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山下晃明のブラジルで損せぬ法(222)(223)(2006年5月号、6月号)
ブラジルで数少ない経済誌『実業のブラジル』は、1959年の発刊であるから既に47年間発行続けている。そのブラジルの経済誌に25年以上(一時抜けている期間が有るが都合300回近く)『ブラジルで損せぬ方』を書き続けているのが山下 晃明さんです。
彼とは神戸高校の10回生として3年間神戸高校で一緒であった。在学中は、同じクラスになった事がなく余り行き来はなかったが放送部で活躍していたのは知っている。卒業後は、地球の裏ブラジルで交差する機会が増え仲良くさせて貰っている。サンパウロの城島商会の大番頭として松下電器のNATIONAL印のテープレコーダーを何百万台販売ブラジルに普及させた。現在はリオ、マイアミに拠点を移しOCSのブラジル代理店初め多種のコンサルタント業を展開している。
写真は、彼とSKYPEで無料通話している時に撮ったものです。


山下晃明のブラジルで損せぬ法(222)
『実業のブラジル』誌に好評連載中(2006年5月号)
ブラジルのポシチブ要因
 2ヶ月続けて国内向けに苦言を呈したから、今月は外向きにこの素晴らしい国を手放しで賞賛しよう。どうだ恐れ入ったか、これがブラジルだ。

 石油自給達成宣言
 大統領が石油の自給国に今年中になると宣言した。原油価格高騰などどこ吹く風である。4月21日のNHKでも「ブラジル石油輸出国仲間入り」と放映されたが、ANPの統計でブラジルの2月の生産は47百万バーレル、消費は53百万バーレル、月間生産記録は2004年10月の55.7百万バーレルで、まだ年間で生産が消費を上回った既成事実はない。生産が増えても消費も増えるからなかなか難しい。今回掘削プラットフォーム船P50をリオ沖で稼動させると生産が18万バーレル/日増えるから今年中にそうなるだろうの話しである。なおP50は28万トンの中古タンカーを掘削プラットフォーム兼貯蔵船にシンガポールで改造、リオの元石川島のドックでIVIが仕上げ2002年にペトロブラスに引き渡した。その後補修に戻って2年以上もリオ港の岸壁で補修工事していた船だ。

 リスク融資残高ゼロに
 ブラジルは今年でモラトリアムのマイナス・イメージを一掃する。昨年末IMFの債務を154億ドル前倒しで決済したが、モラトリアムのブレデイ債の残高64億ドルを買い戻し、さらにパリクラブの債務残高10億ドルも前倒し決済し、要するに国際緊急救済融資残高を清算し通常債務のみとなる。これでもし投資対象国格付けが上がれば、ブラジルは借入れ金利の低減など将来より好条件の融資を受けることが可能となる。なおプレデイ債の買戻しはC-BONDを安値のときに買った人に大儲けをさせるかも知れないが誰がC-BONDを買っていたかはこの際不問にしよう。

 外貨財務状態優良国に
 今年中に連邦政府の純外債残高と外貨保有高が650億ドル程度で均衡するという。民間合わせた対外債務総額は2003年の1,947億ドルより見ると本年3月は1,503億ドルに下がって対GDP比で18%になる。また2006年の輸出額を2005年の1,183億ドルの2割増し1,400億ドルとして、外債は輸出の約1年分となった。2002年末のGDP比41%、輸出の2.7年分に比較すると実に大幅改善で外貨財務状態優良国になる。なお外債残高は減っているが国内債務の方は増え続けている。

 GDP世界5位
 猛烈レアル高のレアル・プランのころブラジルのGDPが世界8位で、7位になると騒がれたが、現在もレアル高に助けられて世界11位、為替が通常に戻るとランキングは下がるが、2050年には日本に次ぎ世界5位になる可能性ありとゴールドマンサックスなどが予想。前月号で述べたがブラジルの2005年GDPの8,249億ドルから日本の2050年予想GDPの66,730億ドルに迫るには、8倍強にする必要があり年5%のそれも継続的成長が必要となる。

