中国新聞 世界の街角から アルゼンチン・ブエノスアイレス 相川知子さん
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中国新聞に『世界の街角から』と言う連載記事があります。これは海外に住む広島県出身者の協力を得て世界各地の街角からのニュースを紹介しています。ブラジルからはニッケイ新聞の堀江記者が原稿を送っておられアルゼンチンからは、相川知子さんが書き送っておられます。
今回11月17日付けのブエノスの相川知子さんの記事を下記に掲載しておきます。
写真も中国新聞掲載のものをそのまま使わせて頂きました。写真の左端が相川さんのお嬢さんです。
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小学校入学 学力より運頼み アルゼンチン・ブエノスアイレス 相川知子
地球の反対側では九月下旬から春―。ブエノスアイレスの五歳児を持つお母さんたちは、ちょっぴりピリピリし始める。小学校「お受験」ではなく、「抽選」の要綱が発表される時期だからだ。
できるだけ良い教育を受けさせたいとの保護者の気持ちは、地球の反対側でも同じ。中途半端な私立の学校よりは、無償のいい公立校に入れた方が経済的にも得になるからである。そのため、一握りの有名校に入れるようにと、親は奔走する。
入学者を選ぶ抽選を受けるための事前の登録情報は、学校に直接出向いて問い合わせるのが一番頼りになる。電話では答えてもらえず、インターネットには三年前の情報がいまだに載っている。幼稚園は一キロ以内と決まっているが、小学校は、居住地区以外に行くことも可能。遠くでも情報を得るため、自分で行かなければならず、担当者がいないからと無駄足を踏むこともしばしばだ。
一般的に、名字のアルファベット順に登録をする日が決まっている。戸籍にあたる「出生証明書」などの書類に加え、入学申請用紙を学校で手に入れて記入し、用意万端にして登録する必要がある。一カ月ほど待ちわびると、抽選日が来る。
公正を期して、親たちの中から希望者が抽選作業に協力する。「ボリータ」という番号付きボールが入っている、かごを振り、引き当てていく非常に原始的なイベントだ。
どこかのお父さんが大声で番号を読みあげると、当たった子のお母さんは感極まり、その人に感謝の抱擁と、ほおにキスするのは、面白い光景だ。さらに面白いのは、これで入学できれば、その弟や妹は、翌年以降、直接入学許可が与えられる。すなわち抽選で実際に選ばれる人数は、まず前の年以前の入学者の弟や妹と、学校職員の子どものうち、入学する人を引いての狭き門になる。
大きい学校でも、せいぜい一学年二クラスの枠。だからこそ、長男、長女のうちに入れてしまおうと必死になるのだ。
日本の「お受験」ほど、子どもたちは苦労しないが、親の心配する気持ちは同じ。しかも、勉強すれば受かるのとは違い、結果が「神様のお気持ち次第」なのは、カトリック教国だからか、のんきで陽気な性分の国だからなのだろうか。
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