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【ジャングルで迷った体験物語】 マナウスでアマゾンのガイドをしておられる高橋さんの実体験です。(後編)
『私たちの40年!!』ホームページの使用ソフトが1寄稿集1万語までとの制約があり前編、後編に分けましたが、これは後編に当たるものです。ジャングルで迷った体験パート7及びパート8です。ジャングルでの猪の群、怒濤の行進を駄犬?2頭を犠牲にして木の上からエスピンガルダーを引き放つと言う猟のやり方は面白そうですが高橋さんならでも嫌な思いが残る残酷な猟ですね。熱帯ジャングルホテルに泊まりホテルの敷地内のジャングルをトレッキングする程度で十分だと思います。夜の鰐狩り(手掴み)、昼のピラニア釣り、ゴム採集現場、アマゾンの鬼蓮、ヴィクトリア・レジアの浮かぶ農場の池、何よりもアマゾン河に落ちる夕日に朝焼け又行って見たい光景が蘇ります。
写真は、高橋さんが夜のアマゾン河で捕まえて呉れた鰐を見せて呉れているところです。


【ジャングルで迷った体験パート7】
いろんな狩の方法があることは、お伝えしましたが、そのうちでも特に難しく、豊富な経験を必要とするのは、やはり動物の足跡を見て、動物の種類や足跡を残した時期の判断をして、足跡を辿り動物の居場所を見つけ捕獲する技でしょう。
それと、犬のように動物の匂いを嗅ぎ分け、動物の種類を察知しどの方角に動物が潜んでいるのか分かることです。
別な方法では、動物の泣き真似をして、おびき寄せるという、狩の仕方もあります。
メンバー4名と5匹の猟犬という構成で、猪狩りが始まります。
それぞれ、愛用の猟銃を携えています。私のは国産の安っぽい銃でしたが、ドクターや、その中間が持っている猟銃は米国製で連発式の高価な猟銃のようです。
散弾銃は至近距離ですと威力がありますが、距離が離れるに従って弾が拡散しますから、破壊力が損なわれます。私が使用していました国産の銃は性能が低いので、相当な至近距離でないと威力を発揮しません。ドクターが使用している銃は、ある程度の距離まで散弾が拡散しない高性能の猟銃でしたから、命中度や破壊力が抜群でした。
私が、うらやましそうにドクターが持っている銃を見ていたので、狩を始める直前に、試射させてくれたので、その時に性能が分かりました。
ドクター達が、おおよその見当をつけていた場所は我が家よりは東側の(ネグロ河がある方角)ジャングルでしたが、この辺りに猪の群れが通過するというところまでは、かなりの距離を歩きました。
ジャングルの奥地に向かって4時間ほど歩いたところに、さしかかった時です、5匹のうちの3匹のポインターが、いっせいに同じ方向に向かって、吠えながら駆けさっていきました。その犬の吠える声に混じって遠くから、あの猪の群れが出す独特な音、ガリッガリッとかガツガツと牙をなにかに、こすりあてているような音が聞こえてきました。
残された2匹の駄犬?はというと、群れの方角に向かって吠えてはいましたが、ドクターの傍を離れようとはしませんでした。
私は、てっきり猟犬に群れを追わせて、それを追尾し、見つけた猪を仕留めるものと思っていましたが、どうも、そうではなく違う方法で獲物を捕獲するようです。
メンバーは猟銃とテルサード(山刀のようなもの)も、持っていました。
下草が茂っていますから、ジャングルを歩く時の必需品です。
ドクターが、この辺が良いだろうと場所を決めて、その辺りに茂っている下草刈りを指示しました? 丁寧にではなく、大雑把に下草を刈ったのですが、それでもかなり視界がよくなりました。
大急ぎで、その作業を済ませると、今度は最寄の木に登るように云われました? 下の方に枝がある登りやすい木を選び樹木の上段の方にある枝に腰掛て(5〜6メートルほどの高さ)少し視界の開けた下部に向かい銃を構えて待機をしました。2匹の駄犬はドクターが登った木の真下で弱弱しく吠えながら、おろおろと歩き回っていました。猪に反撃されたのか近くでキャイーンとポインターの悲鳴も聞こえています。今度は無数のドドドドッツという猪の群れの足音が近まってきました。
つづく

エピソードその15
【ジャングルで迷った体験パート8】
木の上に居た私達は、それぞれ猟銃を構えて猪の群れが近くまで来るのを待っていました。猟犬ではない2匹の犬はドクターが登っている木の下あたりを右往左往しており、怯えているのか時折、悲鳴に近いような鳴き声を出していました。そんなに遠くないところあたりで、猟犬のポインターのうなり声や猪の蹄の音が轟き、盛んに互いを牽制しあっているような騒音が聞こえています。