 公定金利2001年来の最低
 Selic公定金利が年利15.75%と、未来インフレを含むので世界的にはまだ最高率だが、2001年以来の低水準となった。

 インフレがマイナス
 インフレが3月はマイナス0.45%(IGP)で過去12ヶ月でも驚くべきことにマイナス、本年の目標4.5%を下回る可能性もでてきた。

 貿易収支黒字更新外貨流入続く
 レアル高だが、鉱産物輸出価格の値上がり、燃料アルコールや食品輸出が好調で輸出は増加しており、3月まで過去12ヶ月貿易収支の黒字は458億ドルと記録更新が続く、ただしGDPに占める輸出比率ではブラジルは中国や韓国の半分で、全世界輸出の1%にすぎない。輸入にいたっては0.7%である。外貨流入は、外貨直接投資額も過去12ヶ月累計で見ると本年3月までで235億ドル2000年の11月までの12ヶ月の340億ドルには及ばぬものの徐々に増えつつある。なおレアル高が続くので対アルゼンチンなど対外投資の増加と、輸出工業から輸入業に転業の業者が出始めており、為替を早急に是正しなければ貿易収支黒字の伸びが止まる恐れがでてきた。

 選挙も影響なし
今年は選挙の年だが、非常に良いことはルーラでもアルキミンでもどちらが勝っても、経済政策には余り大きな差はないと思われることである。フォーリャ紙によると世界45カ国の大手1410社の社長の2006〜2008年の投資対象国として1位中国55%、2位インド36%、3位ブラジル33%とのことである。

 BRICsはなぜ今ブラジルか
 ブラジルの最大の地政学的な利点は世界の紛争地域から離れていることだ。イスラエル・パレスチナでドンパチ始まっても、北朝鮮がミサイル攻撃をしようが、イラン・イラクやインド・パキスタンでミサイル核戦争が始まってもブラジルにとっては遥か遠い出来事になる。BRICsのインドは紛争当事国になる可能性が高く、中国ロシアも紛争地帯の隣国だから巻き込まれるだろうがブラジルは安全地帯である。世界には30いくつものテロ活動地域があって昼間外を歩くのも危険なところが多いが、ブラジルはピストル持たないで夜中に飲みに行けるのである。
 また北半球とは気候が逆、すなわち農産品の収穫期の異なる南半球に位置することも利点に挙げられる。気候異変になってヨーロッパなど北半球の冬が雪に閉ざされてもブラジルは食料を供給できるのである。資源・エネルギー・食料輸出大国のブラジルよ港湾施設、貯蔵施設や輸送網を補強して頑張れである。

 バラバラの中南米だがパイプライン大計画
 チリは他の南米諸国を相手にせずFTAに参加、最近コロンビアも二国間協定でFTAに参加、ペルーもFTAを交渉中、アメリカはFTAAへの勧誘策で2国を説得したことになるが、ヴェネズエラはアンデス共同体から脱退、メルコスルに加盟、チャーベス大統領は相変わらずキューバやボリビアとともに反米運動を続けている。メルコスルの貿易量は往復340億ドルに成長はしているが、世界貿易に影響を与えるほどの力はない。この調子では中南米が一本にまとまって共通通貨にするなど夢の夢である。
 ただし天然ガスを見ると、ブラジルはボリビアの国有化政策でガスの供給でもめているが、ペトロブラスは安定供給を求めて代替の意味か、最近国内のガス輸送網と天然ガス開発計画を次々と発表しており、サントス沖のガス田に180億ドルを投資する。一方ルーラ、キルチネル、チャーベスはヴェネズエラからブラジル、ウルグアイを通ってアルゼンチンまで6,600Kmのガスのパイプラインを230億ドルかけて10年計画で敷設する話を進めている。まず産地のヴェネズエラのマラカイボから消費地のマナウス近くまで1,900Kmを2010年までに完成させ、ロライマ、パラ、トカンチン、ゴイアス、ミナス、サンパウロ、パラナ、サンタカタリーナ、リオグランデドスル各州を通ってウルグアイ経由でアルゼンチンを結ぶ。この沿線には火力発電所などが建設されて将来潤うことだろう。
 一方中国もガスパイプラインに2億ドル投資してリオのマカエ石油基地のカビウナスからヴィトリアまで300Kmのパイプラインに協力するとのことだ。これは東南伯から東北伯の海岸に沿った1,200Kmのパイプラインの一部になる。
 一見ガスは長距離は専用船で運んだ方が経済的に思えるが、広大なブラジルで港の無い内陸部にガスを配給するにはパイプラインが必要で、この2大縦断パイプラインが完成すれば、既存のボリビアからの横断パイプラインと合わせて、主生産地のヴェネズエラ、ボリビアとブラジルのリオ、サントスから主要消費地のブラジルとアルゼンチンを全部結び配給量全体管理が容易になるだろう。

