で機械化不狽ノつき人力収穫。人力処理は10トン/日(8h)。人力刈入れではきびの枝葉を切落とす作業が必要となり作業効率が5分の1(2トン/日)に落ちる。このため通常、刈入前に焼畑を行い、きびの幹のみを残してから刈るが、環境問題から州政府は焼畑を農地の70%に制限し今後、この比率を更に落としてゆく政策を採っている。
Aきびの品種は20あり、その土地に合った品種が植えつけられる。きびは植付後、2年で収穫可。年1回、この農場では5回(5年)収穫する。
Bきびの収量は平均100トン/ha(170トン/haの場所もある)であるが、収穫期間5年間で年を経るごとに年々、収量がすこしづつ落ちてゆく。
C収穫刈入れ後は窒素分等の化学肥料500kg/ha、精糖工場の廃液(肥料)を投入し、切取った幹からの発芽、生育を待つ。
D最後の5年めの刈入れが終わると、植付けを行う。ここの土地は土壌を休ませるために他の作物を植えたりする必要はない。苗は、きびの幹の芽のある部分を切り取り、それを植えつけるが、一本の幹から8本(苗)くらい取れる。これを地面に刺してゆく。
E収穫期は雨が降らない干天が続くのがいい。干天により茎の糖度が増し、収穫作業が容易だからである。
F環境問題はない:
工場からは(1)きびの滓・バガス(2)精糖工程で出る固体(torta de filtro)(3)発酵蒸留工程で出る廃液、がでる。バガスは100%、自家発電に使用し、(2)、(3)は豊富な養分があるので全量、畑に投入する。これらは窒素、燐酸、カリウムを含み、廃液は100立米/haを撒く。廃液は1Lのエタノール製造に12Lが出る、これをパイプラインで農場に運ぶ。これら工場廃棄物、廃液は一切、河川等に廃棄はせずすべて畑に肥料として投入しているため汚染の問題はない。廃液等は河川に投棄すれば魚は死ぬ。
G搾汁に酵母を加えて発酵させ、蒸留してエタノールを製造する。
3.視察後の印象
4万haという気が遠くなるような広大な農地に5年連続して収穫ができる砂糖きびが植えられ、砂糖、(燃料・飲料用)エチル・アルコールが生産される。この農業潜在力を目の当たりにしてブラジルはほぼ間違いなく21世紀のエネルギー大国になる、との確信に近い印象を持った。原油自給化目前、数年後の天然ガス自給化計画、世界最大のエタノール生産国(世界シェアー36%)を考えれば将来、今の中東にも匹敵する国になり、エネルギーでは覇権国家のひとつに成長する可柏ォは助ェある。
市場はブラジルのこういう点に注目し評価しているはずであり、それを考えれば通貨レアルは今後、市場で更に強い通貨として定着する可柏ォが高い。ブラジルの弱点である「巨
額累積財政赤字(対GDP比50%超)」を考慮に入れても、それを帳消しにするに余りある
ブラジルの潜在力が漸く21世紀に蠢き始めた感がある。
以上
BATE-PAPO主宰者のリオの山下さんのコメント。
「ブラジルは、ほぼ間違いなく21世紀のエネルギー大国になる」と言われるJETROの渡邉さんのファゼンダ訪問記は只で読ませてもらっては申し訳ないほど価値があります。
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