今か今かと緊張の刹那、いきなり私が登っていた木の後ろ側あたりから数頭の猪の群れが黒い塊となって鼻息も荒々しく、あの2匹の犬めがけて直進していったのです、すかさず数発の銃声が響き渡りました。
私は、その黒い塊があまりにも素早いので狙いを定める余裕もなく、ただ猪に突撃されている2匹の犬の方を見ていました。駄犬ではありましたが猪の攻撃を上手に避けながら、しかしドクターの木の下からは離れようとはせず、頭を下げ、それを突き上げながら突進してくる猪に向かって、体をかわし、右に左に飛び跳ねながら、時折、樹上にいるドクターの方に向かって、すがるような、助けを求めているような鳴き声をあげています。

私は,おもわず犬に向かって遠くへ逃げろと叫んでしまいました。
その声も空しく、今度は四方八方から黒い塊となって、怒り狂った猪の群れが2匹の駄犬めがけて突進してきたのです。前方からだけの攻撃でしたら、なんとか避けることも可能でしょうが、数十頭が回りから突撃してきたものですから、たまったものではありません。
今度は、ひっきりなしに銃の発射音が、炸裂しています。急所に命中すると、猪はもんどりうって一回転しながら、その場で即死です。
私も近くを駆け去っていく猪に狙いを定め、数発を撃ちましたが、いずれも急所に命中していないのか、走り去っていきます。

動いている標的を狙い撃ちするのは、とても難しいのです。停止している状態であれば、命中させるのは簡単ですが、移動しているのは狙いをその動いているスピードに合わせて、照準を少しばかり目標の前の方に合わせて撃たないと、命中しません。散弾銃ですから、数発は当たっているのでしょうが、すべての散弾が命中しないと威力はないのです。

激しい射撃音に混じって、駄犬のうめき声が聞こえていました。
下方から頭を突き上げて牙をつきたてるので、犬は何度も空中にはねあげられていました。まるで手毬遊びをしているみたいに、あちら、こちらで集中攻撃です、すでに重傷なのか抵抗もしていません可哀相です。
2匹の犬が抵抗しなくなり、ぐったりとなったところで、猪の群れは攻撃をストップし、潮が引くように何処かへ逃げ去っていきました。
興奮さめやらぬ3人のハンターは樹上から声を交わし、何頭の猪を撃ち殺したと互いに自慢をしています。

数十分後、もう木から下りても危険が無いと判断して、ドクターが下に降りてくるよう声をかけてきました。あの怒り狂った猪の群れは遠いところに走り去っていったようです。2匹の犬は猪の牙で全身をズタズタにされ息絶えていました。他の3匹の猟犬は1匹だけが怪我をしていましたがハアーハアーと大きな長い舌を出しながら、私達の傍に戻ってきました。
即死で、その場で倒れている猪が11頭いました。手負いもしくは、重傷をおって、近くで息絶えている猪がいるとのことで、近くを探していますとさらに死んでいるのが3頭が見つかりました。そうしているとポインターが激しく吠えはじめ、さらに2匹の、もう動けなくなっている手負いの猪をみつけ、2発の弾で息の根を止めました。

疑問に感じていた、2匹の猟犬ではない普通の犬達は猪を引き寄せるための囮として犠牲にしてしまったのです。囮の犬がいないと猪は危険を察知して待ち伏せの場所には来ないのです。攻撃目標の犬がいるから、その犬を倒してしまうまで、立ち去ろうとしない猪の習性を利用した狩だったんです。文章には2匹の駄犬と書いてしまいましたが、はたして本当に駄犬だったのだろうかと?後ほど、考えさせられました。
飼い犬は主人に対して、とても忠実です、猪の攻撃にさらされ死にいたる危険がせまっているのに、主人の傍を離れようとしなかった2匹の犬達は死を覚悟で主人を守ろうとしていたのではと思えてきたのです。

このような、猪の群れを狩するために犬を囮にして犠牲にしてしまうことを書きますと、動物愛護の方や犬を可愛がっている人達に、とても反感を買うと思いますが、まさか犬を犠牲にして狩をするとは思わなかったのです。こうした狩はこれが始めてで最後でした。
ドクターは、賢い犬だったら、あのような状況になれば危険を回避するために、一時避難するものだ、駄犬だから情勢の把握が的確でないのでこういった事態になるのさと、あまり悲しそうでもなく、ひどく無情のような人に見えました。3匹の元気なポインターが、ドクターの傍であまえるようなしぐさをすると、なんだかポインターどもが憎らしくなってきました。

15頭の獲物をしとめたのですが、2匹の犬たちを犠牲にしてしまったので後味が悪く、爽快感や征服感はありませんでした。
長い間、あの犠牲にしてしまった犬たちの悲鳴が頭をよぎり、あの時の光景が思い浮かび、嫌な思い出の一つになってしまいました。

エピソードその16
「ジャングルで迷った体験パート9」
3人で、どれくらいジャングルを歩き回ったのでしょう?出口を求めて、ただひたすらに歩くのみの術しかありませんでした。正確にはさ迷っていたと言うべきでしょう。
相変わらず空は、どんよりと曇って雨が降ってくる気配すらあります。
昨晩の雨で「蚊」が大量発生したのか、容赦なく無防備の私達に向かって、これでもか、これでもかと、どこからか湧き出してくるようです。「蚊」を払いのけることよりは脱出が優先であり、頭によぎるのは愛しい我が家で待っているであろう残された家族の事でした。父も同じ思いをしているのかも知れません。