 スカイプを使ってみよう
 有名な国際ただ電話スカイプをご存知か、現在6000万人の登録者がいるというが、どこまで伸びるか楽しみだ。新ソフト2.0版になってからウィンドウXPと2000でしか機能しないし、モデムでは音が途切れて、ブロードバンド(Banda larga)でしか機能しないのだが、PCカメラ対応になっている。すなわちあなたのパソコンが無料の国際テレビ電話になる。外国の固定電話にかけるときも10ユーロを払い込んでおけば市内電話より安い料金でつながる。最近のホテルはブロードバンドが使えるところが普通になってきた。市内電話もあなたのパソコンからかければ、もうホテルで電話代を払う必要はない。またグループで登録して一人が払えば全員が使えるようになった。うそだと思ったらお試しあれ。
www.skype.com/intl/ja/helloagain.html、なおこの会社昨年売り上げ前年比3倍増、2億ドルとなっている。">http://www.skype.com/intl/ja/helloagain.html、なおこの会社昨年売り上げ前年比3倍増、2億ドルとなっている。

山下晃明のブラジルで損せぬ法(223)
『実業のブラジル』誌に好評連載中(2006年6月号)
為替変動、輸出にかげり、賃上げストの季節
 為替が動いた
 5月22日、米国のFRBがFF金利を0.25%上げただけで世界中の株価が下落し、ブラジルは3%、インド4%、ロシアは9%も下がった。
 これは米国の公定金利の実効金利が4.75%程度とみられており、これ以上の上げは無いのプロの予想が外れて5%になったのと、FRBのバーナンキ議長の説明が不明確のため米国の金利政策が不透明で外債残高の多い国への投資が危険視されたわけである。
0.25%はわずかのようだが4.75%からみれば割合で5%上げたことになり、ブラジルで言えば金利が15.75%から16.75%に上がった効果になる。海外投資家より見れば、レアル高のときにドルに換金すべく、ブラジルでも大量の株式が売却されドルが買われたので、もともと5月始めより上がり傾向であった為替レートが一挙に4%上がった。政府は4億ドルの為替SWAP債を売り出して下げに懸命である。
 対策として、マンテーガ蔵相は輸出大企業に外貨の海外保有を認めて、国内市場への外貨供給量を減らそうと画策しているようだが、下手な管理は不正の元になる。為替自由化の道を歩むべきである。
 とにかく選挙前は、理由はともあれ海外からの選挙資金の導入が有利になるようレートが誘導されるものである。なお今の為替は異常なレアル高であるが、インフレを抑える必要もあり選挙までは急激な通貨の変動を避けるだろう。為替高のとき一番有利なのは利益のある事業への海外投資であり、ブラジル企業の海外投資累計額は716億ドルになっている。
 なお仮にレアル通貨の大暴落が起きるとしたら、何か突発的なことが起きて、PTが政権を続行できないことが確実になったときである。このとき現政権は次期政権を妨害する目的で、一気に為替を戻してインフレを高進させる。したがって今はうかつにルーラに負けてもらっては困ることになる。
恐ろしい話をしよう。米国が金利をどんどん上げで、かりに今海外にあるドル紙幣が全部米国に戻ったとしたら、または外国が所有ドル債券を全部手放したとしたらどうなるか。ドル貨は大暴落し米国は大インフレになるだろう。5月末財務長官が更迭されヘンリーポールソン元ゴールドマンサックスのCEOが新長官になったが、株やは迅速に反応するのが商売、米国の政策が刻々変化したらどうなるか、ネット時代のグローバル・システムは思惑に世界中が即連動し反応するから心配である。FRBの金利政策とあわせ米国の責任は極めて重大である。

 輸出にかげり
 O GLOBO紙によるとレアル高でこの4ヶ月に898社が輸出をやめて昨年の13,373社が現在12,475社に減少した。輸出額の52.2%を占めるのはこのうちのわずか69企業に集中しているとのことである。
 なお1〜4月の輸出額は外国市場価格の高騰で6.54%増えているが、輸出量は11.12%減っている。また貿易黒字の対前年同月比は3月までは増加しているが4月からマイナスに転じ前年同月2割減になっている。レアル高のため新規輸出契約が出来ておらず、本年の輸出目標1320億ドルの達成は困難になるだろうと予想している。

 石油自給を宣言
 5月25日、ペトロブラスも石油自給を宣言した。日産187万バーレルで消費183万バーレルを超えた。ANPの統計では3月生産は52.6百万バーレルで1〜3月の対前年比12.1%増、同月の消費は59百万バーレルだが、年末までには日産191万バーレルに増えるとのことだ。消費の実数確認がなく選挙運動のにおいがしないでもないが、本年中には自給になるだろう。