不思議なことですが、さ迷っている最中、何故か無性に「カフェー」が飲みたいと思いました。あの「カフェジニョ」の香ばしい匂いが鼻の先にちらつき、今、飲む事ができれば元気がでて勇気百倍、エネルギーが充填され歩くのも苦にならないのにと、一人ぶつぶつ思いを馳せながら歩いていました。 (ブラジルのコーヒーが大好きなんです)

弟はただ黙々と歩いています、私に比べて弟の方が、いざとなると我慢強いところがあるのでしょう、もう泣きべそはかいていません。
私と父がいるのです、二人にすべてを任せましたといような表情です。ただ、自分達もそうでしたが、虫や蚊に刺された局所が異常に腫れ上がり、見るからに痒そうです。
特に弟は虫刺されに弱い体質なので、痛々しい思いがしました。
しかし足取りはしっかりしています、この場合、信頼できるものがあると迷いがなくなるのか?むしろベソをかきそうなのは私の方だったのかも。

さらに歩いていますと、かすかに音が聞こえてきました。その音を最初に聞き取ったのは弟でした。耳を澄ませますと私達の前方の方角で、ポンポン、ポンポンという船のエンジン音のようです。音のする方向に向かって早足で歩いていきますと、次第にはっきりと河船のエンジン音であることが分かってきました。河船の音がしているということは、すぐそこが河であり、それはソリモンエス河のはずです。
ソリモンエス河の近くに来ているということは、北の方にある我が家とはまったく逆の南の方角にさ迷い歩いていたという事になります。
ポンポンと言う連続音は焼玉エンジンを搭載した河船が発する音です。

河の方に向かえば、その川岸に居住している現地の民家があり、その現地の誰かに助けを求めることができる、我が家とは違う方角に脱出することになるのだが、そんなことより、ともかくもやっと深い密林から抜け出せるということが、なによりでした。
やがて前方の視界が明るくなり、ソリモンエス河が見えてきました。
運よく、私達が脱出した川岸には民家も一軒見えています。民家は川岸の低いところにあり、その家からは昼食の支度なのでしょうか、煙もたちのぼっています。

急ぎ足で民家の方まで行きますと、大家族らしく大勢の子供達の声が聞こえています。家主はアントニオさんという方で、とても親切な人でした。事情は分かったからとりあえず、お腹が空いているでしょうから、なにもありませんが、お昼ご飯を一緒に食べて下さいと招待を受けました。
その家の子供達は始めて日本人を見るのか?珍しそうに又、好奇心旺盛にいろんな事を話しかけてきたりしました。
お昼ごはんは魚料理にファリニャでしたが、空腹だったせいもあるのか、今まで食べたどんな料理よりもサイコーのご馳走に思いました。

昼食後、少しばかり談話をして?(しかしまだ怪しいポ語でしたから完全には理解できませんでしたが)今日は我が家に泊って、明日、貴方達が住んでいるところまで案内しましょうとの申し入れがありましたが、父が家族がとても心配していることだから、できれば今日中に家に戻り家族を安心させたいと頼みました。
アントニオさんは分かりましたと、快諾され、早速に準備をして再び今までさ迷っていたジャングルへ分け入りました。アントニオさんは、この辺り一帯のジャングルは我が家の庭みたいなもので、どうかすると遠出で貴方達が住んでいる近くまで狩をしながら行くこともあるので、良く知っていますから心配無用ですと、心強い限りです。

空は以前として曇っているのに、何を基準に方角を定めているのか不思議に思うほど迷いなく一定の方向に向かって歩いていくようでした。
時々、動物の足跡を指差して動物の種類や、どれ位前の足跡なのかの解説などをしたり、木の実や椰子の実の熟す時期、又、自分の好物の野生の実なども教えてくれたりしてもらいました。話がとても好きらしく、道中、途切れることなく、いろんな話をしてくれました。未熟なポ語の理解度ではありましたが、自分達に分かるように、ゆっくりと分かりますか?を連発しながら丁寧に話して下さるので、よく理解できました。

そうしてジャングルも少し、薄暗くなってきたころ心当たりのある見覚えのある地点まで来ました。これからは我が家もすぐ近くで、ここらだと私にでも迷わずに家に戻れることができます。たったの二日間迷っての帰路ですが胸の高鳴りが収まりませんでした。アントニオさんの案内で三人がやっと我が家に戻ってくることができたのです。
眼を真っ赤にした母が奇声をあげて、良かった〜心配したとよと涙声で迎えてくれました。安心したのか、その場にヘナヘナと座り込んでしまいました。
同船者の皆が心配して3人を探してもらっととよ、ひょっとして戻ってきたら、合図に猟銃を二回撃つということだったので、その合図をすると、しばらくして捜索していたみんなが戻ってきました。
つづく



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