 賃上げストの季節
 収税局が5月始めから賃上げストに入り1ヶ月になる。税関が止まって、アマゾン州工業センター(CIEAM)によるとマナウスFZだけでも7.5億ドルの損害と報じられているが、
他の地区でも大損害になりつつあり迷惑極まりない。
 衛生管理局(ANVISA)のストの方はカーニバルに始まってやっと5月30日終了した。最高75%の昇給を獲得したとのことだが、スト期間の貿易損害は7億ドルとのことで、今後もこのような事態が断続的に起きるとしたら、ブラジルが世界10位の貿易国家になるには夢の話しになる。連邦収税局、連邦警察、国家衛生管理局、郵便局、中央銀行が次々とストをやりだしたら、この国では貿易などやってられない。

 サンパウロが完全に止まった
 この日夜10時にはこの巨大都市に車も人っ子もなくなった。サンパウロの刑務所の暴動でマフィアの親分が刑務所内から無線電話やセルラーで指揮して73刑務所が一斉に蜂起。警官41名と犯罪組織と民間人計123名が死亡、17刑務所は損傷が激しく補修に38百万レアル必要とのことだ。刑務所の罪人間に緊急通信網があるのも変な話しだが、セルラーをゴムぞうりに埋め込んでの持ち込みなどの事実が報道された。初期のころのずしりと重い携帯電話で、電池が2時間で切れる時代でも、刑務所内では誰かが持ち込んで使われていたのだから、今のように小型軽量になれば持ち込みを防ぐのは困難だろう。刑務所地域をセルラーの電波が届かないように妨害電波装置を設置するというが果たしてうまくいくか。

 デジタル・テレビ・システム
 ブラジルのデジタル・テレビ方式は2月に決定して、6月のワールドカップには実験放送がはじまる筈であったが、ワールド・カップには間に合わない。次ぎはオリンピックか。どのシステムになるか、ブラジルは必ずしも一番技術的に優れた物が採用されるとは限らず日本の一番不得手とする政治力で決まるので、これは最後までわからないと書いていたらOESTADO紙によれば29日に日本方式に決定したとのことだ。めでたい話だ。
 聞くところによれば、日本方式はネットもテレビ放送も同じアンテナで送信できるからテレビ放送局にとってはプラスになるとのことだ、選挙の年に決定となるのは放送局も協力することになるのだろう。

 鳥インフルエンザ
 WHOの統計を見ると、死亡者数が本年5月半ばで昨年の41人を越えた。したがって本年は単純計算でも死者は前年の倍以上になるが、この種疫病は発生数が文字通り山を越えない限り収束しないものであり、増えている期間は危険である。発生して撲滅までWHOが人を派遣しても最低2年は必要なようで、タイ、ベトナム、カンボジアは2年で治まったが、アゼルバイジャン、ジブチ、エジプト、イラク、トルコはまだ1年目、不気味なのは人口の多い、インドネシアと中国が3年目でも急増していることである。今年の秋以降は注意が必要である。インドネシアの大地震被災地で発病したら大変なことになる。

 枡に塩酒
 日本食堂でブラジル人の若い女性が日本酒を枡の隅に塩をのせてうまそうに飲む、この風習をブラジル人に教えたのは一体誰だろう。半纏まとったお兄さんか、地方で酒の肴が無いときのお百姓さんならピタリだが日本では妙齢のご婦人が枡酒を飲む光景は見たことがない。

 日本のロボット
 チェコのアイザック・イシモフ原作の映画「アイ・ロボット」では2035年のシカゴは、家庭用ロボットが普及し各家庭の必需品になっているが、新聞報道によると、日本のゼネラルロボチックスなど4社は50万円の小型の人間型ロボット「チョロメテ」35センチ1.5KGSを開発、大学や研究開発向けに売り出すとのことである。独立行政法人の産業技術総合研究所が開発した「プロメテ」を小型化低価格化したもので小型だが、寝た状態から一人で起き上がったり、片足で立ったりが可能。なお産業技術総合研究所の開発ロボットには高齢者の介護施設などで活躍する「パロ」という名前で癒し効果があると最近注目されている35万円のあざらしの赤ちゃんロボットがある。そっけない工業用の作業機能ロボットとは異なり、人間型、動物型のロボットが実用に近いことは興味深い。

 新国家エネルギー戦略に乗る
 5月28日NHKオンラインによれば、日本は新・国家エネルギー戦略で日本の石油開発会社が海外で開発する割合を現在の15%から2030年までに40%に高める。自動車の石油依存度を20%減少させ、植物から生産されるバイオエタノールなどの支援や電気自動車の実用を進めるとのことだ。ブラジルとの関係が強まることを期待しよう。




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